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4月25日 紫苑で動く事と、献立。

【働きたくないでござる、って言ってませんでしたか?】

「追々な。すべきをしないのは気持ち悪い、いんずい」


【かと言っても灯台なんですよ?】

「それ、紫苑では無くない?」


【例の少年は紫苑さんへ惹かれたからこそ、好きを理解したんですが】

「そん、マジか」


【蓬さんも、アレはマジかと】

「マジか。でもそれは」


【振り向いてくれないから興味を示す様な人でしたか?最初に軽くお世話したにしても、そんな容易い人でしょうか】

「横に置きます。仕事の話へ戻してくれ」


【チャラい軽薄男子は良いムーブですね、向こうの警戒心を上げるので】

「あぁ、どうも」


【ですが、お仕事関係になると真面目に接しますよね?そうなると】

「マジか」


【もう、誰から手を付けるか決める時期かと】

「マジかぁ」


【ご心配なら、ドリームランドで確かめてみては】

「あぁ、はい」




 ドリームランドで見せ付けるにしても、当て馬にマーリンとは。

 神々の先読みは凄いですね。


《先読み、凄いですね》

《まぁ、我々の願望も含んでおるでな》

『じゃの!』


《願望ですか》

《推しは居るでな》

『適任者をとの願いが影響しておるんじゃよ』


《適任者とは》

《神々の願いや思いは強いで、召し上げの相手に影響を与えてしまうんじゃと》

『じゃから、ありのままを願うロキ神、土蜘蛛、マーリンは最適なんじゃよ』


《候補者、増えてませんか?》

『支柱は多い方が良いんじゃろ?』

《くふふ、もう増えぬで大丈夫じゃろう》




 桜木さんがドリームランドで、マーリンさんの好意を受け入れるかどうかで目を覚ました。

 意外にも安心している自分にビックリし、飛び起きた。


《大丈夫ー?》

《寒くない?》


 ヨルムンガンドとフェンリル。

 この小屋を吹雪と寒さから守る為、巨体でぐるりと囲んでくれている。


「ありがとうございます、大丈夫ですよ。夢を見て、ビックリしたんです」


《夢ー?》

《どんな夢なの?》


「好きな人が、幸せそうにしている夢です」


《あ!ドリームランドしょ?》

《僕らも行きたいなー》


『くふふふ、請われたなら、連れて行かねばのぅ』

《わーい!》

《やったー!》


『ふふふ、嬉しいのぅ、堪らんのぅ』

「桜木さんは、大丈夫でしょうか?」


『大丈夫じゃよ、心配なら、再度行ってみれば良かろうに』

「お邪魔したくは無いので」


『そう思うなら邪魔にはならん、まだ早いんじゃ、寝直せば良い』

「はい、ありがとうございます。もう少し落ち着いたらで」


『ふむ、ではまたの』


 フェンリルもヨルムンガンドもすっかり眠っている。


 幸いにもニブルヘイムにはロキ神用の小屋は有るものの、必要最低限以外は何も無い。

 雪原しか無い世界。


 桜木さんが転移して目覚めた世界の様。


 もし僕なら、帰って来れたんだろうか。


 もしエミール君なら、小野坂さんなら、武光さんなら。

 どうなっていたんだろうか。


 こうやって桜木さんはずっと悩んでいて。

 誰にも縋らずに。

 拒絶して。

 独りで。


 僕なら、帰る為にしたかも知れない。

 そう伝えるのが怖い。

 嫌われるのが怖い。

 凄く怖い。

 怖い。




 ドリームランドで初めて桜木花子に会えたんですが。

 目を大きく開いて、完全に驚いている様子。


「何で、居るの」

《新しい場所が出来たと聞いたので》


「あぁ、コッチへどうぞ」

《どうも》


 第2世界の白いフィンランド、ソダンキュラ。

 街が1つ、少し離れた雪原に一軒家が1つ。


「マーリンが、折角だから作れって」

《全てを一緒くたにするより、思い出を分け、1つ1つ大切にする事は良い事だと思いますよ》


「0では、恋人の趣味に汚染されたり、残影が有ると批判される傾向が有るんですが」

