6月5日 防府って何処だか分かる?
先生の家に行き、そのまま話したり、寝たり起きたり。
そこで、新たに発見された、灯台効果が弱まる方法を教えて貰った。
傷付いたり動揺したり、過度な緊張等で、灯台の効果は弱まるらしい。
《なので、魔王化候補も間違いだったと正式に認められました。目の前で祥那君に誰かがキスでもすれば、イチコロなので》
「誰と」
《私と》
「あぁ、色んな意味で無理だ。でも、何で急に?」
《マティアスからの情報が役に立ちました、第2世界のジョンやノエル、治療行脚で周囲に影響が無かった事。灯台の効果らしきモノが確認出来たのが、君が安定している時だけと限定的なので承認されました》
「マティアスを信頼してるのね」
《ギアスも使用して尚、心配するのは君位ですよ》
「ビビりだもんでね」
《良かったですね、ノエルに影響が無くて》
「アレまで来たらパワーバランスが崩れるわ、ワシ従うだけの人形になるでよ」
《ご自分を見誤り過ぎですよ、却って反骨精神で聞いて頂けなくなるかと》
「あぁ、そうかも」
《ですので、今日もかこつけて、念入りに》
桜木さんは朝食の時間に戻って来た。
そして蜜仍君を見送って直ぐ、エナさんから提案が。
僕と桜木さんと白雨さんで、山口県の防府へと一緒に行こうと。
マティアスさんとコンスタンティンはお留守番、でも確か、6日には。
『鱧、紫陽花』
「あぁ、旅行も消費の1つか」
「ですね」
『部屋、今取った』
「あら、行かないとだけど。何で行く?」
『帝都から新幹線、のぞみ』
「おぉ、分かってらっしゃる」
今は飛行機と同じ金額だが、移動時間は長い。
でも、それが良い。
先ずは品川駅まで空間移動、駅をウロウロし、駅弁やお菓子を買って新幹線へ。
吸えないのは残念だが、ほんの5時間。
景色を見たり、お菓子を回して食べながら観光雑誌をタブレットで読んだりで。
もう、一瞬ですよ。
『はぁ、もう着いっちゃった』
「ですな」
在来線に乗り、湯田温泉駅へ着いたのは13時を過ぎた頃。
『覚えてはるかしら』
「勿論ですよ、白百合さん」
紫陽花柄の白い紗の付け下げ、帯や小物が白や青や紫でお上品。
だけど素足に下駄なのが、ちょっとエロい。
『観光案内所までだよ、甘やかさないで』
『はいはい、承知してはるよ』
白百合さんは美人で貫禄が有る、片やエナさんが子供っぽ過ぎて、祖母と孫に見えてしまう。
そうして少し歩いて観光案内所へ。
先ずはお猪口を買って飲泉、それから地元の観光冊子を貰い、足湯で眺める。
『さっきのお店、気になってたでしょ』
「和菓子作りは体験したかった」
「それはお仕事でも良いですか?」
「それはお得過ぎない?」
『ふふふ、働きたがりは本当やねぇ』
『困るんだー』
「困ってそうに見えない、無表情やんな本当」
『だって慣れて無いんだもん、白雨もじゃない』
『敢えて』
「敢えてだったんですね」
『笑顔はハナ以外に見せない』
「いや、仲間内はええじゃろ」
『外は嫌』
「大丈夫ですよ、家では偶に見ますから」
「そう?」
『仲がエエねぇ』
『うん』
そうして白百合さんは案内所までと言いつつ、オススメの観光スポットへ行こう、と。
足湯や展示品の有る会場へ向かう途中、ちょっと斜め前の呉服屋が気になってしまった事に、白百合さんに気付かれてしまった。
『エエ着物も浴衣も置いてはるのよ、ちょっとだけ、ね?』
「ぉおう」
店構えはお洒落な老舗の高級呉服店。
《あらお姉さん、頼まれたのは仕立て終わってはるよ》
絞りの浴衣、可愛いけども。
『この子にと思ってたんよ。有松絞り言うんよ、気に入らへん?』
「いや、見るのは好きだけど」
《まぁまぁ着てみたらエエよ、試着はタダやし》
『せやせや』
嵌められた。
だって、凄い好きな感じですもの。
見るのは。
紫陽花柄、淡い寒色系で薄紫色がほんのり、ほわほわしてて見るのは楽しいけども。
