6月8日 お勉強と沖縄の家と。
何かもう、生理が終わりそう。
心配になったので先生の家へ。
《一応、病院で血液検査をされますか?》
「おう」
異常無し。
《軽い方は、その位だそうですよ》
痛みも量も日数も、何もかもが異次元の楽さ。
こうなって初めて、あの過去の状態はマジで病気だったのねと、改めて認識する感じ。
新鮮。
「前フリの方が憂鬱だったわ」
《それでも激しい運動等は控えて下さいね》
「うっす」
そしてショナとエナさんに予定の確認。
平日が休日で、土日が公務日なのは確定らしい。
『良い?』
「おう」
『でも今日はお勉強の日だから、公務日』
「おう」
私生活にも関わる事。
未成年者保護特別措置法。
16才の未成年者でも婚約が出来る法律。
ココでの未成年とは18才までを指す、民法で未成年者は法律行為、契約等が出来無い。
そして飲酒と喫煙は20才から、2年おきの大人の階段。
だが特別措置法では16才から、正常な後見人の存在が2人、相手と未成年者の信用スコアが規定数を上回っていれば、婚約が可能。
嘗ては転生者用の法律だったそうで、古くから有る法律なんだとか。
法律が恋愛のスパイスを担うのを避ける為の、緊急避難的法案だったらしい。
悲恋、不倫、浮気、既婚者や未成年者と恋愛する刺激の閾値を高め、悪い事だと知らしめる為の法律。
『子供はある程度の年齢になると、自分はもう大人だって思う。でも本当の大人は、まだまだ自分は子供だって思う。そして自分はまだまだ子供だと思うのがココでは正しい未成年者の精神で、もう大人だろは危ないサインになる』
子供扱いしない大人や誰かが近くに居るサイン。
コンドームは原則公共のトイレで無料配布されてるけど、未成年者同士でも非公認の性行為は御法度、コンドームの避妊率が100%じゃ無いから。
ピルも有るけど医療用だし、不特定の人間と性的な接触で特定の病気を発症すれば、隠れた信用スコアが下がる。
道徳スコア。
コレは神々の領分だったらしく、道徳スコアが低いと妊娠の確率が下がる、ココではヨモっちゃんとイザナギさんだけが担っているらしい。
「ご負担が」
『寧ろ互いへの愛情表現だから問題無いよ』
「あぁ」
そう、根本が違う。
それは転生者や周りに悲劇が沢山起きたからでも有る。
未成年者は被害者にもなるが、相手を加害者にも出来る。
信用スコアにより、訴えても相手の方が被害者認定される事すら有る。
冤罪事件を切っ掛けに転生して来た人が、魔王だ何だと一切無視し、法案を作り上げた。
それにヨモっちゃんとイザナギさんが同調し、完璧なモノとなったと。
『体質的な不妊は、加護で補ってるって。イザナギが』
「イザナギさんの加護過ごそう」
『良いお医者に当たるだけ』
「いやそれ凄い重要ぞ」
『で、ココからが君には更に重要』
では、どう信用スコアを計算するのか。
その2つとして、訴えている精神年齢と鑑定年齢の差異。
リズちゃんの場合だと20才は超えてると訴えた、そして鑑定結果は20才以上と出た。
だからこそ魔道具を使用しての色欲さんのお店の利用が可能だった、そして避妊率100%で事を終え、絆される事も無く無事に帰って来た。
ココで初めて仮免許に合格し、以降も魔道具の仕様が可能となったと。
ではスーちゃんは、元魔王は?白雨は?