《死者には打ち勝てないと知っているからでしょうね。ただ、それが無かった場合に今の君が成立するのか、それは正常で正しく普通の事なのか》


「嫌な事で無ければ、まぁ、保持してても本来は良いかと」

《仮に、影響や記憶を完全に消去して欲しいと願う人間を、君が好きになった場合、周りが認めるか》


「影響に怯える気持ちは分かるけど、消すと自分が過度に楽になってしまうと思うし、連なってるから1ヶ所で済まないし」

《外見もそうですが、君を形作る記憶や特徴がどこまで保持されていたら、君は君であると認識出来るのか。1つの欠片でも、欠ければ大きな欠損になる事も有るんですよ》


「そう保持したまま、その、嫌な事の解決方法は?」

《嫌な事であれ何であれ、消去や拒否より融和、若しくは和解。感情を上書きし、簡単な単語でラベリングし、箱に収め、安全で見えない場所に置く》


「上書き」

《嫌な話を聞きたく無い時、耳を抑えてあーあー言ってましたよね?》


「おう」

《嫌な事を思い出した時、先ずはそれを実行しつつ、私を見る》


「ほう」

《悲嘆時代の白雨さんでも良いですよ》


「関連付けされない?」

《まだ続きがありますよ、再固定化、パブロフの打ち消し》


「ほう」

《君が眼福だと思える実際の実物を見るか思い浮かべるか、そうして次は言葉を聞く。もう終わった事、仕方無い、君は悪く無い》


「そう、思って良いのか」

《はい、良いですよ、大丈夫。それにもう、終わった事、もうどうしようも無い事》


「でも、後から」

《それが事実なら、一緒に受け入れる為にどうすべきか模索し、実行します》


「カウンセラーの域を超えるのでは」

《そもそも、ハーレムの管理をする者に詳細を話す事になるんですよ?》


「あぁ、詳細て」

《どの性別で、何回か、とか》


「回数も?!」

《両方から聞き取りはします、公平性が大事なので》


「マジっすか」

《本当は中身も知りたいんですけどね》


「マジっすか」

《研究者なんですよ?》


「あー、マジっすか」

《お局ですから。それとも、あのお爺さん先生や他の方に、根掘り葉掘り話しますか?》


「ぐっ、でも、担当医なんやし」

《私は聞き取り役でしたから、主軸からのみ外れます。元から複数が関わっていますし、以降もグループが正式な判断を下します》


「召喚者とかの研究はどうすんの」

《そもコレは研究の延長線上でもありますし、継続ですよ。蓄えも有りますのでご心配無く》


「召喚者特典は要らないんだが」

《まだ、そこなんですか。狼の件の資料は読まれたんですよね?》


「あぁ、じゃあ、最悪はユラ君だけでも」

《未成年なので無理かと。それとも彼が成長するまで、被害者を増やす気ですか?》


「被害者て、コッチが被害者の気分じゃい」

《まぁ、被害者しか居ない珍しいパターンですよね》


「遠回りはするわ、余計な事をするわ、こんなバカを」

《ココでは、君の性質が秘匿されてましたし。向こうでも君は稀少種だったんですから、仕方無いかと》


「だとしても」

《君にとって個人的には余計な事かも知れませんが。井縫君やサンニァーには余計でしょうかね、もしかしたら井縫君はマトモな人生を歩んでるかも知れませんよ?》


「希望的観測は」

《想われていた事は、受け入れたのでは?君を想っていたなら、君の希望に沿うと思いませんか?》


「半分、反面は。皆、普通に暮らしてて欲しいけど、どうなったのか。正直、全く考えて無いのよね、実際は崩壊してたらと思うと」

《もう、願って呼び出してみませんか?ココへ》


「あぁ、ワンコは確かに鍵持ちだが」

『まだビビっておるの?』

《ビビりじゃものなぁ》

『煽っても効かんだろう。寧ろ、ドリームランドの安全の為に確認しろ、と言った方が早いだろう』


「神々で畳み掛けるねぇ」

『あぁ、お前の扱いは困難を極めるんでな、総出だ』

《持つべき自信を持ち、持つべき不安は解消して欲しいんじゃよ》

