4月19日 日曜日なのに知恵熱、それと嘘を見抜く魔道具が帰って来た。
また、知恵熱を出したワケだが。
身体症状、胃が痛くなったり頭痛が出たりする代わりに、知恵熱が出るらしい。
おぅ、こう出るか。
「溢れて嘔吐とかも無いから、コレに集約されてるのか」
「それと、味覚障害ですね」
「まして味覚検査をゲリラ的にやられれば誤魔化せないもんなぁ」
「ですね、そもそも顔に出ますし」
「そんなに?」
「もう目の輝きが違いますよ」
「あらー」
「なので、当分休養でお願いしますね」
「えー、仕事したいっす、もうほら、平熱」
「先生からの指示なので、面談されます?」
「ぅう、面談します」
先ずは先生の家へ行くと、いきなり味覚の検査をさせられた。
まだ苦い。
《大丈夫そうですね》
「まだ苦い、毎回この拷問しますか」
《ハードな事が有った場合のみですよ。朝食をどうぞ、私は報告書を作りますので》
「うい」
先ずはケバブ、そして納豆丼は中庭で。
少し休憩していると、先生が用意してくれたのはデザートのクッキー缶、可愛い缶に様々な種類のクッキーやナッツが入ってる。
《どうでしょう》
「すき」
《それ、良く誤解されるのでは》
「なにが?」
《誰にでも直ぐに好きだとか愛してるとか言ってますよね》
「リタは別に良くない?」
《第2世界の、日本大使館員です》
「あぁ、あれは食事によ」
《レーヴィさんにも言ってませんでしたっけ》
「んー?」
《合格祝いのお花を受け取った時です》
「あぁ、アレは花にじゃん、レーヴィ向いて言って無いが」
《アナタが美女なら誤解しますよ》
「美女じゃ無くて良かったー、うまー」
《苦言、意味無いんでしょうかね》
「モテるって?アレクも白雨も刷り込みじゃん、縁切り神社か何かに頼むよ」
《私が管理するのは嫌ですか》
「お局様、楽しいかねそれ」
《ならご自分でします?人事管理》
「いや、先生が楽しいかどうかよ」
《不敬になりそうなのでノーコメントで》
「楽しいのか、ブス専ですね」
《全然、目を潰せますけどどうしますか》
「勿体無い、綺麗だから却下」
《ご自分以外、綺麗に見え過ぎでは》
「クソも居るんだなとは思えてますよ、デストピアじゃ無くて安心してもいます。自由と法律のバランス良いと思います」
《ありがとうございます。それでなんですが、愛されても納得のいく容姿になれる魔道具は如何でしょうか》
本当に突然、ピアスが出て来た。
魔石の付いた青みがかった銀色のピアス、濃い青から青緑、そして水色が混ざった魔石。
「いや好きだけども、突然過ぎる」
《吸血鬼問題、忘れてません?》
「あ」
《なので、武光さんの神獣からエミール君、そしてココへ来たんです》
「エミールは」
《知っちゃいましたね》
「マジか」
《ですので》
「待った、対価は」
《世界を救ったお礼だそうです》
「良い加減、貰い過ぎな」
《発動してから返品を受け付けるか考えるそうですよ》
「クソ、お借りします」
まさか、第2世界に居たとされる亜人になるとは思わず。
《ちょっと、想定外ですね》
「ほらぁ」
《人魚ですかね》
「寧ろ河童じゃね」
《綺麗ですよ》
「耳がね。ん?河童って雌雄同体かね」
《どうでしょう、人魚なら、どうしました?》
「下半身に異物感が」
《あぁ、すみません》
「【変身解除】」
《戻りませんね》
「神々の遊びに巻き込まれましたね。で、どうしろっちゅうのよ」
《それでも一服するんじゃな、全く。致せば解除されるでな、頑張れ》
「先生」
《すみません、申し訳無い》
一瞬、このまま致さず過ごしてやろうかとも思ったが。
何を致すか言われなかった事に望みを賭け、人魚の元へと向かった。
見張り付きで。
「桜木さん」
「大丈夫やって、相談しに行くだけどす」
人魚へ何も言う前に臍のピアスを見せると、そのピアスへキスをしてくれた。
そして体は元の花子の体に。
もう少し待って欲しいと告げると、頬にキスをして海へと消えて行った。
優しいな、助けてくれたのか。
「戻れ、ましたね」
「はぁ、どうなるかと思ったわ」
「桜木さん、どうなると思ってたんですか」
「最悪は、見守られながらかと」
「僕は、海に消えちゃうんじゃ無いかとヒヤヒヤしましたよ」
「人魚ちゃう、河童やもの」
「淡水が海水に行っても同じかと」
「あー、水族館の海水魚は淡水浴するらしいね」
「そう病気には詳しいんですよね」
「な、意味無いな」
「そうでも無いかと」
「先生とこ行くわ」
「はい」
元に戻った姿を見せに、先生の元へ。
《早いですね》
「どっちの意味でや」
《両方の意味で》
「なんもして無いわい、チュウしてもろたら戻った。臍に」
《成程》
「何が成程やねん」
《何を致すか、言ってませんでしたもんね》
「反省してくれる?お2方」
《我は言われた通り伝えただけじゃもん》
「性能の全面開示せいや」
自身が最も気にしている者が好むであろう姿になる。
と、でも直ぐに解除されたのよな。
《愛情表現が、そうなのでは》
「いや?どうなんだろ、解除されても驚いて無かったよ」
《ナイアスの系譜じゃし、見た目が変化した原因が直ぐに分かったんじゃろ》
「頭良いのね」
《それ、外れます?》
「あらー、引き千切るか」
激痛、もう普通に触れるのすら怖くなるレベルの激痛。
しかも痛覚切れないの、臍だけ。
《すみません》
「ヘルプミー、紫苑になれないのは嫌やぁ」
《どうじゃろぅ、試してみよ》
「お前それでまた変身したらどうすんねん」
《次は誰じゃろなぁ》
「もう、あっさりと自暴自棄になれるんですよね【変身】」
紫苑にはなれた。
解除も出来た。
じゃあ、何でだ。
《条件が有るんでしょうか》
「変身の練習か」
《くふふふ、しかもランダムじゃと》
「は」
《外部から変身もさせられるんじゃと》
「先生、繭に籠って良いだろうか」
《コレはちょっと、許可した方が良いかも知れませんね》
《自衛にも使えると思うんじゃがなぁ》
「あぁ、成程」
《それ、詳しく聞きたいんですが》
「対吸血鬼用だ、相手の好みを引きずり出せる」
《じゃの》
《残酷で、お互いに傷付くのでは》
「1周してるから攻撃の手段になるだけだが」
「捨て身過ぎませんか」
「嫌いなら、こう言う顔が良いんだ、って蔑み続けるだけだが」
《極端な方には逆に刺さりそうですよね》
「あー、良い事思い付いた」
「止めて貰えますか」
「神々からの挑戦ぞ、受けて立たねば喜んで貰えないぞ」
《うむ、流石じゃ》
「大義名分を得たぞぉ」
《本当にすみませんでした。何をするか聞かせて下さい》
「先生にだけ」
《良いですか?》
「分かりました」
桜木花子が言うには、本来の姿で先ずは連絡先を交換。
そして今度はベール付きでピアスに触れさせ、変身後にベールを外し、本来の姿の連絡先を消す事を条件に、連絡先を交換。
乗ったらバラし、乗らなければ交友関係の続行。
「吸血鬼が相手なら鼻を折れるし、真実の愛が見付けられるかも知れない。優しいなぁ神様達」
《それ、悪用と言うのでは》
「最高の試し行為やんな、初手だしええやん」
《だとしても》
「先生触ってくれ」
《いや、それはちょっと》
「桜木さん、何しようとしてるんでしょうか」
「稚拙な試し行為」
《もし、私の好みと違う場合、ちゃんと聞き入れて貰えるんでしょうか》
「あー、見抜く魔道具ぅ」
《ほれ、認可が通ってるぞぃ》
「マジ?」
「はい、見抜けず死なれては困るので」
「いつ」
「結構、前です」
「は」
「請われる事が条件だったので」
「あぁ、はぁ。よし、付けます」
ホッとした様子自体は良いんですが、コレはちょっと。
《私は、最後にして貰えませんかね。お互いの為に》
「じゃあ、誰なら良い?」
《正直、誰にもして欲しく無いんですけれど》
《変身の練習と、認識の共通化の一石二鳥だ。じゃと》
「おぉ、いきなり吸血鬼に会いてぇ」
「実験台にする気ですか」
《危ない事はして欲しく無いんですが》
「ちゃんと相談する。先ずは虚栄心からの、色欲さんだな」
桜木さんに付き添い虚栄心さんの店へ行き、臍が出ているのに体型も何も分からない服装に身を包み。
色欲さんの店へ。
カウンターへ直行したにも関わらず、直ぐに吸血鬼の代表団の1人が来てしまった。
どう判断したのだろう、匂いか、オーラか。
「あの」
《大丈夫よ、ココでは同意無しの吸血は出来無いから》
「ほう。吸血出来るかも知れないルーレットボタンはココですよ、どうぞ」
ピアスに触れさせベールを取ると、本当に顔が変わっていた。
そしてどんな好みなのかを聞き出しながら、鏡を見る、当然相手は目の前の容姿に言及する。
そうしてご自身とあまりにもかけ離れた容姿だからか、大きな溜め息をついた。
《気に入らなかったの?》
「うん。残念、本当はこんな顔なのよ」
再びベールを上げ下げすると、吸血鬼に焦りの表情。
しかも魔道具の効果も出るらしく、弁解の嘘が余計に溝を広げていき、果てはもう良いと呆れられ、退場して行った。
「桜木さん」
「コレで安心した?」
僕では無く、従者の僕に聞いた事なのに、つい心が動いてしまった。
怖い、ちゃんと自覚したからこそ、勘違いしない様にしないと。
「桜木さんの好みじゃ無かっただけでは」
「まぁ、ちょっと濃過ぎやな」
《でも、甘めは好きよね?》
「しゅき。あ、本当に悪用出来るなコレ」
「また何を思い付いたんですか」
「恋人のふり出来るやん」
《そんな不埒な子は居ないから大丈夫よ》
「なら、とうとう公の」
「ココだけにして下さい。護衛が大変な事になるので」
「腐っても強いのに」
「それは分かってますが、他を安心させて下さい」
「へい。一服してきます」
《凄く、サディスティックよねぇ》
「ですね、心が痛むなら止めて欲しいんですが」
《それは大丈夫よ、本気じゃ無いから》
「それって、誰か、好きな人が居るんですかね」
《さぁ。次はアナタみたいよ、頑張って》
喫煙所からカウンターが見える、ショナに声が掛かってる。
ジェラシーだわ。
ん?何にジェラシーなんだろうか。
普通の顔にか?
