5月15日 ドリームランドの紫禁城に。
あぁ、紫禁城か。
目の前にはショナと白雨、自分は女官のままの姿。
そして今回は記憶の有るショナと白雨と共に、紫禁城を回る。
神様達は居るが、他の人間の気配は無さそう。
尚服宮でショナも女体化させて着せ替えごっこ、ピンク色が似合う。
そして帰ったら白雨も女体化させてみようとなり、カラフルな衣装のままに中庭へ。
衣装が良くなかったのか、神様達の悪戯か。
選ばれ側室に選ばれる様な場所へと追いやられてしまい、振り向くと白雨までもが女になっていた。
そして女御と言われる側室と女官の間の選抜会場だったらしく、ショナと白雨は御簾越しの誰かに選ばれ、離れ離れに。
そして自分は、どうしても選ばれないだろうと思ってしまう。
1人、2人、そして最後には自分だけ。
あぁ、保育園の時みたいだ、早く家族の問題を解決しないと。
最後には自分だけ、女官である采女として引き取られ、調理場へ。
そしてパスティの様なパオをひたすら作り、そして給仕へ。
来客が有るとかで大賑わい、嫌な事は無いし、普通に褒めてくれるし。
コレはコレで悪く無い。
そして夜も更け、寝床への帰り道に雪が降って来た。
きっと、ずっと、雪を見たら毎回思い出すのかも知れない、マティアスやレーヴィを。
幸せなんだろうか、今の自分をどう思うんだろうか。
どれだけ時間が過ぎてるのか、どうなったのか。
《ハナ、ちょっと来て頂戴》
少し慌てた感じの女媧さんに手を引かれ、少し速歩きで近くの門へ。
そうして潜り抜けた先の雪原に、レーヴィに良く似た、似たと言うか。
「レーヴィ」
『ラウラ?』
「いや、幾ら何でも」
『元気そうで、良かった』
「いやいや、何でココに」
『異国の侵入者じゃと、知らせを聞いて来たんじゃが』
『ココのシバッカルさんですか、お邪魔しています』
《お怪我は大丈夫?》
『はい、ラウラが居ますから』
「誰が変身してるの?」
『ピロシキを作ってみせましょうか?練習して、すっかり家の味を出せる様になったんですよ』
『うむ、一旦は医局に引き取らせよう。そこに神輿が有ったじゃろ、ソレを使うぞぃ』
シバッカルとレーヴィと3人で、人力車の中へ。
いきなり目まぐるし過ぎでゲロ吐きそう、高低差でもう、耳がキーンって。
『ラウラ?』
「本当は、桜木花子。桜木クッカ子」
『桜、ピッタリの名前だったんですね、お久し振りです。ハナ』
「ラウラで良いよ、ラウラで頼む」
『ではラウラで。それで、ココは』
『ドリームランドなんじゃが、少し特殊でのぅ。ハーレム宮なんじゃよ』
『なら、ラウラは』
『勘違いするで無いよ、ハナはハーレム宮の女帝候補じゃ』
「選ぶ側、そしてもう、選んでる最中」
『なら、救えたんですね』
「うん、ありがとう、色々、沢山助けてくれて」
『ほれほれ、話したい事は山程有るじゃろうが、着いてからじゃよ』
悪い事では無いとは直感出来るのだが、どうしても、怒られはしないかと考えてしまう。
自分の弱い心が、レーヴィを呼んでしまったんじゃ無いかと、どうしても不安に思ってしまう。
《ほら、着いたわよ》
女媧さんに御簾を上げられた先は、医局では無く自分の宮。
そこにはココの、若々しい姿のロウヒさんが。
「な、ロウヒさんまで」
《ふふ、もう、ロウヒで良いわよ》
『では、コチラの』
《そうよ、宜しくね》
『くふふふ、体をみてみい』
《少し、集中するだけで良いわよ》
体を診る限り、本物のレーヴィなのだが。
こんな、また前例の無い事が。
『前例じゃったら、さっさと作るに限るじゃろうに』
《そうね、ふふふ》
「ほいで」
《お茶位は飲ませなさいよ》
「うい」
《ふぅ。繋がったのよ、冥界と同じくドリームランドが、繋がったの》
「メリットだけ?」
《また、アナタを封印する案が出るでしょうね》
『また、とは』
「あ、そこからか」
《ふふ、長い話になるから、少しだけよ》
『じゃの。自分で自分を封印したり、引き籠もってたんじゃよな』
《召喚者同士が戦ったり、何度も命を狙われたりもしたわね》
『すみませんでした。僕だけでも、引き留めるべきだったのかも知れません』
《でも、そのお陰で、この子が助かったのよね》
「鈴木千佳、異世界の転生者です」
「スーちゃん」
『第2の地球が出現したんじゃよ、そしてその生き残りじゃ』
《転生者で、転移者なのよね》
「そうなの、でもハナみたいな特技は無いから。結局は転生者よね」
『あの、僕は本当に、ココへ?』
「コッチのセリフなのよ、そっちはいつなの?」
『ラウラが消えて、1年経ちましたね』
「ワシは数ヶ月前じゃ。マティアスは結婚した?」
