5月4日 招待された
朝からゴロゴロしつつ、リズちゃんへのプレゼントや行商の事をタブレットでダラダラチェック。
果てはゲーム選びやなんやと過ごしていると、お昼過ぎに女媧さんが中庭にやって来た。
投票の事で気を使ってくれてるのか、お昼にでもエミールと共に紫苑の姿でと、移民達の居る紫禁城へ招かれた。
外遊、視察と言うか、交流会。
移民達に人気の中華、復刻したレシピの試食や、難しいニュアンスの翻訳等々。
スーちゃんやアンちゃんと共に過ごす事になった。
ハナって言うか、今日の紫苑は凄く優しくて怖い。
元気が無い素振りが一切なくて、皆に優しい。
「紫苑、凄く怖いんだけど」
「へ?怖い?」
「優しいのが怖い」
「歌か思春期独特の意味不明っぽさが有るんだが」
「何か、今なら分かるかも、紫苑の優しさが怖い」
「えー、キツくしたら良いん?」
「そう言う感じ、それも怖い」
「ホルモン大丈夫か?」
「ダメかも、話し合いたい」
「おう」
出来るだけ言語化した結果、辛さが見えないのが、我慢してるんじゃ無いか。
その我慢の先に、何か爆発してしまうんじゃ無いかと言う恐怖、離れたり消えるかも知れない恐怖と。
「実はもう無関心だから、優しいんじゃないかって、怖い」
「ワシの日頃の行いか」
「半ば、うん」
「無関心違うんだけどなぁ、許容範囲は確実に広がったとは思うけど、まだあの河瀬は許せないぞ、ルーカスだってそうよ」
「他は?ノエルは直ぐに許しちゃったじゃない」
「もふもふに負けた」
「真面目に」
「ノエルは違うもの、妖精の事は最悪だけど。迂闊じゃ無いって分かるし、罰も自分で考えてくれてたし」
「分かり合えたのに、何度も離れて、いつか無関心になるんじゃ無いかって思うと、嫌なの」
「そしたら召し上げだろうね」
「執着して欲しいの」
「してる」
「見えない」
「んー、ショナさん、来てくれ」
「はい、何か」
「スーちゃんが優しくて怖いと文句を言ってきた、無関心ぽくて怖いらしい、だけどワシ、執着凄いよね?」
「先生としては、少し関心が薄いのかも知れないと懸念してます。宝くじが当たったら、どうしたいかと話していた内容、覚えてますか?」
「旅行しまくって、本やグッズ買い漁って、推しの棚を作る」
「今現在、収集癖が出てないので、心配は心配だそうです。そもそも、探さないからですよ」
「私も確認してるんだからね。遊んだり買い漁ったりして欲しいけど、仕事の事ばっかりで、全然執着しようとしてくれないんだもの」
「何その、子供は遊ぶのが仕事的な愚痴」
「何か、オタク臭が消えて不安なのかも?」
「ストレス発散でも良いので、引く位に何か買い漁って欲しいですよね」
「先ずは旅行ありきなのよ、旅先でスノードーム買って、次に本を買う。冬なら旅館に缶詰めになるとか、その缶詰め用に本を買い漁って、気に入ったらグッズ買い漁ってって段取りが有るのよ。じゃないと読むのが速いから本が尽きる、完結して無いともう嫌なのよ。連載を待つのはもう嫌、向こうで作家さんが書かなくなったりとか、出版社と揉めてるっぽいとか、死んだりとか有ったから」
「ファンレターとか出してたの?」
「無い、好きですの1言しか浮かばんくて、恥ずかしいし、引っ越し多い方だったし」
「あぁ、引っ越し、そっか。でもそこで人見知り?恥ずかしがり屋?」
「両方かも、つうか作品以外の情報を付帯させたく無い。ファンレターが読まれず廃棄されてましたとか情報を知ったら、作品ごと嫌いになる可能性が有ったし。声優の顔は見ないで良い派、なんならインタビューで嫌いになった事も有るし。どんな人間でも作品が好きってなるには、かなり歳月が要るから、情報は遮断派」
「潔癖」
「だって推しが捕まったりしたらもうね、思春期には大ダメージ。しかも0に未完の棚が有る位ぞ?死んで無いのに」
「そんなに?」
「リズちゃんに聞いてみ?意外と有るのよ」
本当に、良く有る事みたい。
病気や怪我は勿論、本当に色々な理由での未完。
