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5月17日 日曜日なのに。

 一軒家に帰りショナの抑制を解除した瞬間から、思わぬ事に。

 今は昼前。


 まだ反動が残っているのか、何かの影響があるのか、メールで先生にご相談。

 直ぐに泉から出て来てくれた。


 そして今回の結果は、目の前に反動を起こす対象が居たので、つい大きく反動が出たのではと。

 かと言って解除はワシか、何でも解除師さんか神様だけ、そう対象が他へ向けられても困るんだが。


《怒り等は特に、誰にでも向けられますからね。以降は鎮静魔法を使用し、数時間してから解除すべきだと言う事になりました》

「おう」


《それと、君の抑制魔法の使用は要相談ともなりました》

「おう」


《それから、君が無自覚に被害者を増やしていた事の報告です》

「うへぁ」


《本来なら、今日はご公務をこなして頂きたかったんですが。前回のお試し公務での被害者数です》

「3人、女性も、うせやん」


《関わった総数も多かったですし。残念ながら、本当なんです》

「生きる公害やんな」


《信奉者や支援者が居なくては、第2、第3と、こうして生き延びられなかったのでは?》

「次は加護と思えと」


《はい。弱いと思うならこそ、正しい加護かと》

「居なかったら、どうなってたか。エルヒムぅ」


《待ち遠しいですね、彼も》

「も、マティアスか」

《後、一押しなんじゃもの》


「何が、灯台か」

《じゃの》

《ホルモンが安定するまで、お願いしたいんですが》


「体力が」

《公務にも体力は必要ですし、丁度良いかと》

《じゃの!》

《ふぅ、まだ理屈が無いとダメそうね。陰や陽の気の補充よ、採陰補陽、房中術よ。だから体質だと言ってるのよ》

『その体質の組み合わせで、こうなの。だから良く食べて良く寝て、良くこなす、分かった?』


「へい」


 女媧さんとスクナさんのコンボには反論出来ない。




 桜木さんがご相談している間、急いで洗濯や掃除を済ませ、昼食の準備。

 エナさんが天ぷら饂飩が食べたいと要望を送って来たので、天ぷらの準備へ。




 ショナの料理を手伝っている間に、エナさん達が帰って来た。


『ただいまー』


 そして昼食に天ぷら饂飩。

 エナさんの要望は夕飯にまで及び、今夜は鶏飯とアジ南蛮が食べたいらしい、帰り掛けに物産展で惹かれたんだそうだ。


「それは美味そう、もう南蛮作りまくろうぜ」


 総出で買い出しへ。

 コチラは、今夜、誰にするかの吟味。


《最悪は、ロキ神にお願いする事になるかと》

「それは本当に最終手段にしてくれ」

《今は男性体から補って頂戴ね、紫苑でも良いわよ》


「その、その点もだけど、向こうでの房中術と違う気がするのは」

《あぁ、それは皇帝用、子孫繁栄用ね、皇帝学の1つよ。大勢を相手にするんですもの、偏愛が無い様に、操られない様にってだけよ。ウブい処女が良いだなんて嘘もその為よ》

《祥那君はそれを学んでいる最中に、邪魔が入ってキレたんですよね》


《そうそう、見せたかったわ、ふふふ》

「あぁ、おう」


 男性体同士なら、そう陰気や陽気が減る事を気にしないで良いんだそうで、今夜は白雨と。


《ですね》

《満ち足りたら、もう何したって言いわよ》


「それまでは、ひたすらか」

《はい》

『うん、頑張って』

《じゃあね》


 女媧さんとスクナさんに檸檬セットを進呈し、次は帰って来た皆と、マジで家の事を決める話しへ。


 先ずはショナから、何処の家にでも行ける場所をとの要望で、何処へでも行けるドア案を構想する事に。