『いえ、まだ。でも子供達を引き取って、隣の家に住んでますよ、スズランと一緒に』
「フランスはダメだったの?」
『はい、残念ですけど』
「レーヴィは?」
『僕もです。ラウラ程に打ち解けられる人は、中々に居ないものですね』
「ふふふ、やっぱりだ」
「やめい」
『でも、本当に安心しました。救えて、元気そうで』
「すまん、ちょっと混乱してて、弱気になってたからココに」
『違う違う、お主が縁を認識したからじゃ。思うたから、通じたんじゃよ』
『僕の事を、思い出してくれたんですね』
「こんなベタベタ触る人だったけ」
『夢でも、覚えていたいので』
「元気で救えた事だけを覚えててくれんかね」
『やっぱり、マティアスですか?』
「だけじゃ無いものねー?ハナのモテっぷりを聞かせましょうか?」
『じゃったら映画館じゃろう』
「やめい、パンクさせるな、知恵熱出るでしょうが」
《通えば良いのよ、ココを出入り口として》
《そうね、門を使えば良いわ》
『良いんですか?』
「良い場面ばかりじゃないけどね、してるのも有るかもだし」
『モテて当然ですよ。綺麗な髪ですし、料理も美味しいですし』
「君は、本当に、そんなんじゃ無かったろうに」
『もしかしたら、ラウラが知っているのは、別次元の僕なのかも知れませんね』
「ベタベタ星人、リタに紹介して貰いなさい」
『味覚が合わないので別れました』
「あぁ、もう既にか、我儘過ぎだ」
『そうですね、どうしても比べてしまうので』
「最低だな」
『凄く刺激的で、本当に、とっても楽しかったんですよ』
「平和か」
『はい、お陰様で。ブルーラグーンも復活して、妖精達の休憩所になってますよ』
「お、本物っぽい情報かも」
「ハナ、映写機に記憶を転写して貰いましょうよ」
『じゃの、記憶の等価交換じゃ』
「待った、デメリットは」
『ショナ坊が不安に思う位じゃろうか、くふふふ』
『それはそれは、絶対に観ないといけませんね』
そうしてレーヴィが立った瞬間、いつの間にか門の近くまで移動し、そのまま門を出て行ってしまった。
もしコレが誰かの悪戯なら、本気で殺してしまうかも知れない。
「ふふ、イケメンさんよね」
「いやほら、別次元のレーヴィかも知れんし」
『それはそれで面白いのぅ』
《エルヒム無しでの演算が、叶うかも知れないわね》
「あぁ、まだなんだね」
《大丈夫、少しずつ、変化はしてるわ》
《だけれど確実に、曲がらない様に進めるから安心なさい》
『うむ。少し予定が狂ってしまったでな、軌道修正じゃ、寝直せい』
桜木さんと白雨さんと、ドリームランドで離れ離れになった直後、直ぐに目覚めた。
確かに、何時も通りの起きる時間だけれど、何かがおかしい。
「白雨さん」
『あぁ、誰か、何かに弾かれた』
どうするべきか迷った瞬間、桜木さんが静かに目覚めた。
まるで起きてたみたいに、真っ直ぐにエナさんを見つめた。
「エナさん」
『うん、貫通おめでとう』
「え」
「ワザと語弊の有るチョイスは止めなさい。ドリームランドが繋がった」
「あの、何処へ」
「第2世界、1年後のレーヴィに会った。雪原で」
「え、僕らは離れて直ぐに覚醒したんですが」
「あぁ。レーヴィとは名乗ってたけど、別次元の存在かも知れない」
「それはどう言う」
「追々言う、一服して、温泉入る」
桜木さんと共に浮島へ行き、メールをチェックしていると、報告書が上がっていた。
ドリームランドの紫禁城限定で、第2世界のドリームランドと繋がったと。
ただ、レーヴィさんは桜木さんに嘘を言ったらしい。
実際の経過時間は50年弱、第2世界のドリームランドに居たつもりが、ココのドリームランドに来たらしい。
多分、目覚めない、老衰での昏睡だろうと。
そして桜木さんには、1年後から来たと嘘を言ったとも、姿の変わらない桜木さんに合わせて、嘘をついたらしい。
この事は、時が来るまで、桜木さんには伏せておく様にとの厳命が記載されていた。
マティアスさんも生きているそうで、引き取った兄弟の孫が面倒を見ているんだとか。
しかも最初の切っ掛けはマティアスさんだそうで、この紫禁城の夢を見たんだと、数年前に話していたらしい。
沢山の本に囲まれた不思議な場所で、天女の様な格好をした桜木さんを見たと。
裏付けも既に出ていた、従者の1人がマティアスさんを司書局で見たと、しかも見たのは加治田さん。
数日前の夢が、向こうの数十年後に繋がり、数年先に繋がり。
次は、永続的に繋がるかも知れないと。
『真っ青ですね、喜ぶべきでは?』
「ソロモン神、いえ、はい。もしかしたら、実は帰りたかったのかも知れない、もしくは奪われてしまうんじゃ無いかと。信じてるのに、不安なんです」