捕まる作家さんもいたり、出版社や誰かと揉めたり。
「凄いのね、完結するって」
「有名じゃ無いと打ち切りで1冊にもならなかったり、でも短編が出たらもう安泰なんだけど、今度は死の危険が有るからね、もうあんまりドギマギしたく無い」
「エルヒムなら、シミュレーションで出してくれるかもなのにね」
「もう追々で良いのよ、与えて奪うは強烈だから」
「もう、トラウマってるじゃない」
「与えられて奪われてが好きな奴は変態かと」
「まぁ、そうだけど。でも探してよ、私の為にオススメ教えてくれないと、毎晩泣く」
「ストレス発散には良いらしいが」
「もー」
「考えとくから、もう行こう、皆がソワソワしとる」
オヤツを楽しむ会を兼任した視察を終え、次は隠匿の魔法を使い、買い出しへ。
ショナと蜜仍君にある程度まで選んで貰い、遠見で確認し、購入指示を出す。
被害者を出さないで済む方法、便利。
そのまま一軒家へ帰り、お昼寝。
少し遅いお昼寝から起きて、ハナさん達とのんびり塩漬けや砂糖漬け、色々な瓶詰めを作っていく。
懐かしいけど、新鮮な感じ。
『ふふっ、本当に何処でも、瓶詰めって作るんですね』
「エミールの所も?」
『卵のピクルスが売ってて、凄く酸っぱいんですよ』
「あー、無理だろうなぁ、ピクルス苦手だし」
『クルミの、食べてみません?』
「チャレンジはする」
あんずボーみたいな甘酸っぱさだって、お菓子をくれた。
うん、確かに似てるかも。
『家ではピッカリリを作ってて、レーヴィさんみたいに、レシピを覚えてたら良かった』
「ピッカリリ?」
ターメリックの入ったマスタードピクルス、お肉と食べると美味しいので、ハムやウィンナーを出して少し食べて貰った。
「まぁまぁ、食べ慣れない感じだけど、まぁまぁ」
『意外と同じ味に出会えなくて。練習ばっかりで、もっと何かしてたらなって』
「健康なら、戻りたかったよな」
『最初はそう思ってたんですけど。こうして皆さんと過ごして、怪我を負ったまま戻る事も考えて。でも、今の僕が戻ったら耐えられるけれど、記憶も何も消えて戻ったら、こうなって無いなって。だから、楽しく生きてて欲しいと願ってくれてたら、ココが1番だって思ったんです』
「後悔しない様に生きておくれね」
『はい』
「すまんね、良い見本になれないかもだけど」
『ハーレムの事ですか?僕は受け入れてますよ?』
「話も気持ちも、乱気流」
『例えば、大食漢な吸血鬼さんなら、1人だけって死人が出るじゃないですか?なら、飲まれる人間は多い方が良いと思うんですけど』
「様々なアプローチが来ますな、成程」
『瀉血って概念も聞きましたし、少量なら却って皆さん健康になるかと』
「先生か」
『思考のお手伝いはして頂きましたけど、ちゃんと自分で考えて、調べた結果です。出血の害悪やメリットって、調べました』
「はぁ」
『それで、ユラ君にはいつ会えるんですか?早く会いたいんですけど』
「なんでやの」
『知らない人って、まして長く知らないと、逆に不安なんです。皆さんで、仲良くしたいので』
「なん、吸血鬼以上の、未成年不可侵な事情も含むんだが」
『ハナさんが好きな人なら。そして僕は僕で、結婚出来る年になって、お互いに思えてたら、それで良いなと思うんですけど』
「いや、君もハーレム形成すべきでは」
『ハナさん以上に魅力的な方が居るとなったら、その時にちゃんとご相談しますよ?』
「強く出れない良い具合のセリフを、ロキか」
『ふふっ、皆さんに、考える事の面白さを教えて貰ってます』
「ドリアード」
《何で我が真っ先なんじゃ!》
『日頃の行いだろう』
『ふふふ』
こうして、ユラ君に会わせる事に。
普通に接してくれるのは有り難いんだが、何かこう、落ち着かない。
『大丈夫ですよ、無理も嫌悪も見られませんし』
「何だろな、この感じ」
『外堀が埋められていく焦燥感、でしょうかね』
「それか、ソロモンさん入れ知恵して無い?」