普通って、なんだ。
そう言えば、コルセット仲間は元気だろうか確認。
居ないよな、そりゃそうだ、安心。
ただコレ、虚しいな、カウンターに戻ろう。
「ただいま」
《お帰りなさい》
「支店を出して欲しいんだけど、全世界に」
《あら、良いの?チャンスが増えたら、あの子が取られちゃうかもなのよ?》
「幸せになってくれるのが1番なので。で、何処に掛け合えば良いですか」
もう、準備していたらしい。
そしてワシに請われるのが条件だったそうで、非常にスムーズに開店予定日と場所が決まった。
《どうかしら?》
「良いと思います、宜しくお願いします」
忙しい人、海外が怖い人にも出会いが提供される。
支店の話は直ぐに店の中にも広まった。
「あの、桜木さん、招待状が来たんですが」
「おう、頑張れ」
それから何人かの吸血鬼をアナタの理想じゃ無いので無理ですねと、味見すらさせないままに撃退し、日本時間のお昼になった。
楽しく無い事はして欲しく無いのに。
「もう、お昼ですよ」
「もう、帰るかね。じゃあね」
《じゃあ、またね》
家に帰り食事をし、暫くボーッとしたかと思うと、急に呼び出された。
「はい」
「アレは一時凌ぎだから、もうちょっと有効活用出来無いかね」
「そもそも使って欲しく無い場合は?」
「そう悲観的でも無いのよ、ですよねー、位の影響」
嘘は無し。
それが凄く心苦しい。
「楽しくは無さそうでしたよ」
「害されて無いのに、弱点をカウンター攻撃してるからね。そこまで楽しめぬよ、吸血鬼さんでも、こんなもんかって。とんでもねぇ魔道具よな」
「そうですね」
「大丈夫、君のプライバシーの為にも使わんよ」
僕は明らかに侵害しているのに。
「ありがとうございます」
「いえいえ、静かですな。仕事がしたいです」
容量も熱も問題無し。
ただ問題なのが、今回の件で吸血鬼問題が大きく動いた事。
「有りますよ、面会が入りました」
ルーマニアの吸血鬼との面会へと省庁に向かい、そのまま挨拶する事になった。
あの店で接触した誰かが桜木さんの心でも読んだかの様に、桜木さんの好みの男性を引き連れて。
「イケメンですな」
《どうぞどうぞ、きちんと独身だけを連れて来ましたから》
「観賞用には手を出さない主義なんです、美しさが穢れる」
《その、穢れの概念を私達は拒絶した国なので。もう少し詳しくお聞かせ下さい》
「自身の中の概念なので、理解して貰わずとも結構です。血を飲ませたら帰ってくれますかね、周りにピリピリされて敵わんのです」
《まさしく鮮度が命なので、来て頂きたいんです》
「最低何日」
《先ずは半日》
「護衛は」
《何人でもどうぞ》
「そも美味しいとは限りませんが、真水を啜って、以降の泥水に耐えられるんでしょうか。自分なら嫌だし、逆の立場でも泥水と思われたく無いんですが」
《誤解が有る様なので、ご説明させて頂きます》
我々で言う、コクや旨味だそうで。
当然、あっさりが好きな者も居る。
安いチョコレートと、高いチョコレートの違い程度らしい。
「聞いてたのと違う」
《アレは反対派だったので、そう言ってただけです。もう処分しましたのでご安心を》
「にしても、随分、コチラを知ってらっしゃる」
《来て頂ければ、それも開示可能ですよ》
「だけ?」
《それと、伴侶への配慮です》
「だけ?」
《はい、心配なだけです》
嘘は無し。
本当に、桜木さんを心配しての事らしいが。
「休憩」
《はい》
吸血鬼達を下げさせると、大きな溜め息。
どの、どう言った溜め息なんだろう。
「反対する理由は何だっけか」
「囲われ、帰って来ない事です」
「ワシの意志でもか」
「幸せであるなら、僕は反対しません」
「幸せとはなんぞや、君の幸せ、ワシの幸せ。全部ちょっとずつ違うだろうに」
「傍から見ても、どう見たって幸せそうだ、とか」
「今でも充分に幸せっちゃあ幸せなのにな、それ以上の幸せねぇ」
「あのレベルのイケメンに囲まれて暮らせるかもなんですよ?」
「それ、君なら嬉しいかね」
「いえ、1人で充分です」
「ほらぁ。それにだ、体が保たん」
「それは、じゃあ紫苑さんならどうなんですか」
「あー、あーぁ」
「ほら、ちょっと傾いてるじゃないですか」
「だってあのイケメンの女版は絶対エロいやん」
「ノーコメントで」
「ズルいぞぉ」
「桜木さんの言うエロいとか、良く分からないので」
「ほぉー、じゃあ君は連れていかん。賢人君だな」
「なっ、何でですか」
「猥談に花が咲かないので、男の常識は賢人君から吸収します。吸血鬼達に同行します、準備宜しく」
過去イチで絶望した表情のショナさん。
激レアなのでスマホで連写した。
「一瞬、無抵抗でビックリしたんすけど」
「もう、それどころじゃ無いので」
「猥談に花が咲かないから却下って、面白い言い回しっすよねぇ」
「全然、面白く無いですし。しかもなんで君だけなんて」
「戦争しに行くんじゃ無いんですし、俺の方が経験有り、イテッ」
「もう蚊が、加減をミスしました、すみませんね。じゃあ、引き継ぎを始めますよ」
「うっす」
凄い機嫌悪いじゃん。
桜木様に言ってやろうかな。
「以上ですが」
「うっす」
「絶対、誰も近付けさせないで下さいね」
「俺から見て、桜木様を幸せに出来そうでもダメなんすか」
ほら、めっちゃ困って、めっちゃ不機嫌じゃん。
露骨、大丈夫かなこの人。
「僕にも、見極める時間を配分する位は出来ますよね」
コレ、しろって事だよなぁ。
しなかったら、どうなるんだろ。
「しないつったら、どうなるんすか」
お、真剣。
でもなぁ、告る方向にはならないんだろうなぁ。
「君の家の前で、名前を大声で泣き叫び続けます」
「あ、身柱さんの手口を盗んで、ズルいっすよ」
「賢人君にも効くなんて、流石身柱さんですね」
これ以上、拗れさせたらイケない人かもなと思いました。
万が一にも色々有っては気まずいので、賢人君を付き添いにルーマニアへ。
まだ真っ暗、でもパブやカフェは24時間営業多め。
営業形態がそもそも違う、日の有る時間と無い時間の2交代制、夜型には有り難い。
しかも顔面偏差値は人種のバラけ具合で千差万別、金髪は少なめ、褐色多め。
凄いイケメンに美人が居たかと思うと、自分の兄弟かと思える人まで様々。
コッチ見てる方がホッとする、後ろは凄い緊張する。
「賢人君が居てくれて安心するわ」
「それ良い意味っすよね?」
「勿論」
「信じときます」
お土産屋は無いが、可愛いショップは有る。
仕事のつもりなんだけど、やってる事が思いっ切りただの旅行なのよ。
「仕事と思えんな」
「普通っすもんね」
「すまんね、いつも急で」
「大丈夫っすよ、もう慣れたんで」
「行きたい場所有る?」
「下調べしたいっすよね」
「だな、休憩したい」
《はい》
0世界と歴史がかなり違うので、景色も違うらしいのだが。
フランス辺りとドイツを混ぜた感じで、牧歌的でお洒落で良いと思うが、不安そう。
つか、ブラドさん居るのかしら。
「ブラドさんは居りませんか」
《あ、それ私です、はい》
「てっきり、アナタは、つかトップが来るんかい」
《先ずはそれを説明致しますね》
元人間、推薦で吸血鬼になるんだと。
そして今では30年で交代するので、大体150代目位らしい。
しかも、なったばかりだそう。
「タイミング」
《前任者が自殺したので、こうなっちゃったんですよね》
任期を前倒しする為だけに、亡くなったらしい。
時代を変えるなら、今だと。
そう少しゴタゴタしてる時に、ココにも無色国家の影響が有ったそうで、反対派がそれだったと。
「お墓参りの方法を教えて下さい」
《はい》
