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6月26日 置いてけぼり。

 ドリームランドから帰って来たと思ってたのに、目の前に俺が居る。

 そう認識したからか、自分の体が透けて、思考も。


『待って待って、俺の体を使って良いから』


 お言葉に甘えて手に触れると、ココの知識や経験が。


『嫌、無理』

『えー、我儘だなぁ。じゃあ、何かに変身したら?』


『あぁ、だね』


 サクラちゃんへ変身。

 小さいなぁ。


『小さいねぇ』

「声も、変えとこう」


『ふふ、平和なんだね』

「まぁ、でも本人は大変そう」


『どれくらい経ってるの?』

「数ヶ月、記憶に有る日付は6月25日だったけど」


『わぉ、ココは今6月26日、帰ってから丁度3年後だね』

「わぉ、身柱ちゃんは?」


『せいちゃんはちゃんと居るよ、大丈夫』

「俺はサクラちゃんじゃ無いし、何なら君なんだけど?」


『イイ子イイ子位は良いじゃない、減るもんじゃ無しに』

「本当、俺っぽい俺だねぇ」


『だねぇ』




 鈴藤さんとドリームランドで会って、1日が過ぎた。

 こう、3年目の今頃になって。


 自分が、呼んでしまったんだろうか。


『せいちゃん、鈴藤に会うのがそんなに嫌なのかしら?』

『いえ、あの、自分が呼んでしまったのかなって、思って』

「それの何が悪いんでしょうねぇ?」


『何かの邪魔をしてしまったらと思うと、申し訳無くて』

『それか、余裕が出来たからかも知れないわよ?』

「ですねぇ、余裕が有ると直ぐに何でもしちゃいそうですし」


『あの、向こうは』

『取り残されたロキからロキが聞き取りをしてるけれど、終わったそうよ。戦後処理も済んで、ハーレム形成中』

「凄いですよねぇ、ぽいなって所が」


『ハーレムって、じゃあやっぱり』

「残念ですけど、桜木花子が本来だそうですよ」


『いや、別に残念ってワケじゃ』

『でも、ハーレムに驚きはしないのね』


『あの井縫君があんな感じですし、英雄でしょうから、そうなのかなと』

『せいちゃんも、よね、ふふふ』

「どうなるんでしょうねぇ、コチラは数年経ってますし。決断にかなりお時間が掛かってましたし」


『それは』

『ウブだものねぇ』

「ですねぇ、鈴藤さんで良かったですよ本当。片玉置いてくなんて、逆に男性なら発想出来たか、ですし」


『その時は、すみませんでした』

「まぁ、向こうは大層おモテになって、紫苑さん個別のお相手も居るそうですしね」

『そうね、花子のも。ウブがモテモテにビビるなんて、良く有る事だものねぇ、ふふふ』


「あら、おしめですねぇ」

『あ、私が』

『お世話させなさいよ、あっと言う間の可愛い時期なんだから』


『そう甘やかさないでくれませんか』

「この子が鈴藤さんだと思うと大変面白い経験ですし、是非構わせて下さいよぅ」

『まぁ、もうホムンクルスが完成しているのだけれど。後は、せいちゃん次第よ』


『え?私ですか?』

「ココへ永住となれば、観上さんが本妻さんですからねぇ」

『井縫の方はいつ生まれてもおかしく無いから、まだ知らせて無いのよ』


「ですが縁者の名付けが無くては現界は難しいそうなので、ちゃんと求めて名付けないとダメだそうですよ」

『そうそう亜人と会ったそうじゃない?』

『はい、第2世界のマティアスさんだとは名乗ってらっしゃいましたけど』


「彼もホムンクルス確定だそうですよ。映画館、新作で溢れてましたねぇ」