『していても言えませんから、ノーコメントとしか言えませんよ?』
「あぁ、楽しいですか」
『まだまだ、本命がまだですからね』
「ショナや、どう見える」
少し離れた場所で、エミール君とユラ君を観察していた桜木さん、不安と言うか納得していない様子で意見を求められた。
白雨さんやアレクとも、無理や摩擦は無い様に見えるけれど。
こう、桜木さんの好みの顔が揃うと、どうしても気後れが出てしまう。
でも、聞きたい部分はそれじゃ無いだろうし。
「問題無さそうですが、何か有りましたか?」
「向こうが額縁の中の世界で、ワシは鑑賞者なのよ。あの額内に入れって言われたら、あ」
「整形ですか?」
「いや、逆の発想じゃよ」
そう言って直ぐに浮島から浮島へ、そして泉の前で何かを話して暫くすると、小瓶が泉から飛び出した。
透明な液体に、鱗の様な何かが2枚。
「あの、それはまた。魔道具では?」
「さぁ、どうでしょうねぇ」
「その感じ、凄く不穏なんですが」
「ワシの割に良い考えだと思うんじゃけどなぁ」
紫苑姿のハナが持って来たのは、コンタクト、私へ試したいって。
小瓶から取り出して両目に入れて、ハナに魔法を掛けて貰うと、ハナが、ハナの理想の顔に見える。
イケメンだけど。
「すっごい不安」
「えー?」
「だって、違って見えるんだもん」
「イケメンじゃろ?」
「そうだけど。コレで、受け入れられるの?」
「まぁ、実験よな」
真っ先にショナ君が標的に。
そして、同じ感想が出ちゃった。
分かる。
「不安か」
「ただ、声は同じなので護衛は大丈夫ですけど」
「あ」
「あーぁ」
そして今度は声を変え、エミール君へ。
材料はドリームランドの龍の鱗と、妖精の粉らしい。
見え方も何通りか有るかもって、しかもエミール君にも効いてるし。
『外せるから、まだ安心ですね』
流石にそこまではしないみたいだけど、何か、進んでるって言うか。
「それで、何をするつもりなの?」
「行為、致せたら不合格とか」
ショナ君は鉄仮面だけど、白雨さんやアレク君は真っ青、全員凍り付いちゃってる。
そうよね、やっぱり見た目って大事なのよ、色んな意味で。
「でも、それはハナって思えば平気なんじゃ」
「見つけ出して致すまでがゴールとか」
「もう、全速力で後退るのね」
「難し過ぎるか」
「私は、自信無いかも」
「じゃあ、ギリギリのラインは?」
「桜木様、少し良いですか?」
蜜仍君は問題無いと思ってるのか、次々に案を出した。
変化や偽装の魔法、消臭剤の魔道具もフルで使って、数人の中から選ぶ。
ハズレは変化した土蜘蛛族さん達、白雨さんとアレクは、負けたら色欲さんのお店で働く事に。
「ちょっと、エグいかもだけど、うん」
「そうよ、それはちょっと、流石に酷じゃない?」
「何でも民意に沿ってたら、誠意って伝わらないと思うんですよね?」
「ワシにも刺さる。つか君らもコレをするかもなんだぞ?」
「信じて貰えない大人が悪いので、丁度良いと思いますよ?」
今度は全員に刺さっちゃった。
「いや、コレはワシの問題で」
「同時にハーレム候補者の問題です、覚悟が無いなら候補を辞めたら良いんですよ」
「君、もう抜け道を見付けたか」
「ノーコメントでーす」
「私は反対、だってハナって見抜ける要素無いじゃない」
「そんな事は無いですよ、対話は可能なんですし。流石に細かい癖や思考までは完璧に摸倣は不可能かもですし、成功すれば受け入れて貰えて、しかも致せるんですよ?」
「たんま、逆にハードモード過ぎて、ハードルが高いし。ちょっと、相談したい」
ハナが踏み止まった。
コレがもし蜜仍君の作戦なら、取り敢えずは成功だけど。
《くふふふ、かぐやか》
『今回は正しくだな』
『追われるのが、そんなに楽しいですか?』
「そのつもりが無いから困るんだよ、こう、平穏に確認出来る方法は無いかね」
『寧ろ、良いと思いますよ。何なら全世界中に魔法を掛けて、アナタを探し出させる事も可能なんですし』