メキシコにでも来たのかと思う程、青くカラフルな墓地。
石碑には故人がどんな人だったか、絵や詩が描かれている。
先代の絵は、母国を抱えて笑い泣きしている。
花は新鮮なモノが沢山。
ダメなのよね、本当にこう言うのに弱いんだわ。
「しんどいわ」
《人間としては当時それなりの年齢だったので、余生が増えたと思ってバリバリ仕事をしてたそうです。私が選ばれ、安心して亡くなったと伝え聞いてます》
「死天使さん」
【はい。過労気味だったので、ご家族もご安心なされてますよ】
にしてもだ、死んでまで国に尽くすか。
《あの、いらっしゃってるんですかね》
「おう。許可は得たかい」
【はい】
《本当に、安心しているんでしょうかね。こんな若造に》
【これからを見ているからな、だそうです】
「あら怖い」
《え、どう仰ってるんですか?》
「さ、メシにしましょう」
いきなりブラドさんのお城へ。
第3世界でも同じ場所らしく、コッチの方が綺麗に整備されてるらしい。
しかもメシワンプレート、どこまで桜木様の趣味嗜好を把握されてんのか不安。
ミティティとか言うハンバーグにドハマりしてるし、向こうの月読様が心配したのも今なら分かるっすねぇ。
《どうでしょう》
「ミティティ好き、サルマーレは酸っぱいけど美味しいですな」
《良かった》
「もう1つお城有ったと思うんですが」
《ほぼ砦なので、今は完全に観光地化させてます》
「地下は有る?」
《いえ、無かった筈、ですよね?》
周りの者の半分は前任者が選んだ者だそうで、古い情報を紙媒体でやり取りしている。
目に優しいと桜木様も納得の様子。
「無いのが本来なのかも」
《その事に、凄く興味が有るんですが》
「ワシの血か情報か」
《んー、国民投票とかして良いですかね?》
「個人的には」
《情報です。国としては、半々かと》
周りも頷いてる。
でも、血って、どっちの意味なんすかねぇ。
「なぜ、そんなになのか」
《どっちの事でしょう?》
「両方」
《そこも説明させて頂きますね》
完全な安全地帯故に投票率が低下し続けていた、国民は国に興味が無く、まして鎖国状態で年々人間が流出していた。
しかも、国連に加盟していなかったので恩恵も無し、流出を止める切っ掛けを完全に見失っていた。
そう憂いた先代が自分を推し、改革を望んだので助力したが。
まさか死ぬとは思わなかった、と。
「ほう」
《そして血に関してですが、アナタの同族は存在します、ココに》
「あぁ、だから国連に入れなかったと」
《はい、無色国家の反対派も、その事かと》
資料は確かに、動画もそうなんすけど。
でも、コレだけの事なら。
「それを言う為だけに、ココへ?」
《伴侶の事は本当です、もし我々の杞憂が正しいなら。アナタは人を惹き付けてしまう性質が有る筈なんです》
「もうちょっと詳しく」
《魅了、魅惑。魔力容量に応じ、勝手に人や精霊、神々をも惹き付けてしまう特異体質》
「雷電のせい?」
《人の身に炎は強過ぎます、なら次に光源となるのは》
「雷電かぁ」
《雷電と人体、治癒、蘇生は切っても切れません。かと言って途絶えさせるのを始祖は嫌がった、ただただ途絶えさせる事が大嫌いな方だったそうで。凝り性で、警戒心が高くて、そんな方だったそうです》
「記憶の継承は無いのね」
《不測の事態になった場合のみ、ですね》
「あぁ、初代のお墓参りもせんといかんな」
《では、食後のお散歩にでも。我々は席を立ちますので、存分にお食べになって下さい》
配慮。
警戒する必要、無かったのでは。
「どう思うよ」
「警戒し過ぎだった感が凄いっすね」
「ですよねぇ」
「あ、お取りするっすよ」
「ミティティ大盛りで」
桜木様にもかなり食事が合ったらしく、パプリカの肉詰めスープの作り方を聞き出していた。
米、入ってたんすね。
「米、どんだけ好きなんすか」
「なー、米には気付かなかったのにな。ロウヒが」
「向こうのロウヒ様、肉詰めが好きって言ってましたもんね」
「映画館?」
「嫌なら消して大丈夫っすよ、記憶」
「いや、そうじゃ無いんだ。死人の名を口にしてるみたいで、気が引ける」
「マティアスさん、何で呼んでくれないのかって怒りそうっすよね」
「あー、霊界からのメッセージが無いのでね、無理っすわ」
「丹◯哲郎っすか」
「どっちにしたって古いのよ」
「凄い疑問なんすけど、マティアスさんを好きだったんすか?」
「好きってなに。つか究極はヤれるかヤれないかじゃ無いの?」
「あー、だから俺なんすね」
「まぁね」
《失礼します。お食事、足りました?》
「足りた、余ってしまったんだが。廃棄?」
《はい、コンポスト行きですね》
「じゃあ持ち帰りたい」
《はい、どうぞ。ありがとうございます》
食事を皿やボウルに移し終え、日の出前の墓地へ。
湖の中に有る孤島、ココは質素な墓石だけ、でも良い感じ。
「簡素」
《御本人の希望で、ココはあくまでも公園ですので》
「良いな、ワシも浮島でこんな感じが良い」
「浮島だと行くの難しいじゃ無いっすか」
「踏み荒らされたらキレる自信が有るから、フェアリーリングで行ける様にすれば良いべ。公式はどっか過疎地で良いんじゃない、観光資源にしれ」
「うっす」
《もうそこまで、ずっと考えてたんですか?》
「なぜ」
《随分と具体的なのと、先代もそんな感じで話していたなと》
「そうなんすか?」
「合間にね、帰って来てからよ」
「それ、桜木様は幸せなのか心配するの、そこなんすよ。向こうでいっぱい幸せになれるチャンスが有ったのに、全部投げて帰って来ちゃうんすもん。あ、帰って来てくれたのは嬉しいっすけど、桜木様を犠牲にしたみたいで、まだしてるみたいで、嫌なんすよ」
「まだ、ワシ帰って来なかった方が犠牲が少なかったんじゃ無いかと思うのよ。しがみついたのはワシだから、心配無い」
「俺らがちゃんと、しっかりしなかったから、帰って来ないとって」
「無い無い、必要じゃ無くても帰って来たかった」
「何でなんすか?皆、そこが疑問なんすよ」
「なぜよ」
「それ、聞かせて良いんすか」
「おう」
「先ず、井縫さんっすよ。何だかんだギリ好みじゃないんすか?」
「おう、ヤれる」
「せいちゃんさんも、蓬さんも」
「おう、ヤれる」
「大國さんは無理なのは分かるんすけど、アレだけのメンツ逃したんすよ?」
「え?イジメかこれ」
「俺なら、性別逆にしたら、躊躇ったっすもん。マティアスさんとか、レーヴィさんとか、俺なら直ぐに手を出しちゃうだろうなって。だから、ココでも自制心が効き過ぎてて不安なんす。例えば、ぶっちゃけ先生とヤれるんすよね?」
「おう」
「ほらぁ、しかもお店でもこっ酷い振り方して傷付いてんですもん。嫌なんすよ、そう言う周り重視が、自信無くなるんすよ、帰って来て貰ったのにって」
「君が護衛に居たのか」
「女で、トイレ前で声掛けたの俺です」
「あぁ、可愛かったなおい」
「もー、話し戻しますよ。晶君だって、本当はヤれたんすよね?」
「ノエルもワンチャン、アヴちゃんも。ワシ、容易いから」
「でも、もう我慢する必要無いんすよ?」
「自分勝手に贖罪する時間が欲しい。落ち込んだり、泣いたり後悔したり、ボーッと考えたい。独りで、そう整理して来たから、そう整理したい」
「俺、それ分かんないっす。誰か、いつも居たから」
「緊張するの、気を使ってしまうのよ。コレは永遠に直らないと思うし、直らんで良いと思う。ワシ、凄い、独りだと色々ヤバいから」
「足クセ悪いっすもんね」
「点滴してたら足使うじゃろがい」
「つか、その性格、病弱だけじゃ無いっすよね」
