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洞窟の奥にいたもの

レベルアップの描写が難しいですね。

端的にレベルアップ!と書くことができないのが大変です。

 毒蛇の平原の兵士たちが留まっていた洞窟。それこそが、ノマリの伝承にあったエルモ達の探す洞窟だとスージーは確信していた。


「あの洞窟、まだまだ奥に向かって地下に下がっていく構造してたんだよ。探してみる価値は十分にあるぜ。」


「スージーがそこまで言うなら、準備を整えてもう一度行ってみるか。伝承通りなら、何か財宝があってもおかしくないからな。行ってみるのは悪くないと思う。俺たちもいくつか冒険を通して強くなって来たと思うしな。そろそろ、大きな冒険しても良いと思う。」


「いよっしゃ!決まりだぜぃ。」


 これまでの冒険で強くなった実感とともに、洞窟攻略を決意するエルモとスージーだった。


 スージーは密かに斥候としての技術を磨いていた。道中の敵と出会うと後れを取ることが多いので、気にはしていたのだ。

 敵を先に見つけ、先手を取ることに磨きをかけた。ついでに石工の技術の一部として物品の品定め力も上がった。解体時に価値の高い部位がわかるようになって来たのだった。


 エルモはバトルダンサーとしての技量を磨いた。より早く、より正確に動く技術を身につける。地道な訓練を野営の度に行い、地力の強化を行っていた。派手ではないが、着実に強くなっていたのだった。


「ついでに揃えたいものもあるだろう。俺が預かっていた資金を二人で等分にしようか。ほら、これがスージーの分だ。」


 そう言って、5000ガメルほどをスージーに手渡す。

 早速、酒場へ消えようとしているスージーに対して、エルモは釘を刺すことを忘れなかった。


 エルモはその後、細々とした消耗品の補充をしていた。特に、ランタンの油は事前に考えていたよりも消耗が激しいので、大量に買い込んでおいた。

 夜中に見えないと困るのだ。主にスージーだけが。エルモは暗視を持っているから困ることはないのだが、スージーが見えていないと困る事態はいくらでもある。なので、パーティーのために必要な経費と言えた。


 ついでエルモはブレードスカートを履くことに決意した。回避した時に、相手との力量に差があれば刃のついた裾が敵を切り刻むと言う装備だ。かなり使い手に技量が問われる装備だが、二人旅で手数も少なく、攻撃の主体は自分である以上、攻撃力を強化することにした。


 防御力のブラックベルトと悩んだが、ほんの少しの防御力よりも攻撃力をとった形だ。攻撃を受ける回数事態は少ないので、もらった一撃の大きさ次第になるが、賦術の<ヒールスプレー>でなんとかなる見通しだ。スージーの回復術もあるので、そこまでは困らないと思っている。


「また、所持金が1000ガメルを切ってしまった。当座の宿代があれば、なんとかなるか。」


 洞窟へ向けてクルツホルムを出て平原へと入る。近くの野営地で一晩場所を借りた。兵士たちを助けたお礼と言うことでスージーは酒を少しもらっていたらしい。


 平原で野営をしているとまたノマリ族と出会い、酒宴にスージーは参加したいた。どれだけ酒が好きなグラスランナー なのだろうか。見た目に大きく違いがあるが、幼女風な容貌がドワーフと錯覚させることもなくもない。

 痩せ気味のドワーフといえば、通用するのではなかろうか?


「断るとか、失礼だろ。」


 酒を飲まないことに関しては、ありえないと断言するスージー。やはり、ドワーフなのでは?と疑念を深めるエルモであった。


 酒宴の中、販売していたのでついでに疲労回復薬を買っていく。


 そんなことをしていると、酒に飲まれたスージーが調子っぱずれな歌を歌いながら近づいて来た。ため息をつき、スージーの側へと行く。

「毎度毎度お騒がせして申し訳ない。」

 と言いながら、テントの方へと担ぎ上げて連れていく。ノマリ族ももはや見慣れた光景となっている。


 翌日、平原の中で毒蛇の群れと出会うが、スージーがそれまでの汚名返上と言わんばかりに敵影を先んじて発見し、スカウトの技術が磨かれたことを証明するかの如く先制をしっかりと取り、さらに鍛えられたエルモがモールを薙ぎ払ってあっさりと終わる。