「いや、そうしたら被害者が」
『その被害者の方が、真にアナタを愛してくれるかも知れませんよ?』
「いや、そう新しい出会いとかは要らないのよ」
《何故じゃ?ストックは多い方が良かろう?》
『候補者達には酷だろうがな』
「いや、後宮とか大奥を再現したいんじゃ無くて」
ハナ、必死。
『そもそも、遠慮していても良い事は無いんですよ?』
《そうじゃよ、条件をもっと高くし、上を目指しても構わんのじゃし》
『その上とやらが有れば、だがな』
今度は神様達が、いつもハナが皆に言ってる事を言ってる。
もっと他も見ろ、もっと良いのが居るかもって。
「ワシが皆に言ってる事を、ワシに言ってるのよね。でも、運命さんは、急に、後からでも現れるんだもの。そうなるのが嫌なのよ」
運命の人、ハナのお父さんや浮気相手が使った言葉。
嘘でも本当でも、具現化や実体を持たなくても、人を傷付けられるのが言葉。
怖いからこそ、気を付けないとと思って、思い過ぎて何も言えなくなる事も有る。
「ハナ、例えそうなっても、ちゃんと話し合ってくれる人達だから、候補者なんじゃない?」
「自分の立場はさておき、本当なら、外部とすら接触して欲しく無い位に、不安が強くて、独占欲も有る。ワシのハードルを高くしたいんじゃ無いのよ、揺らがない自信と根拠を見せて欲しい。でも、幸せにもなって欲しい、でも、幸せにする自信も無い。負の感情が無限ループして、受け入れるとかの概念へ到達出来ない」
多分、皆そうやって不安になったりする。
それでもお付き合いしたり、結婚するのって、好きが理屈や負の感情を凌駕するから。
でも、例え凄く好きでも、自信が無いとこうなる。
私とで良いのか、いずれ不満に思うんじゃ無いのか、他にもっと良い人が居るだろうって。
「そうやって諦めて、他の人にいかれて。少し寂しいけど、安心しちゃうのよね。自分は安全地帯だから揉める事も無いし、別れたり嫌われる事が無いものね」
「両親は最初は仲が良かったって、なのにあんなんで。あんなのの血を引いてるし、似てるなと思う部分が有るから、受け入れて欲しく無い部分も有るし。ハーレム形成後に、嫌われたり揉めたく無い」
『心変わりが起きたら、嫌われて殺される様にする、ハナに殺されるのでは無く、神々に殺される様に。ヘル神に誓う』
桜木さんの独白後、白雨さんが誓いの言葉を口にした。
ゲッシュが。
《承ったわ、良い子ね白雨》
「ヘル、出て大丈夫?」
《このベールが有れば大丈夫だって、そうずっと言われてたのに、私が信じられなかったの。神が神を信じないなんて可笑しいでしょうけど、信じるのが怖かったの、責任を共有したく無かったの。けど、意図的に引き籠もってると心配させる事にもなるわ、だから連帯責任を受け入れたの、何か有れば一緒に、皆で責任を取ろうと思ったの》
「周りに害が有るって思ってたの?」
《勿論よ、害を成すって投げ落とされたんですもの。でもね、実は限定的で、私の為でも有るからそうしたんだって、本人から聞いたの。だから、それも信じてココへ来たの、それでもし何か有ったら、お祖父様も連帯責任、ふふ、大手を振って殺し放題よ、ふふふ》
「ドゥシャが居たから、信じれた?」
《そうね、でもそれはハナが居たから、おタケが居たから。ハナが良い子だから、ドゥシャが良い子なの。白雨もアレクも、コンスタンティンも、カールラにクーロンも良い子だから、アナタが良い子だって、十二分に証明してるのよ》
「そんなに、影響を受けるの?」
《私の記憶、神々の記憶には有るのだけれど、人間側は全てを全員に教えてはいないでしょう?それは、偏見を持たせない為だけれど、弊害も有る、全てが神聖視されてしまう弊害。歴代に結構居たのよ、酷いのが。ヨモっちゃんの記憶にも、どの死者の国にも、転生者と召喚者の記録は有るの。そこから比べたらもう、かなり良い子よ》
「それを否定するには、どうしたら良い?」