『マティアスに、ですか?』
「思い合うから、繋がったと思うんです。だから」
『どうなんでしょうね、レーヴィにすら塩対応でしたし』
「え、じゃあレーヴィさんも」
『あの子がレーヴィを信じられなくなる程、ベタベタしてましたから。ですが経年による変化は仕方のない事、気持ちは時に濃縮される事も有りますし。それか、ただ単に別次元のレーヴィなのかも知れませんね』
「もうその頃から」
『灯台は生来ですよ。そして灯台を失い、再び灯台を目にすれば、求めたくもなるでしょう』
「また何処かに」
『かも知れませんね。正直、もう私はそこは心配して無いんですよ、第3世界のソロモンの影を引き継ぎましたし、シバッカルは継承を続け進化しました。少なくとも、私は何処でもあの子を守れる自信が有りますから』
「もしそうなったら、引き留めては頂けませんか」
『他力本願は良く無いですよ、心配ならご自分でなさい』
「これソロモンさん」
『雑談です、悪魔の囁きなんてしてませんよ』
「どうだか、誘惑されてくれるなよショナ」
「はい、頑張ってみます」
「是非にも頼むよ」
一軒家へ戻ったものの、もう、全く整理出来無い。
と言うか、信じられん感じが凄い。
「あの、お話がしたいんですが。特に、レーヴィさんに関して」
「全く、ビックリ、そんな気配も無かったから安心してたが。ワシが節穴だったのかも」
「それなんですが。1年って、意外と長いと思うんです、何も無いと特に。入院してる時って長く感じませんでしたか?」
「それがそうでも無いのよ、動けさえすれば塗り絵や折り紙や、本も読めるし。寧ろ熱を出してる時と痛い時よな、何も出来ないと長く感じる。焦点が合わない時が最悪だった、何も出来ないのに元気なのがもうね、ストレスよ」
「だからって聴覚を等価交換しないで下さいね」
「しないしない、美声も好きだもの。ご苦労様です」
「いえ」
何か、変な空気。
当たり前だけど変な空気、でも、何をどう弁解すれば良いんだコレ。
変な空気のまま、蜜仍君が起きて来たので、エナさんも起こして朝食へ。
それから今度は蜜仍君を見送り、エナさん達は日帰り旅行を決行するらしい。
「おう、行ってらっしゃい」
「何もこんな時に」
『コレは、今回は私達には何も出来ない。それに、自分のせいで旅行を止めて欲しく無いでしょ?』
「おう、お土産楽しみにしとくわ」
『うん、行ってきます』
そしてまた、2人きり。
花子になって思案。
何か、眠いな。
桜木さんはストレスが溜まると過眠になる、見送ってから暫くすると眠ってしまった。
そして何だか、熱が。
『コレは、レーヴィの知恵熱を請け負ってるみたいですね』
「そんな、早く言って下さいよ」
『今さっき、そうなったんですよ』
先ずは氷枕をセット。
氷嚢を額に当ててから、バイタルチェック。
熱意外のバイタルには問題無し。
小さい額、気を付けないと、直ぐに氷嚢が滑り落ちてしまう。
『心配するな、封印する話がコレで立ち消えた。知恵熱で沈静化出来るとな』
「寝てる時ならまだしも、1日中なんて」
《じゃよな、何も出来なくはなるじゃろう》
「誰でもそんな、発案者も知恵熱を出してみたら良いんですよ」
『承りましょうか?』
「対価は何でしょうか」
『最近は特に楽しませて頂いてるので、何も要りませんよ』
「なら、少し、桜木さんが怒らない範囲で」
『承りました』
《くふふふ、愛の力は恐ろしいのぅ》
「誰もが、桜木さんへの過負担と過集中に気付くべきなんです。まだまだ真に、穏やかに過ごせているワケじゃ無いのに、こんな」
『人間の知らぬ、は無いに入る。その悪癖は、ずっと直らんのかも知れんな』
《アホやんな。見えへんかったら、知らんかったら、無いと同じや、存在せえへんて。捨てたゴミも、離れたモンの気持ちも、何も無しには消えへんのにな」
「もし桜木さんの様に、有るかも知れないと考えると、きっと動けなくなってしまう。大変だから、思考も何もかもを止めちゃうんでしょうね。実際に、僕も他人からの気持ちは切り捨ててますし」
《おっ、恋バナか?》
「同僚と、幼馴染の妹さんですよ」
『次に蜜仍に、逞しい子供だ』
《はぁーっ、大人には出来けへん事やね。オモロいやんな》
《その次にアポロじゃよ》
《クッソオモロい子やんな》
『ハナは、吹き出していたな』
《ひひひひひ、汚いやっちゃなぁ》
《くふふふ、それ位、欲張っても良いんじゃがな。こう、上手くはいかんもんじゃな》
《おうおう、難しいやろな、真面目で、律儀で馬鹿やし》
「僕にも言ってます?」
『自覚は有るんだな』