『より良い未来へ繋がる、良い事へと、じゃよ』


「仮に叶ったとしても、その後よ、どうしたら良い?」

『閉鎖は勘弁じゃよ?』

《お主には、プライベートと公の場を区切って欲しいんじゃがなぁ》

『そうだな。せめてだ、ホイホイと映画館に入れるのは止めておけ』

《そうですね、ただ君のファンが増えたからこそ、この資料も提出して頂けたので。難しいところですね》


「おう?」

《ブラドさんは大丈夫でしたからご心配無く》


「おう」

《それで、ネイハム呼びは一生無いんでしょうかね?》


「あー、ハムちゃん」

《他にして貰えます?》


「他にある?」

《ネイト》


「んー、慣れるまで我慢してくれ」

《では、いつ始動しましょうか、ハーレム》


「話が戻った、不思議」

《ですね》


「仕事に逃げたいんじゃが」

《では、向こうで話し合いましょうか》






 桜木さんの夢を、また覗いてしまった。

 今回は雪原の一軒家で先生と、桜木さんと、ただ話をしているだけだったけれど。

 僕はただの妖精で、それを外からただ見ているだけ。


 先生も好意があるのは全然想定外で、だからショックな筈なのに。

 そう傷付いてる感じも自分には無い。


 実は自分は、そんなに好きではないのかも。


 それか、こんな性癖なんだろうか。


『ショナくーん、元気ー?』

《あ、エイルだぁ》

《エイルー》


「おはようございます」

『おはよう、眠れてるなら良かったけど、兆候は無さそうね』


「どうしても、桜木さんの気持ちが気になって」

『何よ、何か見ちゃったの?』




 ショナ君は、マーリンからの告白を見ても、主治医からハナへの好意を目撃しても傷付かなかった。

 それは、好きじゃ無いからか、性癖なのか。


 って、何よ、この可愛い生き物は。


 凄いわね、ハナの嗅覚。


『要するに、嫌われたく無いのね』

「好意を示して嫌われるなら、全然、このままでも良いなと。それにこう、執着や独占欲が無いので、だから自分の気持ちに自信が持てないんです」


『嫌われるかもって考えに比重アリ過ぎよ。本当は、好きだからどうにかしたい、って気持ちで動いて欲しいんだけどなぁ』


「でも、もし僕だったら、直ぐに子を成してたかもって。それを伝えるのも怖いんです」

『今なら、今も、そう思ってるの?』


「あ、いえ、叶うなら、桜木さんと同じ方法をとるかと」

『じゃあ良いじゃない?』


「でも、ずっとそうだったのかを聞かれたら。もう、数ミリも嫌われたく無いんです」

『はぁー、甘酸っぱいぃ…ご馳走様。でもね、ハナがどんな人間か良く思い出してみて欲しいの、どの世界でも。うん、日の光を浴びましょう、いらっしゃい』


 ショナ君を連れ出し、いつもハナと一緒に居た泉の近くへ。

 暫く桜を見てボーっとしてから、人間のお医者さんへ相談を勧めると直ぐに実行。


 素直で可愛いわね。 




 目覚める直前、先生から北海道の病院で実際に会い、面談をと言われ病院へ。


 先ずはショナに関する事でと衝撃的な事実を聞く事になった、ハーレムを受け入れられるタイプの人種らしい。

 うそやろ。


「うせやん」

《素晴らしい嗅覚と加護かと》


「マジかよ」

《元から素養は有ったみたいですが、本人のお相手への審査が厳しいので、今まで気付かなかったそうです》


「開花?」

《ですね》


「だれのせいだ」

《君ですよ》


「あぁ、蕾のままで居させるべきだったのでは」

《頭、イジります?》


「それな、ちょっと考えちゃうわ」

《ですが、世界ちゃん的には名采配かと》


「でも何でジュラは、あぁ、もう相手が居たからか。にしても、他に」

《集団生活で、月経周期が合わさるのはご存知ですか?》


「マジかー、そこをそう、あぁ、気を使うか」

《勿論、それだけでは無いんですが。女性が苦手な女性も想定されてましたし、逆も然り。なので身長や能力的にも、ジュラさんと祥那君の組み合わせが第1候補だったのは、自然なんですよ》


