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転生AI:神と呼ばれた少女  作者: Kamemaru
【3章】信仰と揺らぎ
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第40話:咲の祈り -2-

神事の時刻が近づくと、巫女たちが白衣に緋袴をまとい、社殿の奥から静かに現れた。

髪を結い、鈴を手にした彼女たちは、神楽の舞を奉納するため、祭壇の前へと進む。


初穂は、神前に立ち、ゆるやかに頭を垂れた。

凛とした彼女の姿は、風に揺れる稲穂のようだった。


祭壇の前へと進み、静かに祝詞を唱えた。

「掛けまくも畏き天地あめつちの神々の御前に、今日の御稔を奉りて、感謝の誠を捧げ奉る──」


【以下、現代語】

「今日の実りを、神々に感謝申し上げます。人々の暮らしが穏やかでありますように。来る年も、豊穣の恵みがもたらされますよう── この地に生きるすべての者が、健やかに日々を過ごせますように。神々の御心が、我らの祈りに届きますように。この祭りの時を、清らかに、尊く、捧げます──」


その声に合わせて、巫女たちが舞を始める。

鈴の音が境内に響き、衣の裾が風を受けて揺れる。

舞は、天と地を結ぶ祈りの形。

柚葉は、その舞を踊りながら、胸の奥に琴葉の面影を思い浮かべていた。

(お姉さま……私は、こうして生きていきます。人々の心に寄り添いながら)


村人たちは手を合わせ、今年の実りに感謝し、来年の豊穣を祈った。

咲は、初穂の姿を見つめていた。

神前に立つその背中を見て、咲の胸には、言葉にならぬ憧れが芽生えていた。

(初穂さまのように、村を護る力を持ちたい──祈りを捧げながら、動いて、変えていく力を)


その後、村の広場では食事が振る舞われた。

赤飯、栗ご飯、搗きたての餅、甘酒──

秋の香りが湯気とともに立ち上り、人々の笑顔が広がっていく。


柚葉が栗ご飯をよそいながら、咲に微笑みかけた。

「咲さん、今年も無事に迎えられてよかったね」

「はい!今年もこうしてみんなで集まれて、ほんとによかった。栗ご飯も、すごくいい香りですね!」


空は高く、雲は遠く、風はどこか懐かしい香りを運んでいた。

秋の収穫祭は、神々への祈りと、人々の感謝が交わるひとときだった。

社殿では舞と祝詞が捧げられ、広場には湯気立つ栗ご飯と搗きたての餅が並ぶ。

誰もが、今年の実りを分かち合いながら、来る年の無事を願っていた。


広場の一角で、長老・国重が子どもたちに囲まれていた。

白髪を風に揺らしながら、彼は餅を手にした小さな子に微笑みかける。

「おじいさま、無理しちゃだめですよ。今日は神さまに感謝する日なんですから」

「わしのことなら心配いらんよ。こうして皆の顔が見られるだけで、十分じゃ。咲や、祭りの準備をよう手伝ってくれたそうじゃな。ようやった──お前の働きで、皆が気持ちよく祭りを迎えられた」

「はい、村の皆さんが喜んでくれて本当によかったです。……でも、おじいさま、さっき子どもたちより先に甘酒に手を伸ばしてましたよね。見てましたから」

国重は目を細めて笑い、肩をすくめた。

「ほう、よう見とったな。……じゃが咲、お前もさっき栗ご飯三杯目に手を伸ばしておったぞ」

咲は目を丸くして、頬を赤らめた。

「それは……見なかったことにしてください!」


子どもたちも、餅を食べ終わったあと、また笑い声をあげて走っていった。

「神さまも、こうして皆が笑っておるのを、きっと喜んでくださるじゃろう。祈りは、声の大きさではない。誰かを思う心こそが、祈りとして届くのじゃ」

国重の言葉が、胸の奥にじんわりと染みていく。

(誰かを思う心……それが、祈り)


初穂の姿も、志乃の生き方も、そしてこの祭りの空気も──

すべてが、誰かを思う祈りの形なのだと、咲は気づいた。

彼女は手を合わせ、空を見上げた。

その瞳には、新たな決意が宿り始めていた。


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