《くふふふ》
「まぁ、はい」
『似てると言えば似ているが、全く違う部分も沢山有るだろうに』
《周りもやんな、真面目はエエ事やで》
《それと、一途じゃな》
サクラが熱を出したって、例外だからって家に行かせて貰った。
まだ昼前なのに、寝てる、寝ながら発熱して。
「なんでこんな」
《ただの知恵熱やし、心配し過ぎると過保護や言われるで》
《じゃの、コレはハナの知恵熱では無いんじゃし》
『ドリームランドが繋がり、レーヴィが来た。それの知恵熱の身代わりだ』
「え、えぇ?」
「はい、僕はお会いしてはいませんが。マティアスさんが先に確認されていたそうです」
「でも、だからって」
《お前らも請け負ったらええやんけ》
「あ、確かに」
「いや、ショナは俺と交代で、ミーシャが起きたらで」
「はい」
どう請け負ったら良いか分からないけど、隣で寝てみる。
手を握って、頬を触って、そうしてただ横になる。
紫禁城の寝台で目覚めると、また次の日になっていた。
今日は薄緑色の服、髪飾りは蛍光硝子、目の前には女媧さん。
《レーヴィを迎えに行くわよ》
城内の門をくぐると大きな城門の目の前に来た、そして大きな門が開くと、軍服姿のレーヴィが。
イケメンはイケメン、そうやって鑑賞対象だったから何も考えもしなかったが、帰還出来なかったらあの誰かに流されてたんだろうか。
『観ましたよ、ココまでの記憶。大変でしたね、お疲れ様でした』
「頭撫で撫でをナチュラルに、まだ子供扱いやんな」
『それに託けて、お世話してたのかも知れませんね』
「いつからなの?」
『気を許してくれて、美味しそうにニコニコと食事をしてる時に』
「あー」
《さ、続きは中で》
レーヴィが城門をくぐり、振り向くともう宮の中。
省略の仕方が凄いな、御簾の裏に女媧さんが居てくれてるだけ、他の気配は何も感じない。
「ロリコン」
『成人してると聞いてからですし、それは難癖ですよ』
「何も無かったけど」
『思い人が居るなら無理だと思ったのと、マティアスの良き理解者だったので』
「理解出来てたか自信無いけど」
『僕ならまだしも、心を読まれて動じないだけでも凄いと思いますよ?まして離れようともしなかったんですし』
「別に、便利だっただけだし」
『そうですか?結構不便だったかと、突っ走る性格ですし、サウナにも連れ込んじゃう強引さも有りましたし』
「顔だな、顔顔、メンクイなんでね」
『あぁ、マティアスは外見は良いですからね』
「医療オタクだわ直ぐ泣くわ」
『映画や絵本以外で泣いてる所、初めて見ましたよ』
「あぁ、お兄ちゃんやもんね」
『救って貰った恩と言うより、3人が楽しかったんです。だから壊したく無かったのと、マーリンに普通に牽制されてたので』
「あぁ、あの蝉野郎か」
『ふふ、一緒に寝れて羨ましいって話してたんですよ。きっと良い夢が見られるんだろうって』
「マーリンはどうよ」
『ずっと、そのままですよ』
「まぁ、だよな」
『トールは還れました、そして本物のウッコ神が現れて。隣国も落ち着いて、すっかり平和です』
「1年の間に?」
『いえ、ココでは嘘を見抜けないみたいですね』
「あ、外してたんだわ」
『吸血鬼問題も、どこまでもモテモテですね』
「なー、向こうじゃそんな事は無かったのに」
『気付かなかっただけでは?』
「怖い事を言う」
『現に、僕もなので』
「ワシ、チョロいので悩ませないでくれませんかね」
『すみません、じゃあ本当の事を話しますね』
「いや、レーヴィの話したい事で良い。記憶の転写は完了してるんでしょうよ」
『そこが男前ですよね、だからモテちゃうんですよ』
「やりづらぃい、あぁ、全部観てんだもんなぁ」
『そうそう、断り方も格好良かったですよ。どちらか分からなくなるのも頷けました』
「ビッチやろ」
『モテるので仕方無いですよ』
「いつまで居れるの」
『察しが良いのは変わらないんですね。肉体が滅べば、元の次元に戻される可能性が高いそうです』
「いつ消えるか分からんのね」
『思い出が欲しいと言いたいんですけど、もう断られてるのを見てますしね』
「ね、ちょっと惜しい事をしたかもとは思ってる」
『こんなにイケメンが好きだと知っていたら、もう少し頑張るべきだったかもですね』
「レーヴィも、ギリギリなんよな、男らしいの苦手だから」
『性別変えます?』
「それでシオンと出来る?」
『見縊られてますね、何十年もの想いですよ?』
「結婚は」
『マティアスと一緒に養子を貰って、そのままですね』
「あのおじさんは?ノエルの」
『結婚しましたよ、シーリーさんとラルフも、ハンナも』
「ルーカスは」
