表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/377

4月29日 召喚者の日、紫綬褒章の日。

 すっかり忘れてた。

 今日は式典、つか何も練習して無いんじゃが。


「大丈夫ですよ、細かく指示を出しますので」

「通信機が壊れたら困るんじゃが」

《我らが居るじゃろ》

『あぁ、同席する』


 先ずは省庁へ向かい、準備へ。

 ヘアメイクの合間に軽食を摘まみつつ、軽く挨拶等も覚える事に。

 流石にコレは事前に予習させるべきでは。




 桜木さんに事前に予習させろと文句を言われつつ、準備が終わったので皆さんと合流。


 最前列には武光さんの黒曜(シャオヘイ)


 カールラ、クーロン、桜木さん、そしてコンスタンティン。

 エミール君の両サイドにはパトリックとドゥシャ。


 蜜仍君とエナさん、そして僕。


 後列にはアレク、白雨さん、そして虚栄心さん達の大罪組。

 賢人君、リズさんと鈴木さん、サイラさん。


 そして柏木さん。

 その後方に従者庁の人間が列をなし、式典会場へ。




 我が弟、祥那の晴れ姿を見る為、家族全員で居間へ。

 まだ俺は風下だが、春の陽気の丁度良い風が中庭から吹く。


 従者は全て覆面だが、もう俺らともなれば、どれが弟か分かる。

 だが家族であっても明確にどれが弟かは言わない、家族と祥那の為に、全ての明言を避けているから。


 なのに、弟に尻尾、耳が。


《ふふ、だからなのね。法案》

「母さん、喜んでる場合じゃ」

「良いじゃない、配列的には人間だって資料出たんだし」

『だな、後は霊的な部分での補佐、補正が掛かっているだけなんだろう』


「もしかして、俺だけ反対派なのか?」

「だって、魔素が枯渇すればウチの子だってなるかもなのよ?それを否定するなんて、子や子孫を否定するも同義じゃない」

《例え離婚になっても、彬禄(あきとし)を除籍して、優子ちゃんを養子にするわ》

『あぁ、良いよ』


「待ってくれって、弊害はどうなるんだよ。しかもそれを通したら」

《誰のどんな弊害になるかは、立場次第でしょう。それに、優秀な演算人間、アンドロイドや機械人間が出来るなら結構な事じゃない》

「誰でもホイホイ使いこなせるより、誰か独りだけが使える方が安全じゃない?」

『しかも抑止力には召喚者様が有効なんだろう、人間の手にと願う集団が居たにしてもだ。今回は人間側だと明記されてる。不安が具現化されてないなら、話に付き合うぞ?』


「知られるのを嫌がる人間も居る、ストーカー被害者。被害者だけじゃ無い、免罪事件や軽犯罪の加害者も、怯えてる」

『それは、それを知るのは神々なら良いのか?ただそうなると、人間を信用していないって事になると思うんだが』


「見えない、知らない場所で誰かの力のバランスが偏っていたり、負担が寄ってたり。今までも充分だったのに変化したら、誰かが困るんじゃないかと。見えない場所への不安が有る」

『お隣の吹雪ちゃんから本を借りて、召喚者様や転生者様の話をしたんだが、ココが充分かどうか、彬禄(あきとし)はどう判断したんだ。吹雪ちゃんは、不備が有るから召喚者様の結婚式が見れないかも知れないと嘆いているんだぞ』


「え?俺は賛成したし、可決したんじゃ」

『但し書きまで読まなかったのか?』

「もー」

《但し、召喚者様は婚姻や育児、妊娠への不安が有る為、実現可能日は不明。それらを総合判断しての賛成なのよ、召喚者様の不安を取り除く為にも、演算が必要なのかも知れない。若しくは亜人との生殖でないと子を成せないのかも知れないと、そう私は判断しての事なのよ》