『そうなんですか?』

『あら、行って無いのね』


『私が作りだした、幻影なのかなって』

『はぁ、経産婦なのにまだウブいって、何なのかしら』

「それを心配して来ちゃったのかもですねぇ、何せ鈴藤さんは優しいので」


『だからって』

『処女懐胎なんて激レアよ?』

「しかもまだウブ、ふふふ、どう説明しましょうねぇ」


『だって』

「好きなら好きだと思って名を呼べば良いんですよ」

『それでダメなら神々が始末するだけ、それが嫌なら井縫に任せるわ。どうするの?』




 目覚めた感覚は有る。

 現実だとも思えるし、感覚もしっかり有る。


 長い髪だ、そして全裸。


「シバッカルさん」

『おう、見事にコチラへ現界しておるぞぃ』


「ココのシバッカルさんは?」

『ワシに任せるじゃと、映画館と図書館が増設されたでな、邪魔するなじゃと』


「あぁ、そう言う事か」


『あの、本当に鈴藤さんなんですか?』

「いや、実は従者の」

『これ、直ぐ巫山戯おって。鈴藤紫苑で桜木花子じゃよ、ほれ、魔道具が付いておろう』


「ココのか」

『はい、鈴藤さんなら付いてるかと』


「しかも両玉まで」

『もー』


「なんだその反応は、もしかしてまだ」

『もう、検査させますからね、待ってて下さい』


「待って、何か、本物ぽい」

『本物です、寧ろ、それは私のセリフなんですけど』


「子供は?」

『今は猫山さんが見てます、警視庁で』


「何か、色々と聞かないとだな」

『コッチもです』


「なんで赤いの、熱?」

『全裸なの自覚してます?』


「ウブ」

『もー、本当に、直ぐ戻って来ますから待ってて下さい』


 何か、マジでせいちゃんだ。


 せいちゃんが立ち去ると、入れ代わりで大國さん。

 皆、そんな変わらないけど。


「ピッタリ、3年後だ」

「へ、え、へ?」


「お前が居なくなった日付け」

「あぁ、狙い澄ましたかの様な開通日か、凄いな」


「なんだ、狙ったんじゃ無いのか」

「流石に、そも決心出来たのも、昨日とかだし。あ、ロキは?」


「ロキはロキの、ココのホテルで保護している。ただ、少し存在が不安定らしい、桜木花子の姿で情報共有している」

「あぁ、お世話様です」


「井縫の事は聞いたか?」

「いや」


「2人目で、臨月、お前の子だ」

「いや、せいちゃんのお子は分かるんだが」


「1人では寂しいだろうと」

「凄いな井縫さん」


「あぁ、全くだ」


『お待たせしました』

『本当に、鈴藤だ』

「スクナさん、相変わらず可愛いねぇ」


『もう、ちゃんと大人になれるんだからね、ほら』

「はいはい。コレ、協力してくれたの?」


『ううん、コレから。鈴藤が診る事が出来無いかもって、不具合は無さそう?』


 今のが暗示になったのか、安全装置なのか全く診れない。


「診れない」

『そっか。でも大丈夫、寿命はちゃんと有る』


「でも、そう居られないと思う」

『うん、でも大丈夫、向こうのマーリンみたいに寝れる場所は確保してあるから。そうだ、浮島に案内するね』


「あの、スクナさん、ちょっと待っててね」

『あ、ごめん、乗っかって動いたから』

「にしても元気だな」

『もー』


 何か普通で、変わらなくて、少し怖い。




 鈴藤さんは普通にストレージを使って、普通に服を取り出した。

 前に買った洋服。


「それ、新作出てるぞ」

「なん、買って」

『早く行こうよー』


「おう」


 そして浮島へ空間移動も普通に出来た。