 映画みたいな丸いドアノブ、ドアの上部には、ステンドグラスが嵌め込まれた半月型の明かり窓。

 ドアノブに触れると明るく光り、回すと他の家に繋がる、誰かが触れてると回らない安全装置付き。

 ドアノブの直ぐ上には、表示錠、場所を示す小窓付き。

 黒色は沖縄、白は北海道、緑は遠野、青は浮島。


 エナの要望で、赤は先生の家。


「エナさん、何でよ」

『赤、嫌いなのを克服。赤の良い思い出を増やす』


「寧ろ紫だろ」

『ロキの浮島が紫だと思ってた』


「あぁ、でも先生は紫。ロキが赤」


 そうして、何処にでも行けるドア案が完成。

 蜜仍君が描いてくれた紙を泉へ入れると、神々印の魔道具と共にベリサマが飛び出て来た。


 沖縄と北海道と遠野には想像通りのドアを設置へ、浮島とロキと先生の家には箪笥型。


『だって、全部同じじゃ面白く無いじゃない?』


 こう、面白いかどうかが基準なのが、逆に凄く有り難い。


 そしてお昼寝へ。






 桜木さんがレーヴィさんと一緒に居る所を、本当にうっかり見てしまった。

 嫌な気持ちが浮かんでしまうかとも思っていたのに、寧ろ。


「ショナ、見ただろ」

「すみません、覗く意志は全く無かったんですが」

《心配の現れが具現化したのでしょう。祥那君、どう思われましたか?》


「安心、しました」

「安心て」


「レーヴィさんとは、嫌では無いんだなと」

《話し合わないからですよ、思い合った結果です。何も話すなとは言ってませんよね?》

「ぅぐ、聞かれないと、言えないべさ」


《そうですね、聞いて良いかは先ずノックをしてから》

「おう。合言葉は、浮島で少し聞きたい事が有る、で」

「はい」


 コレが共有され、広まり、合言葉の機能が成立する。

 ハーレムに最も大事なのは調和、桜木さんとも皆とも、調和を取る事。




 それからもう1つ、ショナと先生の提案で合言葉が決まった。

 其々に説明する必要がある場合や、皆で聞きたいとなったら、皆が話を聞きたがっている、と。


 そして夕飯作りへ。

 エミールも起きて来たので、ほぼ総出。


 既にアジはフライ用に下ろされたモノ、デカい。


「デカい」

『大きいは美味しいですもんね』


 揚げ物係には白雨、野菜を切る係にはエナさんとエミール。

 先生は総合監督、ショナと蜜仍君はタレ作り。


「ご家庭の味」

「こう代表する事になるとは、母親に言われた時は話半分だったんですよね」

「僕も、そう考えると緊張しちゃうかも」


「嘘言え」

「えへへ」


 どちらも酸味は弱め、後はもう甘みが強いかどうか。

 エミールはマリネを食べ慣れてるからかどちらもいけるが、温かい感じが苦手かも知れないと。


「そんな熱々で食わんやろ」

『そうなんですね』


 ココで味を落ち着かせる、寝かせるの概念を発動。

 つか猫舌だし、冷めてる料理の方が食べ慣れてるのよね。


 揚げ物班は素揚げから。

 茄子とピーマンの素揚げ、豆腐を揚げてからアジを揚げまくり、それから油を変えて鳥南蛮用に胸とささ身を揚げ、竜田揚げへ移行。


 野菜切り班は大根おろしや揚げ物を浸す係へ。


「あ、焼き鳥のタレ作り」

「もう焼き鳥を作っちゃいません?」


 浮島でモモを串打ちせずに炭火焼きにし、タレに漬け込む、そのまま市販のつくねも焼いて漬け込む。

 お互いに味が馴染んだら完了、多分、タレだけでもごはん食える。


「あぁ、コメ」

「まだ早いですよ、ふふ」


 コレがウチのピーマンの肉詰めのタレ、焼き鳥ダレを使って、ちょっと稀有よな。