《ふふ、観せてあげたいのだけれど、人間側の許可が出ないのよね。混乱を招くから、かと言って転生者や召喚者にだけ観せるのも、特別扱いになるからダメって屁理屈で。正直、人間側にイライラしてきてるのよね》
「すんません、不甲斐無い」
《ハナは謝らないで、アナタは委ねた、謝るべきは人間側なのだけれど。そうね、信じないモノに加護を持たせないのも、必要な鞭だと思うのだけれど、どうかしら?》
「人間は許容量が神様より小さいだろうから、もう少し待って貰えませんかね?」
《ふふっ、請われてしまったから仕方無いわね。じゃあ、しっかり記録して伝えなさい、神々が信じる召喚者や転生者を信じないなら、相応の事が起こるとヘルが言っていたと。宜しくね従者》
「はい」
コレは最終手段。
最初から分かっていたのに、改めて提示される条件。
曖昧だった境界線をハッキリさせ、明確に立場を表明した。
しかも今回は死の国の神様、皆が恐れる神様。
僕らは優しい方だと知ってるけれど、もしかしたら勘違いする人が。
「ショナや、書類の提出を少し待ってくれんかね。ヘルの事で勘違いが起こっても嫌だし、時期を相談して欲しい」
「はい」
「じゃあ、俺はヨモツ様に誓う、心変わりは死で償う」
「アレク、なん」
「俺は他としたく無いから、さっきの案が失敗したら生きてたく無い。その願いを叶えて貰う対価はサクラと払う、代償は死で償う」
アレクが一気に言い終わった瞬間、ヨモツ様が影から出てくると、キクリヒメ様を呼び出した。
そうしてキクリヒメ様が桜木さんの小指に触れ、アレクの首元に触れ、白雨さんの首元にも触れた。
そうして3人を繋ぐ赤い糸が現れたかと思うと、直ぐに糸は見えなくなり、神様も消えてしまった。
「他のに厳命、ハーレム関係のゲッシュはワシの許可を得てからだ」
「はい」
ちょっとゴネたら、とんでも無い事になった。
過激な案を出したのは悪かった、篩い落とすなら良い案だと思ったから。
なのに、死に直結するレベルになるとは思わないじゃん。
咲ちゃんとウーちゃんは普通にしてるけど、ダメならダメで注意して欲しいんだが。
《良い盟約だったのに、浮かない顔だ》
『自分で殺したかった?』
「いや、ワシが殺せない方が良い。助かる、だけどこうなると思って無かったので、ビックリしてる」
《私とウーでは不満か》
『もっと苦しめられるのに頼もうか?』
「君らもそこそこ苦しめられる方だと思うが、上が居るの?」
《上と言うか下と言うか、左右だろうか》
『じっくりジワジワ溶かすとか、煮るとか』
「あぁ、中々ですな。でも、こんな事で」
『国には国の、家庭には家庭の、ハーレムにはハーレムの独自のルールが存在するんです。そのルールに従えないなら、ハーレムに入る資格は無いんですよ』
「ソロモンさん、だからって神様まで使って」
『お立場をご理解してるのでは?力も能力も有り、繊細で特別。もう退役如きでは立場を変える事は不可能、何故ならもう既に、功績が溢れているんですから』
「浮島か、そうよな、もう人間の算段に加わってるなら、権利の放棄云々では済まんし。仮に済んでも」
『果ては責任問題へ発展するかと、何故、どうして義理や恩を返さないのかと。ましてやエミールが居るんですから、全てソチラに任せるなんて事は、アナタはしないでしょう』
「果てはエミールを守る為にもって、卑怯な言い訳では」
『彼がそれを呑まない場合は、ですが、既に呑んでいます。そしてご恩返し以上に、アナタの為にと努力している。それを無碍に退けては、気力を取り上げるだけでは済まず、最悪はワンコの様にネジれるかと』
「でも、今からでも」
『では仮に、マティアスがココへ転生して来たら、全てを知ったらどう思われると思いますか?アナタに何と仰るとお思いですか?』
桜木様が、慰霊碑の前に行ったまま帰って来ない。
整理する為なのか、まだ悩んでいるのか、背を向けてるから全然分からない。
「桜木さんは、1日1説得を受けると、ゆっくり進め様としてたんですよ、蜜仍君」