 けど、自分も他人も診れないらしい、嘘は無し。


『処理が重くなるって言ってたし、それかもね』

「それと介入になるからかも。となると、神様扱い?」

「祠を建てるか」

『あの、フェロモンの事はどうなんですか?』


『容量はそんなにだけど、溢れる前に多分、吐くよコレ』

「ゲロなら良いや」

「良いなら良いが」

『あの、じゃあ飲食は?』


「練習からだろうなぁ」

『大丈夫だと思うけど、一応ね』


 スクナ様特製のトロミの有る液体。

 嚥下も味覚も問題無さそう。


「すっごいのが最後に来たんだけど」

『ふふふ』


 そして木陰へ向かうと、鈴藤さんの身体を保護する為の硝子の棺が置かれていた。

 寝るとなれば、中にエリクサーを入れて保存するらしい。


 そして次は瑠璃との対面。


「何で瑠璃ちゃんやの」

『紅葉や柊も考えてたんですけど、色の繋がりの方が良いかなって』

「顔が思ったより派手だったんでな、急遽そうなった」

『大変だったんだよー、ねー』


「悪阻は長いし酷いし、切迫にはなるしだ」

「ごめんね、大変だったね」


『鈴藤さんが頑張ってくれたのに、躊躇った罰かなって、思って』

「いやいや、ワシこんなんだものね、仕方無いよ」


『違うんです、寂しくて、井縫君が羨ましくて』

「羨ましいと思ってくれただけでも安心した、ありがとう」


 馬鹿だから、やっと好きだと気付いた。

 好きだった、好きなんだって。


「イチャイチャ厳禁ですよぅ、さ、お話はおウチで」

「猫山さん、ありがとう」


「変わらず良い男ですねぇ、私に食べられる前にさっさと行って下さい。また、お会いしましょう」

「おうよ」

『まだココに用事が有るから帰ってて』

「清一、送る」

『はい、ありがとうございます』




 前の家のまま、大國さんに同居して貰ってるらしい。


「あの、戸籍とかは?」

『一応私が父親で、桜木さんの子供って事になってます』

「井縫のは楠だ」


 そして鈴藤も何もかも、スッと世間から消えた感じに処理されたらしく、橘だけが居るらしい。


「にしても、大変でしょうに」

『どうしても、復職したかったので』

「井縫は猫山の家の近くで、1人だ」


「晶君は」

「結婚して、蓬も、忍も、もう子供が居る」


「大國さんは?」

「もう直ぐ結婚する」


「だから、寂しかった?」

『恥ずかしいんですけど、はい』


「良い人探しは難しかった?」

『はい』


「寝たな、寝かせてくるが」

『あ、ありがとうございます』

「君らだけが、灯台に巻き込まれたのね」


『翠さんが全員に、優秀な遺伝子を残して欲しいって、ラウラ様が言っていたと。もう3人目なんですよ、翠さん』


「せいちゃん、もう身柱じゃ無いんだよね?」

『はい。でも、怖くて』


「だよねぇ、万が一が怖いものね」

『それに、誰をどう見ても、そう見れなくて』


「寂しさはどうなった?」


『鈴藤さんが居ないと、寂しいです』

「おるでよ」


『居なくて、また会えて、好きだってやっと気付いたんです』

「怒り泣きしながらの告白」


『もー』

「ごめんごめん、それで身柱から抜けれたのが不思議で」


『井縫さんや大國や、皆さんをそう見れるか考えて、それでやっぱり鈴藤さんかなって。もう、それで良いなと思ってたんです、ずっと、そこで止まったままだったんです』

「考えるのを止めてたのね」


『妊娠中のストレスにもなるだろうしって、ただ井縫さんの子供みたいに可愛い子が生まれたらなって、思って過ごしてて』