「肉、全部の旨味よな」

「合挽ですもんね、ふふ」


 そのまま鳥そぼろの製作へ。

 焼き鳥ダレと少しの酒で煮詰めるだけ、はい、もう美味しい。


 それから一軒家に戻り、甘い卵焼きはショナと蜜仍君に作って貰い、出汁巻きは自分で。


 焼き鳥丼の具材も完成し、休憩しているとマキさんからご連絡が。


 もう、外壁の塗装が完了したらしい。




 雨宮さんからの情報で、全員でイスタンブールへお忍び視察。

 紫苑さんはすっかり気に入ったらしく、他も作るなら同じ人でと。


 ただ雨宮さん的にも国としても、それだと偏りが生じてしまうので、以降は公募でと。


「ふふ、イベント事にもなりますし、公平性を保つ為ですよ」

「ですね」

「あぁ、うん、イベントは大事」


「そうですよ。あ、ゲーム最近してます?新しいやつ」

「新しいの?」


「悪役領主のお子様になるヤツですよ、先行β版、あれ?」

「まだだが、面白そうやんけ」


 僕らも知らない所で雨宮さんもデバッカーと言うか、攻略班だったらしい。

 そして今回は雨宮さんも連れ、一軒家へ。


「ハナちゃん、物が少な過ぎです」

「ほら、其々に家が有るんだし」


「なら、其々に買うべきですよね?」

「ショナ」

「代弁して頂いて感謝します」


 最近、特に僕の事を押しが強いと言うけれど。

 多分、雨宮さんの方が強い。




 家に置く物は追々でと、先ずは暫しゲーム。

 この中で、マキちゃんが1番押しが強いかも知れない。


 ゲームは転生者か転移者で選べ、転移者としてゲーム開始。

 セーブデータからステータスやスキルが引き継がれ、現状のスペックから始まった。


「転生者は?」

「ランダムですよ、ふふ」


「やったんかい」

「はい」


 自分そっくりの領主の娘と入れ替わる様に異世界へ、頭を打って熱を出す展開なのだが。


 クソ領主のクソ両親、そしてクソ兄弟。

 アレ、領主以外は同じじゃね。


「これ」

「悪役領主のお子さん、0での流行りだそうですけど?」


「ワシのヲタクのジャンル、チョトチガウ」

「そうなんですね、ふふ」


 鏡を見ると、0世界のワシも頭を打って熱を出し、混乱した状態。

 ツンデレの度を越してる領主娘はいけ好かないが、情報共有し、0では馴染みながら元の世界に戻る方法を。

 コチラは、引き戻す方法を模索する事に。


 学園モノと違う世界線だし、場所も全く違うし。

 いや、もう、周りがクソ過ぎて詰んでるんじゃが。


「どうしろっちゅう感じやね」

「ですよね、ふふふ」


 自分のスペック確認。

 ストレージと移動魔法は有るので、近くの犯罪者を大量に捕縛し、屋敷に放り込んで家財道具の全てをストレージへ。

 それから憲兵の兵舎へ駆け込み、家財道具が無い、犯罪者が屋敷にと報告。


 マトモなのが1人居てくれて、屋敷へ行く事に。


 もう、全員大混乱。

 指名手配犯を匿ったのかだの、何だのと、ワシだけ傷付いてるので取り調べからは逃れられたけれど。


「コレ、極悪人ルートとか」

「バレ無いんですし大丈夫ですよ、ふふ」


 無いとは言わなかった所がポイントよな。

 バレ無い様にか、そうか、他の領主も巻き込むか。


 そのまま兵舎で下働きになり、噂話を収集、僅かなお金で宿は宿屋へ。

 そうして隣の領主もヤバそうだと聞き、下働きに。


 隣の領主の娘だと言うと、大変だろうからと雇ってくれる事に。

 そして当然の様にセクハラよね、内容もストレート。


 コレも兵舎へ泣き付き、ウチの家財が有ったと申告。

 自分は家財の権利を放棄すると言うと、素直に捜索へと行ってくれた。