『灯台でしたっけ、光が強過ぎたんですよ。ずっと残像が目に焼き付いて、春になっても夏になっても、もし居てくれたらと思わずには居られないんです』
「罪なワシですな、何もして無いのに」
『色々と有り過ぎたんですよ、だからこそ、平和に平穏になった時に、ふと考えちゃうんです』
「ごめんな、巻き込んで」
『いえ、心配だって引き返してくれた時。凄く嬉しかったんですよ、神も何も信じられないと思っていた時に、本当に助かりました。ありがとうございます』
「コチラこそ」
『やっぱり、あの時にはもう、好きな人が居たんですよね』
「まぁ、今はそう言えるが」
『マティアスより良い人ですか?』
「難しいかもな、良い勝負。マティアスも軸だったから、どうとも考えてもいなかった。せいちゃんも、ショナも全部、本当は見てるだけで良かった」
『結構、観てるだけは辛かったですよ?映画館でも、向こうでも』
「すまんね、不器用で鈍感で」
『僕としては気付かれ無くて助かりました、少しでも一緒に居たかったので』
「ある意味で同士ですな」
『そうですね』
「心残りは?」
『色々したかったですね』
「聞かなかった事にします」
『貞操観念がハッキリしてて、真面目な所もす』
「あーあうあうあーーーー」
『息、続きます?』
「肺活量には自信無い」
『じゃあ隙をついて言いますね』
「グイグイ来るなぁ」
『最後かもなので、形振り構わずですよ』
「マティアスの事は良いの?」
『早い者勝ちです』
「ワシの状況知ってる?」
『ハーレムを築かれてるそうで』
「しかも、紫苑単独すら居るし」
『僕らの世界で3人も被害者が出てますし、灯台の明かりが弱まる為にも、仕方無いのでは?』
「何で君が先駆けなのか分かったわ、マーリンと一緒に居過ぎじゃろ」
『仕事でどうしても関わる事が多くて、あ、マーリンも入れたら3人1神ですね』
「罪悪感を突くとは酷な」
『そこに罪悪感有ります?』
「勝手に思われてもとは思ってますな」
『ですよね、ちゃんと伝えたのはルーカスだけですし』
「凄い複雑なルートを攻略しないと、その道は無かったのよ」
『先ずは呪い、まだ解けては無さそうですね』
「ワシはカエルだから」
『総合的に考えると、僕も含めて皆さん所詮はカエルかと』
「コッチのロキにも会ったな」
『優しくて良い方ですね』
「チートじゃんか」
『そこまでしないといけないラウラが悪いんですよ?』
「綺麗な顔して邪悪な事を言う」
『年も重ねましたから』
「勝てる気がしないわ」
『負けてくれるんですか?』
「引き分けにしたいが、返事をする前に消えられても困る」
『繋がる事を喜んでくれますか?』
「どっちの意味で」
『どっちの意味でも』
「シバッカルくーん!座布団投げてくれんかねー!!」
『そこは山田君かタオルじゃろ、まぁ、しょうがないのぅ。心配せずとも良い、どう良いか迄は教えてやらんがのぅ、くふふふ』
『一筋縄でいか』
「はい、ご退場下さいませ。お帰りですわよー」
《もう、覚悟を決めれば良いだけじゃ無いのよ》
「相談はしたい」
《そんな事で離れるなら、とっくに離れてるわよ》
「でも」
『ふむ、ショナ坊が来ておるぞ?』
《ほら、さっさと保護なさいよ。冗談半分とは言え、色欲にガンガンアピールされてるわよ》
「なんでそんな事に」
『お主の不安の表れじゃ、確かめるにしても1番じゃろぅ』
《あの人間を見極めるにも。ほら、あの子なら兵部よ》
「いや、でも」
《あの女性従者も居るのよ》
「それ、関わらない方が」
《もう、素直になって良いのよ》
『そう言われても無理じゃろ、ほれ、寝台へ行くんじゃ』
お昼を過ぎても起きず、熱も下がらない。
緊急事態なので、ミーシャさんを起こす事に。
「どうなってますか」
「お世話係をお願いします、ドリームランド関連です」
「はぁ、桜木様が最優先。アナタ達は二の次ですからね」
「すみません、お願いします」
「分かりました。早く終わらせましょう」
「はい、宜しくお願いします」
目を覚ましたのはいつもの家。
頭ヒンヤリ、しかも夕焼け。
「大丈夫ですか、桜木様」
「あれ、なんか、熱出てる?」
「はい、水分如何ですか」
「先にトイレ行くわ」
トイレから戻ると、ショナも、蜜仍君も寝てるし。
アレクも、何で。
「寝っぱなし、熱を出しっぱなしで緊急事態でしたので」
「あ、ショナが、でも」
「私は詳しく何も知りませんが、簡潔に話して下さい」
「ショナが、アピールされてるって」
「なるほど」
返事と同時にミーシャがショナをビンタ。
そりゃ飛び起きますよね。
「すまん、ショナ」
「え、あの」
「すまん、ミーシャ」