「可愛い過ぎる、モダンとか渋いが」
『まだ未成年に見える事を気にしてはるのよ』
《あら、オバちゃんも未成年や思ったわ、ごめんねぇ、なら帯はコッチやねぇ》
濃い無地に大柄の蝶、コレも好きだけども。
「好きだけども」
『他にも有るから大丈夫やで』
《はい、次はコッチやねぇ》
灰色に青い流水と花、それから濃紺が夜空みたいな八重咲のクレマチス。
白い帯が合わさって、可愛いけども。
「灰色のは買うけども」
《お兄ちゃん達、どれが似合うと思う?》
「全部ですね」
『うん』
『だな』
『ほな全部やね』
《まいど、お姉ちゃんは休憩しようねぇ》
従業員迄もが、何かの神様なのかと疑う程の連携プレー。
ちょっとお茶を貰ってトイレに行ったら、全部どころか帯も帯締めも、下駄も籠も買われていた。
『ほな、着て回ろうねぇ』
《直ぐ着付けてあげるから、ちょっと待っとってね》
「はい、ありがとうございます」
「ぅう」
桜木さんが夜空みたいな浴衣を着て外へ出ると、白百合さんは帰って行った。
「可愛過ぎないですし、似合いますよ」
「毎日ドッキリは勘弁して欲しいんだが」
『はいはい、折角だから紫陽花を先に見に行こう、ココ』
『良さそうだな』
阿弥陀寺へは空間移動で。
入山料を払い、桜木さんは長い石階段を下駄で何とか登り、本殿へご挨拶。
『休憩、かき氷食べよう』
「おう」
かき氷で少し休憩をしてから、ゆっくり回る事に。
小川や水車が有ったり、池には睡蓮が咲いている。
そしてかわらけ投げ、素焼きの小さなお皿を投げ、福輪に通れば願いが叶う。
そして輪を通れなくても、厄除けになる。
「惜しかったですね」
『とどかなかったー』
「ワシより運痴」
それからは紫陽花だけでは無く、半夏生や夏椿、菩薩樹、そして泰山木。
マグノリアと言われる香水の原料にもなる程の香りだそうで、柑橘系で甘い香り。
「どうですか?」
「微妙、蜂蜜みたい」
そして今度は本堂で御朱印を貰う事に。
内観すると冷茶を頂けるとの事なので、お茶を頂きながら襖絵を眺めたり、中庭を眺めたり。
そうしてオヤツ前に下山する事に。
「ゆっくりでお願いしますね」
「おう」
最前列には白雨さん、斜め横にエナさん。
転けても良い様にとの配置なのだが、無事に下まで辿り着いた。
そして紫陽花を1つ買い、ホテルへ。
エナさんと白雨の部屋は、広縁の有る一般的な和室。
そしてショナとの部屋は特別和洋室。
ツインと言う名のほぼダブルベッド、それと畳敷きの居間に広縁と温泉、2人で入れそうな青い陶器の浴槽が丸見え。
アメニティ入れと浴衣は緑色、帯は紺色で羽織はオレンジ。
それと籐の籠、コレにグッと来た。
『確かに珍しいかも、改めて調べてみる』
「おう、お仕事ご苦労様です」
ベージュ色のバスタオルや浴衣を持って、先ずは露天風呂へ。
アルカリ成分が強いので、長湯は注意ねとオバちゃんに声を掛けて貰い、いざ。
うん、もうホテルから出たく無い。
長湯するかと思ったけれど、桜木さんは比較的早くに出て来た。
「早かったですね」
「長湯はアカンよってオバちゃんが教えてくれたから、耳を傾けました」
『少し部屋で休憩しよ』
そして全員で和洋室へ。
「はぁ、もう出たく無いぃ」
『オヤツ良いの?行こうよぅ、パフェとかコーヒーゼリーとかぁ』
『限定の、ミントレアチーズケーキ、かき氷、18時まで』
「ズルっこするかぁ」
「ですね」
今度は紫陽花色の浴衣を着て、喫茶店へ。
ハイカラでお洒落なのに老舗だそうで、珈琲の良い匂いがするお店。
桜木さんはミントチーズケーキ、エナさんは抹茶かき氷、白雨さんはエナさんにきな粉パフェを注文させられ、僕はコーヒーゼリー。
「エナさん、半分こな、お腹壊すぞ」
『うん』
『ハナ、あーん』
予想気温が30℃を超えないとかき氷は出さないんだそうで、昨日ならギリギリ食べられない気温だった。