「そう明言は」

《立ち入れば知る事になるわよ、ましてやもうお役目を終えた召喚者様、一個人になりたがっている可能性も有るじゃない》

「そうよ、誰しもが英雄だ何だって持て囃されたいとは限らないんだし」

『例え偽装でも、あの仮面で素顔を隠している以上、そう予測するのは簡単だろうに』


「だとしても」

《そう頭が硬いから、魔法の素養が乏しいのかもって。最近の研究論文で出て来てるのよね、検証数は少ないけれど》

「なら吹雪ちゃんが将来の従者さんかも、妖精さんは絶対に居るって信じてるし」

『求めなければ与えられない、国民が望まなければ叶え様とはしない。もし、それをそう、召喚者様も実行しているのかも知れないと思うと、明確な害が有ると分からない限り、そう反対は出来ないよ』


「自分の子がそんな窮屈に育つのは嫌なんだけど、そもそもよ?神様達のお墨付き案なのに、何が不安なの?」


「蜘蛛の亜人は、流石に怖いだろう」

《そうなると、体毛が濃いのかしらね》

『糸を出せるのか、臍からなのか』

「環境に敏感だって言うし、なら感覚も、当分生育が難しいんじゃないかな」


《そうね、根付かないかも知れない。育たず生殖可能なまでにいくかどうかも不明。自然界での異種交配も、かなりの確率で生殖機能が無いのよね》

「そこを心配しての事なら、少しは分かるけど」

『だが研究を進めれば可能かも知れない、神様や召喚者様がどうにかしてくれるかも知れない。そしてそれがフィードバックを起こし、どこかの時代や世界で役に立つかも知れない』