先ずは本人が申請する事から始まる。
「いや、スーちゃんの個人情報は」
『許可は得てる、申請はして無い。後2年は我慢出来る、寧ろ馴染む為にも我慢すべきだって。でもそれが逆に信用と道徳のスコアに加算される、我慢が美徳は、こう言う部分に有る、自制心と自分の立場の認識力が評価される』
「桜木さんも評価されてるんですよ、蜜仍君にも。信用スコアの低かったアレクにも手を出さなかったので、全員に恩恵が有ったんです」
『で、古い法律だって言ったよね、魔道具は存在してた。ただ、未成年者の転生者とは接触出来無い矛盾が有った』
召喚者が神々と接触しなければ、転生者に成長する魔道具の情報は入らない。
でも定期的に来ていた時期の法律、こう長年来なくなる事は想定外、特別措置法が再び未完成な状態になっていた。
だが神々の介入が決まり、法律も改定されたと。
「待った、道徳スコアを上げる方法は?」
『万が一、同じ状況になった場合に拒否して、段階を踏めば緩和されるけど、普通に生きてきた人と一緒は無理。だって、意図してその環境になるだけで下がるし、試すと未成年者のスコアを下げる事にもなるから』
「それだと救済措置が」
『それは昔から信心、後悔と改心と、だけど性癖も絡むから難しい。それと、よっぽどじゃ無いと完全な不妊じゃ無いから、現代医療で何とかなる。ただ、加護が無いから時間は掛かるし、金額は跳ね上がる』
「こう、養子を」
『被害者が居たら、被害者が救済され無いと違う道徳スコアが上がるだけ。だから救済措置は被害者を一生愛する事だけど、相手はもう目覚めてるから無理ってなっちゃう事が殆ど。子供を作るって事にもなると、殆どが拒絶する』
「救済が、現代医療のみか」
『だって人生を台無しにするかもなんだよ?女の子なんかは出産で死ぬかもなんだよ?』
「桜木さん、そうさせない為の教育はなされてます。それでもと手を出した時点で、殺人未遂なんですよ」
「そこまで」
『だから、性差でスコアや刑罰は変わる。だって、男の子は妊娠出産で死ぬ可能性が無いもの』
「女講師と男子生徒等での無罪判決も出てはいますが、道徳スコアから不妊、高額な医療費で過重労働、離婚。勿論、無事にお子さんが生まれて育っているご家庭も存在しますが」
『親の因果が子に報い。子供には親の過去を知る義務が発生する、そして自分はロリコンの血筋だ、ショタコンかもって、自殺した子も居る。その子にはそんな気配も無かったのに、引き籠もって自殺した』
「法を犯した時点で、知らせる義務が発生すると告知され、執行官の前で子供に告知する事になります」
「お兄さん、知ってるんじゃろう」
「はい。だからこそ、今回の急な結婚式にも賛成したんだそうです。兄さんが結婚した時も、責任が取り放題だって。成人していれば自由恋愛なんですが、僕は、この話をしないとって思って」
『止めた。色々有ったし、ハナは順番が逆の方が良いってなって決行した』
「まぁ色々とゴッチャに悩む可能性は非常に高かった」
「ココでは本当に当たり前で、本来は悩まない案件なんですが、桜木さんの場合が場合なので。創作物ですら、未成年に唆す内容は御法度なんです。清い恋愛以外は注意書きが入って、殆どが悲劇で終わるんですが」
「ワシ、その創作物に手を出さなかったから、コッチから問う間も無かった。かと言って勧めるのも違うしと、それなりに忙しいから何時になるかも分らんものな」
『うん。それと、美化させて洗脳や誘導に使われたく無いって、コレも転生者が作った法律。でも実際に本は既に有ったから、注意書きと成人指定で発行される事になった。現実と創作物は違うって、成人なら当たり前に区別が付く』
「ただ、現実だったらなと想像するのとは違いますからね、ご心配無く」
『それで、この話をした理由ね』
アレクが基準をクリアしたらしい。
正式なハーレムの候補者に、そしてエナさんも。
「我慢は大変でしょうに」
『コレは身体が有ったから分った大事な事、この年齢の身体を最初に作った以上は人間の法に沿う。でも、想定外だった、凄く、触りたい』
「だから旅行?」