「ご心配なら候補を降りられては?桜木様にはショナさんが候補だって知られて無いんですし」
「知ってたら、サクラはあんな事」
『それでも言った可能性は高い、自分以上に相手を評価している以上は、発生するだろうと。先生が言っていた』
「そんな、整形をするつもりは無いって」
『整形は戻せない、この魔道具ならタネ明かしが出来る。本気になる前の脱出装置、自傷行為の道具』
「まだ加害者のままじゃ、難しいよな」
だから、何かを変えたくて行動した。
極端でも酷でも、桜木様なりに考えて受け入れようとしてくれてる。
なのに、だから。
「だからさっきの案は、それを受け入れさせない大人達への罰です、自分ならこうした、ああしたって、それを聞きたがってるのに。皆さんが嫌がってるから桜木様は悩んだまま、迂闊に言えない内容ですけど、でもだからって、それが桜木様を悩ませ続ける理由になると思いますか?」
「そう、そうなっても蜜仍君は、ハナに嫌われても良いのね」
「桜木様の為になるなら、僕の気持ちより桜木様が優先です。僕は子供だから、色々と経験不足だから、真面目に聞いて貰えても責任が取れないし。でも、だからって、大人でも僕は実行しましたよ。例え失敗しても、桜木様に何かを認めさせる、その切っ掛けになるかも知れないんですから」
「蜜仍君、誤解されちゃうかもなのに?」
「誤解を恐れたら何も言えないし、出来無いと思いません?それに、信じてるので、運命も桜木様も神様も、精霊さんに妖精さん、皆さんを信じてるから。桜木様に嫌がられても、僕はします」
好きだから何かするとか、しないとか。
大人は色々と知ってる筈なのに、桜木様にセオリーは通じないのを知ってるのに。
どうしたら信じて貰えるか、例えそれが突拍子の無い事でも、好きな人の為なら何でも出来るなら、すれば良いのに。
「どした、蜜仍君、喧嘩か」
「さっきの案、未成年でも出来る様に変えられますよね、して下さい」
「何でキレてんの」
「大人は言い訳ばっかで、何もしないで文句を言うのが、嫌なんです」
「守る物が多いと仕方無いのでは」
「多いなら手放したら良いんです、手放したら死ぬワケじゃ無いのに手放さない。なのに、しない言い訳に使ってるのに、それなのに困るって言うじゃないですか」
「自力で立ってると思ってるからでしょう、まさか見え無い杖を持って使ってるなんて、思わんのでしょう」
「桜木様は分かった上で悩んでるのに、分かって欲しいんです」
「蜜仍君なら、どう戻って来た」
「桜木様と同じ様にしました、観た記憶を、記憶を消して貰っても構いません。僕は何度でも同じ選択をします」
「エルヒムも、最初はこうやって、考えるだけの人だったのかもね」
「僕は、資源や資料として持って来たかも知れません、だけど桜木様の様に、人間として見れるかどうかは分かりません」
「そう乖離の無い神様達に囲まれてるからね、良い意味で違いがそう無い様に見えるだけよ」
「皆がそうじゃ無いんです、どうしても存在を疑ったり、信じきれなかったり、遠い存在の何かだって思っちゃうんです」
「ワシも遠い存在と思ってるぞ?さっきの案ですら、もっと残虐に殺してくれる誰かを勧めて来るんだぞ?流石にビックリだわ」
《溶かすのか》
『煮詰めるか』
『君は何が良いですか?』
「もし心変わりしてしまったら、皆さんの記憶から消して欲しいです、苦しんだり悩んだりして欲しく無い。それで、僕には誰もが桜木様に見える様にして欲しいです、裏切った罪と罰を、僕だけが一生背負いたいんです」
「未成年のゲッシュ禁止」
『では、大きくなったら、改めてお願いして下さいね』
「はい!」
「もし、君が大きくなっても、そう本気で思っていてくれたら。ワシは、嬉しいけど、ちゃんと他も」
「良く学び視野は広く、ちゃんと頑張ります」
「うん、宜しい。良い子だ」
「えへへ」
蜜仍君は、ちょっとキレた感じでハナの所に行ったのに、帰って来た時にはすっかりご機嫌。
