6月12日 手作りホウレン草カレーはヤバい。
目覚めると、枕元でシオンがタブレットを弄っていた。
寝ても覚めてもシオン。
『幸せ』
「おう、おはよう」
そうしてシオンの空腹が来たら、朝食を食べにノアの居るホテルへ。
ノアは元気になってた。
直ぐに元奥さんに電話をして、ワシを紹介する話にまでなっていた。
そして元カレさん、離婚しないってゴネてるみたい。
そうか、不倫かコレ。
『シオン?』
「不倫はするまいと」
「あの、何も無かったです。お話を沢山して頂いて、納得しただけです」
「にしてもだ」
『真面目なのは良いけど、事実を捻じ曲げたらダメだよ。話し合っただけで不倫だなんて、潔癖過ぎは良く無いよ?』
「お願いします、ちゃんとそう言うのは、私もちゃんとしたいので」
「ノア、ルーネに流されちゃダメだ、口が上手いんだから」
『色んな意味で』
「そ、あ、えっと、お話し合いしかしてません。好きだけど、別れたらちゃんと告白します。そうさせて下さい」
『はい。じゃあ、戻ろうか?』
「はい、宜しくお願いします」
「ふぇい」
道徳スコア、大丈夫かしら。
『道徳スコアが気になるそうですよ』
《何故じゃ?お話し合いだったんじゃろう?》
『であれば、コレからの査定だと。大事にしてやれと口を揃えて言っている』
兄さんとシオンとノアの為に、私が出来る事。
先ずは元奥さんの様子見、先に鉄道で帰って来たのはこの為。
良い匂い。
そして元奥さん、普通、ノアがシオンを好きなのも普通だからなのかも。
『あの、ちょっと良いでしょうか』
話の通り豪快でサッパリした良い人。
そしてノアの外見も内面も好きだからこそ、自由に生きて欲しかったって、でも今回は失敗したかもと。
私の元カレの外面と幸せそうな雰囲気に、自分の目が曇ってしまったって。
そしてシオンの事も既に知ってた。
病院で助けてくれた人を好きになったけれど、ハーレム形成者だったと。
そして元奥さんと和解出来無いなら、お付き合いしてもくれない、真面目な人だって。
だからこそ、シオンとも、奥さんとも仲良くしたいって。
奥さんの返事は、イケメンなら受け入れるって。
豪傑。
別れたら眺める事も話す事も無いだろうから、それなら大概の条件は呑む。
まして彼が幸せなら自分も幸せだし、別れないで済むのは本当なら1番だって。
彼との愛は穏やかで、それが離れ難かった。
でも、子供もきっと穏やかで、彼が居なくても幸せになれると思ったって。
つい、似なかったらって聞いちゃったけど。
似た子が出来るまで生むし、自分に似た子が多ければ賑やかで繁盛するだろうって。
何か、根っからのお母さんって感じ、シオンが心惹かれるか心配になった。
起こされた先には、パン屋さん。
絵に描いた様なお母さんらしいお母さんが、手を降っている。
ノアの元奥さんらしい。
そしてアッサリとノアと再婚したいと言い切った。
既にインジが話をしに来てたらしく、外面に騙されて譲ったけれど、ノアを泣かせたから奪い返すと。
そして、ワシの事へ。
ノアの呪いを解いてくれた王子様だから、ノアの恋人にならしても良いと。
そして、もしノアがワシの赤ちゃんを欲しがっても良い、ウチの子として育てるとも。
「ワシの都合に良過ぎるんだが」
もし自分かノアが死ねば、当然面倒は見て貰う。
でもそれまではノアと自分の家族として育てる、でも偶には会いに来て欲しい、そうしないと説明ベタだから困る、と。
ただ、子供の行き来はお願いしたいらしい。
長期の休みに、お店が有るからお願いしたい、と。
『シオン?』
「うん、お腹減った」
パンは凄く美味しかった。
珍しい白パンが置いてあって、みっちりモチモチ、祖父が日本のパンを真似て作っての事なんだとか。
だから遊びに行かせろと、それと私は相手になれるのか、とも。
ごめんなさいした。
母性父性が強いからって、何でも良いワケでも無いみたい。
つうか、ノアには両方無い感じ、寧ろ頼り無い、なんだろな。
シオン達と裏口で談笑していると、元カレさんがやって来た。
混乱したかと思うと、激しく怒って、そしてノアの奥さんに引っ叩かれた。
