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壁際のジョニー  作者: 三毛猫ジョーラ


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番外編 リホの大晦日


「ただいまー。わっさぶぅ」


 ドアを開けるとワンルームの冷えた部屋が私を出迎える。私は身震いしながらエアコンのリモコンを探した。帰宅時間はだいたいわかるからタイマーをセットしとけばいいんだけど、今はちょっとでも電気代は節約したい。


 部屋が暖まるのを待ち切れずお風呂を沸かすことにした。いつもはシャワーだけど今日は大晦日だしなんとなくゆっくりお湯に浸かりたかった。


 顔の半分まで浴槽に体を沈めながら私はクリスマスの夜のことを思い出していた。久し振りにジローに会えた。そして本当の謝罪と今の気持ちを伝えることが出来た。


 何度も泣きそうになったけどグッと堪えた。泣いていいのはサレタ側の人だけだ。私には泣く権利なんてこれっぽっちもない。


「最後はちゃんと笑えたかな……」


 これからもジローを好きでいることを伝えた時、もしかしたら嫌な顔をされるんじゃないかって思った。けれどジローはダメだとは言わなかった。ちょっと困ってたみたいだけど。


 ちゃんと自分の言葉で今の気持ちを言えたあの日から、なんだか心が軽くなった。まだまだ自分を許そうなんて思わないけど、ようやく本当に前に進んで行ける気がする。


 目標に向かって頑張ってちゃんと夢を叶えられたら、もう一度ジローに気持ちを伝えたい。変わった私を見てもらいたい。振られるのは承知の上だ。それでも彼を好きな気持ちを諦めたいなんて思わない。

 


 お風呂から上がると時刻はもう23時を回っていた。私は小さい鍋で年越しそばを作りテーブルへと運んだ。去年は二人分の豪華な海老天そばだったけど、今年は天かすで我慢しておこう。


「いただきます」


 そばをずずーっとすすりながらスマホを見ているとライブ配信を知らせる通知が届いていた。配信者は同じ大学だったネオンちゃんって子だ。


 少し前に世間を騒がせて、それにジローも関係していたことは知っている。それ以来、彼女の配信は欠かさず見るようにしていた。

 

 どうやら今日は年越しのライブ配信のようだ。彼女の歌に聴き入りながら私はそばをすすった。


 しばらく聴いているとバラード調の曲が流れ始めた。それはジローが好きな曲でいつも部屋で流してたからいつのまにか歌詞も覚えてしまった。ネオンちゃんの歌に合わせ私も思わず口ずさんだ。歌というのはその時の思い出と紐づいてるなってつくづく思う。


 そういえば去年は二人でカウントダウンをしたんだ。またジローと年越し出来たらなぁ、なんて思いながら私は溜息をついた。


 時刻は間もなく午前0時になろうとしていた。そろそろ布団に入ろうとした時、配信画面からネオンちゃんのカウントダウンの声が聞こえ始めた。


『そろそろ12時になるからカウントダウン行くよー! 10! 9! ――』


 配信画面にはネオンちゃんだけじゃなく何人かの女の子たちがいた。たぶん同じ大学の子たちだろう。なんとなく顔は知っている。


『8! 7! 6! ――』


 ネオンちゃんが画面の外の誰かに手招きをする。一人の男性が押し出されるようにして画面に映り込んだ。


「えっ! ジロー!?」


 私は思わずスマホを握りしめて覗き込んだ。それは間違いなく焦った表情を浮かべているジローの姿だった。なぜか必死にもがいているが周りの女の子たちに抑え込まれ、遂には画面のドセンターに押しやられた。


『――1! ハッピーニューイヤー!』


 結局最後はジローも右手を上げて叫んでいた。その光景はまるで美女達を侍らす超絶モテ男のようだった。


 他の視聴者もそう感じたのか、コメント欄はジローバッシングの嵐が吹き荒れる。そして私もスマホを手に取るとコメントを打った。



〈爆ぜろ! このハーレム野郎!〉



 私が一足先にお屠蘇をがぶ飲みしたのは言うまでもない。



この作品は以前のoufa名義で書いたものでございます。

2年程前に書いたにも関わらずお読み頂きありがとうございます。

長いブランク明けではございますが、現在新作を連載中です。

リハビリ中の拙い文章ですがご覧頂けると幸いです。


「婚約者に会う(ぶっ飛ばす)ためにアリスは颯爽と走り出す」

https://ncode.syosetu.com/n5859lj/

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