「それこそ、逆に、悪用や悪い方向へいくかも知れない不安が有る」


《だから、演算とセットなのよ》

「あ、授与式始まるみたい」

『また後で話そう』

「あぁ、はい」




 桜木の式典服に、紅、緑、黄、紫、藍、紺色の褒章が付けられていく。

 そしてエミールには、紅と緑。


 馬鹿だなぁ、驚いてやんの。

 功績的には妥当、かと言って先に知ってたら遠慮するだろうし、緊張しいだしな。


「良かった。ちゃんと認められるって、凄い、嬉しいね」

「それな、俺も、嬉しいわ」


 これだけの褒章授与に関しては、反対派が殆ど居なかった。

 それでも桜木は少数派が居る事に直ぐ目を向けるだろうど、これだけ大勢が認めてる事を、少しは認めて欲しい。




 ハナの為にって、仕方無く出たけれど。

 抑制魔法、私も掛けて貰えば良かったわ。


《ふふふ、日の下で声援を浴びられるなんて、不思議ね》

『あの子のお陰だ、コレもこう、絵にして貰おう』

「あぁ、そうしてくれ」

『おい、泣いてるの見られてるぞ』

「もう本当に、アンタ達、五月蝿いわね」

『はいはい、化粧が落ちちゃうよ』


「白雨、俺、どんな表情したら良いんだろ」

『笑えば良いと思うが』




 桜木さんが第3世界での大演習で、河瀬さんからの伝聞で話した演説が、式辞として読み上げられていく。

 0では、ペリクレスの戦没者葬送演説と言われる内容が、桜木さんの口から引用されていく。




 私達がいかなる理想を追求し、今日への道を歩んできたのか、いかなる世界を理想とし、いかなる人間を理想とすることによって、今日を迎えたのか。

 これを先ず私は明らかにし、亡くなった方々に捧げる讃辞の前置きとしたい。


 私達の行動理念は、平和と平穏、融和、和解、排斥を排し、不便や苦痛は取り除く。


 個人間に紛争が生ずれば、法律の定めによって全ての人に平等な発言が認められる事を願い、明確な規則の元で罰せられる事を願います。

 その一個人の才能が秀でていることが世に分かれば、無差別なる平等の理を排し、世人の認めるその人の能力に応じて、公の高い地位を授けられる事を願います。

 そして貧窮に身を置かれても、世界に益をなす力を持つ人ならば、貧しさゆえに道を閉ざされる事の無い様にと願います。


 私達はあくまでも召喚者の対場であるならば、公に尽くす道を保ち、また日々互いに猜疑の眼を恐れる事無く、時に自由な生活を享受出来る世界を望みます。


 もし隣人が己れの楽しみを求めても、これを怒ったり、あるいは実害なしとはいえ不快を催すような冷視を浴せることはしません。

 個人の生活において、逸脱する事があれば、私達は互いに制肘を加え、公に関するときは、法を犯す振舞いを深く恥じ畏れるべきだと心得ます。

 そして政治を預かる者に従い、法を敬い、侵された者を救う法と、万人に廉恥の心を呼び覚ます不文の掟とを、厚く尊ぶ事を忘れません。


 私達は何人に対しても知識や能力を開放し、提供します、例え遠い国の人々が求めたとしても、それだけを理由に拒絶する事はありません。

 国や人種により、学問であれ見物であれ、知識を方々へは拒みません。


 そして私達が意見を求める時は、戦の仕掛や虚構ではなく、平和を成そうとする私達自身の敢然たる意欲からです。


 コレからも公私共に、そして教育においても、自由の気風に育ち生活出来る様助力し、そして対等な関係が築ける事を望んでいます。




 そして次は、僕ら従者側からの答辞。

 桜木さんの演説への返答を、柏木さんが読み上げる。




 我々は質朴なる美を愛し、柔弱に堕する事なく知を愛します。

 我々は富を行動の礎とするが、悪戯に富を誇らず、だが清貧を美徳とも恥ともしません。

 ですが貧困を認めぬ事を恥じ、貧困を克服する努力を怠るのを深く恥じます。


 そして己れの家計同様に国の計にもよく心を用い、己れの生業に熟達し励む傍ら、国政の進むべき道に充分な判断を持つ様に、心得えています。

 ですが己の利益を追求するのみ、公私両域の活動に関与せぬ者を、無益な人間と見做す事をお許し下さい。

 我々、市民自身とし、決議を求められれば判断を下し得る事は勿論、提議された問題を正しく理解することが出来ると、信じて頂けます様、これからも精進する事を宣言致します。


 理や正義が分かれてしまう議論を行動の妨げとは考えず、行動に移る前に事を分け、熟考します。

 理解していない時にこそ、却って失敗を招くと考え、討論や議論に怯む事無く、話し合いを続ける決意も表明致します。

 我々は打たんとする手を理詰めに考え抜き、そうして行動に移す事こそ、もっとも果敢に行動出来ると知っているからです。


 我々は人生の広い諸活動に通暁し、自由人の品位を持し、己れの知性の円熟を期する事が出来ると理解しています。

 そしてこれが単なるこの場の高言ではなく、事実を踏まえた真実である証拠は、我々人間と神々の力によって築いた世界が示しています。

 何処かで排された神々をも畏怖を持ち尊び、敬い、そうして併合された神々も古の神々も徳を認め、非難をならさない。


 かくも偉大な証績を持って召喚者様方と転生者様方を、今日の世界のみならず遠き末世や異世界に至るまで、世人の賞嘆の的となる様、助力し死力を尽くす事を宣言し、これを持ちまして祝辞とさせて頂きます。