「まぁ、家庭環境は良いとは言えなかった。なので、ワシ面倒ですよ?だから放っといても大丈夫」
《初代の遺言なのと、情報への興味。それから個人への興味になって、外交の事も有りますし、私が赴こうと思ったんです》
「睡眠は取られますか」
《はい、そろそろ日の出なので》
「じゃあ、戻りましょうか」
他人のお墓の前で言い争い的な事を、大事な事だったんで許してくんないっすかね。
それとも怒るタイプだったらヤバいかも。
《この城全体が遮光されますので、灯りはコチラをどうぞ。非常灯に従って頂ければ外へ出れます》
「夜ふかしですか」
《いえ、政務がまだ少し残っているので》
「すみませんね、直々に案内させて」
《私なら、トップに案内して貰いたいので》
「学習が早い、頭良いですな」
《向こうの世界の、相手の立場で考える事の成熟度が足り無いだけですよ。先ずはどう考えるかを徹底的に教育されますから、ソチラもですよね?従者さん》
「はい。少なくとも俺なら、性別逆転してたら、真っ先にマティアスさん妊娠させてます」
「わお」
「もー、直ぐ茶化すんすもん」
「真面目が恥ずかしい世代」
「マジっすか?」
「緊張に耐えられない体質」
「話戻しますよ。俺なら、帰れるかもだし、繋がりは作れるし。俺なら打算半分でしました」
「警戒心高過ぎなのかも、ココもそうかもだし」
《誰もそこを責めて無いのに、卑屈なのは育ちですかね?》
「ですね、バッサリ切りますな」
《こう評価に弱い、だから評価の土台に立たない。表舞台にも立とうとしない、卑屈のままでは周りに迷惑なのでは?》
「他人に上げられた評価は、他人に容易く落とされる。評価に重きを置いて無いが、卑下で人死が出ますかね」
《鬱にはさせられるでしょうね、自信を無くさせる事は出来るんですから》
「俺の言葉を使って桜木様を貶めないで貰えますかね、俺は俺のせいです。桜木様が自信満々でも、帰って来た事に、きっと罪悪感が出ますんで。桜木様の卑屈さは俺にダメージ無いっす」
《それでも、恋が交れば違う事になると思いませんか。恋は盲目、ストーカー、失恋で人は容易く死にますよね》
「そう心配してくれてるんすか?」
「そっち?」
《すみません、キツい物言いでしたね。卑屈な方が大嫌いなので》
「すみませんでした、他の方に変えて下さい。卑屈が大嫌いじゃ無い方に」
《冗談ですよ》
「本音でしたよね、大嫌いはお互いの為にならないので是非にも他の方をお願いします。政務の邪魔までしたく無いので」
《本当に冗談なんです、揺さぶりを掛けただけで》
「えー、魔道具効かないんかい?」
《みたいですね、盟約魔法をどうぞ》
無色国家を警戒し、薬物を使用して抑えていただけだと。
そして嫌いなのは本当だと言い、小指が捥げた、マジか。
「嘘やん、何でそこまで」
《警戒心が有ったのは、私達も同じなので》
「いや、うん、魔道具を信じるわ。他の方、人間さん宜しく」
《いやぁ、完全に失敗しましたね》
「そうっすね、言葉を重んじる方なんで」
《すみませんでした。卑屈に関しては問題とは思っていません、警戒心が有る事は良い事だと思っていますし》
「ワシ、超繊細なの。最も信頼してる友人を紹介してくれ、人間で、案内を頼む」
《どうにか、挽回出来ませんかね》
「この感じは無理っすね、もう無関心っすもんね」
「そんなに分かり易い?」
「はい、その反応レアっすもん」
「大嫌いは強烈過ぎて萎えたからね、ある種の生存本能かも」
《弁解しても?》
「いや。あぁ、本当だ、興味ほぼ無い。凄い、何で分かったん賢人君」
「何でそんな事を言ったか、聞かなかったっすよね」
「確かに、分かり易いなぁ」
《つい興味を引こうと、失敗しました》
「あーぁ、マティアスさんみたい」
「なんか、嬉しいな」
「スンって、兄妹みたいでしたよマジで」
「あぁ、だからエロい姉で、成程」
「正解っす、覚えててくれたんすね」
「おう。で、君の友人を早う紹介せい」
《分かりました》
第2世界の亜人って、きっと正直なんすよね、どうしても尻尾と耳に出ちゃうから。
ココもそうなら、桜木様も少しは安心出来るかもなのに。
『友人が粗相をした様で、僕からもお詫びします』
「この顔大嫌いじゃ無い?大丈夫?」
「あーぁ、滅茶苦茶傷付いてるじゃ無いっすかー」
『本当に、どうお詫びを』
「いや、アカン、また世代交代は逆にややこしくなる」
「桜木様、死天使さん居るんすか?」
「うん、すまん、心配性で。ダメだめ」
「あぁ、殺そうか聞かれてるんすね」
『彼、モテるので調子に乗ったのかもですね、鼻を折っておくので猶予を下さい』
「で、答えは?」
『大嫌いじゃ無いので大丈夫ですよ』
「嘘言って」
『美醜、のみ、評価すべき』
「君は良い人だ」
『ありがとうございます。先ずはココの常識からで宜しいですかね?』
「はい、宜しくお願いします」
基本は2交代制、人間は日の出と夜間両方。
吸血鬼は夜間だけ、普通に日光で死んじゃうんすね。
「紫外線なんすか?」
『紫外線だけなら大丈夫なんです、こう、一定のが混ざるとダメだそうです』
「ほう、アイツで実験しちゃるか」
『悦ぶかもですよ』
「あー、盲点、接触控えるわ」
『では次に、教育ですかね』
どうやら、ココの従者科の人間ぽい。
ウチや国連のマニュアルと同じ流れだ、ヤバいかも。
凄い既視感で、一気に不安になった。
桜木様の好みの薄顔、物腰は柔らかいし誠実。
すげぇの回して来やがったあの人、いや、鬼って言えば良いのかな。
やべぇ、どうしよう。
「モテそうっすよね」
『まぁ、そこそこ』
「でしょうね」
とは言ってもちょっと興味示しちゃってるぅ。
「じゃあお相手さん居るんすね」
『生憎、丁度居ないんですよ』
「あぁ、切れ目少なさそう」
『そうでも無いですよ。じゃあ、恋愛や結婚の話にしましょうか。先ずは……』
結婚は吸血鬼かどうかが大事なので、戸籍にハッキリ吸血鬼と記載される。
そして吸血鬼のパスポートは民間には発行され無いし、役人には出るにしても厳しい条件や制約が有る。
それは人間も一緒で、外国では吸血鬼の話が出来無い魔法が掛けられている。
だが、ブラドの名を継いだ者は制約を受けない。
そして吸血鬼との結婚は、吸血鬼側は離婚出来無い仕組み。
そして相手を吸い殺せば死刑。
「死刑って。じゃあ離婚したかったら」
『説得するしか無いですね』
「でも、辛いのでは」
『別居は可能ですが、一夫一妻の場合は浮気すると罰金刑に福利厚生が最低限になります』
「吸血鬼だけ重く無い?」
『それだけ魅力的になるので、バランス的には丁度良いんですよ』
「多夫多妻も有るんすね」
『人間にも、吸血鬼にも、同性婚も認められて居ますし。あ、接触したそうですね、色欲さんのお店で』
「情報筒抜けだな、どこまで知ってますか」
『召喚者様が移住して下さるかもなので、丁重におもてなししろと』
「どんな繋がりなんすか」
『従者科の同期です』
「残念、興味有ったのに」
「やっぱり」
「うっさい」
『辞めてソチラに移住しましょうか?』
「いや、良いや。話しを続けて下さい」
んー、いざこうなると、良かったのか悪かったのか。
急に冷めちゃったのがなぁ。
もう、こうなると分かんないっす。
うっかり惚れる手前で良かった。
なんだ、従者かと、そしてモテるとも。
ナイスパスだ賢人君。
そうして他の店が開くまでと、紙媒体とタブレットでココの事を教えてくれた、そして彼自身の事も。
日頃は移住者の窓口になり、説明しているので慣れてるんだそう。
邦人も何人か居るそうで、食堂を経営している人間も居るんだとか。
