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魔域の中にて

実プレイの時は笑いが絶えないプレイだったのですが、小説に起こすと案外シリアスになってますね。

 ランタンを掲げても、なお暗い道の中をエルモたちは5人連れで魔域の中を歩いていた。

 

 ルーンフォークのバトルダンサー、エルモ。

 グラスランナーのバード、スージー。

 魔域で出会った槍を携えた女性、アレクサンドラ。

 列車の護衛が二人、ネイサンとボブ。

 

 先には明かりがあり、眩しい光が見えている。その光を目指して歩いている途中だ。 

 スージーが役体もないことを話し続けている。


「いやー、こちとら踊り子と笛吹きの旅芸人なんでね。護衛がいるとありがたいよね。」


「スージー、俺は踊り子じゃないよ。戦舞士だ。」


「まぁまぁ、良いってことよ。人が多いに越した事はないでしょ?わっちが歌って踊るだけの人なのは本当のことだし。」


 エルモは「だけ」ではない事は知っているが、真実でもあるので、特には言い返したりはしない。ただ、自分は戦士だと言うことを間違えて欲しくないだけだ。


 歩いていると、地面の質感がかわり光のなかへ入ると円形の広場の横壁から出てきていた。エルモたちが登場すると同時に歓声を上げる人々が観客席に立っており、まるで噂に聞いた闘技場のようだった。


「どうもー、どうもー。」


 スージーはお気楽に手を振り返したりしている。護衛二人は困惑しているようで、落ち着きなく周囲を見回している。

 そこへ、アレクサンドラが静かに語りかけた。


「ここはアスィルムラート王国の闘技場だ。どうやら私たちはイリーチナ様の護衛士を選出するための協議会の日にやってきたらしい。」


 エルモは、歓声に飲まれて我を忘れていたがアレクサンドラの声で武器を構えた。


「なんだい、そりゃ。アレさん、何か知ってるのかい?」


 含みを持たせた言い方で、スージーはアレクサンドラに問いただした。

 アレクサンドラは深く息を吸い、吐き出した後にこう告げた。


「おそらくは、私の心象が象った風景なのだろうな。すまないが、付き合ってもらおう。お相手も見えたようだ。」


 アレクサンドラがそう言うと、闘技場の奥の扉が開け放たれ、3人の男たちが現れた。

 佇まいはそれぞれ、戦士が2人。1人は戦場には場違いなハープを片手に持っていた。


「敵を突破し、イリチナ様の元にたどり着けば護衛騎士に叙任されるのだ。私は、もう一度この戦いに勝とう!」


 アレクサンドラの言葉に、何か違和感を覚えつつもエルモは前線に向かって走り出した。


「ふーむ。なるほど、そこの二人の戦士は結構やるよ。気をつけろよ、エルモ。わっちは後ろのと芸比べだよ!」


 フルートを取り出しながら、スージーがエルモへと叫んだ。それと同時に戦いの始まりを告げる鐘の音ゴォーンと鳴り響いた。


「わっちのフルートの音色を聞けぇー!」


 そう言って、スージーはフルートを吹き始めた。フルートの調べは普段のスージーの喋りに比べると、格調の高い音色に聞こえるのがいつも不思議だとエルモは思う。

 スージーが奏でているのは「バラード」曲調の呪歌だ。敵味方ともに影響する。動きのキレ、特に咄嗟の動きが悪くなってきた。この呪歌は回避のような行動を取ることが困難になる力が込められている。


 だが、気づいたときにはエルモ以外はかかっていないようだった。 


「ちょっと、中止だスージー!俺以外にかかってないぞ!!」


「あ、やべ。テヘペロ。」


 少女ような姿でのあどけない仕草だが、妙にイラつくのは何故だろうか。


 エルモは怒りを敵にぶつけるべく、両手持ちで持ったモールを大きく振りかぶり、薙ぎ払う。複数の相手にぶつける戦法を取った。相手は全員が前線に出ていて、振り回しさえすれば誰にでも当たりそうな距離にいる。

 しかし振り回したモールは、ハープを持った戦場の歌人のみに命中させて多少の傷を負わせる。他の二人の戦士は巧みに距離を保ち回避した。

 護衛の二人のうちの一人ネイサンがまともに攻撃を当てて、さらに負傷させる。そこへアレクサンドラがスピアにてさらに追撃を当てて歌人を追い詰める。


「イリーチナ様を害さんとするものは全て排除する。」


 アレクサンドラの言葉に、何か引っかかるスージー。この相手はイリーチナ様の敵なのか?と思いつつも、フルートを吹くことに専念する。

 

 歌人は対抗心を燃やしたのか、スージーと同じ「バラード」を歌い、今度はきっちりと効果を表し、各人の回避運労力が目に見えて下がっていく。


 相手の戦士の攻撃はエルモに当てようとするがエルモはそれを舞うように避けた。残りの戦士は攻撃を受けて手傷を負っているせいか、攻撃に精彩がない。

 