『最初からハナは好きだったけど、主に身体の経験の獲得と、旅行目的だった。でも身体を得たら、好きの方が大きくなった、だから人が法を犯すのも分かった、でもだから私は我慢する。知ってるからこそ超法規的措置は受け入れ無い、ハナへ好意を伝える手段にした、好きだから我慢する』
「あぁ、そう言われると手を出したくなるのは異常かね」
「いえ、僕も桜木さんに言われたらそう思います」
『手を出すか出さないか、誘惑するモノが近い程、辛い、苦しい。でもハナには呪いが有ったから、どうしようって思った。それで、手を出さない事が愛情表現になるなら、2年の我慢で伝わるなら、我慢したら、分かって貰えるかなって』
「もう、殆ど解けてるからか、強い意志の力か」
『好き?』
「睦言限定」
『だよね、蜜仍にもそう言って我慢させてくれた、でも超法規的措置が取れる私がハーレムに加わったら、蜜仍や他の者のストレスになる』
「えらい」
『だから、精神鑑定をクリアしたアレクを候補者に推す』
「それは健全か?」
『うん、父性と母性からだもん。アレクは良い子だから、心配要らないし』
「でも、ワシは他に目を向けて欲しいと思ってる」
『それは代償で支払わせた、もう既に他の者に誘惑させた。人相からも、占星術からも相性の良い者に、心理学的な効果も全て使って、引き合わせまくった。でも、全然ダメだった、ハナの負担を減らす為にって本人も頑張ったけど、ダメだった。人知にはどうしようも無い位、惚れてるって認定された』
「本当、何が良いのかね」
『それは本人から聞いて』
「時間くれない?少し」
『うん。説得されたんじゃ無くて、納得して欲しいから、時間はあげる』
「どうも」
桜木さんは、こう言う時に情報を押し込むタイプ。
どれだけの悲劇が起きたのか、創作物とされているモノから情報を収集。
教材より情報量が多い、事実以外にも当事者達の心情描写等が表現されてしまっているので、感情に影響が凄く有る。
今日は、マティアスさんか、先生の家に行かせるべきだろうか。
鬱、向こうならガチ鬱作品とか言われる、鬱になりそうになる作品。
「工芸茶を淹れませんか?」
「お願いします」
『何か質問は?』
「コレ知らないのは、ワシだけか」
『うん、だから躊躇ってるのかなって議論も有った。マティアスもコンスタンティンも知ってる、だからハナの選択に任せる事に同意してた、リズも、スーも。だけど、知りたがるだろうって、だからタイミングを入れ替えた』
『まぁ、主に私の案です。正攻法だけが正解では無いので』
「まして、ハーレム形成は珍しい事ですから」
『大昔なら問題無かったけど、ココには法が有るし、現実だから』
「物語ならさぞ滑稽で、もどかしいだろうよ読者」
『でも、そうだからって自覚して、改善出来る?だって神にも難しいんだよ?性格や脳味噌を摩擦無しに変えるって』
『あくまでも神の視点で、ですからね。世界にさほど有益でも重要でも無い、対して関心も無い人間に対して、我々は力を注ぐ事が出来無い、無関心と好意に大きな隔たりが有るんです。それに、私ならシェヘラザードに怒られますからね、人から自然発生する素晴らしい物語に、なんて事をしてくれるのか、と』
「もし読者が存在し、もどかしいと思われるなら、僕もですよ。僕も、凄く悩みましたから」
「こう、ドンと覚悟して受け入れようとは思ってたんだけど、すまん、子供の事がね、どうしても」
「だから、より好きなんだと思います」
『私も、出来てから悩まれるより良いもの』
『もどかしさや不完全なモノがお嫌いな方には、ちゃんと受け入れ先が有りますから大丈夫ですよ』
「神様に見られてると昔から思ってて、怖かったけど、今度は読者か」
『その考えは程々でお願いします、面白くはならなそうなので』
『後代の恥にならない程度で良いでしょ?』
「ですね。法を犯したり道徳から外れなければ、自由は自由ですから」
でもだ、見られてる、罰則を与えられるって概念は有るべきだろうし。
問題は、どれ位、か。
「ちょっと先生の所に行って来る」
「はい」
そして先生からは、明らかにグレーゾーンの時だけ悩めと言われた。
その線引もしっかりしてるから、悩んだら相談しろと。