 過度の緊張から、手がプルプルする。

 もう、頭真っ白。


 用意されていた内容は大丈夫だったと思うけど、誤解がもう、本当に怖いし。


【桜木さん、大丈夫ですか?】

「手がプルプルや、つか何で亜人化してるねん」


【パレードも有りますから】

「着ぐるみかよ」


【まぁ、そんな感じですね】

「曖昧な、しかもパレードかよ」


【はい、もう少しですよ】


 浮島に帰りたい。




 用意が有ったとは言え、召喚者様のお言葉で議論する気が無くなった。

 緊張で手や声が震えたり、着席して直ぐに胸で大きく溜め息をついたり。


 どこかで自分達とは違う何かだと思っていた。

 だが例えば、自分の妹だったなら、亜人との結婚も亜人化も、真に反対出来るんだろうか。


 まして魔法や魔道具を封印したりと、不自由を進んで行使した、元魔王候補だとしても。


 いや、それも偽装かも知れない。

 けど証拠が無いのだから悪い人間だとも、だがそれは隠匿されているだけで、本当は。


《まだ、不安そうね》

「真面目なのは好きよ、お仕事の事も有るのは分かるわ」

『もう祥那に言って会わせて貰いなさい、きっと良い人だろうから、面談も受け入れて下さるだろう』

「いや、でも一市民が」


《市井の声を拾いたいと仰ってるんだから、良いじゃない》

「そうね、召喚者様もコチラをまだまだ知らないから、不安なのかもだし」

『ほら、コレだ、市井見学のボランティアだ』

「寧ろ、逆に弾かれるんじゃ」


《それから祥那に言えば良いでしょう》

「ふふ、自慢出来るけど出来ない、祥那君の気持ちも体感出来るなんて素敵」

『ほら、送っといてやろう』

「あ、いや」




 移民や召喚者の市井見学に、祥那君の家族が応募し、話はトントンと進んでしまい。

 今夜、お会いする事に。


 コレは、言うか迷いますね。

 もう既に過負担でしょうし。


『言わないでね?』

《分かりました、助かりますエナさん》


 コレで責任はエナさんへと移行した。

 けれども、フォローは私のままなんでしょうね。




 パレードはミーシャさんとアレクが代理を務め、桜木さんは浮島でお食事中。

 ストレス高値の時はケバブ、しかも今回は柚子胡椒を付けて食べている。


「次に大きいのは?」

「来年は参列側です」


「うへぁ」

「今日よりは短く簡単に済みますよ」


「退役を考えてしまうわ」

「マスカットは良いんですか?」


「それなぁ、巨大家庭菜園で細々と生きるかね」

「まだ空き家なので大丈夫ですよ」


「手伝ってくれる?」

《勿論じゃよ》

『さては植わる気だろう』

『でしょうね』


「ほう。ちょっと、見学に行くかなぁ」

「でしたら、南の方はどうしますか?」


「あぁ、もうハワイで良いのでは」

《おぉ、良いのぅ》

『植わる気だな』

『ですね』


 短いパレードが終わり、食事会へ。

 コレもミーシャさんで良かったのではと文句を言われつつ、護衛任務へ。


 そして何事も無く終わり、皆さんで浮島へ。


 そこで本格的な祝賀会になり、アルコールを摂取した桜木さんの目が秒で座り始めた。


 お昼寝の時間ではあるけれど、少し知恵熱も。


「すまんな、休ませて貰う」


 そうして小屋へと向かい、カールラとクーロンを抱え、お昼寝へ。




 ストレス性の過眠かよ。

 夕方やん、皆はもう居ないし。


「桜木さん、予定が入りました」


 何かと思えば一般の方と接触するんだと、なんつータイミング。


 でもまぁ、今だからこそか。




 シルバーバック姫が、まさか祥那の上司とは。


「祥那、すまん」

「いえ、もう慣れましたし」

「すみません、慣れさせてしまいまして」


 召喚者様と会わせるべきかどうか、こうして審査をされるらしいが。

 姫は身代わりや何かをしているのか、召喚者様に似ている気がするが。


 お互いの為にも、深く詮索はしないでおこう。


「それで、ウチのはどうですか」

「真面目過ぎて困りますな、プライベートの充実加減が最悪です」

「ちゃんと映画や花見に、遊園地も」


「仕事半分じゃろ」

「女性と行きましたし」

「家族行事は除外だろう」