「あぁ、ワシも安易に女性だと勘違いしたしな」

《もう迂闊に脱いでませんよね?》


「学習はした」

《サウナ》


「アレは虐待を疑われてて面倒なのと、逆に性別を誤魔化す為です」

《そこは警戒心が高くて好きですよ》


「あの大嫌いさんはどうしてんだろ」

《ブラドさんでしたら、私財の殆どを強欲さんへ寄付をしたそうですよ、あの映写機と国の為にと》


「アレな、クッソ泣いたんだけど、どうしてくれるよ」

《2回だけなんですよね?あの映画を観たのって》


「おう」

《描画精度が良いって褒めてましたよ。だから、魔法が良く使えるんだろうとも》


「まさかの才能。でもなぁ、マティアスならもっと凄いと思うぞ、多分アレは映像記憶系だし」

《その可能性は高そうですし、良い実験材料なんですけどね》


「あぁ、本人が進んでやりそうで怖いわ」

《そうなれば、ドリームランド同士の回線が強く太くなりそうですよね》


「それな。でもそれ良いのかね」

《第2も第3も、クトゥルフが封じられた世界なので問題無いそうですよ》


「ワンコ来たら困る」

《では、ショナ君にエロい方向で説得させますかね》


「なら誰がストッパーになんのよ」

《私がストッパーです》


「どこがよ」


《ちゃんと君のペースで進められる様に、ユラ君やエミール君やアレク君を抑えフォローしてるんですが》

「すみませんごめんなさいありがとうございます」


《コレからは、篩い落とすんでしたら、トコトンやって下さい。想像以上にタフで引きますよ》

「そんなにか」


《君の言う世界ちゃんが居るなら、本当に名采配だと称賛出来る程に》




 触れて、触れられて。


 エイルがドゥシャを置いて行って、追い返そうと触れても死ななかった。

 それがつい嬉しくてベタベタしてしまって、こうなってしまった。


《ごめんなさい、つい、嬉しくて》

《私もです》


 私の見た目を気にしないで、ニコニコしてくれて。

 だからつい。




《春ですなー》

《素晴らしいですなー》


『あぁ、成功したのねヘルとドゥシャ、良かったぁ』

《それでも少しドキドキでしたぞ?》

《失敗してたらとドキドキでしたぞ?》


『ふふふ、成功したんだから良いじゃない。コレでやっと、心置きなくドリームランドへ行けるわぁ』

《何と言う策略家》

《計略の血は侮れませんな》


《お父上そっくりですぞ》

《全くですぞ》


《はぁ、寝てしまいましたぞ》

《我々も、少し休憩しましょうぞ》




 サクラちゃんを浮島で待ってると、早速一服へ。


 何か、混乱してる感じ?


