5月16日 やっちまったな
桜木さんが、レーヴィさんを受け入れた。
だから僕は先ず、桜木さんがどうマイナス思考を発動させるかを考える。
今回だと、容易いだとか即落ちだとか。
僕は思ってはいないのだけれど、桜木さんが落ち着くと言っていたネットのアングラの書き込みを見ながら、想像する。
どんなネガティブ発言が出るか、どう落ち込むか。
「おはよう」
「おはようございます」
「した」
「はい」
「容易い」
「時間制限が有りますし、内容としては考慮不足だとは思いませんよ」
「すまん、これも、言わせてるんだよな」
「上手く頼れないのは、虐待被害児童だからこそで、それを認めないのは」
「クソ親共を擁護する事になる、くそー、キノコ神ー」
紫苑さんから変身を解いてまで、ノーム神を呼び出した。
最近は恋愛に一切関わらないノーム神へは、良く頼る様になった。
コレは良い結果なんだそうで、少なくとも自分より上の者へ頼れている証拠らしい。
ただ、とても口がキツい。
《まーた、態々変身までしおってからに、おはようさん位は言わんかい!》
「おはようございます、なんか叱ってくれ」
《そう言われると、叱りた無くなるねんけど》
「叱ってる自覚はあるねんな」
《はん!おい!生温い笑顔してる場合ちゃうねんぞ!公僕!!》
「公僕呼ばわりは初めてで、新鮮ですね」
《余裕かましてる場合ちゃうねんぞ!ワイに取られてしまうかも知れへんねんぞ》
「無い、死んでも無い」
「だそうで」
《食い気味で即答!おっちゃん、凄い傷付いてんねんけど》
「無い無い」
「だそうで」
《え、なに、噛ませ犬にしただけやの?酷過ぎひん?クソ過ぎひん?》
「ホンマに酷いやっちゃな」
《自分、アレやんな、クソマゾ女やさかい罵られたくて堪らんのやろ?でもなぁ、ワイにそれ求めるのヤバ過ぎやで》
「あ、そうなんですね」
「えー、違うわい」
《違わんやろ、責められたいてルーネと一緒やんけ》
「成程」
「納得せんといてくれる?ただの戯言やで」
《せやったら証明せいや》
「は、どないせいっちゅうの」
《そらもう、罵られて喜ばんかったらエエねん》
「アレみたいなのは普通に萎えると思うが」
《それはマジな、アレはアカン》
「身内出すのはアカンよね」
「そんな話が有るんですか?」
「そらもう、ネットの書き込みにな」
《天才さんが凄い居るねんぞ、アレはホンマ、ずっと見てまうわ》
「それは、どっちのですか?」
《ワイはどっちもや》
「マジで何でも見てんじゃねぇかよ」
《出禁にせぇへんのが悪いんやもん》
「触るぞコラ」
《やーい運動音痴ー!悔しかったら追い付いてみぃー》
「そこは無視するんですね」
「大人やからね」
そう言ってお供え物を起き、家の中へ。
受け取りをコッソリ確認し、抑制魔法の実験へ。
解除し直ぐに、桜木さんに掛けて貰った。
凄く効きが良いのだが、桜木さんにまで掛かってしまうのが問題。
桜木さんにはしっかりと解除して貰い、通常業務へ。
後は蜜仍君が起きるまで、桜木さんは白雨さんと太極拳、僕はバイタル等を報告書に記載し送信。
それから桜木さんは温泉へ行き、蜜仍君が起きたらエナさんを起こす。
そうして朝食を全員で食べ、後片付けをし、布団を干す。
そのまま軽く掃除をしながら洗濯、それから休憩、暫しダラダラ、ゴロゴロ。
「コンちゃんに、亜人化の変化は仕込めないだろうか」
狼等の攻撃力が有る変化では無いので、僕が独断で許可をし、一緒に里へ。
ユラ君やアレクと同じ様に秒で会得し、直ぐにもふもふされていた。
誰かにもふもふしたかったのだが、もふもふを捨てた、と悲しんでいたコンちゃんが気になって中々言い出せなかったのだが。
コンちゃんに提案したら喜んでくれたし、こうもアッサリ叶うとは。
《ふふ、喜んでいるんだし、害も無いんだ心配するな》
「でも、民意は割れてるんでしょう」
「いえ、条件付き賛成多数で可決しましたが、コチラも、法の問題で実施に至って無いだけですよ」
「心が広過ぎひん?」
《もふもふには抗えないんだよ》
「うそぉ」
《ふふ、どうだろうねぇ》
土蜘蛛さんにお礼を渡し、一軒家に戻り蜜仍君とエナさん達をお見送り、今日は一泊らしい。
そして先生からの呼び出し、単身先生の家へ。
《報告をお願いしますね》
レーヴィとの内容の聞き取りだった。
桜木さんが帰って来るまで、先ずは筋トレ。
細かい掃除を済ませ、家のお風呂でシャワーを浴び、2回目のお洗濯。