「やっぱり好きじゃん」


『もう自覚したのであんまり言わないで下さい』

「可愛いな、うん、好きだわ」


『鈴藤さん、今ですか?』

「好きの閾値が違うらしい。ビビりだから、好きって言われないと好きって自覚出来無いっぽい」


『じゃあ、誘導したりとか』

「無い無い、つか向こうのワシと同じ悩みかよ」


『問題が?』

「問題と言うか、偽装用も含めて成人式の写真を撮る名目が、気が付いたら顔合わせになり、結納になって結婚しちゃった」

《コチラになります》


「ちょ」

『本当に、桜木花子さんが本来なんですね』


「こそばゆいなぁ」

《この方が、主を桜木さんとお呼びする方です》

『好きな人と同じ呼び方だから嫌だったんですか?』


《いえ、当時は自覚皆無でした》

「ソラちゃん」


《主は言葉足らずが多いので、ソロモンに色々と教えて頂きました》

「お、久し振りだな精霊」

『大國、ほら』

「もー」


 瑠璃ちゃんも寝ない子らしく、背中に高感度なボタンが有って、今日はそれが発動しているらしい。


「抱くか?」

『どうぞ』

「おう」


 紫苑効果なのか、瑠璃ちゃんのボタンが仕舞われてくれて、寝かせる事が出来た。


『やっぱり、鈴藤さんは上手ですね』

「姪や甥が居たからね」

「そっちはまだか」


「流石にちょっと、まだ数ヶ月ですぞ?」

《1回目の採卵は先週完了しました》

「大丈夫か?」

『今はどうなんですか?』


《神々や精霊の加護で直ぐに回復し、連日の公務へ出られました》

「偶々ね、日頃の公務は土日だけ、軍のイベント巡り」


《それまでは浮島研究所や移民の》

「せい」


《データをお送りしました》

「ズルいぃ」


『戻って、良かったですか?』

「分からん、ワシが予備説も有るから、残ってても良かったのかもとは不安に思う時が有る」

《召喚者同士の戦闘に巻き込まれました、相手は大罪の嫉妬として覚醒し、主が縁の糸を切り、帰還が叶いました》

「なら余計に、お前が戻って正解だったと思うが」


『そうですよ。それに、居たらきっと、巻き込まれてたと思いますよ、身柱に』

「やっと認めたか清一」

「せいちゃん、どんだけ」


『だって、好きなのは鈴藤さんなんですよ?』

「本来の性別に拘るなとは言ったんだがな」

「まぁ、鈴藤が長いから難しかったでしょうよ」


『でも、紫苑さんの個別のお相手も、居るんですよね』

「マゾで、最初は花子にだけどな」

「凄いな紫苑は」


「つうか、向こうはかなり柔軟だから。ココはそうじゃ無いでしょう」

「0よりはマシな筈なんだが」

『頑固ですみませんでした』

《性転換の魔道具も解禁されましたので、お相手が妊娠予定です》


「そうか、そうでなければハーレムの運営が難しいだろうな」

《はい》

「まぁ、気が引けるよね、せいちゃんも凄い大変だったんだし」

『後悔はしてません、幸せですけど。打算で、生んだみたいで』


「順番逆だけど、しようか?」

『なっ』

「気を使わないならホテルだろうな」

《ロキの事も有るので、行かれては》


「瑠璃は俺と天華も居るんだ、任せろ」

『だからってなにも』

「大丈夫、女体化も出来る筈だし」

《女体化と言うか本来の姿かと》


「どっちでも良いよ?色んな意味で」

『もー』

「ココからそのまま移動出来る筈だ」

《了解》




 目の前には桜木花子さん、そしてロキ。


『お、ヤりに来た感じ?』

「サクラちゃん、赤ちゃんには会えた?」