そして吸血鬼にも子供が出来るとも、ただ妊娠の確率が低く、薬もそこまで作用してくれ無いんだと。
「その薬だけ、効きが悪いんすか?」
『いえ、全般的にですね。なので、相当摂取したんだと思います』
「薬抜けば良かったか」
「もう許しちゃうんすか?」
「許すも何も、政務が疎かになるのはイカンし。確認してくれるかね」
『はい』
「桜木様、やっぱり従者はダメっすか」
「ダメっつうか、なんか。あぁ、従者かって。心得が無かったとしても、手近だし、好意と愛を履き違えたく無い感じ」
「俺は大丈夫っすよ、桜木様は絶対に無いんで」
「ワシも、もう兄弟感が凄いもの」
「俺がお兄ちゃんっすよね?」
「だな、見抜かれまくってんもの」
「妹よ、アレは従者だけど観光案内のお兄さんでも有る」
「モテそうだと疑うのがしんどいから、軟禁したくなる」
「それエロいっすね」
「だろう」
『お待たせしました。ご心配頂けてありがとうございます、と。もう今は大丈夫なので、出入国もお任せします、お好きにお過ごし下さいとの事でした』
「ありがとうございます。休憩にしましょう、一服します」
桜木様が興味を無くしたのが分かったらしく、少ししょんぼりしてる。
ショナさんも、こうなってたかもなんすよね。
「どんまいです」
『僕も、何か失敗したんでしょうかね』
「いや、自制心の塊みたいになっちゃってるんで。それと従者の心得も、知っちゃってるんすよ」
『あぁ、そうなんですね』
「だけじゃ無いんすけどね、手近が嫌とか、色々有るんすよ。それで、何で従者なんすか?国連にも所属して無いのに」
『軍部所属ですし。困ってる人を助けたい、そこから観光案内へ、その先が有ると知って、そのまま流れでですかね』
「国連の所属予定って無いんすか?」
『無いですね。今回の事で余計に、我々位は独立した機関で有っても良いんじゃ無いかと。各国とは連携しますが、選ぶのは彼と国民なので』
「ウチと連携するかは分からないんすね」
『ココでは少ない人種ですから、一般市民は、どうなのかと考え調べてる最中かと』
「個人的にはどうなんすか?」
『もしかして、警戒されてますか?』
「まぁ、兄としてっすよ」
『そう言う感じなんですね』
「そうっすね、弟で妹って感じっす、なんせヤンチャなんで」
『彼が興味を示したので、気になりはしましたけど。従者と言った瞬間に落胆された感じがして、そこで興味が本格的に湧いた感じです。従者でガッカリされた事がほぼ無いので』
そこかぁ。
難しいなぁ、桜木様の普通のムーブで興味引いちゃうんだもの。
「その、桜木様の性質、知ってるんすよね」
『相性が良いと、異常に惹き付けてしまうので。ココでは成熟すると森に隔離されます、お相手が見付かるまで、そこに帰る義務が発生するんです』
「え、じゃあ」
『まさか泊まるとは思ってませんので、言わなかっただけかと』
「寝てる時がヤバいんすか?」
『みたいです、僕は体験してませんが。それは、大丈夫なんですか?』
「俺は、え?じゃあ、それって恋と違うんすか?」
『それは、恋をどう定義するかによるのでは』
「えー」
「どうした、休憩させてやれや」
「いや、はい、ちょっと良いっすかね」
『はい、席を外しますね』
「なに」
「ココの同族さんは、眠ってる時に、惹き付けちゃうらしいっす」
「は、あ、いや。んー」
「そうなるっすよね、マーリン様の例が有るんで」
「なら、もう、フェロモンにレーヴィがやられただけでは」
「何か、恋の定義次第らしいって言ってて」
「あー」
「で、森の家に帰らないといけないらしいんすよ、相手が出来るまで」
「泊まりは止めるか」
「そうすっね」
「いや、逆に良い実験になるか」
「んーー、相談させてくれません?」
「断る」
「いやー、ショナさん絶対に怒りますって」
「あ、同族居るって言って良いのかな、気に病んでたし」
「それは確認しましょう」
それは大丈夫だったが。
もし泊まるなら、城でと。
「眠るのすらヤバいのはマジだったんだなぁ」
「どこまでも、まさかっすよねぇ」
『あの、どうしてお泊りに?』
「実験。あ、その影響をリセットする方法って」
『より相性の良い同族の上書きなら聞いた事は有るんですが、リセットは知らないです』
「同族さんなら知ってるかも」
『そうですね、魔女の森の入口ならご案内可能ですよ』
「ヤバいのか」
『夜型の方が居た場合、影響してしまう可能性が有るので』
森の入口は、奇妙に曲がった木の生えた場所だった。
おじさんは元気だろうか。
「桜木様、やっぱりミーシャさんを」
「ミーシャが影響受け無いとも限らんし、じゃあ行ってきまーす。お邪魔します」
神社と同じ仕組みなのか、足を踏み入れ頭を下げ、上げた瞬間には別の場所へ移動していた。
普通に小屋が有るが、人は居ない。
煙突から煙の出てる家にノック。
《あら、外の子ね、いらっしゃい》
「はい、お邪魔します」
凄い美人が出てくるのかと思ったが、普通、街で見ても目を引かない程度。
優しそう。
暗い色の髪と目、レーヴィはこう言う人にしたら良かったのに
《それで、移住するの?》
「考え中です。魅了しちゃってたなら、先ずはリセットの方法が知りたいんです」
《おまじないは有るけれど、効果は半々よ。まして外の人なら、効果はほぼ無いし》
「だけ、ですか」
《嫌な目に合ってるの?》
「いえ、目を覚まさせたいだけです」
《あぁ、勘違いしてるみたいね。ちょっと良い匂いがしてるだけよ、気付くか気付か無い程度に》
「ずっと?」
《アナタの場合は違うけれど、大変だったでしょうに》
「いや、そうでも無いです」
《良いのよ、どの道アナタは悪く無いんだもの。詳しく教えてあげるわね》
レジストが有るなら、問題無い程度の滲み出る量だそうで。
相性が良いとは遺伝子レベルでの事、子孫に疾患が出難い事を指すだけ。
精神的な相性の方が厄介で、下手に作用すると共依存的になるらしい。
「膜とのコンボで、ですか」
《心身両方だし、んー、でもココのと少し違うのね》
「召喚者なんです」
《あら、ありがとうございます、守って頂いて。じゃあお困りでしょう》
「神々から複数を選ぶかどうにかしろと」
《大丈夫、アナタから出てるのは違うもの。ココの子は性欲増強タイプが多いの、アナタは酔わせるだけ》
「コッチは、どうですか」
《あら、緩やかで全然大丈夫じゃ無い》
「眠っちゃう系らしい」
《そうそう、穏やかになれたり、気が緩んじゃう感じね》
「家族には、影響しないんですか」
《それがバラバラだから厄介なの》
「あぁ、ご苦労様です」
《でも、アナタのは家族に影響しそうよ》
「影響してアレなら、今頃は殺し合いですな」
《そうかも知れないわね、長く穏やかに効くモノって、気付き難いから》
「じゃあリセットしなくても、良いのかな」
《どうしても心配なら、アナタのは長く離れてれば大丈夫だけれど。記憶や何かを変える事も出来るわよ、アナタの力で》
「いや、それは止めときます」
《そう。それで、外の子に良い子は居るの?》
「好きってなんですか、恋の定義はなんですか」
《ヤりたいかどうかじゃ無い?》
「それは肉体的欲求では」
《息をするのも、お腹が空くのも、泣いたり笑ったりも全て、脳の仕業でしょう?》
「オーラは、ココは関係無いんですか」
《好きな人が好きな色と同じなら素敵ね、位かしら。他と違って選択肢は少ないから、そうなのかも知れないわね》
「アナタは神様ですか」
《ただの風の精霊、ギリシャではアリアドネ。夫のデュオニソスは、ローマではバッカス、葡萄とワインの神様。ココは彼の故郷なの》
「あらー、それが起因?」