泣かせるだなんてとんでもない、優し過ぎる所が良い所なのに、それに漬け込むだなんて以ての外だ。
返して貰う、何をしてでもって。
シオンが拍手すると、今度はシオンへ向かった。
止めたかったけれど、待てのハンドサインで止まってしまった。
そしてノアが止めても止まらず、シオンは殴られ、蹴られ。
すると突然男女が空から降って来た、容姿の整った若い男女。
元カレを捻じ伏せると、サイレン無しでパトカーが直ぐに来て、事情を説明する事になった。
インジの元カレ、ノアの旦那が手を上げてくれたが、どうしようかと悩んでいるとカールラとクーロンが現れた。
そしてパトカーからは怠惰さんと憤怒さん、怠惰さんはクッソニヤニヤしてんの。
カールラとクーロンは、最近結成された召喚者様代行の隠密隊だと言い張った。
それにルーネ達がアッサリ納得し、元カレは事情聴取へ、ワシは後から来た救急隊によって傷害の診断へ。
「顔見知りか」
「名前は知らんが顔見知り、夫のルーネの妹の元カレ。そしてあのパン屋の奥さんの夫の元夫予定」
『クックックックッ、ややこしいなぁ』
「それな」
「示談で良いか?」
「モラハラ臭いし、別れてくれたら良いよって言っといて」
『おう』
「こう体を張るか」
「だってバカなんだもん」
「愚直、お前は愚直なだけだ、バカは手を出した向こう。良いな?」
「おう」
「嫉妬される前に下がるか、じゃあな」
「ありがとう」
私のせいで、迷惑を掛けてしまった。
男のクセに華奢で、弱くて、全然止められなかった。
『病院へ行こう?』
「大丈夫、それにもう帰るし」
「ごめんなさい、折角の休暇にご迷惑を」
「敢えて殴られたの、ルーネみたいに口は上手く無いし、頭もそんなだから、早期決着した方が良いでしょ?」
「でも、止められなくて」
「止めさせ無かったの、ルーネにも、奥さんも分かってくれたから止めなかったんだし」
『凄く、嫌だった』
「ごめんなさい」
「コッチこそごめんね、今度はちゃんと上手くやるよ」
『お願いね、もう傷付けられないで』
「すみません」
『ちょっと良いか』
「おう」
『示談、呑むらしい。役所まで送るが』
「付き添うよ」
「いえ、でも」
『奥さんは……行くみたいだね。行こう?』
『大丈夫だ、コッチはスタンガンが2丁も有る』
「宜しく、お願いします」
元カレ、パトカーから降りると、すっかり大人しくなってた。
そして書類にサインをし、離婚が成立。
そしてノアは再婚へ。
お騒がせしましたと、役所の人間にも謝っていた。
元カレは名刺に何かを書き入れると、正式に謝罪して来た。
もし何か有れば連絡をくれと。
そうしてパトカーへ、ノアの荷運びに警察も立ち会ってくれるらしい。
『例のスコアには変動無し、っつうかビビり過ぎだ。何ならプラスだろうよ、丸く収めたんだからな』
「いや、少し歪やろ」
『魔法だったら一時的、そうお前が覚悟すべきだろ』
「あぁ、そうね、そう願っとく」
『にしても、アレにもガンガンに利いてたな、ヤベぇぞアイツ』
「絶対に無理」
『モテるって本当に大変だなぁ、頑張れ。でも偶には遊びに来いよ』
「おう」
挨拶とは言え、怠惰さんからほっぺに頂いた。
そのせいか、すっごい視線が刺さる。
『シオン』
「労いだよ、懲りずに遊びに来てくれって」
『なら良いんだけど。そっか、連日はダメなんだもんね』
「環境が安定したら条件が変わるかもだし、ごめんね、愚直で」
『本当だよ、止められて凄く辛かったんだから』
「ごめんね」
『ううん、私も咄嗟にどうしたら良いか悩んだもの。ごめんね、ネイハムにも謝らないと』
「それはマジで大丈夫、ワシから説明する、こうだって良く知ってるし」
『もー、良く有るって事じゃない』
「ヤベ」
「あの、本当にありがとうございました」
「いえいえ、荷運びして、落ち着いたら。ルーネに連絡してよ、色々と話し合う必要も有るだろうし。やっぱりお付き合いは無しってのも、ルーネ経由でお願い、ワシ繊細だから」
『別に私を経由しなくても良いのに』
「あの、先ずはお話し合いを、ルーネさんともしたいので」
『良いのシオン?ノアを取っちゃうかもよ?』
