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壁際のジョニー  作者: 三毛猫ジョーラ


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28話 メリージョニークリスマス with Kahlua


 クリスマスイブ。


 今日は花瑠杏ちゃんの家にお呼ばれだ。あの事件以来、彼女は妹と一緒に住むことにしたらしい。大学も同じだしその方が絶対に良いと思う。普段は元気に振舞っているけど心の傷はまだまだ残っているだろう。


「あっ、ジョニー先輩いらっしゃいませ。今開けますね」


 マンション入り口のインターホンを鳴らすと妹の華詩澄かしすちゃんの声が聞こえた。そのまま部屋の前まで行くとベルを鳴らす前にドアが開いた。


「いらっしゃい! ジョニーくん。ささ上がって上がってー」


 すでに飲み始めていたのか、少しほろ酔い加減の花瑠杏ちゃんが出迎えてくれた。


「おじゃましまーす。はいこれ」


 おれは手土産で買ってきたケーキを彼女に渡した。


「わぁ、そんな気つかわなくてよかったのにー。カシスー! ジョニーくんがケーキ買ってきてくれたよー!」


「わーありがとうございます! キャー美味しそう!」


 きゃっきゃと嬉しそうに小躍りする二人を見ていると、サンタさんの気持ちがよくわかった。喜ぶ笑顔を見て自分も笑顔になる。これこそプレゼントというものの真髄なのではないだろうか。おれは二人の笑い声を聞きながらゆっくりと目を閉じた。


「え? ジョニーくん泣いてる? このケーキ高かったん?」


「あー違う違う! 喜びを噛み締めてたのよ」


「んーよくわからんけど、とりあえず飲もー!」



 二人で作ったのだろうか、テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいた。チキンにパスタにピザに馬刺しに――


「馬刺し!?」


「うん。実家から送ってきたのー。美味しいよー」


 そう言いながら姉妹揃って馬刺しを頬張っている。


「はい、ジョニーくんもあーん」


 花瑠杏ちゃんがにこりと笑いながら馬刺しを差し出した。


「恐縮です! あーん。うん! 美味い!」


「でしょー。この半解凍くらいのシャリっとしたやつが私好きなんだぁ」



 それにしてもこの姉妹はお酒を飲むわ飲むわ。こんな小さい体のどこに入っていくのか不思議なもんだ。


「カシスちゃんもお酒好きなんだね。やっぱりカルアちゃんくらいに飲むの?」


「いえいえ、私は嗜む程度ですー」


 この台詞どっかで聞いたことがあるような? 嗜むと言ったわりには、すでにワインボトルが一本転がっておりますが……。



 しばらく三人でワイワイと飲んでいると突然、花瑠杏ちゃんが立ち上がった。


「ちょっとしたサプライズあるから待っててー」


 少し千鳥足で彼女はキッチンへと向かう。すると華詩澄ちゃんが眉をひそめながら花瑠杏ちゃんの背中に声を掛ける。


「ほんとにあれするとー? 床ベトベトになっても知らんばい!」


 彼女はこちらに見向きもせずにキッチンへと消えた。華詩澄ちゃんがはぁーっと溜息をついた。


「何しようとしてるの?」


「見てのお楽しみだそうです」


 まさか女体盛りか? と卑猥な発想が喉元まで出かかったがなんとか飲み込んだ。その下心を誤魔化すようにおれは話題を変えた。


「そういえば、最近のカルアちゃんはどう? だいぶ元気になったみたいだけど」


 おれがそう訊くとかしこまったようにして華詩澄ちゃんが正座をした。


「はい、もうすっかり元気になりました。これもジョニー先輩のお陰です。その節は本当にありがとうございました」


「いえいえ。あれはおれだけじゃなく甚も頑張ったから。元気になってほんと良かった良かった」


「……でも本当はまだ男性が少し怖いみたいです。学校とかではちょっと無理してるのかもしれません」


 華詩澄ちゃんの顔が少しだけ曇った。やはり血のつながった姉妹だからこそわかる部分があるのだろう。


「でもジョニー先輩といる時はいつものお姉ちゃんなんです! あんな姉ですがこれからも仲良くしてやってください。よければもらってやってください」


 華詩澄ちゃんが床に手をつき頭を下げてきた。


「ややっ! カシスちゃんどうか頭をお上げください」


「やっぱり無理ですか? なら代わりに私が――」


 華詩澄ちゃんが体を起こし、ずずずいっとおれに近づいてきた時だった――


「ちょっとカシス! なんばしよっとー?」


 キャスター付きテーブルを押しながら花瑠杏ちゃんが戻ってきた。テーブルの上にはグラスが綺麗に積み上げられている。


「えっ!? サプライズってそれ!?」


「そうそうシャンパンタワー。一回やってみたかったとー」


「わーい、お姉ちゃんやろうやろう」


「てかカシス、さっきジョニーくんに言い寄りよらんかった?」


「気のせい気のせい。ほらお姉ちゃん! はよシャンパン開けなっせ」


「はーこん子は、困ったもんだ(あくしゃうつばい)



 会話の内容はよくわからんけど、喧嘩してるわけではなさそうだ。ポンっというシャンパンの栓が抜ける音を聞いて花瑠杏ちゃんにも笑顔が戻った。



「わー! すごーい!」


 シュワシュワと音を立てながらシャンパンがグラスに注がれる。光に照らされたシャンパンがキラキラと輝きながらグラスを伝っていく。その光が二人の顔にも反射して、さながら宝の山を見つけたときの様に笑っていた。


 もちろん、注がれたシャンパンはみんなできれいに飲み干した。お陰で三人共ベロンベロンに酔ってしまったけど。





 真っ赤なお顔のトナカイさんは今日も笑顔の花を咲かせる。





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