桜木さんに食べさせたり、其々の甘味を勝手に食べたり。
合間には其々に違う種類のホットコーヒーを飲み、外が少し涼しくなった頃、裏道へ。
最初に出来た天満宮、防府天満宮さんへ。
参道の脇道から向かい、天神餅を先に買い、また階段。
そして手水、お参り、御神籤。
素直になりなさい、人の言う事に耳を傾けなさい。
旅行、惜しむな。
惜しむなて。
「初めて見たわ」
そしてお守りは縁結びが3色有ったので、リズちゃん、スーちゃん、マキちゃんに。
「ご自分のは?」
「今充分だもの」
『私はコレ』
健康長寿の赤い梅守りを2つ。
「お、柏木さんに?」
『ハナに、はい』
「ココで良い笑顔をする」
『ふふふ、帯飾りに良いと思って』
「ありがとうございます」
そのまま裏手から湯田温泉へ引き返し、やっと最初に行こうとしていた観光施設へ。
白百合さんがお出迎え。
『お疲れ様、足湯もお酒も有るんやで』
「それは確かに後半戦用やね」
『いこー』
ショナは地ビール、エナさんは甘酒セット。
ワシと白雨は白百合さんが選んでくれた利き酒セット2種類、おつまみは甘じょっぱい大根の寒漬け、フグの骨せんべい。
「はぁ、アカン、ケツに根っこが生えた」
『植わるのはアカンねぇ、美味しいご飯が待ってはるよ』
『瓦そばとか』
『フグ』
「日本酒も有りますよ」
「アカンなぁ」
お猪口をチビチビしていたが、ショナのビールが飲み終わった頃、白百合さんとお別れしホテルへ。
身体に重さは無し。
そしてさっさと温泉に入り、一旦服に着替えてお夕飯へ。
懐石、ふぐ刺し、瓦そば、酒、全部有る。
「全部マジで有るやん」
「追加も出来ますから、お好きにどうぞ」
フグの土瓶蒸しから始まる懐石とは別に、刺盛り、日本酒全種類をグラスで、それと珍味の盛り合わせも。
白百合さん、ココの日本酒と被らない様にあの場で選んでくれたのね。
「コレは、堪らん。一口飲みなっせ」
「はい」
口は満足。
「足りないんだよなぁ、腹が」
「少し外へ出ると、ラーメンが有りますよ」
独りでラーメンを食べにホテルから出ると、洋服の白百合さん。
「奢りましょうか」
『おおきに』
もう無言で啜り、お代わりをし、握手で解散。
そして浮島で一服。
アカン、酔ってるしお腹いっぱいだし、眠い。
でも15分はアカン、歯磨きタイムも有るし、アカン。
桜木さんが帰って来ると、先ずは歯磨きを始めた。
目が半分にまで落ちている。
「お疲れ様です」
頷いてから洗面所へ、そして一通り終え、座椅子へ。
何とか眠気を堪え、曇り空の夜景を眺めている。
「体力って何だろな」
『気力、だからそう振り絞らないでね、今日はあくまでもリハビリだから』
「クッソたのしかった」
『うん、私も。白雨は?』
『俺も』
「僕もですよ、でも、他にも行きたい場所が有るのでは?」
「やっぱり酒造よなぁ」
『だね、皆大好きだし』
『ハナも、もっと飲めば良い』
「白雨さんは酔うとどうなるんでしょうね?」
「たしかに」
『大昔は直ぐに眠ったが。まだ、未体験』
『じゃあ追々、初体験だね』
「旅行はどうでした?」
『あ、エナに初めてを奪われたのか』
『コレは別に良いじゃーん』
「初めてじゃ無い方が良い場合も有るでな、色々よ」
「時間になりましたね、寝ても大丈夫ですよ」
「寝るのが惜しい」
「でも直ぐに起きちゃうんですよね?」
「あぁ、うん、ねる」
『おやすみハナ』
『おやすみ』
「おやすみなさい桜木さん」
日付けが変わる前に起きちゃった。
先ずはトイレ、歯磨き、水分補給。
すっかり素面で頭はスッキリ、けど怠さは有る。
ベッドでタブレットを弄っていると、ショナが起きてしまった。
「あ、すまん、眩しかったか」
「いえ、シバッカルさんに、今起きると一緒にお風呂に入れるだろうって」
「な、じゃあ入るか」
「はい」