 悪人と悪人と悪人の言い分、誰も聞き入れないでくれて、自分は放免になりそうに。

 だがココまで大事だと王都の王兵が調査に来てしまった、コレは少しヤバいな。


 自分も無罪では無い、王命に従うので、何処ぞの領地にでも送り込んでくれと申し出て、正式に放免にして貰ったが。

 向かわされた先はウチの隣、意外にも良い領主だった。


 ただ、ウチのせいで大変だったそうで、女性陣のイビリが凄い。

 いやね、ワシが直接何かしてたなら甘んじるが、普通に領主様に言うわ。


 そしてお怒りになる領主様、マジで良いヤツかも。

 マジで良いヤツなのか、見合い相手も連れて来てくれた。


 ただな、王都の憲兵なのよ、格が上なのよ。

 ワシ、平民ぞ。


 いや、コレ、怪しまれてるのかも、ヘタこいたわ。


「失敗したなぁ、目を付けられてんじゃん」

「ふふふ」


 マキちゃん、もう何も言わないでやんの。


 しかもイビリ加速してんの。

 王兵さん優しいけど、格が違うのに。


 しかも理由を聞くと、唯一、あの領主の中でマトモだと聞いたからだと。

 妾で構わないと言うとキレられてしまったし、お姉様達は盗み聞きしてたのかアピールが酷くなってるし。


 領主様にお願いし、格が同じ相手をと言うと、合格だと準男爵の位をくれて元の領地を収める様にと。


「凄い厄介払いの仕方」

「そうですかね、ふふ」


 結局は拗れたままの王兵さんと領地に戻り、領主代行を務める事に。

 代行なのは有り難い、文句は全部領主様へと言って追い払えるんだものな。


 それで好感度が上がられたのか、王兵さんからの歩み寄りが。


「あぁ、つい逃げちゃうけど、恩返しには」

「あ、入力されちゃいましたね、ふふ」


 聞いてないんですが。

 しかもまた怒らせちゃったし、でも、もう来ないなら良いか。


 そしてひたすら領主代行を務め、3ヶ月。

 領民も大分当たりが柔らかくなって来たし、仕事量も減って来た。

 そうして久しぶりに鏡イベント、馴染めず苦しんでる様子、すっかり忘れてたわ。


 それからは引き戻す為の模索。

 怪しい魔女イベント発生、でも話をしてみるとキノコ神みたいに口が悪いだけの良い魔女だった。


 王都に引き戻す鏡が有ると教えてくれて、王兵に全部暴露。


 本当に目を付けられていたのでは無く、マジだったらしいと発覚。

 そして帰りたいのかと聞かれた。


「帰るワケが無かろうよな」

「ですよね、ふふ」


 領主様にも全て暴露し、王都へ。

 アッサリと魔道具とご対面、普通に美術館に置いて有った。


 そして鏡へ触れると領主娘と手が触れ合い、引っ張る事が出来た。

 そして転移者だと正式にバレて、仰々しい事になり始めたので、逃走。


『もー、行き当たりばったりなんだから』

「普通はこんなもんだべや」


 森へ逃げ込みスペックの再確認。

 記憶や感情の操作、ですよね、最初からコレなら少しは無難にいけたかも。


 それと変身、魔道具にはマントも、買い揃えていた服を着て男になり領主娘の元へ。

 転移者との区別を付ける為に、入れ墨を入れられる事に、ただ目に見えないタイプだったので放置。


 それから更に観察、普通に領主代行の再教育をさせられているし、甘んじて受けているので放置。

 ただ領主様の疲労が凄いので、転移者様からお手伝いをと言われたと言い、手助けする事に。


 見事に領主娘の補佐になり、領主娘には事情を即バラした。

 何ヶ月も苦しんでいたのは伊達じゃないね、信じて手伝いは受け入れると。

 ただ、王兵が欲しいと。


「好み一緒なんですよね、ふふ」