《どうなのかしらね、ふふ》
「吸血鬼が居るから、逆にバランス良いのか」
《そうかも知れないわね》
「だから慎重だった、賛否が分かれるから」
《それはそう、だって、最高の状況とは言えないもの》
「排除するしか、きっと最高は得られない」
《それを嫌がってくれたから、私達は彼に加護を与えた》
「ブラドさん、墓前で口論しちゃったわ」
《そう言うの好きな子だったから大丈夫よ、議論は大切だわ》
「答えが出せなかった」
《そんな直ぐに答えが出る事で悩まないでしょう?》
「うっ、いや、そうでも無いです」
《もー、大嫌いなんて本当にごめんなさいね。大丈夫よ、話して頂戴》
「大概は、誰でも大体、好きになれる」
《食指が動かない子も居るでしょう?》
「その方が、少ない」
《向こうでも、そうだったの?》
「いや、でも昨今の関係者は殆どいける」
《幻滅されたく無いのね》
「選ぶ不安も有る、碌なの選べなさそうだから」
《話し合いも、絆されそうで怖いのね》
「もう、詰んでる」
《はいはい落ち着いて、お茶を飲みましょうね。ほら、美味しいわよ》
「ありがとうございます」
《私も、失敗した事が有るの。でも、だから夫に出会えたから、それを消し去りたいとは思わないの。その事を消してしまったら、私はココに居ない。失敗と言うか、過程ね》
「そう思える強さの源は、自尊心でしょうか」
《殺せる強さよ。前の夫は私の糸と剣でミノタウロスを倒した、そしてその糸を作り出したのは誰か、裏切ったら殺せる強さと愛が有れば私は大丈夫。そしてデュオニソスに攫われたけれど、後々になって特に感謝したわ、元夫とずっと居たら大変だったろうなって話しばかりだもの》
「ほう」
《例えアナタの目が曇ったとしても、正せる人が居れば、不幸にはならない筈よね?》
「あの、不勉強で申し訳無いんですが」
《あら、聞いてくれるのね》
ミノス王、お父様の時代、もっと言えばずっと前から争いは続いていた。
先ずは兄弟喧嘩、その争いを収めたくてお父様は神々に祈った。
そして神々からは白き使者が贈られ、見事に解決したけれど。
お父様は手を出した。
白き使者は帰れなくなり、神々は激怒し、お母様に呪いを掛けた。
その白き使者を誘惑する呪い、成就するまで呪いは解けない。
そして呪いは解け、ミノタウロスが産まれた。
その能力も力もお祖父様を駕ぐモノだったから、ダイダロスに迷宮を作らせて閉じ込めた。
私には面倒を見させた。
それから暫くして兄のアンドロゲオスが死に、9年毎に7人の少年、7人の少女が贈られる様になった。
その中の1人に私は恋をした。
彼らは私達兄妹へ友達や恋人として贈られたと聞かされていたから、とても喜んでいたの。
皆で島を出て幸せになろうって、なのに私の糸と短剣でミノタウロスは殺された。
子供を産んだ後に、功を得る為に生贄に名乗り出た事も、兄を殺した事も知った。
責めたら殺されそうになって、デュオニソスが助けてくれた。
そして彼との子も分け隔て無く育ててくれた、だから私は幸せなの。
「白き使者とは」
《御使い、召喚者。私はミノタウロスとは種違いの兄妹なの、最初は恨んだけれど、優しいお兄ちゃんだった。でも、とても強くて、淋しがり屋だから、私を手放したかどうか分からないって》
「前の夫か」
《ずっと、そうなのかどうか、ずっと悩んでるの。それを否定してしまったら、デュオニソスと居る事を喜べなくなってしまうから》
「受け入れれば、兄を否定してしまう」
《皆で仲良く過ごしていたの、祝福だってしてくれたわ。でも、私はずっと一緒だった唯一の身内》
「お父様が全部悪い、次に元夫。お兄ちゃんは、デュオニソスさんでも祝福してくれてた筈、デュオニソスさんともいずれ出会えてた事に。なって欲しいけど、それは今度はアナタを否定しかねないし」
《否定したら肯定になる事も有るから、だからコレが最善だったと思う様にしてるの》
「ワシにも、しろと」
《規模や数が違うから、全く同じとは言えないけれど、そう思える人と一緒になって欲しい。けれど》
「複数て」
《そうよね、初めて英雄に同情するわ。元夫もそんな感じだったから》
「えー、英雄やだー」
《バラバラに強引に娶ったりしてたらしいから、ちゃんとしたら大丈夫な筈よ》
「1人で良いのに」
《選べるの?》
「ぐっ」
《もう篩い落とす位の気概で居なさいよ、選ぶんじゃ無くて、勝手に脱落させたら良いのよ》
「時間が欲しい」
《人間の時間は短いわ、時間制限を設けなさいね?》
「ふぇい」
桜木様が森の中へと消えてから5分。
何でどうして、こう落ち着きが無くなるんすかね。
『あの、戻られなかった場合は』
「ウチの従者呼ぼうと思ってたんすけど」
『ではウチのも』
「大丈夫っすよ、あんな感じで自信満々の時は大丈夫なんで。それに、関わる人数が多いと萎縮しちゃうんで」
『でも、万が一が有った場合』
「女性だけなんすよね?」
『まぁ、そうですが』
「なら大丈夫っすよ、落ち着いて下さいって。一服します?」
『いや、でも』
「さっきまで落ち着いてたのに、どしたんすか」
『緊張で、保てただけなので』
あー、可愛いじゃん、ショナさんも最初はこんな感じだったのかなぁ。
でもなぁ、想像出来ねぇ。
「まぁ、一服どうぞ。俺、連絡する事が有るんで」
『はい、分かりました』
うん、想像出来無いわ。
「もしもーし、ショナさん」
【何か有ったんですか】
「怖いっすよ、ワンコールでその勢い。桜木様を信じて無いんすか?」
【事象によります】
「あぁ。で、ちょっと聞きたいんすけど、緊張しました?最初に桜木様に会った頃」
【そうですね、でも今思えば一瞬でした。直ぐには、いえ、直ぐに緊張は解けましたが、それが何か】
「直ぐに、は?」
【何でも無いです、もう良いですかね】
「大事な事なんすよ、フェロモンの事も絡むんで」
【絶対に何か有りましたね】
「いや、マジでまだっす。なので影響なのか偶々なのか知りたいんすよ、で、言えないなら桜木様から聞いてから、またショナさんに聞き直しますけど」
【ちょっと待って下さい、席を移動するので】
「出勤してるんすか?」
【いえ、実家なので】
「あぁ」
【で。いきなり目の前で着替えられたので、面食らって緊張が吹き飛びました】
「きゃー」
【後から聞いたんですが、女性だと勘違いされただけだそうで。……誂うだけなら相応の対処をしますが】
「サーセン。違うんすよ、いやぁ、マジっすかぁ。その時っすか?」
【いえ、最近、気付きました】
「真っ赤っすねぇ」
【もしかして君にも】
「いや、そんなドジっ子状態は見た事も無いっすよ」
【性別が分からない状態だったので、勘違いしたそうで】
「まぁ、普通は女に女が付くって思うっすもんね」
【ターニャさんのリーディング含め、カルテが多かったので、僕が付く事に】
「しかも久し振りっすもんね。俺なら、無理だなぁ」
【ディスってますかね】
「いや、姉妹が居るかどうかの差っすよ。安心して下さい、俺の妹なんで」
【良く甘んじましたね、桜木さん】
「だって分かり易いんすもん、どんだけっすかショナさん」
【やっぱりディスりますか】
「どうして、気付きたく無かったんすか?」
【もう切って良いですかね】
「あ、と、ココ従者居るんすよ、知ってました?」
【いえ、そうなんですか】
「で、ライバルになりそうなのがめっちゃ心配してて、ショナさんもこんな狼狽えたのかなーって」
【コレ、好奇心8割では】
「半々っすよぉ」
【心配する様な事が起きてるんですね】
「いや、話し合いだけなので大丈夫な筈っす」
【筈って】
