5月22日 先生と。
桜木花子が土蜘蛛族の長を食べてしまうまで、最短で後1日。
後続のフォローには祥那君とロキ神、そしてマティアス。
そう考えると、今夜は私の日だとなった。
これも偶然なのか、誰かに仕組まれているのか。
灯台の明かりが弱くなった。
「なんつー、スイッチかよ」
《今後も是非、精進しないといけませんね》
《じゃの!くふふふ》
《良かったじゃない、コレで安心してお出掛け出来るわね》
「それはそう!ありがとう」
《いえいえ。でも、念の為に》
《退散じゃな!》
《そうね、ふふ》
灯台やフェロモンだけでは無いと、本人の良さをたっぷりと言い聞かせ。
それから外出の準備にと、お風呂へ。
「すみませんな」
《お気になさらず》
もう朝ご飯は合わせないでも大丈夫だって蜜仍君は言ってくれたが、先生、全く遠慮しなかった。
やっと朝ご飯だけど、何か、食えない。
「先生、遠慮しないのな」
《蜜仍君の配慮は、遠慮するな、なので》
「でしょうけど」
《それで文句を言う子なら追い出せば良いんですよ》
「まぁ、だけども」
《食欲、無さそうですね》
「何か、急に止まる感じ」
《体重も増えてますから、怖くなりましたか?》
「いや、寧ろまだまだだなって感覚なんだが」
嘘は無し。
この魔道具の事も、長の事も、言えない事が多い。
こう罪悪感には慣れている事が、知られてしまうのが怖い。
マティアスも私も、誰もが拒絶を恐れている。
《でしたら、何を食べれるかを探ってみましょうか》
「おう」
拒食も過食嘔吐の気配も無し。
本当に自分の手首の細さに引いたらしく、呪いはかなり解け始めているけれど、まだ家族の呪いは残っている。
《飲み物も、変えてみては》
「おうよ、ジュースは好き」
《でも、そんなには飲んでませんでしたよね》
「アレじゃね、味覚過敏的なの」
《濃い味が多かったそうで》
「それよ、何でも薄めてた」
《それ、食べさせて貰えます?》
「あー」
優しい、別け隔て無く優しい。
誰もが自負する事、でも実際には分け隔てなく優しく出来る者は少ない。
まして神々や精霊ともなれば、平等になど振る舞える筈も無い。
悪神と呼ばれる神にも、性別を理由に精霊から悪態をつかれても、平等に接する。
《好きですよ》
「おぅ、観察してんのかと思ったわ」
《白衣を脱いでるんですが》
「だけど、待った、外出するのでは」
《その件には同意してませんが》
「あぁ、確かに」
誤解や欺瞞の解消に、市井にも延々と惚気られる自信は有るんですが、なんせ公には中身を言えない職業。
もどかしい気持ちが大きかったのですが。
《マティアスには本当に、助けられてますよ》
「すまんね、ありがとう」
《ならもう少し労って下さい》
「はい」
ラウラが帰って来たのは、蜜仍君が帰って来る直前。
しかも夕飯まで起きないし、蜜仍君のカレーを食べたら、また寝てしまうし。
疲れたと言うより、眠いを連発してたけど。
「ショナさんが居ないからですかね?」
《そんな感じはしないけど、相談してみようか》
明日の事もあるし、ネイハムに相談かな。
《近そうですね》
《嫌だなぁ、長がとかじゃ無くてね、嫌な思いをして欲しく無い》
《私もです。でも、神々の計略に逆らうには代償が必要なんですよ》
《まして、本質的には悪い事じゃ無いし。下手をすればただ邪魔をするだけで、遺恨しか残らないかもだし》
《桜木花子にも言っていたんですが、アナタが居てくれて本当に助けられてますよ》
《何も出来て無いけどねぇ》
《いえ。向こうでも桜木花子ならどうするか、そう考えて行動してらしたんですよね。その成果は出てますよ》
《次への負担を減らしたかったのと、もう、依存だよね》
《もう恋人では有るんですから、依存で結構かと》
《なのに、まだ、出来無い事が沢山だもんなぁ》
《かなり執筆されてますし、滑り出しは順調かと》
《あぁ、だからマジで明日なのかも。ハナはまだまだ私を気にしてくれてるし》
《ですね》
《はぁ。もうあの文量読んだの?》
《絵本だけですよ》
《実は、私の生まれ変わり?》
《それか、アナタが生まれ変わりか》
《かもだよねー》
《ですね、ふふ》
《今夜は、白雨君?》
《ですね、後続はアナタ達に任せたいので》
《甘々にしろって言っとくね》
《ありがとうございます》
《うん、じゃあね》
実験は終了。
白雨君には甘々の溺愛とだけ言って、北海道の一軒家へ送り出した。