「ぐぅ」


 ワシは無回答を貫き、領主娘は言い寄るも王兵は断ってた、マジはマジらしい。

 そして王兵へネタバラし、諦める所か、紫苑で良いから結婚したいと。


「揺らいでますね、ふふ」


 同性婚は出来るが、まだまだ茨の道。

 それでも昼は紫苑で、夜はそのままの姿でと、ただ入れ墨の確認は毎回させろと。


「ふむ、警戒心が有って宜しい」


 結婚を承諾し、領主娘へ。


 外見が一緒なのにと発狂し始めた。

 だが王兵が滾々と違いを説明し、納得した様にも見えたが、まだ領主の娘だった頃の悪癖は早々に直らないらしい。


 もう、素直に立場を受け入れないなら手を引く、王兵と何処かに消えるぞと脅す。

 王兵も承諾すると、やっと落ち着いてくれた。


 そのまま結婚生活が始まり、夜の営みへ。

 マキちゃんが居るのでスキップ、そして孕んでからがさぁ大変。


 領主様にバラし、遠隔地へ飛ばして欲しいと伝える事に。


 うん、王都には黙ってるけど手放したく無いって、ですよね、領主娘ちゃんポンコツのままだし。

 でも王兵が強く出てくれた、領主娘ちゃんの為にも離れるべきだと。


 そして髪を染めたりなんだりで、遠隔地へ飛ばして貰い、領主代行を続けるエンディングへ。


「どうでした?」

「前のより良かったかも」

『和風も出来上がってるもんね』


「まぁまぁ、夕飯にしましょうや」




 桜木さんのゲームが終わったので、雨宮さんも一緒に食卓へ加わった。

 鶏飯とアジ南蛮と焼き鳥丼、雨宮さん達にはミニサイズを、桜木さんは1人前を。


 そしてまたゲームへ。


「最高ですね、全部」

「でしょう」


 次は、和風悪役令嬢。

 今回も転移者を選んでいた。


 この世界が嫌いになった悪役令嬢が転移者を呼び出す所から始まり、悪役令嬢を続けるか、他へ逃げるかの選択肢をくれる。

 そして桜木さんは途中で逃げ出せるからと、悪役令嬢の役回りを引き受ける事に。


 舞台は江戸時代風の現代、悪役令嬢は皇族の方が代々入学する学校候補の1年生、社交界でもそれなりの地位を持っていた人間だが、自由が欲しいと。

 知識の共有を済ませ、悪役令嬢は桜木さんの居た世界へ、桜木さんは先ずは外へ。


 スーツと和服が入り混じった世界、大正ロマン的でも有るのに、近世の車が走っていたりもする。


『もっと大奥とか、古典が良かった?』

「それはそれでアリかも」

「DLCが沢山は嬉しいですね、ふふふ」


 そして生真面目だった令嬢の手帳で、コレからの日程を確認。

 塾帰りの図書館で過ごし、帰る時間なのだと。


「メタの為とは言え、真面目よね」


 そして共有された知識通りに帰宅、夕飯もこなし、再び勉強。

 セーブデータの引き継ぎにより、それなりに勉強するだけで終わり、後は人間関係把握の為に残されたメモを読む。


「コレが無いと普通は無理ですよね」

「だよねぇ」


 その他にもマニュアルが多数存在し、半ば覚えゲーでは、と桜木さんが呟いた。


『マニュアル開いてる時は時間が停止するんだもん』

「もん、便利よなぁ」


 そしてゲーム内で寝て起きると、発熱し、学校を休む事に。


 祖父母からもの凄く怒られていても、桜木さんは気にしない様子でボタンを連打。


 そしてようやっと登校へ。

 マニュアルに追記したり、訂正したり。

 勉強したり、嫌味を言われたり。

 しまいには陰口に便乗し、寝込んで頭が不安定だと言われた事に同意し、へたり込んだ。


 そこへ2年生の男子生徒が助けに入り、保健室へ。

 そこで良く良く相談し、学級会議へと発展。


「価値観とか、ココのなんか」