《なので、今回は正解です。何かご褒美は如何ですか》
「褒美、ネムちゃんなら何を褒美とする」
《先ずは白衣を脱ぐ許可ですかね》
「着たまま何かしろ」
《その場合は白衣の種類を変えさせて欲しいですね》
「あぁ、それは良い案だ」
《コレとかどうでしょう》
「看護師さんか、ネムちゃんだとエロさ倍増やんな」
《祥那君》
「あぁ、エロさと緊張で拮抗しそう」
《法規が強過ぎると、反動でこうなるそうですよ》
「自由万歳」
《架空の学生服も存在しますよ》
「あぁ、それはショナの方がエロいかも」
《既存の制服は持ち主限定なら、道徳には引っ掛からないそうです》
「悪魔の囁き」
《精神的な幼さを求めているワケでは無いなら、極一般的な欲求。全てを愛したい、もっと早くからと願うのは、時代も超えて共通する欲望ですから》
「幼さと純粋さと一途さの境界線は?」
《一生面倒を見るかどうか、そこを考えれば未成年者へ手を出す事は躊躇える筈で。それを超えたいかどうか、業を背負い、背負わせたいか》
「手を出さなかったら良いって、怖く無いのかね」
《思う事に規制を掛けたら独裁国家になります。あ、一応存在してますが、見学されますか?》
「軽く中身を聞かせて欲しい」
無色国家と無法国家の存在する島の近くに、魔道具により心の声が聞こえ合う島が有るらしい。
違法行為が殆ど存在しない島、浮気も嘘も無い、罰則や刑罰も性差も無い島。
島民はちゃんと他国を理解し、他国民へは身体へ害を成す行為は一切しない。
未成年者は立ち入り禁止、国によっては成人してても立ち入り禁止としている国も有る。
でも、訪れる旅行者は後を絶たない。
そして再来訪する者はほぼ居ない。
《私も行くか迷いましたが、行く事で好奇の目に晒される事にもなるので止めました》
「気になるな、其々がどう成立してるのか」
《単純ですよ。向こうは広大な土地を利用し、グループ分けをしながら住む、グループ内の法規は様々。共通するのは、他国民へ身体的害をなさない、グループの法規を理解し接触する、だけです》
「直ぐに壊滅しそうだが」
《子種は常に外来からも供給されますし、教育水準は他国と同等。医療も最先端、未成年者でも他国へ移籍可能ですが、その島の場合は出戻りも多いので》
「心の声が聞こえないと、不安か」
《言語だけのコミュニケーションに不安が出て、成人し、戻る事が多いそうです》
「他はどうなの」
《無法国家内は、他のグループに滅ぼされる事が良く有るそうで、その余波で危うくなる事も有るとか。何せ、法律は存在してませんから》
「戻るか、不安だけって可哀想では」
《遮断出来る領域も有るので、遮断の訓練も可能です。それでも向こうにしてみたら、コチラが可哀想なんだそうですよ。こんなにも分かり合えて、愛し合えるのに、と》
「正にヒルコの世界。コレも召喚者には秘匿案件か」
《ですね、少なくとも他国や他国の人間に実害は無いので》
「行って心の傷を負った場合は?」
《行く前に誓約書を書かせ、以降のトラウマ治療は特別医療費として区分けされ、毎年発表される国の医療費の金額に、自責の念を抱いて貰う程度です》
「自責の念を抱かないのは、治療しない、か」
《はい》
「ワシ行けるの?国のバランス崩れがるかもだよ」
《法で禁じられてませんので、法的な問題は無いかと》
「でも好きで居るから、何かの介入をすれば、果ては個人や集団への迫害にもなりそう」
《はい。仮に君が行き、某かの仲裁に入ると、どうなると思いますか?》
「見下げられてそうだから、余計な事をしたなと揉めそう。揉めなくても、一時的な介入しか出来無いんだし、一時的な救済にしかならなそう」
《はい、ただ君は灯台なので。何か良い影響は与える可能性も有るかと》
「1人救っても解決しない、そも解決とは何か。聞こえるのが常識となってる、聞こえない世界も存在してると知ってる、聞こえない領域も存在して、出る自由も有る。殺しても殺されても良い世界、倫理観が揺さぶられるなコレ」
《そして、愚者の新婚旅行先でも有ります》
「わぉ、試練の島か」
《はい、通名的には。そしてココでは一纏めにオセアニアと呼ばれています》