「いえ、氷枕替えてきます」
「あの、大丈夫ですか?」
「君こそ、邪魔してすまん」
「見たんですか?」
「いや、何も」
「あの、詳しく話しても?」
「別れ話?」
「詳しく話させて下さい」
色欲さんに房中術を座学で教えて貰ってる途中、女従者さんが来たと。
自分が召喚者様だったら付き合えたのだろうか、と。
同じ選択を全て出来たなら有り得るかも知れないが、そうは見えないけれど出来るのかと。
「強い言葉を使うよね」
「すみません、少し、イラッとしてしまって」
「ワシにもいつか言うのかしらね」
「無いと思いますよ、慮り方が違いますし。僕らを優先して、レーヴィさんに答えを保留する位なんですから」
「そこまでバレてんのか」
「見てはいませんが、内容も、はい。僕らが嫌がると思いますか?」
「それこそ君らに配慮すべきかと」
「そう想像力の無さが許せないんですよね、桜木さんは立場を考えてくれるのに。もし自分ならって、それだけなんですよ」
「抑制解けてる?」
「いえ、解いたつもりは無いんですが」
『失礼しますね、憶測を言わせて頂いても?』
ノエルは尋常じゃない量の重ね掛けと、ワシが掛け直したお陰で、アレだけ抑制出来てたらしい。
そしてそれは普通に良くないレベルで、コレがこう、普通だろうと。
「だから、桜木さんの自制心が凄かったんですね」
「そこへ繋がるのか」
『では、失礼しますね』
「今日は謙虚やんな。まぁ、自制心っつうか、抑制魔法のお陰やね」
「掛けて貰えませんか?」
「却下」
「桜木さんのだけで、先生に相談させて下さい」
「なんで」
「まだ、抑制が足りないかと。それよりレーヴィさんです」
「うっ、まぁ、そっちが先やな」
「僕らを信じてくれませんか?」
「信じるって事になるの?」
「はい、期待して信じて欲しいんです。今回の事だけでなく、もし思っていた反応と違ったら、ちゃんと落胆して、呆れて下さい。直ぐに妥協しないで、残念だって示して良いんです」
「その期待を裏切ったら」
「本当に別れる事になるとは思ってます、でも、間違ってると思わない限りは、意見も考えも通します。そうやって、摺り合わせをしましょう」
「桜木様、家族とはそう言うモノだそうです」
「ミーシャ、正しい家族の姿だと思う?」
「人間関係、全て。私はそう思ってます」
「我を通す時は通す。練習して下さい」
「じゃあ、ごはん食べる」
桜木さんの熱は収まり、蜜仍君達も起きて、普通に夕飯を食べる事になった。
そして今日のメニューはアレクの案、エジプトのコシャリ、増量メニューを探していてくれたそうで、そのまま直ぐに作れるコシャリ。
パスタとマカロニを茹で、少しの塩とバターで炒めて水分を飛ばし、炊いてあった自家製ケバブ丼用のひよこ豆のピラフに混ぜる。
別添えでフライドオニオンとチーズ、シラチャーは勿論サルサやレモン果汁も用意、メインにはカオマンガイ用の鳥肉とキョフテを乗せ、混ぜて食べる。
キョフテはイスタンブールの店のモノ、食べ歩いてコレが好みなんじゃないかと探し当てたらしい。
そして実際に大当たり、買い溜めが決定された。
「つか、エジプトの店でコシャリ探してくるけど」
「それはワシもしたいんじゃが」
「エナさんも加わったら、誰が先に桜木さんの好みを探し当てるか、競争になりそうですね」
「良いなぁ、僕も加わりたぃ」
そして桜木さんとアレクと、レーヴィさんの事で庭先で話し合い。
「何で遠慮すんの?」
「そうなる?」
「そうですね」
「そうですねか」
「だって、そう遠慮されて喜ぶ俺らだって、そう思ってるみたいじゃん」
「そうは思ってないけども」
「そうしてるも同義じゃん。信じてくれてたら、俺らが嫌がらないって分かる筈じゃん」
「ですね」
「信頼して欲しいんだけど、何でしてくんないの?何をしたら信じてくれる?」
《せやせや、こんなクソ女ほっといてシオンだけにしたらええねん》
「あぁ、ワシへの罰が無いから不安なのかも」
「そう後退りしますか」
「俺らは心変わりしないって誓ったけど、サクラはして無いじゃん、だから別に」
「その罪悪感よ、最悪は足りなかったら補充しなきゃなんだし」
「それは連帯責任ですよね?僕らの技術や技能や、知識も経験も足りないからこそ起こるかも知れない事なんですし」
「俺は、そこは逆に不安、経験と知識が有るから。ウブな反応をあげられないし」
「そこをそう不安になる?」
《ほら、何も慮れんクソ女やんけ、ホンマに何がエエねんな》
「だからですよ、優先度合いが好きなんです」
《けっ、昔のワイみたいになりおってからに、そないな盲目状態でちゃんと芯を捉えられてはるんかいな》