『うん』


 0ではイジメと呼ばれるが、ココでは加害と呼ばれている。

 明らかに悪意有る加害は犯罪と見倣され、休学措置が取られカウンセリングが入る。


 親も良い親なのだが、祖父母達の介入がギリギリのライン。

 期待しているからだと絶妙なプレッシャーを掛け、令嬢が逃げ出した気持ちが分かったと。


「でもなぁ、コイツらの人生じゃ無いのよねぇ」


 全く仰る通りで、本来なら何処ででも、祖父母や親に従わずとも生きてはいける筈。

 従いたければ良いけれど、葛藤の末に令嬢は選べずに放棄し、異世界へ行った。

 自分勝手ではあるが、リカバリもしっかりしているし、桜木さんだから救われた形になっているのだし。


「僕、もしかしたら1番、しっくり来るかも知れません」

「おふぅ?何でだ?」


「リカバリもしっかりしてますし、入れ替わるには妥当かなと」

「従者目線やーん」

「ですね、ふふ」


 そして桜木さんは学業をこなし、優しくしてくれた男子生徒とも仲良くなり。

 特に悪役令嬢としての場面も無いまま、2年生へ。


 そうして4月も終わりそうな頃、下級生からのクレームが、物言いがキツいと。

 今回は証人無し、匿名のクレームなので気を付ける様にとの指導のみ。


 以降は常に誰かと居る事で証人作りに励んで居たのだが、何度もクレームが入り、友人は離れ、孤立する事に。


 そして仲の良かった男子生徒が裏切った、父親の取引先のご子息だそうで、損害を被らされた仕返しだと。

 マニュアルには載って居らず、父親に確認すると大激怒、だが完全に取引先とは切っているので迂闊に制裁が出来無いまま。


 その証拠と共に復学したが、孤立の解決はせず。

 原因は、火の無い所には煙は立たないと、コレは現実でも未解決で難しい問題でも有る。

 アンチハーレム派の問題も、精神の防衛機制から、火の無い所には煙が立たないと思い込んでしまう現象は、昨今でも根深い課題のまま、残っている。


 そのまま3年になり、皇族の方が入学する事に。

 それでも孤立したままなのでと、桜木さんは陛下へ直訴。

 自分はココではこの様な境遇なので、通われるべきでは無いと進言した。


 内調へも資料を渡し、調査へ。

 そして皇族の方の転校が発表され、桜木さんは益々孤立する事に。


 それすらも報告し、学校の評判は更に下がり、孤立が解消せぬまま卒業へ。

 そして学校は解決出来なかった事で皇族の学校候補から外れ、行政指導が入る事に。


 祖父母には叱られたが、両親は褒めた。

 そして就職先は内調を指定し、大学へと進んだ。


「桜木さん、なんのゲームか覚えてますか?」

「職業訓練」

「ふふ、ハナちゃんは何でも屋さんになりたいんですから、こうなっちゃいますよね、ふふふ」


「あぁ、確かに」

「もう恋愛は手に余ってるし」

『余る前と挙動が変わらないよハナは』

「でも、大学になら良い人が居るかもですよ、ふふ」


 そして大学へ進んだものの、もうひたすら真面目に勉学に励み、スキップ機能を使って一切恋愛も無いまま内調へ就職。

 そこでやっと、同期生に心が揺れ動いたらしい。


「何で、何も入力して無いのに」

『心拍計とシンクロしてる』

「わぁ!その機能良いですね!」


 そしてお付き合いするかどうか、つまりは職場恋愛禁止なので、どうするのかと。

 そしてフリーワードでの話し合いの末に、相手が辞める事に。

 女性が少ないからこそ、絶対に辞めない、まして既婚者なら関係者に安心感を与えられるパーセンテージが違うしと。


「この場合はそうですね、凄く、納得しました」

「お、同じ従者ならそうか」