「会えた、ヤりに来た」

『そん、別に』


『まーだ素直じゃ無いんだから』

「じゃ、部屋を移動した方が良いかな?」


『それより、良い部屋が有るから、はいどうぞ』

「ありがとうロキ」

「俺にも」


「はいはい、ありがとう。ちゃんと戻ってくれよ、向こうに」

「うん、勿論だよ」

『じゃ、はい、お話は向こうでしてね』

『あっ、もー、騙してません?』


「分かる、ワシも未だにそんな感じ」

『まだそんなに大変なんですか?』


「流石のせいちゃんもヤキモチ妬く内容かも」

『と言うか、普通に心配なんですけど』


「まぁ、何とか。それよりだ、名前はどっちを使う?してる時、どっちでも紫苑で良いけど」

『もー』


「嫌なら何もしないし、取り敢えず話し合おう」


『はい』


 懐かしくて、恥ずかしくて、少し嬉しい。




 部屋の鍵を閉めたものの。

 さぁ、どうするか。


「よし、変身出来たな、慣れろ」

『いきなり、急に』


「嫌なら良い」

『真っ赤なのを誂わないでくれるなら』


「何で誂われるのが嫌なの」

『普通は馬鹿にされるのは嫌なんですよ?』


「可愛いもウブも褒め言葉」

『本当にそう思ってます?』


「じゃあエロいに統一する」

『しないでいいです』


「やっぱり嫌か」

『いえ、あの、胸が、気になって』


「あぁ、すまん、つい無乳の感覚だったわ」

『もー』


「あ、嫌だって言われると凹むから、何か合言葉を決めよう」

『例えば?』


「早々に言わなそうな言葉、バニラとか」

『じゃあ、バニラで』


「顔から手を退けなさい」


『まだ私、自分の容姿に自信が』

「ワシも、まだ蛙だと思ってる」


 真っ赤で、ガチガチに緊張して。

 だよな、同じ呪い持ちだもの、分かるよ。




 目を瞑っている顔を見られたく無くて、両手で顔を覆っていたら。

 ゆっくりと優しく手を解かれて、私の肩口に、桜木さんの頭が置かれた。


 そして本当に桜木さんにも呪いが有って、同じ様に自信が無くて。

 本来が桜木花子だからこそ、紫苑には呪いが無いからヘラヘラ出来てただけで、何なら愛着も有るって。

 だから、向こうでは紫苑も愛して欲しいと願ったって。


『紫苑さんに呪いが無いから、自然だったんですか?』

「何を持ってして自然かは分からんが、まぁ、面倒で頑固だよ花子の方は」


『でも、両方御本人なんですよね』

「分離や分裂は無いから大丈夫。けどまぁ、君なら分かるでしょ、女性体の難しさ」


『ですね、良く泣いてました』

「ごめんね」


『今思うと、認めたく無かったんです、好きだから寂しいんだって』

「こう気付かせといて、次はまた何年後かも知れないから、酷だよね」


『本当に、鈴藤さんなんですよね?』

「もうどっちでも良いよ、楽な、好きな方で」


『そう、違くて』

「向こうでも流石に両方を受け入れろは難しい事だし、ココでの花子の期間は凄く短いし」


『違くて』

「すまん、退くからちょっと待ってて、ワシも顔は見られたく無いから」


『嫌とかじゃ』

「そも、もう慣れる必要も無いのよな。君はもう自由なんだし」


『違くて、私は、呪いを解く事を拒絶したんです、なのに桜木さんは頑張って』

「周りに助けて貰ってるだけ、納得させて貰っても、何度も何度も同じ問を繰り返す。何で、何が良いのかって。正直周りは大変だろうなって、もう別に紫苑でも受け入れられるんだから、別にもう良いだろうって思う。でも、好きだと言われるから、ただ応えて」