「それがですねお兄さん、どうやらグループデートを」

「仕事仲間に騙し討ちされただけで」

「それで、良い子は居たのか?」


「いえ」

「お兄さん、この子に好みが全く無いのは、何か深いワケが」

「実は……何も無いらしく。もう、従者馬鹿なだけかと」


「それにしても、ご心配でしょうに」


「それが、どうやら俺だけの様で。周りはもうすっかり、諦めたのかも知れません」

「近々話し合いなさい」

「はい」


「なら、先ずは俺に教えてくれ、祥那」

「あ、席を移動しますよ」

「何も今」


「いや、上司の方がこうも心配して下さっているんだ、上司にも弁明弁解はすべきだろう」

「兄さん、仕事をさせて下さい」


「では、事前の質問はどうなっているんだろうか」


 徹底しているのか祥那が再確認し、移民や召喚者役の上司へ。


「兄さん、コレは踏み込み過ぎかと」

「妊娠に不安が有るか、どれだけ一般の方と知り合えているか。最後の、亜人をどう思うか、は微妙かと」

「微妙とは」


「んー、前提に問題が有るかもですね、もしかして全てを知っているとお思いで?」


 確かに、母や研究者の様に知っているのかと。

 もしそんなにも知らないなら、攻撃的過ぎる切り口になる。


「あぁ、すみませんでした。周りに専門家が居る環境なので」

「仮にですが、非研究員、一般の方と同程度だった場合。周りの方は納得頂けるんでしょうかね」


「何故、知らないのかと、なる事も有るかと」

「知れば悪用も可能かも知れない、それでも知るべきだと?」


 魔王候補としての扱いを受け、能力を封印したなら。

 知らないを当然に実行しているかも知れない、でも。


「知っているかどうかは、市井の人間には、計り知れない事かと」

「法務関係なんですよね、そうバランスを取る思考は大変ですよね」


「いえ、もう、悪い癖だと思っています」

「いや、良いと思います。講習に来て貰いましょう、善人だけが来るとも限らないんですし」

「それはそうですけど」


「不安なんですよね、力の有る人間の怖さを知ってる。そこでお会いになって頂く事も検討すべきかと、万が一にも驕り高ぶる事が無い様に、是非招かせて下さい」


「良いんでしょうか、親族だからと優遇は」

「他の方でも良いですよ、複数でも、補佐だけで会うのは無しでも良いですし」


「では、候補を出しますので。祥那にで、良いんだろうか?」

「ショナさんや」

「反対して良いですかね?」


「却下。ご親族だからこそ心配して忌避の無い意見をくれたんですから、貴重です、大事にしないと」

「どうしたって反対意見を集めてしまうんでしょうか?」


「ご本人様が、そうご希望なんですよ」

「あの、答えて頂かなくても良いんですが。どう、見えてらっしゃるんでしょうか」


「今日のは、蛙にも衣装でしょうかね」

「一歩間違うと不敬や侮辱になりますよ?」


「可愛い蛙も居るのを知らないと、そうなるんでしょうね」

「成程、蛙の様に可愛らしいと」

「兄さん、もう帰ってくれませんかね?」


「これ、ピンチになったからと追い返すな」

「そもそも普通なら完全に審査に落ちますよ、仮にも繊細かも知れないと言われてらっしゃるんですから」


「でもだ、繊細過ぎは、悪では?」

「時と事情によるかと」

「兄さん、中止にします、送りますよ」


「いや、まだ大丈夫だ。連休にしたんでな」

「ほう、じゃあ相談なさい」

「嫌です」


「ありがとうございます」


「では」


「もー、絡み酒ですか?」


「良い方向に考えれば、あの人はお前を好いてるからこそ、好みの心配をだな」

「繊細な時期なので放っといて貰えますか?」


「お、ならもう言ったのか」


「いいえ、ただ、何となく伝わっている可能性は有るかと」

「何故、言わない」


「コレです」


 蛙化現象。

 好かれると引くってヤツか。


「俺には良く分からないが、そうなのか」

「ですので、慎重にしたいんです」


「にしてもだ、蛙化現象がどちらの場合にせよ、お前には無理だろう。それこそどちらかを選ばないと、どちらかから不満が出た時には、かなり難しい状態になるぞ」




 桜木さんが本当に幼馴染で、従者で。