「せやせや、冷静さも必要やで」
《お前は怯え過ぎやクソ女が、それが不安にさせてんねんぞ。駆け引きしたいんやったらまぁ、エエけど、そんなクソみたいな小細工するんかワレ》
「アカンな、実にアカンわな。駆け引きはしたく無い、不安にもさせたくない」
《せやったらもう少しラブラブしてやれやアホボケカスゥ、仕事もプライベートもお前はグラデーション状態やねんぞ。お前から行かんかったらコイツら甘える事もでけへんねんぞ、可哀想やと思わへんの?冷酷過ぎひん?クソ過ぎひん?》
「せやな、でもな、色々と多過ぎやねん、毎日イベントデーやぞ」
《そない言い訳だけはいっちょ前ですやん。こんなん、お前らを慮ってるとは思えへんねんけどなぁ》
「それは」
「煽るよなぁ、大好きじゃん」
《はん!好きの反対は無関心じゃい!今日はこの位にしたるからな!覚えとけよ!!》
「サクラ、あれがツンデレ?」
「おう」
「アレクの方が良く分かる事が、沢山有るんですよね」
「もう、本当に度胸が無くてごめんなさい」
「あ、いや」
「うん、早く度胸付けて、信頼して期待して欲しい」
「おう」
そうして桜木さんが温泉に行っている間に、エナさん達が帰って来た。
普通にお土産を披露し、普通にお土産話をし、紫苑さんの姿で少し早めの就寝。
目覚めたのは馬上、凄いな、お馬さんの上で寝ちゃえる図太さ。
しかも横乗りして、背中にはレーヴィだし。
「どうしてこうなってるんだろうか」
『僕は外国の賓客だそうで、場内が広いので馬での移動をと』
「楽しいか」
『はい、あの絵の中みたいで、とっても楽しいですよ』
「ワシの隠れた願望の発露なのかね」
『隠してました?』
「そこよなぁ、性癖全開やのにな」
『僕なら、もしハナとラウラが別に存在していたら、両方欲しいですね』
「さようでっか。何処に向かってんのよ」
『庭園ですよ』
四隅に有る四季の庭、夏の庭園へ。
様々な紫陽花が咲いている、花言葉は移り気や、浮気。
「花言葉知ってるか」
『今、知りました。綺麗ですね、どうしてココに連れて来てくれなかったんですか?』
「あの時には、ココは無かった」
『温泉や花街ですよ』
「安全面」
『ワンコ君に、任せてましたよね』
「嫉妬は次元を越えますか」
『ですね』
「イチャイチャすんな」
走って逃げた先は、宮の自室。
逃げられないらしい。
『流石に、僕でも入れないらしいです、耳飾りが無いと』
「益々渡せないな」
『出さないと言う手段が取れるんですよね』
「窓、はめ殺しか」
『スズランの君に、そっくりな彼が気になりますか?』
「抉るなぁ」
『あの後から、徐々に顔が変わっていったんですよね。本来の顔に』
「アレは無知故の事故です。ただ、無意識だったねん」
『あのままだったら、3人2神と2妖精ですかね』
「第3のロキと、淡雪か」
『もっと言うと5人2神2妖精ですかね』
「ワンコと、せいちゃんか」
『それにアオイさんも。こう分かってるだけで、コレですからね』
「制御出来たらね」
『だから、僕が居るのかも知れませんね』
「それでもダメなら」
『来ちゃうかもですね、マティアスもワンコも』
「どう足掻いてもか」
『勿論、全て拒絶して孤独でも良いですよ。それはそれで、同じで一緒で嬉しいですから』
「歪んじゃったか」
『ラウラが孤独を選んだら、そうなるかも知れませんね』
「だれかー、助けてくれー」
『誰が、来ますかね?』
「あぁ、裏目に」
「あの、お呼びで?」
「君が来るとは」
『初めまして、レーヴィです』
「どうも、祥那です」
『ココの恋愛事情を教えて頂けませんか?』
ちゃんと名指ししないとダメね、うん、ごめん。
すまん。
「大丈夫ですよ、僕の役目だとも思ってるので」
『優しくて良い方ですね』
「おう。レーヴィ、もう少し視野を広げては?」
『アナタの故郷にも行ってみましたけど、ダメでしたね』
「行ったのか」
『美味しかったですよ、イクラ』
「天ぷらは?」
『はい、でもお箸に慣れるまでが大変でしたね』
「お蕎麦」
『マティアスは出来てましたよ、豪快に啜ってました』
「難しいか」
『と言うか羞恥心でしょうかね、下品じゃ無いとは分かっていても。固定概念を覆さないといけないので』
「マティアスもか」
『数年してから傷心旅行に、子供達も一緒に。何人かが移り住みました』
「リタは?」
『男の子が2人、女の子が2人です』
「いかんな、もっと聞きたくなる」
「退席しましょうか?」
「いや、ごめん」
《もう、何が足りないって言うのよ》
「時間」
『よしよし、承ろう』
シバッカルが柏手を打つと、温泉郷の部屋に切り換わった。