「え、職場恋愛ダメなんですか?」


「いえ、違うんですが」

「モテるねん、この人」

「え?何か有ったんですか?」


「桜木さん」

「あのね、豚骨ラーメン好きの可愛い感じの」

「え、何でハナちゃんが知ってるんですか、ショナさん」


「えっとですね」


 桜木さんに怒られた方が、まだ良かったかも知れない。




 マキちゃんが怒るとは思わなかった。


「好きかもなのに、そんな場面を見せるって逆セクハラじゃ無いんですか?そもどんな管理と教育をしてるんですか?」

「マキちゃん、偶々やねん」

「とは言え、今となっては、目の前で牽制すべきでした、すみません」


「え、目の前で牽制しなかったんですか?!」

「まぁ、弱ってたし」


「だからこそですよ!どうしてこう、弱ってる時に男気を、カッコつけ過ぎです」

「すみません、マニュアル通りの行動でした」

「いや、ワシ」


「ハナちゃん、目の前でキッパリ断られてたら、理由はともかくトキメキません?」


「まぁ、ワンチャン、気が有ってくれるかなとは、思ったかも知れないかもだけど」

「ほらー」


「いや、でも逆に」

「それはつまり、期待はしたかも知れないって事ですよね?」


「ぅっ、まぁ」

「もー、本当に、ショナさんで大丈夫ですか?」


「あぁ、うん、はい」

「ふふふ、ハナさんが優しくて良かったですね?私ならそれでどうでも良くなってたかもですよ?」

「はい」


 界隈で、マキちゃんが1番、強いかも知れない。


 そうしてショナを凹ませ、マキちゃんは帰って行った。




 そう言われればそうなのに、ついマニュアルに従って行動してしまった。


「いや、蛙化現象起こしてたかもだし、気にして無いよ」

「それでも、その手が有ったかと。融通が利かないなと反省してるんです」


「大人の対応だし、ワシもそんな風に断られちゃうのかとビビったかもだし」

「それは桜木さんからの場合ですよね。僕からいかない限り、セクハラを気にして言ってくれ無い事は分かってたのに、もっと、早く解決出来てたかもなんですよ」


「紫苑でもって言って直ぐは警戒したかもよ」

「その前に、僕と他との距離感を正確に把握出来てたら」


「機微に疎いのでは?」

「指摘も受けて自覚も有るのに、ですよ」


「じゃあ、最短は何処だと思う?」


「大演習の時に、額の外だって思っても飛び込めば良かったなと」

「ルーネが嫌か?」


「いえ、そうじゃ無くて。悩ませないで済んだのではと」

「どうだかなぁ、結局は素直には受け入れたかどうか」


「あの時に、好きだと言ったら無理だったんですか?」

「脳内物質ドバドバやろ、落ち着いてから、もう1回と言うかな」


「あぁ、直ぐに両親に会わせます、蛙化現象を防ぐ為に」

「あ、ルーネの話しして良い?」


「はい、是非」

「ルーネにも提案された、早過ぎるかって聞かれた」


「最速の手段を無手で思い付くなんて、僕にも、経験が有ったら」

「いや、半ばウブだと思ってたから、経験有ったらショック受けてるわ」


「難しいですね、有るか無いかで選択肢が違うのに」

「すまんね、難しい子やねん」


「いえ、僕の方こそ」

「いえいえ」

「あのー、そろそろ、僕を寝かし付けてくれませんか?」


「あぁ、蜜仍君を見本に、かねぇ」

「もっと難しいじゃないですか」

「えー?ふふふ」




 蜜仍君を寝かし付け、紫苑に変身し、リズちゃんの誕生日プレゼントを買い付けに行き、白雨と浮島へ。

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