「前なら先に攻撃されて一撃もらってたことを考えると、成長したな俺たち。」


「わっちの実力のおかげよ。今まで隠しててすまんかった。」


「いや、それは流石に嘘すぎる。」


 エルモが天狗になったスージーに思わず突っ込んだ。とはいえ、クルツホルムについた頃に比べ、実力がついて来たことを実感する。


 洞窟のある毒蛇の平原まで戻って来た。針葉樹がまばらに生えた中に、目的の洞窟を見つけた。今回はその奥に潜っていく。


 ランタンに火をつけ、慎重に探っていくと洞窟の奥に魔動機文明時代のものと思われる金属製の扉が目の前を遮っていた。

 大ぶりなマギスフィアが扉の真ん中にハマっている。


「あのマギスフィア、外れたら金になりそうだな。それはそれとして、あのマギスフィアが扉を操作する仕掛けっぽいよ。」


 扉の構造を調べつつ、スージーがエルモに説明をする。


「よっしゃ、ここはわっちに任せな。あれ?なんだっけな。ちょっと待ってろい、今すぐに思い出すからな!」


その後、あれでもないこれでもないと、数分かかってようやく正解の合言葉に辿り着いたスージーがいた。



 大扉がゴゴゴゴ……、と地鳴りのような音を響かせながら、左右に分かれていく。その先に広がった空間は半球形の形にくり抜かれており、奥には地底湖が静かに揺らめいていた。


「ほのかな潮の香りがするな。きっと水面下で外の海とつながっているんじゃないか?ん?気をつけろ、何かいやがる。」


 空洞に足を踏み入れると、足元にあった無数の骸から、いくつかの骨が組み上がり、直立するとフラフラとこちらへと近づいて来る。


「スケルトンガーディアンだな、結構強力な骨のアンデッドだ。攻撃すると、骨の欠片を散らばせて回避しづらい攻撃を取ってくる。最終的には攻撃は必ず当たるらしいぜ。長期戦になると結構ツラい相手になりそうだ!」


 起き上がった骸は、スケルトンガーディアンだとスージーが看破した。

 足元から何かしゃれた黒い羽付き帽子を被り直し、戦斧を縦横無尽に振り回す。


「回避できなくなると、俺たちには不利だな。一気に押しつぶすぞ!」

 

 長期戦になると不利になると悟ったエルモは、一気に倒す短期決戦を挑むことを決意する。

 

 先んじて敵を発見していたスージーのおかげで際どいところだが、先手をとって戦闘が開始された。


「初手は<モラル>にしておくよ。命中力を稼いでおく。」


 スージーはモラルを歌い、命中力を補佐する。


 エルモは賦術ヴォーパルウェポンを使い、アルケミーキットから赤いカード抜いて砕き散らして武器を強化する。さらにモールを振りかぶって攻撃を与える。

 モールの打撃部は洞窟内に響く音を立てて、スケルトンガーディアンの鎧をへこませた。衝撃で骨の重戦士がふらついた。


 スケルトンガーディアンはオーソドックスながら、古びた戦斧を振り上げて襲いかかってくる。エルモはそれを紙一重に避けていく。


 よけざまにブレードスカートの裾刃が切りつけていく。風切り音を伴ってガリガリとスケルトンガーディアンの鎧に傷をつけていく。


「余裕そうだけれど、念のために回復の準備もしておくぜ。」


 スージーは回復のための前奏として<アーリーバード>を奏で始める。陽気で明るい曲調が暗い洞窟内に響き渡った。


 エルモと骨の重戦士はお互いに重い一撃を与える攻防を仕掛けていたが、エルモは強固な鎧の上から重い一撃を与え続ける反面、ブレードスカートの攻撃を行う余裕はなかったもののスケルトンガーディアンからの攻撃を避け続ける。


 スージーの呪歌<アーリーバード>が続き終律に向けての準備を整えていく。

 エルモが回避の後に攻撃を行ったが相手に避けられそうになった。


(ここで下手に一撃を外して長期化させたくない。あくまで狙うのは短期決戦のみだ!戦闘型ルーンフォークを甘くみるなよ)