 もし僕を好きでいてくれたら、僕は召喚者様の随行は、して無い筈。


 だけれど、もし万が一、僕が随行する事になっていたら。

 桜木さんの様な能力が有って、惹かれる様な事が有ったら。


 桜木さんから、別れを切り出されそう。


「仮にそうであっても、もう、放っといてくれませんか?」


「ほー、お前に恋人ムーブが出来るのか?職場が同じは御法度じゃ無い筈だが、ウブなんだし」

「どちらにせよ、そんな方では無いので心配無用です」


「実は年上なのか、アレで」

「かも知れませんね、もう呼び戻して来ます」




 ココでも灯台パワーで人が近寄って来た所で、ショナが来て助かったが。

 もう、マジで家庭菜園で引き籠もろうか、苗木屋さんは大丈夫そうだし。


 でもなぁ、そう楽観視してルーネさんの機嫌を損ねたんだし。


「どうも、解決しましたかね」

「はい、ありがとうございました」

「機嫌を損ねてしまいました、ちゃんと出来るのか聞いただけなのになぁ?」


「そんなに大好きでらっしゃる」

「可愛い奴なんですよ、真面目で優しくて、余所見もしない」


「まぁ、その通りなのが逆に不安でもありますな」

「でしょう。講習の件、仕事となればきっちりこなしますので、任せて頂けませんか?」

「話は上げますが、期待しないで下さいよ、複雑な事情も絡むので」


「勿論、期待しないで待ってるよ」

「では、もう帰りましょうかね」

「はい」


 お兄さん、ショナ大好きで召喚者すら警戒するとか。

 勿体無い、ちゃんと慮るべきだよショナ君や。




 浮島で先ずは一服すると、神妙な面持ちで振り向かれてしまった。

 どの事だろうか。


「ショナ、良いご家族なんだから大事にせい」

「その事なら、はい、大事にします」


「ちゃんと分かってるかね?大好き過ぎて召喚者にすら警戒しちゃうんだぞ?」

「マティアスさんも、あんな感じでしたよね」


「あぁ、それな、うん、過保護」

「それが一般的だと理解はして貰えますか?」


「でもだ、ぅーん、難しい」

「僕は健康にも問題無いんですし、ならアレは明らかに過保護です」


「オカンは?」

「桜木さんが好きそうな理詰め系です、父もなんですが。母からしたら、ホヤホヤしてるそうです」


「すまんな、また興味本位が巻き込む形に変形して」

「いえ、僕の家族は自慢出来るので、是非見本に巻き込んで下さい」


「何か、事件に巻き込まれないか不安」


《なら私が守るよ》

『僕も。もう、割って入らないで』

「咲ちゃんとウーちゃんは仲が良いねぇ」

「桜木さん、それワザと言ってます?」


「おう、悪く無いやろ」

『仲は悪く無いけど』

《私は良いと思っていたんだけれど、ウーちゃんは違うらしい、悲しいなぁ》


『もー』

《ウーちゃんのウーは羨ましいのウーだろう》

「誂い上手」


『羨ましいは有るけど』

《素直は良い子だ》

「さっきも見たなこの感じ」

「どうして、こうなるんでしょうね」


《私の方がウーを愛しているからね》

『双方向じゃ無いから』

「ウーちゃんに若干のスルースキルが」

「双方向なら、こうならないんですかね?」


『圧力が、こう、均等じゃ無い』

「なるほど」

《情愛は染み込むモノだから、上手く混ざり合わないと反発に分離をしてしまうんだよ》

「そうなんですね」


《それで、私はマジだよハナ》

「マジか、依怙贔屓と言われない程度でお願いしたいんだが」

「それで桜木さんが安心するなら、お願いします」

『うん』


《承った、じゃあねハナ、ハナハナ》

「ありがとねー」


「桜木さん、もう平等にって気にしないんですか?」

「マジガチじゃ無いし、余った分が有るなら方向性は示したって良いべ」


「ありがとうございます」

「いえいえ、巻き込んだ責任も有るし。帰るべ」




 責任と言う言葉に、ほんの少し棘を感じた。

 好意より責任感から、それが怖いと気付いてしまい、また不安なまま眠る事になった。

引用、参考。


ペリクレス、戦没者葬送演説


問題があると判断された場合、引用などの部分は即時消去いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