片や大人チームはもう、お通夜、特にショナ君。
「諦めて、試合に出なくても良いんだよ?自信無いと、良く無い方向に行くって、先生も言ってたし」
「皆さんに、相談しても良いでしょうか」
「俺は良いけど」
『構わない』
「僕もですか?」
『未成年ですけど』
『俺も、元狼だけど、良いの?』
「はい、皆さんに相談させて下さい」
「うん、はい、どうしたの?」
「皆さんの顔と僕の顔、違い過ぎて。本当に、僕は候補者なんですか?」
「なんだぁ、その事かぁ」
『ウブ2号だな』
「マジでな、ヤバいじゃん」
「大人なのになぁ」
『大人だからですかね?』
『俺は1抜けた、ハナー』
「え?コレ、この反応って、どっちなんですか?」
「エリートさんだから自信が有るって、偏見持ってたかも、ごめんねショナ君」
『君こそ、しっかり先生と話し合うべきだと思うんだが』
「ですねぇ」
『送りますよ?』
「いや、俺が送るよ」
祥那君がアレク君に連れられ、中庭へ。
魔道具で波風が立ったとは聞いているんですが。
「あの、僕は本当に、候補者なんでしょうか」
《はい》
「明らかに、逆に、浮いてませんか?」
《系統は違いますが、桜木花子の好みかと》
「それは一緒に居過ぎたせいで、桜木さんが」
《君が蛙化現象を、いえ、少し違う現象ですかね》
その身で姫を守る茨、魔法が解ける事を恐れる姫、蛙と思わされた王子。
何もかもを分かっている賢明なる姫、輝夜姫でしょうかね。
「あの」
《桜木花子の輝夜姫をご存知ですか?》
「宇宙人説が濃厚だそうですが」
《もう1つ、続きが有るんです。人間に愛されると月に帰れなくなってしまうので、無理難題を押し付け、追い払った。そう呪われたんだと、あの翁達は月の使者、愛は恐ろしい、いずれは死に至るのだと呪いを掛けた。姫を守る為に、つい出た言葉が具現化した》
「桜木さんの映画館ですか?」
《入院中に輝夜姫は宇宙人だと同室の人間に話し、発展したお話です。小児ベッドが万床時に、大人の病床で出来上がったんですよ》
「それで、桜木さんに呪いが?」
《呪いは呪いを広める事も有る、桜木花子の呪いに触れ、君にも呪いが広がった様ですね。翁の呪い、でしょうかね》
「僕が、ですか?」
《本当に保護者なら、無理難題を諌めるべきでは?なら翁の正体は、姫に横恋慕をした月の使者。すっかり翁と思い込み、自らは手出しをせず、そして人間の手垢が付いてしまうなら、自分より位の高い月の王様に召し上げられた方がマシだと。月の使者の呪い、でも風流ですね》
「僕は、孤独死して欲しいワケでは」
《君が側に居れば、君がどんな病になろうとも桜木花子はきっと治してしまう。そして君は翁が如く長寿となり、そして月に帰ったとしても信頼が厚いので王からの徴用を受け、永遠に輝夜姫の面倒を見る役は継続される。賢いですね》
「そうしたいワケでは」
《では、どうしたいんでしょう?》
夕飯の為に浮島から一軒家へ。
エミールのリクエストで、鉄板で焼きうどんとお好み焼き。
こう、目の前でやって食べると、イベントっぽくて良いらしい。
『各国のクリスマスマーケットに行きましょうね』
「僕も!ココは冬休みが長いんですよ」
「あぁ、沖縄似合いそうよな、問題が起きたら沖縄に家を構えようか」
「やったー!」
《ショナ坊がもう帰るそうじゃよ》
「おう」
空間を開くと、いつも通りの鉄仮面。
つまりそれは良くない感じ。
「ただいま戻りました」
「お帰り、メシ食えるかね」
「はい」
食欲は普通、そんなにワシの案が怖いか。
「大丈夫じゃよ、君にまでさせるつもりは無いから安心しておくれ」
僕が候補者だと思っていないから。
だからなのに、見捨てられた様な気持ちになってしまった。
『僕もできたらそのままが良いんですけど』
「それまでに自分の容姿を認められる様に頑張るので、君らも」
「大丈夫ですってば、精進します、ふふふ」
今日も桜木さんは安眠、僕はモヤモヤしたまま。