 エルモの脳内でスパークが弾け、軌道計算瞬時に行い振りの軌道を変えて強引に当てにいく。


 何度目かの打撃でメキメキと音を立てて助骨が数本砕けちる。

 ダメージが積み重なり、骨の破片が舞い散って視界の邪魔をする。次第にスケルトンガーディアンの攻撃は容易に避けづらくなってくる。


 もはやブレードスカートでの攻撃する余裕は見当たらず、今にも攻撃があたりそうな気配すらあった。


「よっしゃ!回復の終律の準備はできたぜ。次からは攻撃に回るぞエルモ!!」


 スージーの前奏が終わり、次からは終律<春の強風>による攻撃に切り替えられる。


 それを聞いて、奮起したエルモはもう一撃、重い打撃を加えていく。しかし、骨の舞い散るかけらは霧のようになりつつあった。


(スケルトンガーディアンの次の攻撃の回避は難しいだろうな。ここからが正念場だな。)


 エルモは骨の重戦士の出方を見て、そう悟った。


「くらえ、この露出狂!終律<春の強風>だ!」


 春の強風はスケルトンガーディアンに抵抗されながらも、ダメージを重ねていく。それと同時に、さらに骨のかけらが舞い上がっていく。


 エルモも殴るが、当たったところが悪く、鎧にほとんど弾かれてしまった。エルモは思わず顔をしかめる。


 スケルトンガーディアンがもはや霧状になった粉塵の中からの攻撃に奇跡的に、戦斧の軌跡が見えて回避に成功する。だが、もはやこのような幸運は2度と通じないだろう。


 スージーの2度目の<春の強風>が発動し、さらに骨の破片が飛び散っていく。


 ついに、視界を骨の破片が覆ってしまった。エルモはどこから攻撃が来るのか全く読めなくなった。


(どこからだ、どこから来るッ!?)


 張り詰めたエルモの心を嘲笑うかのように真っ白な粉塵の中を戦斧が真横から切りかかってくる。とっさに避け切ることができず、腹部に一撃を受けるエルモ。


「ぐうっ!?」


内臓に大打撃を受け、思わず口から血を吐くエルモ。


「まかせろ、エルモ!これが回復の終律<夏の息吹>だ!」


 スージーが回復の呪歌、終律<夏の息吹>を使った。爽やかな風がエルモの痛みを和らげ、腹部の怪我をみるみる治していく。かなりの深傷だった負傷は、見る見るうちに傷跡さえなくなってしまった。