「それは許す、映像に残しといて」
「えっ」
「半ば冗談」
『半分本気って事ね』
「見た目が良いは正義」
「ウチの奥さんと合いそうなのに、ダメなんですね」
「向いてる方向が同じだから無理かも。こう、見る側だから」
「それでも、遠慮しないでくれって言ってましたよ?」
「ごめんだけど無い無い、はい、話は今度。行っておいで」
「はい、ありがとうございました」
ノアのハグは良いらしい。
そしてルーネともお別れ。
『離したく無い』
「指輪とプロポーズの準備しないとだし、そう思っといて」
『うん。愛してる』
「うん、じゃあね」
お夕飯の終わった直後に、紫苑さんが怪我をして帰って来た。
「あの、どう言う」
「大した事じゃ無いんだが、治して温泉行ってから話しても良い?」
「はい」
そのまま浮島まで付いて行き、温泉の前へ。
「1人増えるかも、既婚者、奥さんから恋人としては良いって許可は得た」
《既婚者が既婚者になったんじゃが、まぁ仲裁の手段にボコボコにされたんじゃよな》
『元は病院で会った所からだろう』
ルーネさんと結婚して、秒で魔道具を取り付けに病院へ。
そこで妹のインジさんの元カレと、今にも泣き出しそうなノアさんに出会い、先程解決した、と。
「怠惰さんにニヤニヤされまくったわ」
「それであの、ノアさんとは」
《濃厚なお話し合いの後に、不貞ではとな、じゃから無い無いになったんじゃよ》
『今回は魔法を解く為だったんだ、丸く収めたんだ、0だと』
「ついカッとなって魔法を請うた、灯台と魔法に意識を持って行かれ過ぎた」
「解かないと、その元夫さんはどうなるんですか?」
《もう今は、シオンの事ばかりじゃよ、くふふふ。シオンを思い、抜ぐふ》
「マジかよ、ウゲだわ」
「あの、魔法を掛けて、解かなかったら、こう丸く収まらなかったのでは?」
《ぷはっ、じゃの!執着はノアに集中し、シオンに手を上げる事も無く、離婚の成立もいつになったか、じゃろうな》
『それでも自分を許せんらしい』
「おう」
「紫苑さん、僕と一緒に悪い事をしましょう。上書きして、消して、無かった事にしましょう」
「ショナには綺麗なままで居て欲しいんじゃけどー」
《じゃのー》
『のぼせるなよ』
一軒家へ戻ると、先生が来ていて既に説明がなされていた。
そして何の悪い事をしようかとなり、その話は止めて解散させ、やっと夕飯へ。
ショナ手作りホウレン草カレー、海老入り焼売、タラのフライ、キノコのポタージュ。
それとレモンのクリームチーズケーキまで作ったらしい。
「お昼は?」
「胡麻ダレの冷やし中華と餃子ですけど、食べますか?」
麺は既製品だが、どれも手作り。
「フラストレーションが料理に出る?」
「あ、いえ、はい、かもです」
「ごめんね」
「その、前は平気だったんですけど、すみません、重いですよね」
「いや、辛く無いなら可愛いし、分かり易くて良いなと思う」
「あー、マティアスさんとかにはバレてるかもですよね、どうしよう、恥ずかしい」
「可愛いねぇ」
「もしかして、ワザとですか?」
「あ、忘れてたわ」
「もー」
「墓穴を掘って可愛いねぇ」
泉にご相談しようかと近寄ると、鏡が飛び出て来た。
ロキと共に。
『来ちゃった☆』
「返して来なさい」
『えー、ちゃんと貰ったモノだもん』
「ちょっと神様達」
【おう、お仕置き用だ】
【まぁ、誰のとは言わないがな】
【遠見用の失敗作だ、受け取らないと、ソイツに悪用されるぞ】
「分かった、頂きます」
酒や珍味セットを出すと、無言でキノコ神が出て来て、適正量なのか酒を数本持って泉へ沈んだ。
『さ、試さないとね』
「いや、今日はショナと」
『まだ、きっと明日の方が楽しいよ』
悪神による悪魔の様な囁き。
「待ってて」
花子なのに、花子だからか。
真っ赤になってコッチを見ているショナを、虐めたくなってしまった。
「あの鏡って」
「うん、じゃあもう少し我慢しようか、明日まで」
「あの、何か気に障りましたか?」
「我慢が愛情表現になるのはマジらしい、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」