お供え物の候補を調べたり、家の進捗を確認。
デザイン案と色見本等を取りに来て欲しいらしい、コレはアレクに行って貰う事に。
水槽案も既に出ていた、コレは桜木さんと見に行った方が良いかも。
先生、思ってたのと違ってビックリしたわ。
「お帰りなさい」
「おう」
「何か、叱られましたか?」
「あぁ、耳元で延々な」
「成程、そう言う手も有るんですね」
抑制魔法強いな。
「【抑制解除】」
「もー、どんなタイミングで解除しちゃうんですか」
「赤面フェチかも知れん」
「にしてもですよー」
「うん、たまらんな」
昼食はハワイへ。
ガーリックシュリンプとサイミン巡り、先ずはガーリックシュリンプを買い漁り、交互に食べていく。
この組み合わせは無限に食える気がする。
そしてチーズケーキを買い足し、熱帯魚屋へ楠として訪問。
パソコンでシミュレートした見本を見せて貰ったが、完璧。
だが一応検討すると言う事で、持ち帰り。
それからお昼寝。
ドリームランドでは、既存のハーレムルールは適応されない事になった。
そして今も、桜木さんはドリームランドでレーヴィさんと一緒に居る可能性は高い。
邪魔をする事は可能だけれど、誰にもメリットが無い。
僕にも、誰にも。
『ハナの抑制魔法は凄いですねぇ』
《つまらん言いたいんやろ》
『はい』
「すみません、実験の為なので」
《せやけどな、我慢はアカンからな。他の方法で発散した方がエエよ》
『そうですね、ラブレターなんかどうでしょうね』
《王道でエエやん。でもなぁ、そないな状態で書けるんかいな》
『そうですね、寧ろ抑止され過ぎてると思って、行動した方が良さそうですね』
《せやね、精神の健康第一やで》
「はい、ありがとうございます」
僕が桜木さんのハーレム要員だから受けられる恩恵、もしも僕がハーレムを受け入れられなかったら、受け入れて貰えなかったら。
僕は、どうなっていたんだろうか。
祥那君からご相談が有り、もしハーレムに入れなかった場合の事を考えてみたい、と。
良いタイミングなので私以外、当事者達には伏せられていた情報を解禁。
アンチハーレム派の情報照会を承認。
案の定、桜木花子に言うべきではと。
抑止が強過ぎでは。
《却下したい所なんですが、もし桜木花子なら》
【聞きたがり、介入を望むかと】
《ですが、当事者以外に害は無いんですよ》
【反対する者が如何にとんでもない理屈を並べているか、理不尽な事を言っているか、聞くに値しない話は封殺すべきだと学んで欲しいんです。ご家族からの言葉を整理し、穏やかに過ごして欲しいんです】
《踏み込めば嫌われる可能性も有りますよ》
【そう思って止まってしまったら、桜木さんの為になる事も提示すら出来無くなってしまうので。そこは、良く話し合います】
《分かりました。被害は当事者だけだと言いましたが、道端の汚物に嫌悪感を示す者も大勢居ますし。そろそろ実行に移す可能性も有るので、開示は許可します》
【はい、では】
デモ、テロ、その為の下準備には必ず犯罪を犯す事になる。
なんせ、桜木花子の情報は本来なら暴ける状態では無い、そうなると標的は従者。
幾ら職を公言して無いとは言えど、親しい人間は殆どが知っている。
問題は、どこまでの人間が知り、探りを入れられてしまうのか。
そこで被害が出れば、被害者と加害者が出てしまう、しかも今回は徒党を組んでの活動。
今までは犯罪が起きてから、でも法改正後は未然に防ぐか直後に防ぐ事が可能になった。
神々と転生者、召喚者によって。
起き抜けに話が有るとショナから言われ、チーズケーキを食いながら聞く事に。
「もし、僕が受け入れなかったり、桜木さんが受け入れなかったら、今、どうなってたと思いますか?」
「結構、重い問題やで。時間をくれ」
「はい」
先ずはエミールへの移籍やろ。
もう顔を合わさん様にして、お洒落教官と良く行動するかな。
それと、なんだろ。
今思うと、有り得ない感じなのよな、何処かで受け入れてくれるかもって。
思ってなかった筈なのに、無意識にどこかで思ってたんだろうか。
「永久に会わんと思うが、どした?」
「色々と考えて、もしかしたら僕は、ハーレム反対派になって過激な事をしてしまってたかもと。そう思ったんです」
「凄い、愛情の裏返り方」
「好き嫌いの反対は無関心、でも、好きじゃ無いのに嫌悪って出来るじゃないですか。だから、それらを混同して、僕が僕の気持ちに気付かないでいたら、桜木さんを嫌悪してたのかも知れないって思ったんです」