今度こそと、スージーは「モラル」を歌いあげる。この呪歌は命中力を強化する。相手の動きを観察する力が向上する呪歌だ。


 エルモは気合を入れ直し、モールを棒切れのように振り回す。旋風のような風圧を起こしながらもモラルの力のおかげで戦士二人と歌人に次々と命中させていく。


「感謝して、感謝して、感謝してー」


「助かるよ、今度はね。」


スージーの言葉に皮肉を返して、攻撃を終えて反撃に備えるため距離を開ける。

ハープを持った男がモールの直撃に倒れ、戦士二人にもモールが命中し、手傷を負わせた。

負傷した護衛のボブが剣戟を命中させ、戦士を一人追い詰めていく。

アレクサンドラは慎重にすぎたのか、攻撃を当て損なう。


ここで負傷した戦士が護衛のボブに立て続けに当てて、ボブは失神して倒れ込んでしまった、失血性のショックかもしれない。


 モラルを継続するスージー。このグラスランナー は今か今かとばかりに待ちかねている瞬間が来ていることを感じていた。

 エルモは嵐のようにモール振り回し、護衛の仇と言わんばかりに敵戦士へと攻撃を重ねていく。

 仲間を倒された護衛は動揺したのか、攻撃を外す。アレクサンドラも間合いを間違えたのか、攻撃を外している。


 エルモが攻撃を受け、胸元にバッサリと刀傷が入り、血飛沫が迸る。護衛のネイサンにもダメージが入り、いよいよ後がなくない。次の瞬間が勝負の分かれ目だと感じた。


呪歌「モラル」のおかげで、お互いに攻撃が命中するようになり、戦いはデッドヒートを避けられない様相になっていた。


エルモはモールを振り回し、うまく当てて戦士を一人倒す。もう一人にも腹部へとモールを殴りつけて弱らせる。

 最後に残った戦士にスージーは曲目を変えて攻撃を行った。それは「終律」と呼ばれる演奏で、前奏を奏でて、放つことができるバードの攻撃術だ。この力、「春の強風」でスージーは残った戦士に深傷を与えた。


護衛ネイサンもボブの仇と言わんばかりに渾身の攻撃を与えるが、倒れるまではいかない。


アレクサンドラは癒しの術を唱え、神の加護による治癒をエルモと護衛に与える。腹部の刀傷が言えていくのをエルモは感じた。


力が漲ったエルモがモールを持ったまま跳躍し、真っ向から振り下ろした。直撃した相手はひしゃげるように崩れ落ちた。

その光景を見たスージーが近寄ってきて、エルモに喋る。


「うわわ、ないわー。そこまでやるのはないわー。」


「生き死にがかかっている中で、そこまで相手に手加減はできないよ。やれやれ、終わった終わった。」


モールについた血を拭きながら、エルモがスージーに反論する。


「愛のない世界だよ。」


どこか冷めた目で悟ったようなことを言うスージーだった。



その後、闘技場での勝者への歓声は一際大きくなり、そのままイリーチナの護衛騎士に叙任式に流れて行った。


「いや、困るよ。困る。ただの一般人なのに。」


 護衛騎士なんぞに叙任されて、ひとり憤るスージー。確かに、グラスランナーが護衛騎士になると言うのは滑稽でもある。エルモは卒なく叙任の儀をこなしていく。

 一人、浮いていることを感じながら、落ち着いて見渡すと色々と違和感の正体が掴めてきた。スージーはなるほど、と独言た。


 恭しく頭を垂れながら、叙任の儀を受けているアレクサンドラを見てスージーが推測をエルモに聞かせる。


「多分だけどさ、ここってアレクサンドラの体験した出来事の模倣なんだと思う。要は、過去の再現だね。アレクサンドラも、何か普通じゃないと思うよ。」


 そう言いながら、倒した相手の懐を弄るグラスランナー。「しょぼいんだよ、この野郎この野郎。」と、独り言を言いながら、気絶している相手に蹴りつける。別の気絶した戦士からはそこそこの額が出てきて、「小銭持ってるじゃねぇか。しっかし、しょっぺーな。」と言いながら、懐に入れていく。


 相変わらず、こう言う時はゲスいと思いつつも、もはや諦めた表情のエルモは叙任式の方をじっくりと見ていた。

 叙任の儀を終えたイリーチナがアレクサンドラに声をかけていく。


「サーシャ、貴女は私の誇りです。さぁ、行きなさい。あなたの戦いが終わるまで、私は待っていますから。」


 闘技場の壁の横に唐突に漆黒の大穴が空いた。おそらくは、この魔域から脱出する出口に続いているのだろう。観客やイリーチナにはその壁の穴は見えていないような気もする。

 名残惜しい表情を見せながら、アレキサンドラが振り返って出口となる穴へと向かった。


「我々は、進まねばならない。ここで停滞するわけにはいかないのだから。」


 アレキサンドラの表情は、何故か悲しげなものだった。

この回の闘技場の件は本来なら、なかったはずのシーンらしいのですが、せっかくプレイしたのでそのまま載せています。


今回のスージー語録

そいつらはどうせ肉盾だ。使い潰してやんな。

うん、肉壁だから当たってもどうということはあるまい。

「感謝して、感謝して、感謝して」

いい肉盾です。


NPCに厳しいスージー・ニックという幼女の皮をかぶった何か

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