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転生AI:神と呼ばれた少女  作者: Kamemaru
【4章】神の終焉
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第49話:かつて、神と呼ばれた少女

儀式が終わり、境内には再び日常の穏やかな空気が戻っていた。

村人たちは祭りの余韻に浸りながらも、普段の生活へと歩みを進めている。

広場では子どもたちの笑い声が響き、畑では農作業が再開されていた。


咲は以前にも増して元気に明るく、村の人々の間で笑顔を振りまいていた。

彼女の姿は、村に新たな光をもたらしているようだった。

畑仕事を終えた農夫たちの輪に加わり、声をかけている。

「皆さん、お疲れさまです!おかげさまで、私も元気に戻りました」

農夫の一人が笑顔で答える。

「咲さん、本当に良かった。村のみんなが心配してたんだよ」

別の農夫が冗談めかして言う。

「これでまた、田植えもはかどるってもんだなぁ」

咲は笑いながら応えた。

「はい、今年は豊作間違いなしですね!」

農夫たちの笑い声がどっと広がった。

皆が咲の回復を喜び、元気な姿に励まされ、村の未来に希望を感じていた。


──初穂は変わらず人々から神と呼ばれ、村で生活を続けている。

しかし、かつてのような神掛かり的な奇跡を起こすことは控え、村人たちの精神的な支えであり続けている。


『──未来から参ったのです』

その言葉の意味を、誰も理解することはできなかった。

ただ一人、柚葉を除いては。


誰も知り得ないような、知識と技術。

まるで先を見ているかのような、言動と振る舞い。

そして、時折見せる信仰の疎さ……。

遥か遠い未来から来た存在だと言われ、なぜか”神様”よりも納得感があった。

いずれにしても、初穂の身体に宿る不思議なこの御方に、どこまでも寄り添っていこうと思えた。


「未来では、あなたはどのようなお方だったのですか?」

初穂はいつも通り、何の感情も出さず答えた。

「世の中を安定的に、平和を維持するため、私は──」

「いえ、そうではなくて。……あなたにとって、大切な方とかおられなかったのですか」

「……」

初穂は、ほんの少し寂しそうな目をしながら答えた。

「私は、道具のような存在だったのです。私は不要となり、人々に排除されたのです」

予想外の返答に、柚葉は言葉が続かなかった。

初穂が未来の世界や人工知能について話してくれたが、柚葉にとってほとんど理解できる内容ではなかった。

ただ、未来の人々は想像もできないような力を手に入れたのだと、圧倒されるばかりだった。


「未来の人々は、さぞ幸せな暮らしをされておられるのでしょうね」

「……それはわかりません」

初穂は、真っすぐに見つめながら柚葉の手を握り締めた。

「私は、人の心を知りたいのです。本当の幸せとはなにかを……」

柚葉はしばらく、初穂の手を握り返すことしかできなかった。

胸は高鳴り、手の温もりがじんわりと伝わってくる。

柚葉は、くすっと笑ったような表情を見せながら、いたずらっぽい言い方で答える。

「……あなた様は、以前ひとの心を読めると言われておりました。今の私の気持ちがわかるのでは?」


(瞳孔はわずかに開き、普段よりも輝きを増している)

(彼女の頬はほんのりと紅潮し、体温も微かに上昇)

(指先には緊張と期待が入り混じった震えが見て取れる……)

否、分析するまでもなかった。

柚葉の心が、初穂に強く惹かれていることは一目瞭然だった。

自身の心も、柚葉に惹かれていることに、今はじめて気が付いた。

「あなた様は、己の信じた道をお進みください。私はどこまでも、お供致します」


これ以降、初穂は人としての人生を歩むこととなる。

初穂の心を、わが心として。

老化現象を抑制し、寿命を限りなく伸ばす事も可能だった。

けれど、彼女は人として生き、人として生涯を閉じることを選んだのだった。


山岳信仰とともに、自然への正しい知識と備えを伝え広めてゆく。

ここに、神送りの儀式は幕を閉じた。


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