「あ、帰って来たっすよ、ほら」
「おーう、体感どの位」
「10分弱っすかね」
「じゃあ中の時間と違うか、白昼夢させられたかも、もっと長く居た」
【桜木さん、大丈夫ですか?】
「話し合いしてただけや、あの子はどうした」
「休憩行かせたっすよ、めっちゃ不安そうだったんで」
「そうか、そっちは業務連絡か?」
「まぁ、そんな感じっす」
「じゃ、中間に居るわ」
「うっす」
【大丈夫そうには見えますが、表に出さない方なので】
それ、特にショナさんにだけなんすけど。
まぁ、それ言ってもなぁ。
「まぁ、大丈夫っすよ」
【ですが、もう少し警戒させて欲しいんですが】
「またそんな、あ」
手をニギニギされてるぅ。
なのに抵抗しないし、何で。
【賢人君、対処をお願いします】
試しにスキンシップに無抵抗で居てみたが、自分が惚れっぽいと絶望するだけの結果となった。
うん、神様の言う事だもんな、ワシ人間じゃし。
「とうっ!桜木様、大丈夫っすか?」
どうしたもんかと固まっていると、賢人君の手刀により助かった。
うん、国柄も有るよね。
「あぁ、心配されてただけだ」
『すみません、スキンシップが過ぎましたか』
「はい、完全に困って固まりました」
狼狽えて可愛いなと見惚れもしました。
「そう言う方なんで、控えて下さい」
『はい、失礼しました』
「まだアレは起きてる?」
『確認してみます』
起きてたので、報告へ。
「大丈夫との事なので、大丈夫です」
『魔女の森へ行かれ、15分弱で帰って来られました』
「桜木様的には、その2倍以上居た感覚だそうです」
「精霊さんと喋った、良い方でした」
《そう。ちゃんとお礼を言わせて欲しい、心配してくれてありが》
「ウザいのもワザとですか?」
《あれー、何か悪化してる》
『すみません、スキンシップが過ぎた様で、悪化させてしまいました』
「チャラいの嫌い、遊んでる奴も嫌い、ウブが良い」
「心の声だだ漏れっすよ」
《彼は真面目だよ?》
「アナタより、だろ」
《まぁ、何か言ったの?》
『それが』
「丁度居ない、途切れてる、っすかね」
《ただ居ないで良いじゃんかー》
『大嫌いとか逆張りする人に言われたく無いんですけど』
「もっとおかしたべる」
「すんません、お代わり良いっすかね」
「氷枕か氷嚢も、知恵熱出そう」
桜木様の行動に笑ったりキュンとした顔をしたり。
アレっすね、ギャップ萌えしちゃうんすかね。
俺にはもうウザい妹のムーブに思えて逆に安心しちゃうけど、他の人は違うんすね。
「不思議っすねぇ」
「でしょうねー」
《その、森では何を話されたんですか?》
「昔話、アリアドネさんの人生。それとワシのフェロモンと、恋バナ」
「盛り沢山っすね」
「ラウ、この体は酔う。紫苑は落ち着かせる、心配なら離れてれば影響は消えるだろうって」
「じゃあ、独り暮らししちゃいますか」
「良いのか」
「俺は良いんで、申請しときますよ」
《じゃあ、ウチには泊まらないんだね。残念、ドリームランドに行きたかったんだけどな》
「ほれ、コレに触れろ。映画館も見せてやるから、コレで興味度を下げろ」
《優しいよね、ありがとう》
ブラドさんが透明な鍵が有るらしき場所へ触れると、膝から崩れ落ちた。
そしてそれを抱える従者。
その光景を拝む桜木様。
「あ、この拝んでるのは尊いって意味なので心配ご無用っすよ」
「つい、すまんね。じゃあ、帰る」
『では、お送りします』
「心配か、なら寝室まで付いて行くわ」
ソッチへの興味ぃ。
残念な事に車椅子で運ばれ、桜木様の喜びの時間は寝かせる時だけだったが。
満足なご様子、もうコレが癖なのかワザとなのか、分かんないっす。
『度々すみません』
「いえ、次は他の人でお願いします。では」
いきなりトドメ。
でもまぁ、コレで諦めてくれるなら逆に安心っすね。
それから浮島で一服し、柏木さんの元へ。
「なので、独り暮らしするです」
「後は俺が説明するんで、ジュラさんお願いします」
『はい、じゃあお昼寝しましょうね桜木様』
「うい」
「すみません、報告書を書ける状態じゃ無くて」
「大方の予想は付いてますから大丈夫ですよ、お疲れ様でした」
「うっす、じゃあ順を追って説明します」
エナさんに僕の実家を体験したいと強制的に連行され、暫くすると賢人君から連絡が有った。
不安になりつつも暫く甥の相手をして頂いていたが、桜木さんが独り暮らしをするので暫く待機命令のままだ、と報告が入った。
「エナさん」
『うん、はい』
「何故、どうしてが抜けてるんですが」
『フェロモン解除と懺悔や贖罪の時間』
「簡潔で明確ですが」
『その杞憂、フェロモンのせいならハナはショックだろうね』
「神々や、精霊は」
『呼ばれたら行く』
《じゃの》
『精々、休暇を楽しむんだな』
『うん、私は家に帰る。アレクをお願い』
《うむ》
コレも先読みされての行動なのか、また僕が居ない所で。
そして神様が神様に連れられ、裏庭から帰ってしまった。
《あら、あの子はどうしたの》
「家に帰りました」
「残念、目の保養だったのに」
《何よ、訃報でも有ったの?》
「スーツ有る?」
「いや、何でも無いです」
《言える様に言いなさい、真っ青じゃないの》
「あ、マドレーヌ有るわよ、はい」
「ありがとうございます」
「んー、フラレた?」
《あら、じゃあ話せるわね》
「そう、なるんですかね」
《あら重症ね》
「お義母さんだけにする?」
「僕、こう言う話し、初めてですよね」
《そうね、居て良いわよ優子ちゃん》
「おいすー」
《先ずは予想からね、真面目過ぎ、楽しく無い》
「待たせ過ぎたとか?」
「好きって、なんですかね」
《ずっと一緒に居たいかどうか、って子供の頃に説明したけれど、もう大人なんだし、その先ね》
「はい、お願いします」
《人それぞれ、以上よ》
「厳しいなぁ」
《取られたく無いのは独占欲、でも独占欲が有るからと言って好きとは限らない。情報はアナタの中に十二分に有る筈よ、情報の統合をなさい。それから悩みなさい、分析、再検証、熟考、アナタに教えた筈よね》
「はい、すみません、ありがとうございます」
「お義母さん、ヒントあげたい場合は?」
《簡潔に、1行だけね》
「当って砕けるのって時期によるから、観察って大事よ」
「もっと、観察したかったんですが、もう出来無いかもなんです」
《観察が不十分だから観察したいのか、一緒に居たいのか、どれがどうなのかしらね》
「あら、マジなんだ」
《そうね、記念撮影しないと》
「いや、その」
「その態度で好きじゃ無いなら、それこそ好きって何か分からなくなっちゃう」
《アンタまさか初めてとか言わないで頂戴よ》
「ココまでは、ちょっと」
「お義母さん、お赤飯」
《逆に喜べないんだけど、情緒情操の教育失敗したかしら》
「大丈夫ですよ、凄い真面目だからこうなんだって分かりますし」
《ココまで真面目になれと育てたツモリは無いのよね》
「根が真面目だから、何でも適当より安心ですよ」
《でもねぇ、付き合う子が心配だわ。どう見たって奥手でウブで、本当に兄弟なのかしら》
「お義母さんが産んだのでは?」
《だってお父さんのホワホワ感、皆無なんですもの。私、とうとう単為生殖を成功させたのかしら》
「人類初のカグヤ種ですね」
「あぁ、そう、しそうな人なんです」
《自信無いのね》
「はい、だってイケメン大好きさんなので」
「私も、可愛い子もイケメンも見るのは好きだけど」
《画面越しで充分よね》
「そんなもんなんですかね」
「見ると接するじゃ違うよ?」
《まぁ、男の子は違うかも知れないし、他の反応をする子も居るけれど、私達はそう》