「オセアニアじゃあ常識なんだよ、ってか」
《ですね、ビックリしましたよ、不燃ゴミが吹き出す位に。多次元者の方の影響力は大きいので、監視対象になりました》
「何て事に」
《大丈夫です、人間では無く、神々と精霊ですので》
「本人達には絶対に知らせない様に、一切の影響は許さない」
《同じ立場の君が、そう心配するのは面白いですね。もしかしたら、向こうもそう思っているかも知れませんね》
「ややこしい、ギブアップ」
《行かないんですか?私は別れない自信が有りますよ》
「神々よ、行く意味は有るのかね」
《くふふふ、ネイハムは重要な事を隠しておる》
『聞かせない魔道具が存在している、行って全てが不幸に終わるワケでも無い』
《平和なグループを回れば平和じゃよ》
『ただ、危ないグループを回れば、それだけ目の毒も増える』
《因みに正当防衛も存在しませんし、どんな理由でも現地民を殺せば、自国の刑罰が下ります》
「娶るとかの概念は、有っても意味無いのか」
《ですが、王子様を求める方が居るかも知れない》
「アレクの事は一旦脇に置けたが、結構躊躇う内容だぞ」
《一緒に行き、私に沢山心の声を聞かせるか、別れるか、と。最近の逆プロポーズの流行りだそうです》
「エグっ」
《何せ未だに平和ボケしてますので。君が一般人だったなら、今の感想が聞けたなら、きっと直ぐにプロポーズしてますよ》
「急に、ネムちゃんはいつになるんだ?」
《オセアニアでならお教えしますよ》
「未来世紀ブラジル」
《夢オチにはシバッカルかと》
『区別が付いてこそじゃよ、現実は現実、夢は夢。ドリームランドでは無意識とは言えドリームランドと認識しているじゃろ』
《ドリームランド、夢、現実。言えないキーワードが存在するかと》
「あぁ、確かに。ココ、とか向こうって言うしな」
『現実でしか現実と言えぬ呪いなんじゃよ』
「良い呪い、良い安全装置だと思う、言霊を信じてるし」
《ワンコが来るのが楽しみですね》
「まだ行く方が良いわ」
『身体はどうするんじゃ?』
《義体の案は有ったんですし、ホムンクルスも既に可能かも知れませんね》
「知恵熱が出そう」
《ココでは面倒は看ませんよ、絶対に手を出してしまうので》
「白衣でもか」
《はい、場合によっては人目も必要ですから》
「家を見に行く。何かリクエストは?」
《女体の私の為にも、最高峰の防音部屋を1つは欲しいですね》
「エロいな、行ってくるわ」
《はい、行ってらっしゃいませ》
桜木さんが帰って来ると、今度は楠さんとして、沖縄へ。
模型やイメージ図を見つつ、最終確認。
出来上がるのは年内とざっくり、材料の運搬に海上を使うので、コレからの雨季や台風でかなり伸びる場合も有るからだと。
「安全第一で。何かコチラで手伝える事は、ダメか」
「ですね」
模型を持って現地へ。
僕も工務店の方にも見えない誰かと、楠さんが話を始めてしまった。
そしてしゃがみ込み、お酒とお菓子の詰め合わせを地面に置くと、それが消えた。
《あの子、ユタか祝女の系譜か》
『ショナ坊、肯定した方が良さそうだ』
「みたいなんですが、内緒でお願いします」
《あー、やっぱりー。でも無理だよー、御嶽でも無いのにココも彼女も神人と関わりが有ると知ってしまったんだもの。この物件の事は祝女さんの助言を貰わないと、私達も凄く困るのよ》
『兄弟が居ると言え』
「兄弟が、居る場合は」
《なんだよー、お兄さん知ってるんじゃ無い、そうかー。ヲナリ様かぁ、キット両方の町が繁盛しちゃうねぇ》
「あの、津井儺君、移民さんの保養地に使えるかの確認は」
「申請書には記載してますが」
《良いよ良いよー、兄妹の概念が似てるし、馴染んでくれると嬉しいさ》
「え、似てるんですか?」
《あぁ、知らないのかー、ちょっと戻って話そうねぇ》
事務所へ戻る車中、ココの事を工務店の方に教えて貰う事になった。
全く、向こうでも調べて無かった沖縄の神様の事。
霊的な物事から、血縁者の女が守るのがヲナリ神なんだと、姉妹をそう大事にするんだそうで、ザックリ言うとワシが当て嵌まるんだと。
クエビコさんがショナに相槌や返事をさせ、そう認定されてしまったらしい。