目の前にはマーリン、助かった。
「助かった」
『そんなに嫌か』
「君まで言うか」
『いや、お前の好きにしたら良いと思う』
「お話の中の人達は、どうしてホイホイ受け入れられたんだろうか」
『思考停止して甘受するか、仕方が無いで済ますか、役目と諦めるか』
「掃き溜めから白いウンコ取り出して」
『蓼食う虫も居るんだろう』
「群れてか」
『大概の生き物は群れる』
「いっそ、いや、何でも無い」
『命令されての役割までは、求めて無いだろう』
「冷静になりたい。何か、喋ってくれ」
『昔々…』
昔々、黄金の卵を産む、黄金のカエルが居ました。
何十年かに1度生まれる黄金のカエルを奪い合い、度々戦争が起きました。
そして戦争に巻き込まれた子供達の願いを叶える為に、神様達は黄金のカエルを神の世界に保護する事にしました。
ですがカエルは幸せでは有りません、他のカエルも居ないし、同じカエルも居ません。
とうとう寂しくなった黄金のカエルは、黄金の涙を地上へ落とす様になりました。
なのでまた神様達は相談して、今度は黄金カエルを別の世界へと送りました。
それでも同じカエルはおらず、黄金のカエルは何個も何個も世界を渡り歩きました。
おしまい。
「おしまいかい」
『お前自身に決着が付いて無いんだ、仕方無いだろ』
「理想は?」
『自分を黄金の蛙だと認め、蛙の仲間が居ると認める事』
「認めてるつもりなんだけど」
《ビビり過ぎじゃろう、そんなに信頼出来ぬか》
「ショナが、1番信じられないかも知れない」
《そんなアホには見えんがのぅ》
「ウブの欠点は、比べるモノが後から出て来たら、心変わりしてもおかしくないじゃない。そう良い様に利用されてた子が居たから、怖い」
《本当に好きじゃとか、運命の人、じゃろか》
『お前の親の愛人も、ウブだったのか』
「まぁ、離婚して無い時点でお察しだが。親の仲が良かった頃の事を、聞かされてるからね」
《もう確認出来ぬのじゃし、嘘だったと思えば良かろう》
「エルヒムの演算の力を借りたいよね、エルヒムのせいに出来るし」
《真面目じゃのう、実に無駄な真面目さじゃ》
『裏切られたらぶっ殺せば良いだろう』
「つかぶっ殺すってパワハラやん」
『情熱的とも言い換えられる』
「マーリンは、良いと思うかこの状況」
『少なくとも、お前が苦しんでるのは分かる。良い悪いじゃない、仕方ないと呑むしか無いだろ』
「ありがとう」
『ふむ、では戻るかの』
シバッカルが再び柏手を打つと、目の前にはレーヴィと先生。
宮の自室、他には誰も居ないらしい。
「レーヴィにはすまないと思ってるが、時間が欲しくて」
『僕は大丈夫ですよ』
「それ、成人の状態での過度な身体接触は避けてくれ、もう機能が戻ってるんだから」
《それ、逆に煽り文句にもなりかねないかと》
『ですね、迂闊ですよ』
「もう喋らん」
『似合いますね袖の有るモノ、可愛らしいですよ』
《手加減しない方ですね》
「諌めといてくれ」
《では、止める理由を下さい、私は歓迎してますので》
『ありがとうございます』
本当に、何が良いのか、そうやって内容を聞いてしまったら。
そうなったら、ワシは容易く落ちてしまうし。
《少し、宜しいでしょうかね。なんせ、頑固なので》
『はい』
「すまん」
《いえ、危惧してはいましたが。レーヴィさんもとは予想外でしたので》
「でしょ?アレ、どうしてあんななるの?」
《年数でしょうね。平和になったからこそ落差が有り、蓄積し、濃縮された》
「平和になったから、だけなら嬉しいんだが」
《この調子なら、井縫さんも来るのでは》
「ぅわぁ」
《彼だけ、反応が過剰ですよね》
「アレ、凄いエロいんだもの、来られたら理性飛ぶ自信しかない」
《あぁ、抑制魔法の実験は賛成ですから、後でお願いしますね》
「あぁ、うん、はい」
《私はもう、推し進めたりはしませんよ。君を信頼し、信じ、期待もしていますから》
「こう、手間を取らせたく無ければ」
《寧ろ、もう、すんなり受け入れた場合の方が心配になりますね。それが君なので》
「ワシが、ワシを受け入れられて無い」
《完璧で完全で自信家では無いからこそ、私としては大罪化の心配が無いと考えてますから。大罪達のあの自信、君には無い要素でしょう》
「白雨はどうなのよ」
《自身の考えが正しいと思ってきたからこそ、孤島に居続け、書からの学びだけで充分だと思えていた》
「ワシが、不完全にしたんか」
《良い意味で、です。神にはなれぬ神性持ちを解放した、良い事だと思いますよ》
「あぁ、うん」
《お任せしますが、どうか遠慮はなさらずに。では》




