第三話
数秒後、ことりのさえずりが聞こえる。
照明、フェードイン。
場面転換、こずえの部屋。
こずえ、ベットに横になり眠っている。苦しそうにうめく。
こずえ「やだ!」
大声をあげる、こずえ。
自分の大声に驚き、目を開ける。
こずえ、荒い息をゆっくりと、ととのえる。
目をこすり、ベットから起き上がるこずえ。
ことりのさえずりが、朝だとしらせる。まぶしそうに目をしかめる。
カーテンに近づき、触れる。そして開けるのではなく、深く閉める。
頭を抱え、何か呟くこずえ。当たり前だが、返事は返ってこない。
しばらくしてから、階段をあがる音。
舞台に、こずえの母、香織が登場する。
ドア越し。
香織、ドアをドンドンとノックしてから。
香織「こずえ」
香織の呼び声に過剰に反応するこずえ。だが、沈黙。
香織「どうしたの、大きな声だして。何かあった? ねえ、起きているんでしょ。」
こずえ「……」
香織「なんか言ったらどうなの、こずえ。大丈夫なの? 何でもないの?」
こずえ「……」
香織「……そうだ、こずえ。そういえば昨日、百合子ちゃんと遊びに行ったんでしょ」
こずえ「……。」
香織「買い物は楽しかった? 百合子ちゃんから話きいたよ。お母さんが出動してたときに偶然いあわせたんだって?」
こずえ「……」
香織「あの時は、大変だったな。マナーが悪い人が道路をふさいでいたから、車を出すのにすごく時間が」
こずえ「うるさい!」
沈黙をやぶるこずえの声。鬱憤を吐き出すように、激情している。
こずえ「うるさい、うるさい、うるさい!」
香織「こずえ」
こずえ「朝からうるさいんだよ、さっさとあっち行け!」
香織「こずえ、落ち着きなさい」
こずえ「ああもう、本当にうるさい、さっさと仕事に行けばいいじゃない!」
香織「こずえ、お母さんはね」
こずえ「ほら、早く行けば! 早く酔っ払いのところにでも行け!」
激しいこずえの様子に、ついに香織が声のトーンを落とす。
香織「こずえ、いい加減にしなさいよ」
こずえ「なんなのよ、文句でもあるの?」
香織「あんた、もう何ヶ月学校に行ってないと思っているの。いつまでも部屋にこもりっきりで、いいと思ってるの?」
こずえ「……関係ない」
香織「関係なくないわよ。母親なんだから」
こずえ「母親? 家にいっつもいない人が母親なの?」
香織「こずえ、お母さんの仕事が普通の人と違うってしってるでしょう」
こずえ「そうだよ、あんたは普通じゃないよ」
香織「こずえ」
こずえ「毎日毎日、仕事仕事。夜も眠らないで救急車走らせてドライブ。毎日、毎日。そのくせ久しぶりに帰ってきたと思ったら説教ばかり、おかしいよ」
香織「こずえ、」
こずえ「あんたはおかしい、あんたは普通じゃないよ!」
香織「こずえ!」
香織の怒声と重なるように入る電話。
電話の方向とこずえの方向を交互に見て。
香織「……お母さんこれから仕事だから。何かあったら、連絡ちょうだい」
寂しげな表情で退場する香織。階段を下りる音。
こずえ、力を失ったように床に膝をつき、呟く。
こずえ「連絡したって、来てくれないくせに……」