『私に、良ければその姿で、言って貰えませんか?』

「君も蛙化現象を引き起こすかもよ、そしたら流石に凹むし、別にもう」


『好きです』

「別に、無理に」


『好きだったんです、ずっと』

「前はでしょ、もう前を向かないと」


『どうして私が言うと、それも呪いですか?』

「なんだろうね、ごめん」


『泣いて』

「泣いてない」


『嘘発見器付けてるの分かってます?』

「知ってる」


『好きです』

「分かった」


『好きです』

「知ってる」


『泣かないで好きって言って貰えませんか?私の為に』


「なんで」

『泣いてますよね?』


「別に」

『私が泣かせたんですよね。前も、今回も、ごめんなさい』


「別に、前は平気だった」

『でも、だから好きって言ってくれないんですよね?』


「違う」

『本当はあの時から好きになれたのに、子供でした、ごめんなさい』


「ガキ、うぶ」

『はい、ごめんなさい』


「好きだったで充分だから、訂正して」

『嫌です、もう暴かれたので無理です』


「ハーレム形成者、ビッチやぞ」

『巫女さん、ちゃんと立ち直って神社で巫女さんをしてますよ。私に執着も無しで、本当にちゃんと、他に好きな人が出来たんですよ』


「そっか。平和になったんだね」

『はい』


「うん、ごめん、悪かった、もう帰る」

『私の呪いを、一緒に呪いを解きましょう』


「無理だ、井縫さんに」

『告白されたんですよね。聞きました、井縫さんが好きなんですか?』


「違うけど。今両方同時に告白されたら、両方断る、だから」

『ハーレム形成者なら、両方受け入れるべきでは?』


「だって、そんなに好きじゃ無いでしょ」

『好きです。さっきのは嫌だからじゃなくて、私の顔を見られたく無かっただけなんです』


「せいちゃんの顔、井縫さんよりは好き」

『本っ、いや、あのイケメンさんですよ?』


「ガーリックカルボナーラとボンゴレ」

『傾向が違うって言いたいんですかね?』


「うん」


 長い髪で俯いたまま、小さく頷いて。

 可愛いなと思って、可愛いと思って()()()()と、あの時に思った事を思い出した。

 私は、それすら否定して。


 それまでにも可愛い面は沢山有ったのに、全部を、男の鈴藤さんだからと否定して。

 傷付けて、また、傷付けて。


『私が、呪いを悪化させたのかも知れません』

「どうしてそうなる」


『可愛いと思う部分が沢山有ったのに、男の鈴藤さんだからって、可愛いと思って()()()()って思ってたんです。本来が桜木さんだって、もう、分かってたのに』

「紫苑が長かったから」


『でも、あ、何て呼ばれたいですか?』

「別に、もうどうでも」


『ハナさん』

「別に何でも良いです」


『嘘も無い、辻褄が合うのに、私が認め無かった。そうやってハナさんを拒絶したも同然だから、呪いを悪化させたかも知れないって思うんです』


「拒絶する権利は有る」

『無いです、何処をどう見ても無いんです。だって私を可愛いって沢山褒めてくれて、他の人には同じ事をしなかった。誰がどう見てもハナさんは私を好きだって分かるのに、私は怖くて』


「分かったから、もう終わった事に」

『向こうは向こうで構いません、それとも井縫さんの方が好きですか?』


「わからん」

『好きって言われないと分からない呪い、私もだったんです。もっと解いてくれませんか?』


「人格が変わった」

『3年も経ったので』


「今さっき、急に」

『本当に、後退りするタイプなんですね』


「うん」

『可愛いですね、その感じ』


「まじでだれだおまえ」

『ですよね、ガキですみませんでした、ご機嫌を直して貰えませんか?』


「むり」

『何か飲みません?それとも何か食べます?』


「お世話すな」

『喋ってくれるだけ助かります』


「もう帰ろう」

『瑠璃に何か有ればスクナ様も面倒を見て下さいますし、ちゃんと話し合いましょう』


「もう話し合った」

『じゃあ、好きって言って貰えませんか?』


「好きだった」

『嘘がバレてますよ』


「こわれてる」

『整備点検はしたばかりですよ』


「なんで」

『ハナさんから教えて貰えませんか?』


「ばーかばーか」

『ジュース頼みましょうね』




 ブドウジュースとサンドイッチ。

 美味かった。


「もうかえる」

『もう少し話しましょうね』


「おそうぞ」

『どうぞ』


「純粋無垢だったのが良かったのに、もうちがう」

『数年経ってますし、子持ちなので。でもハナさんはハーレムの主なのに、純粋無垢なままっぽいですね』


「童貞のクセに」

『経産婦ではありますよ』


「ご苦労様です」

『いえいえ。まだ終わらせませんからね?』


「嫌がってたクセに」

『ソックリですよ、井縫さんの子供のイヤイヤ期に』


「こんな口が達者か」

『偶に理屈が通ってて納得しかけますね』


「じゃあ帰って面倒見てくれ」

『私が年を取ったせいですか?』


「他にも好きな人が居る」

『もう知ってます』


「せいちゃんよりイケメン」

『マティアスさんよりですか?』


「イケメンって言うか、美人系」

『胸が大きい方ですか?』


「1人を除き、ベース全員男」

『それちょっと分かります、楽ですもんね』


「楽は楽」

『本当に下らない事で悩んで、悩ませてすみませんでした。凄く好きです、素直に思えなかった事も、好きだって言えなかった事も凄く後悔してます』


「そうですか」

『どうしたら拗ねてるのが直るんでしょうね?』


「せいちゃんの赤面」

『お互いに顔を見合わせないからこの会話が出来てるんですけど、どうしましょうか』

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