「オモロい愛情表現やんな。真面目故に、有り得るかもね」
「それで、僕の思考って顔と同じ様に、平凡でありがちなんです」
「あぁ、反対派の事を調べてくれたのね。ありがとう」
「いえ、先生からの資料で知りました」
「ほう、被害者は?」
「実害は、関わったり主義主張を読まなければ」
「読ませなさい」
何でハーレム案を国民投票にしないんだ、誰がどう選ぶのか、どう審査が入るのか、どんな審査基準なのか。
果ては俺もヤりたいだとか、全員にヤらせろだとか。
「介入は既になされているので」
「流石にあの仮面の状態でヤれるなら、候補に入れるが、どうなんだろうな。ワシ同士で想像してもギリギリのラインなのに」
「そうなんですか?」
「まだ呪いが有るんだろうね、アヴちゃんは出来ても、紫苑でワシはギリギリやで」
「僕は出来ますよ」
「それはちょっと尊敬しちゃうわ、好き過ぎでは?」
「名誉の勲章って仰ってたので」
「それは銃創とかや、アレはちゃう、ミスの証拠や」
「優しくて純粋な証拠ですよ」
「抑制め」
「僕も、して無い時に赤面させたいんですが」
「アカン、オーバーヒートするから追々にして」
「はい」
「良い笑顔は出来るのね」
『ふふふ、面白そうなので、助言を差し上げましょうね』
「ちょ」
銃創も愛でたいので、今度は銃創有りでしたいと言わせやがった。
本当にもう、悪質。
「ありがとうございます、お陰で見る事が出来ました」
『いえいえ、では』
「はー、休憩」
召喚者様が、ハーレムなんて許せない、許さない、許すべきじゃ無い。
清廉潔白であるべきだ。
愛されるなら、普通で、平等であるべきだ。
ハーレムなんて爛れて汚らわしいことは、そもそも人間ならすべきじゃない。
きっと候補者の1人は従者なハズ。
召喚者様の側に居るんだから、絶対にそうに決まっている。
間違いは正さないといけない、コレは間違いだ、ハーレムなんて間違いだ。
僕らの召喚者様なんだ、僕らの、なのに。
コレは体制側の陰謀に違いない、きっと強権を発動して、召喚者様に強いているに違いない。
従者は公僕なんだし、きっと独占するに決まっている。
桜木を襲う案が民間で持ち上がっていると、天使さんからの情報でネットのアングラへ行ってみだが。
凄いな、固定観念が限界突破して、思い込みの極地じゃん。
自由と平等と共有を全部履き違えてるし。
きっとと、べきと、違いない、の区別が全くついてない。
しかも、女まで書き込みしてん。
女だからこそ清廉潔白であるべきだ、道徳観念を破壊する行為だ、文化や思想の侵略だ、子供に悪影響だ。
いや、普通なら、その理屈も分かるんだが。
いくら全てが情報開示されて無いからって、裏を読むとか、行間を読むとか出来無いのは大人としてヤバ過ぎだろ。
つかコレもう、案件だよな。
いや、でも0みたいな事が起きれば、勝手に内部崩壊して。
いや、間違って反逆者崩れの英雄擬きが生まれても、火種を残すだけだし、でもなぁ。
「ジブリール、自滅目的でほっときたいんだが」
『ハナが、どう思うか、ですね』
「知りたがって知ったら、介入したがるだろうよ」
『はい、今、向かっています』
「なん」
『大丈夫ですよ、従者も一緒ですから』
「いや、寧ろそっちの方が怖いかも知れないんだが」
『ふふふふ』
ショナに抑制魔法を掛けといて良かったわ。
書き込み主が凄い主義主張で、流石にキレるんじゃ無いかと心配したもの。
でもショナが完膚無きまでに論破した。
論破と言うか聞き出してくれて、向こうが自然と破綻した。
個人への自由の侵害、そこへ踏み入る権利も立場もアナタには無い、もし侵害するなら侵害されるが良いのかと。
「マジでショナは怒らせたら怖いよな」
「桜木さんが間違えたら、もっと優しく言い含めますよ」
自分の母親が、あんな感じだったのよな。
無自覚に固定観念ガッチガチなクセに、自分の思想や思考は柔軟だと錯覚し、勘違いしてた。
今なら、分かる。
逃げ出した父親の気持ちも分かる、多分、ワシを鎹にしようとして、失敗した怒りも有るんだろう。
でも、逃げ出し方のマズさよな、本当にクソ。
「うん、優しく言い含めてくれ、アレはワシ泣いちゃう」
「大丈夫ですよ。最大限、優しく言い含めますから」
この狂気みたいな優しさが怖いのもあるんだ。
自分が欲していた優しさだから、最も望んだモノが目の前に有るから、怖いんだな。