本来は島民限定だが、まぁ、どっかで血が入ったんだろうと。
血を調べずに、そう認めるのがココなのだと。
事務所へ着くと、奥の応接室へ。
「でも、何でまた」
《だって私達に見えない誰かと話して、お土産も消えてるの見ちゃったものー、無理だよー、ソレを無視するの》
嵌められた。
近所の人かとばかり。
「近所の人かと」
《あははは、どんなんだったの》
「お婆さんと、女の子。幽霊では?」
《悪戯するのは居てもバレ無い様に、お菓子を少しだよー、お酒は大事だもの、下のは手を出せないさ》
「あの、自分にはそんな」
《昔は儀式も有ったけど、そうか、儀式をこなして》
事務所の電話が鳴り、話してくれていた専務さんが電話を取った。
真っ青になって何かを話すと、切って真っ直ぐコチラに向かって来た。
「あの」
《余計な事は言うなって、ウチのユタさんに言われちゃった。どこも親族に居るんだよー、相談役みたいな人。神様の事は神様がアナタに教えるから、お前は人間の事に集中しろって》
「あぁ、はい」
《うん、家の事を話そうねー》
僕が調べるに、本当に桜木さんに当て嵌まる。
巫女の色彩を有する。
コレは神託や夢見の素質、そして巫病とも取れる虚弱体質。
夢で男の血縁者を助ける。
夢でと言うか、アレクや白雨さんを助けて、縁者になった。
そして最後。
血縁者を守る際、木綿手拭いや芭蕉布、自らの髪の毛を護符として与え、白鳥や蝶に化して血縁者を守る。
全てが完全合致とは言わないが、ほぼ当て嵌まる。
「ふぅ、トイレ」
「はい」
《お兄さん、あの子どの位当て嵌まってる?》
『そのまま言って問題無い、ココのユタとは既に話した』
「ほぼ、です」
《そっかそっか、ココらの女は全部ユタさんかノロさんだと思って、男は大事に接してるんだよ。そしてヲナリ様は更に別にでね、そう居ないんだ、繊細だろう。だから昔は自分では言わなかったんだ、今もね、大変だからね》
「どうか他言は」
《しないしない、ウチのユタさん以外にまで怒られたく無いもの。ウチのユタさん以外には言いません、大丈夫》
嘘は無し、良い人で良かった。
悪人ならどうにかして黙らせないと、桜木さんの為にならないし。
何か場の空気が変だが、取り敢えずはソファーへ。
ちょっと奇異な行動をしても、ココでは召喚者と思われないのは良かった。
「よし、もう良いかな」
《手伝わせぬとキノコを生やす、じゃと》
「キノコは許さん、何でよ」
《遊びに行ける領地が増えるじゃろ、我もさっさと植わりたい》
「いくらさっきのお婆さんが」
《ええい、もう良い。手伝わせぬとキノコを生やすと申しておるんじゃが?ワシもココへ何か生やしてしまおうか》
《美人なキジムナーさんだ、有り難いねぇ》
「本当に、慣れてらっしゃるんですね」
《お土産が消えたのは初めて見たけどねー、居ると思えば居るし、居ないと思えば見えない、居ないになる。でも居た方が良いと思ってるからねぇ、有り難い、お手伝い頂けますか》
《コレは頑固じゃて、うぬのユタに言うでな、ほれ》
再び応接室の電話が鳴ると、マジでユタさんからの電話だったらしい。
また何事かやり取りし、電話を切った。
《体調がそう良く無いなら言って下さいよー、怒られちゃいましたよー、大事なお体なんですからお大事に、長居させました》
「いえ」
「帰りましょう」
《そうせぬと家にキノコを生やして竹で裂くぞぃ》
「うい」
桜木さんはすっかり気温差でやられてしまった。
目眩、交感神経が気温差で影響されてしまったらしい。
『もー、スクナ、なんとかして?』
『浮島にサイラが今居るから、温泉で掛け湯して貰って』
「へい」
超久し振り、あだ名製造機ことサイラさんに掛け湯療法をして貰い、涼む。
「順応について、どうお考えでしょうか」
「柔らかめ」
「もう少し」
「反応は良い方」
「時に繊細とも言うかと」
「繊細だから順応出来てる?でもタケちゃんは」
「柔らかいかと、そしてエミールさんも。繊細な作業とは、悪い事でしょうか」
「いや、だけども」
「きめ細やかな気配り、繊細で柔らかな仕上がり、どれも褒め言葉ですよ」
「サイラさんまで」
「ただの感想ですので、気に入らなければ耳を傾けなくても良いですよ」