「なんでなんですか?」
「頑張らないとだし、不安になったりしそうなんだもの」
《隣に居て相応しい振る舞いをすべきだと思っても、限界は有るでしょう。まして相手が要求してきたなら尚更、そうね、そこは良く聞いて》
「はい」
《お互いの為にアレコレ言うでしょう、それがいずれ重荷になる事も有るの。好きだけでは越えられない、こなせない事を要求される事だって有るし、逆に要求したくなったりもする。それに応えないといけないのか、応えなくても問題無いのか、本当に、其々なのよ》
「でも無理はダメよ、共依存か潰れるかだから」
《かと言って、要求しないのもね。何事も程々よ》
「んー、解せなそう、お友達に相談してみたら?」
《そうね、ウダウダして無いで相談なさい》
「吹雪ちゃん所に行くなら持って行って欲しいのだけど」
《それは私が、こう言う時は同じ性指向の同性からよ、ほら、出てって頂戴》
「はい」
早速、ショナさんに呼び出された。
凄い、凹んでる。
「はいチーズ」
「撮りながら言う意味有りますかね」
「何でそんな凹んでるんすか」
「相談するなら、君かと」
「奢ってくれたら良いっすよ」
いやぁ、個室で助かった。
話してる間、ずーっと真っ赤なんすもん、周りに誤解されかねないレベルで真っ赤。
「はぁ」
「もう、言えば良いんじゃ無いっすかね?」
「蛙化現象は知ってますよね」
「だから、好きかも位に濁しちゃうとか」
「ハッキリ分かってから言って欲しいんだが」
「あー、言いそー」
「でしょうね」
「じゃあ、一生隠すんすか」
「普通、言うタイミングって、いつなんでしょうかね」
「誕生日も、バレンタインもホワイトデーも綺麗に吹っ飛びましたもんねぇ。あ、ショナさんの誕生日とかどうっすかね」
「それ、断られた時に凄い気まずいんですけど」
「何座でしたっけ」
「乙女座ですけど」
「既に出てる占い、見てみましょうよ」
奥手、慎重のキーワードには吹いた、脇腹チョップされた。
次いで桜木様の牡羊座をチェック、ほぼ真逆の肉食系。
「そう、見えませんけどね」
「やっぱ我慢してるんじゃ無いっすかね、一目惚れしちゃうって有りますし、今日も」
あ、やべぇ。
「良いですよ別に、他の牡羊座もそうなのか調べるだけなので」
「いや、従者だからって、テンション下がってたんすよね。心得の事も有るけど、手近はちょっとなって」
「猪突猛進、短気」
「まんまじゃ無いっすか」
「手近の、何がダメなんですかね」
「そっくりそのままお返ししたいんすけど」
「別れたら、気まずいなと」
「しかも今回は上っすもんね、向こうはその自覚が有るから。多分、向こうからは絶対に無いっすよ、ショナさんが行かないと、誰かに取られちゃいますよ」
「その、独占欲と言うか、自分だけのって考えられなくて」
「へ」
「だから悩んでるんです」
「独占したく無いんすか?」
「何かもう、自分の手に最初から負えないと思ってるのか、こう、自分だけって考えられないんですよね。横に誰か居ても、別に、良いかなと」
「変態だぁ」
「そうじゃ無く、例えば、身柱さんやアレクを振って貰ってまで、自分に来るのが想像出来無いと言うか」
「ぁあ、全員切りそうっすもんね」
「そうなんですよ、だからこう、なら許容した方がマシと言うか」
「もうその前提で言っちゃえば良いんじゃ無いっすか」
「真面目に考えて無いですよね」
「真面目に考えて答えが出ないんすよね?ならこうが良いかと。で、逆ハーでマジで良いんすか?」
「そこもなんです。逆なら、嫌だろうなと」
「俺、逆も試しましたけど。それが強制なら、先ずは仲良く出来そうな人間で固めるなって思ったんすよね、で、成功したんすよ」
「良く、体が持ちましたね」
「アレっすよ、先生の練習に付き合ったんで、先生のお陰っすね。お局様をしてくれたんで」
「じゃあ、先生と」
「流石に無いっすよ、俺は心身共に女性だけなんで」
「あぁ、そのハードルも有ったんでしたっけ」
「そんな嫌なんすか?」
「嫌じゃ無いとなると、逆に心配されそうで、頭の片隅においやってました」
「心配が2、4倍っすもんね」
「お互いそうだと、大変そうだなって」
「嫉妬深いって書いて無いんすけどね」
「人相学では、情熱的だそうですよ」
「あぁ、じゃあ嫉妬深いっすな」
「はぁ」
「逆に、じゃあ、紫苑さんだけとかって、エモいじゃ無いっすか」
「それをどう、信じて貰えば良いのか。好みと言うモノが無いので、だけ、を示す方法が難しいなと」
「あー、じゃあ他とヤッてみろとか言われたら地獄っすもんね」
「流石にそれで幻滅したら、その程度かと幻滅されそうで」
「何か、同じ事で悩んでそうっすよね」
「だと良いんですけど」
何もしないで、ただボーッとする。
考えたいけど、考えられない。
先ずは独りに慣れる事から始めないとイカンとは、長くなりそう。
普通は。
いや、もう普通は諦めるとして、独りならどうするかだ。
前は勉強とゲームと。
勉強、ココで運送屋でも始める?
つか何になる?
従者になったら、新しい召喚者が来ても、いや召喚者は召喚者か。
やっぱり綿花か。
はぁ、宝くじとか当たらないかな。
当たったら、じゃあどうする。
ゲーム。
最初に戻ったな。
集中出来無いんだよ。
ワンコ位かと思ってたのに、アレクに白雨まで。
何で。
いや、何でって聞いたら絆されるし。
フェロモンのせいかもだし。
なら、マジでお外。
でも大丈夫って。
でも。
「あー、ソラちゃん」
《はい》
クマでハグハグ。
「ソラちゃんだけで」
《ダメです。主が妖精に言った様に、アナタにも番が居るべきです》
「フラレた」
《はい。日光浴も、して下さい》
「はい」
《早く家を出て下さい》
人に公園を尋ねながら、買い食いしながらフラフラ。
ココは公園でも喫煙は大丈夫、大好きイスタンブール。
狼も居るし。
いや、ダメだろうよ狼は。
子供が居ないから良いモノを。
「お家は何処ですか」
頭を上げた。
首輪は有る、大人しい。
撫でさせてくれるし、近隣の常連なんだろうか。
しかも懐っこい、隣に座ると膝に顎を載せてきた。
もふもふちゃん。
「もふもふちゃん、ココに居て大丈夫なんですかね」
ワフンと鳴いて、また膝へ。
眠いなぁ。
ココで寝たら怒られるかなぁ。
【はい】
ですよね。
「もふもふちゃん、昼寝に帰るけど捕まらないでおくれね」
伝わったのか何なのか、手を甘噛され引っ張られた。
付いて行くと中庭の有る一軒家に着いた。
「ココが君の家かね」
ワフンと鳴いて長椅子の前へ鼻で押された。
「お邪魔しますー」
グイグイと押され椅子に座ると、綺麗な女性が家から出て来た。
《あら、お客さんだったのね》
「すみません、この子に案内されたんですが、ココの子で?」
《そうなのよ、公園かしら?》
「はい、心配で、大丈夫なんですか?」
《本当はダメなのよね、もう。ありがとう、ごめんなさいね》
「いえ、お邪魔し」
《ふふ、気に入られたのね、お茶でも如何?》
「すみません、1杯だけ」
甘い香りのハーブティー。
美味い、配分知りたいな。
《どうかしら》
「配分が知りたい位に美味しいです」
《クチナシの花のハーブティーなの》
「へー、市場で探しますね」
《実は有るけど花は取り扱いが少ないの、良く市場で探してみて》
「ありがとうございます」
欠伸が、マジで眠い。
《ふふ、もう放してあげなさい、ユラ》
「ユラちゃん、またね。お邪魔しました」
《いえいえ、またね》
どう帰ったのか、フラフラ歩いていると大通りに出たので、家まで行き絨毯に寝転んだ。
日の光が暖かい。