「褒めてくれても良いのだよ?」


 ドヤ顔のスージー。


 思わず、エルモが叫ぶ


「すごいな!スージーが役に立ってるなんて!!」


 珍しく真っ直ぐな称賛を受けて、やり場に困るスージーが苦し紛れに言った。


「言ってろ。そら、終わらせてやれ!」


 スージーに喝を入れられて、骨の霧の向こうにいるスケルトンガーディアンへエルモはまっすぐ向かっていく。


「くらえ、骨野郎ッ!」


 豪快なフルスイングがスケルトンガーディアンの背骨を粉砕する。限界を超えた一撃が骨の戦士を打ち砕いていく。

 それと同時に、体をつなぎ合わせていた骨が崩れ去りスケルトンガーディアンは単なる骸へと戻っていった。


 骨の重戦士を倒すと同時に、スージーが叫んだ。


「さすがスージー さん、無傷!むしろ全快にまでした!!どうよ、エルモ!?」


「確かにな。こいつには驚いた。プリーストの神聖魔法のようだ。」


 エルモの褒めように、若干目を逸らしながらスージーが答えた。


「あー……。残念ながら、そこまで便利じゃない。1時間に1回までしか同じ効果を受けられないのだ。うん。」


「そうか。まぁ、それでも十分な効果だった。ありがとうな。」


「お、おう」


 珍しく素直な称賛をするエルモに面食らうスージー。フイと、スージーは顔を背けて骸となったスケルトンガーディアンの骨の中から売れそうなものを物色していく。

 そして、骨を一本とってくるとエルモに押し付けて来た。


「これ持ってるのやだ。エルモ持ってて。」


「なんだ?」


「なんかきもい。わっちの趣味じゃないから。」


「ふむ?なるほど、了解した。」


 売れば200ガメルにはなる魔力のこもった骨らしい。エルモは大人しく、背嚢にいれる。


「こっちはわっちの趣味だから、持ってる。」


 そう言うのは、スケルトンガーディアンがかぶっていた黒い羽付き帽子。おそらく、レテ鳥の帽子だと思われた。


「こんなところにあったんだな、そりゃ見つからないわけだよ。お、こっちには財宝もあったぜ。」


 目を向けると、海賊の隠した宝と思われる財宝があった。

 それらは全部で9000ガメルは下らない財宝達と魔晶石が1つ。


「伝説の海賊にしちゃあ、しけた内容に思えるけれども。まぁ、伝説は伝説ってことか。もしくは、最後は金欠だったのかもな。」


 フヒヒと笑いながら、スージーが感想を述べた。


「魔晶石は俺たちには不要だな。売って金にしても良さそうだ。とりあえず、財宝は俺が背負って行こう。」


 エルモが手に入れた財宝を背負った。その重みは、今までの報酬よりも重く感じた。


「思っていたよりも収穫は大きかったな。噂が真実だったのも驚いた。」


「洞窟は潜ってみるもんさね。」


「さて、それじゃとりあえず洞窟を出るか。」


 エルモ達は空洞を後にして、毒蛇の平原に戻ってくる。

 外は夜になっており、野営の準備となった。スージーは踊り、歌を歌っている。もっぱら野営を準備するのはエルモでテントを張って、食事の準備を行う。


「だいぶ疲れたし、今日はぐっすり寝たいねー。」


「確かにな。呪歌のおかげで傷はすっかり癒えたが、疲れてはいる。」


 平原の主を倒したおかげか、平原地域は静かになったような気がしていた。その日は何かに邪魔されることもなくすっかりと熟睡してしまったのだった。


 明くる日も特に不穏なことはなく、野営時にノマリ族と出会って酒宴となった。伝承が真実だったと明かされて、その日の酒宴は大喝采を受けるスージーだった。


「いやぁ、おばあちゃん!おばあちゃんの言う通りに財宝あったよ!!すっごい強い骨の魔物もいたけれどね、エルモが殴って、エルモが死にかけて、わっちがバーンって治して勝ったわ!!」


「それはたまげたわい。伝承通りの事になっておりましたとな。ノマリの祖からの伝承と言え、レテ鳥の帽子まで本当でしたと。そいつで、今後の海が穏やかになればええのう。」


「ヘッヘッヘ。それはこれからのお楽しみって奴じゃない?」


「珍しいな、スージー。酔い潰れてないとは。」


「おいおい、スージー さんを見縊るなって。これから魔域の捜索があるってのに潰れるわけにはいかないだろう。」


 そう言うスージーの勢いはいつも通りに見える。ただ、たまたま潰れていないだけのようにも見える。


「まぁ、酔い潰れてなければなんでもいいが。」


「相変わらず、いい飲みっぷりですなぁ。お話しできる伝承がないのが残念じゃよ。」


 盛り上がった楽しい酒宴も夜も更けてきたことでお開きとなり、皆がテントに戻って行った。最後まで踊っていたスージーは途中で寝ていたのをエルモがテントに戻していた。

 朝日が登って翌朝になる。陽の光が、酒を飲んだ後の目に眩しい。


「おはよー。いやー、昨日は楽しいお酒を飲めた。ところで、今日はどうするん?」


「ほぼ、消耗らしい消耗もない。ハルーラの聖堂跡がこの近くだ。このまま行こうと思うが、どうだ?」


「わっちは歌って踊ってるだけだから、エルモが行くっていうならお任せするぜぃ。」


 

 エルモ達が平原を進むと海へと突き出した岬に出た。

 その上に導きの星神ハルーラの聖堂が建てられている。しかし、その聖堂の鐘楼を飲み込むようにして漆黒の太陽が浮かんでいる。


その黒い太陽こそが<奈落の魔域>だった

スージーが終律2種類を覚えたあたりで急にお役立ち度合いが変わってきました。


攻撃と回復で、普通に戦闘に参加できるキャラクターになりましたね。



スージー語録

エルモ、ちょっと枕営業してこいよ。

何のためにお前スカート買ったんだよ。


仕事は1回しかしない主義でね。

何それ。どういうこと。スージー(エルモ)

これ以上言わせんな。恥ずかしい。

恥ずかしいという心があったんだな。スージー(エルモ)


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