「傾けろ言われた」
「じゃあ傾けませんとね、傾斜角は少しでも良いんですから」
「うい」
桜木さんが眠ってしまったと聞くと、誰とも無しに泉へ。
マティアスさんは陽当りの良い場所へ、エナさんは左側、コンスタンティンは右側へ。
なので僕は頭上へ。
浮島の木陰で寝てたら、囲まれてた。
陽当りの良い場所にはマティアスが、まだ寝てる。
「おはようございます桜木さん」
「すっかりお昼寝が習慣に、良いのか?」
「効率が上がるって研究結果は出てますから大丈夫ですよ」
「知恵熱、意外と出ないものね」
『違う、今回は知恵熱じゃ無いだけ』
『だって、だから今日はお勉強禁止ー』
「うぇーい」
他人に切り替えて貰い、ゲーム。
農園ゲーム。
収穫は勿論、無人販売所を建てたり、果物狩りに観光で来て貰う為に何かを誘致をしたり。
恋愛要素もそこそこ、どの性別を選んでも結婚して子供が生まれる、そして代々農家していくゲーム。
軌道に乗ったら川魚の養殖とかもDLCを買えば出来る様になる、染め物も温泉も、無限に出来そう。
「ただいまー」
「おう、遅かったね」
「告白されたので、良く話し合って断ってきました、お風呂入ってきますねー」
荷物を置いて泉へ。
わぉ。
そして温泉から帰って来た所で、詳しく話したいと皆を呼び集めた。
「モテるのに」
「モテるからって僕が他に行く様に見えちゃってますか?」
「いや」
「詳しく聞きたく無いですか?」
「いや」
「じゃあご説明しますねー」
蜜仍君曰く、記憶継承はもうどうしようも無いとしても、凄く幼く感じる、想像力が足りなくて物足りない、つまらない。
戦車や飛行機に興味無し、料理はそこそこだけどレシピ通りで応用が苦手。
服やお洒落が好きで、趣味が合わない。
「もう、最後の雑やんな」
突っ込んだのが間違いだった。
伝統工芸品や和装に興味無いのがつまらない、ファッションは無難でつまらない。
もう、全てがつまらなく見えると。
「桜木様は僕の理想の人なんです。何にでも興味を示してくれるし、否定も拒否もしないし」
「虫は拒否よ」
「逆にそれ位じゃ無いですか、釣りも戦車も着物もって、凄いんですよ?」
「財力と器用貧乏故に」
「それにしたってですよ?デザイナーさんにデザインを提供してるんですし」
《私にも書けって促してくれたから、ココでも自立出来るんだし》
『知識の外商だね』
「そう考えると、桜木さんは長生きさせる良いリャナンシーみたいですね」
畳み掛けられ、ちょっと最後で納得しかけた。
精を奪ってるし、ルーネとマティアスには知識を分けたし。
「ただなぁ、見た目がなぁ」
「だからリャナンシーじゃ無いんですよー、良かったですね」
「ですね、それだと本当に危ないかと」
《それも書こうか、もし本当にリャナンシーだったらって》
『凄い犠牲者数になりそう』
『色んな意味でな』
《あの、実際はどうなんでしょう?》
「確かに」
『行くなら後日ね』
《今日の夕飯はコテージパイとかにしようよ》
《それとフィッシュ&チップスですね》
「シードル有りますよ」
「おう」
「準備しましょー」
桜木さんにこれだけ話を変えても、興味を逸らしても、思考や意志は曲げられない。
どうしても、アレクの事を考えてしまうらしい。
「どうしてと思ってしまうと、どうにかしないとが付いてくる」
「今更僕に遠慮してます?」
「本当に裁定者は良いなと思ったので」
「その件は忘れて貰うのは無理でしょうか?」
「おう」
「僕が情報を精査して、許しても大丈夫だと言ったら、黙ってハーレムに追加しますか?」
「話し合うしか納得出来ないなら、噛ませる必要は無いよな」
「もう知ってますし、映像でも確認しましたよ」
「酷では?」
「いえ、僕は大丈夫でしたよ。それに、文章だけでは分からない部分が重要でも有りますし、僕も確認しないとダメな質なので」
「難儀な性格ですな」
「ですね。真面目な所も好きですよ」
「誘い水あぶねぇ、オウム返ししかけたわ」
「そう言う所も好きですよ」
「言い返したらどうなる」
「先生に相談します」
「相談はするのね」
「大事なお体なので」