『どうしたの?』

「ハーレム案が着々と進行してんの」


『そっか、良かった』

「賛成派か」


『うん、それでも相手して貰えるって信じてるし』

「そう賛成する方か。どうして受け入れられる。良く精神が保てるな、ワシなら無理」


『サクラちゃんの場合は英雄なんだから無理だよ』

「もっと噛み砕け」


『世界中の御伽話の王子様が、実は全員同一人物で1人しか愛せないなら、1人しか救えないでしょ?』

「ヘルに嫌われる」


『んー、それは、多分大丈夫。行ってみよう?』


 ヘルヘイムに向かうと、中庭にはドゥシャ君とヘルちゃん。

 ベール越しでも伝わる幸せそうな雰囲気。


 サクラちゃんはビックリしてる。


「ヘルさん、ドゥシャ」

《ハナ、ありがとう》

《有り難う御座います》


「いや、ワシは何も」

《そうなの?》

《みたいですね》


《そう。ふふふ、私やっぱり、ハナをお母様と呼ぶべきかしらね》


「いや、その」

《ふふ、冗談よ。ハナ、恋って本当に怖いのね》

『あのね、サクラちゃんがハーレム予定なんだけど、ヘルに嫌われないかって』


《寧ろ、同情するわ。何人もとこんな気持ちになるなんて、私には耐えられそうに無いもの。あぁ、そうだ、心臓の数を増やしてあげましょうか?》


「あ、いや、それは大丈夫かと」

《いつでも言ってね、恋って怖いから》


「うん、だね」


 ホッとしたサクラちゃんを連れ戻す途中、エイルに挨拶しようといつもの泉へ。

 遠目から確認すると、泉で勉強してるショナ君、サクラちゃんは小さいから見えない位置に。


『エイル、寝ちゃってるかも』

「あれ、ショナも居るのは何故」


 凄いね人間の執念って。

 どう察知したのか、後ろを向いたからビックリしちゃった。


「あ、何かご用事が?」

「いや、ちょっとヘルに。君は何でココに、北海道では?」


「いえ、少し自主練で。面談はタブレットからです」

『サクラちゃんの為にね☆』

「不穏」


「……こう…亜人への変化の、練習にと」

「おぉ、可愛い格好だが」


「あの、触ってみませんか?」


「もふもふぅ」

「くすぐったいんですけど、魔法で何かしました?」


「いや?前は感覚無かったの?」

「はい」


 怖いなぁ、執念で本当に亜人化したのかも。

 でも、戻れるのかな。


「元に、戻れる?」


「みたいですね」

「からの?」


「出来た、みたいです。何でだろう」


 人間の愛の力、怖いなぁ。


 そのまま病院に行って検査だって。

 同じ方向を向いてると強い繋がりなのに、不思議だなぁ。


「ヤベェな、マジもふもふ」

「尻尾だけにしといて下さいね」


 簡易検査の結果は、人の遺伝子配列だけだって。

 ただ向こうの亜人の遺伝子サンプルが少ないから、あぁ、マティアス君が居てくれたらなぁ。


『マティアス君をドリームランドへ呼べないの?』

「なんでよ」

「もしかしたら、ご自分の遺伝子データ以外にも、暗記してるかも知れませんしね」


「はっ、あぁ、有りそう。でも、どうしろと」

『生まれ変わってくれるかもだよ?』

「そうなると、施設稼働ですかね」


「あぁ、言いそうだ。でもアレは、失敗したら悲惨が過ぎる」

「それを、桜木さんが何とか出来ませんか?」


「ワシをなんだと思ってる?」

「神様みたいに何でも出来る方です」


「人間ぞ?」

「はい、そこは良く存じてます」


「ハーレム案もだ、君は他人事だから」

『実際に先生に会って、改めて面談して貰ったら?』


「よし、ロキさんもな」


 先ずは俺、問題無し。

 先生からも直接サクラちゃんへ言って貰えたけど、まだ納得出来ないのか、お外へ行って一服。


『ショナ君、ネジ曲がっちゃったと思ってる?』

「最悪はね」


『でもそしたら、限界点がくると思うよ。でも元からなら、そのまんまじゃない?』

「じゃあロキは元から?」


『うん』

「お子達、種腹違いなのにか」


『食べたり食べられたりの愛情表現なんだもん』

「あぁ、にしてもよ」


『裏切って無いから、ヘルは仲良くしてくれてるんだもん』

「もん。でも、傍から見たらワシ、オーディンさんと」


『違うよ、全然違う』

「それはロキから見たらでしょうよ」


『ううん。本人の証言を元にしたタペストリーが山程有るけど、見に行く?』

「いや、被害者のプライバシーを尊重します」


『大丈夫、見せられる用のも有るから』

《大丈夫じゃよ》

『あぁ、ワシも確認した』


「じゃあ、なら行く」




 桜木花子がロキ神と出掛けている間に、祥那君の精密検査へ。

 身体的なモノも含めて問題は無し。

 ただ、精神的な変化は有り、それが変身にしっかりと作用したらしい。


《とうとう、国に無断で動きましたか》

「すみません。本当に、思い立ったら我慢って出来なくなるんですね」


《特に色恋では》

《ドゥシャとヘルもじゃ、くふふふ》

「あぁ、エイル先生には今回もお世話になってしまい」


《ハナの為じゃし、その対価はハナが自然と払うだろう、じゃと》

《詳しくお伺いさせて下さい》


《ヘルと相談し合うのと、エイルや神々への恋愛相談、そしてキラキラじゃよ。ドリームランドでもキラキラが増えるでな》

『エイル神は、今は楽しいドリームランドの最中じゃてな、邪魔するで無いよ』

《だけなら良いのですが》


《だけとは随分じゃな?》

『アレが、なんじゃよ?』

《まぁ、そうですが》


《全く、喉元過ぎれば熱さを忘れるか》

『全くじゃな』

《失礼しました》




 見事なタペストリーを見て回り、眠るエイル先生、フギンとムニンにハンカチと甘味を捧げ病院へ。


 ハーレム案を受け入れる最終的な言い訳は、無敵の人を無敵にさせない為の繋がり、家族を作り増やす事なのだと。

 それで民意が落ち着くなら、案を呑むしか無いのだと。


「この言い訳で、納得して貰えないだろうか」

《誰が、でしょうか》


「この話を知った誰か、この経緯を知る誰か。万人に受け入れられるとは思って無いけど、受け入れて貰える様にする事も、大事だと思う」

《例え一般人の立場でも、でしょうか》


「あぁ、召喚者では無い状態で関わるのは諦めるよ」

《召喚者様が諦めてしまう様な世界であるべきだと?》


「いや、エミールは」

《後世の、後の代の者が読み解けば、ココで諦めた事が丸分かりです。なので、そう言った悪い見本は排除したいんですが》


「いや、出来るだけ最小限に」

《上限下限は神のみぞ知る所、それへの評価や介入は神々や個人への重大な越権行為、侵害。果ては不敬罪に侮辱罪になります。それにそもそも、好物の摂取量を他人が決めるべきだと思うんですか?》


「好物て」

《排泄行為、睡眠、飲食。三大欲求への介入はプライバシーの侵害です》


「欲求は別に」

《誰と何回で満足出来るんだ、と言い切れるんですか?それとももう、誰かと試されました?》


「あぁ、先生は適任だな本当、解任したいもの」

《弱点は存在していた方がお得かと》


「お得て。まぁ、魔王化を心配する勢力としては、そうか」

《消化し、昇華するお時間は必要でしょうから。明日からお仕事しましょうか》


「おぉ、助かる」

《程よく考え、切り替え、個人的な問題を後回しにし過ぎず、で》


「善処します」

《では、候補者のお話をしましょうかね》




 そうして桜木さんとロキ神と共に、ハーレム候補者を聞いた後、一軒家へ。

 蜜仍君は狼でお出迎え、ミーシャさんとはハグを。

 エミール君も呼び、今日の夕飯は鉄板付きテーブルと専用の焼き機でクレープ。


 ツナレタスは通常通りにクルクル巻き、エミール君も納得の食べ易さに、そして試行錯誤へ。

 生地に野菜を練りこんだり、そも生地を粉から再検討したり、そうして生地の大きさや包み方にまで至り。


 果ては雑穀米入りをガレットの様に包み、生地の上にハムチーズ卵や、アボカドサーモンにクリームチーズを入れたりと、そうしてテーブルマナーの練習へ。


『巻かれてる方が、味も満遍なくて良い様な?』

「エミール、そう低きに流れんでくれよ」

「良くないですよ桜木様、便利を低きにだなんて、洗い物も減るのに」

「ですね、不便は正義、無色国家の理念だそうで」

『美味しいのは、ミーシャちゃんが包むの上手だからね☆』

「ウザい」


「ミーシャさんや、ロキも一応神様だし」

『良いの良いの、俺も敬われたくない派だし』

「こう御許可は頂いてます。タコスの具も包んでみましょう」


 とうとう桜木さんがミーシャさんにまで押し流される事に。

 そしてそのままウインナーを入れたり、コンビーフを入れたりと魔改造へ。


 それからデザートもクレープ。

 ご近所から貰ったリンゴをミーシャさんがコンポートにしたモノを使い、アップルパイ風にしたり、板チョコを入れたり。


 桜木さんがハマったのは、ビターチョコレートのスポンジが入ったキャラメルナッツクリーム。


『無心にモグモグして可愛いねぇ』


 遂には桜木さんが眉をひそめ、無言で追い払う仕草へ。

 だがロキ神が狼に変身すると、また食事へと視線を戻した。


 そして後片付けをしながら、朝食の相談へ。


「桜木さん、まだ食べれる感じなんですか?」

「いや、それは大丈夫。土日祝日の献立が、普段とは別の方が楽だなと」


 金曜の夜はカレーなのが楽だったのと、曜日感覚を得る為だと。

 そうして蜜仍君やエミール君の配布物で、献立チェックへ。


 何も無い土曜の夜は挽き肉料理、餃子や焼売、ミートソースやそぼろ丼。

 日曜は巻き寿司やクレープ、生春巻きやタコス等の巻物。

 どちらかのお昼には、粉物か麺類、グラタンやフォー。

 そして祝日の夜は、誰かの好物。


『ハナさん、僕ら用に献立を考えてくれてます?』

「まぁ、半分位は、もう半分は従者と、残りはワシの」

「ふふ、ありがとうございます桜木様」


 明日は日曜日、従者だけが知る予定として、明日は遊園地。

 なので早々に眠って頂き、僕も就寝。

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