4月18日 後半。お花見とかしちゃってんの。
白雨と屋台へ買い出しに。
花見で大盛り上がりなのは良いんだが、もう明らかに、本当にマジで、態度が違う。
アレクは勿論、白雨まで。
無表情だったから良いものを、ニコニコされると普通の顔面でも困る。
困って。
「カエルになってしまいそう」
ポロッと口から出てしまった。
そしてポロポロと泣かれてしまった、白雨に。
『ごめん』
何と、言えば良いんだろうか。
「コチラこそ、もう、死んでおく?」
『その方が良いなら』
ハナさんと白雨さんが屋台の買い出しから帰って来た、お通夜の様な雰囲気で。
そしてハナさんがリズさんに何かを話すと、今度は少し離れた場所へ移動してしまった。
「あの、何か有りましたよね?白雨さん」
『困る、カエルになってしまいそうだ。もう死ぬかと聞かれた』
『だから注意したのに。周りがカエルじゃなくて、ハナがカエルになっちゃうから気を付けろって』
『すまない』
「好きは、溢れちゃうモノですからね、仕方無いですよ」
「でもなぁ、白雨さんからかぁ」
『いや、もうアレクも変だって気付いてる』
「何か、いつもと変わらない感じにも見えたんだけど?」
「そう、見える様になっちゃったんですかね?」
『みたい、真面目な弊害だって』
「それと、片思いの辛さを知ってるからよね、きっと」
「あぁ、ハナさん大丈夫ですかね。もう、カエルさんになっちゃってたりとか」
「あの、エナさん、向こうでは何事が」
『盛り下がらないのが条件だけど、多分、無理だと思う』
《じゃの、やめとけやめとけ、放っといてツマミの感想でも蓄えておけ》
桜木からの相談は、いつか聞かれる事だと覚悟していた事だったが。
「何で、今なんだよ」
「ごめん」
「そうじゃ無くて。何で、そう思ったかだ」
「もしマジなら、真剣に考えるべき事だから」
「何か言われたのか」
「いや、でも流石にね、無表情じゃ無くなったんだもの」
「だから、どうしてだ」
「最善を想定して、最悪の選択をすべきだと思うので」
「真面目馬鹿糞野郎。民意は、一生最低限の暮らしを。だ」
「具体的に頼む」
「罰は、無しだ」
「サイレントマジョリティの意見はどうなる」
「それでもだ、大勢を納得させられなかった以上、我慢するのがだな」
「配信、動画配信するか、振られる白雨の生配信」
「鬼!」
「おう、僕は鬼にでも何でも」
「おいやめろ」
「いや、マジで考えてるんだが」
「怖い、いつ考えてたんだそれ」
「さっき、白雨と話して、ココ来るまでに」
「瞬発力」
「いえいえ」
「思春期の青年なら即死だろ」
「足り無いだろ。奪われたと思った人達にしてみたら、地獄すら」
「まさしく公開処刑」
「面倒だし、アレクもバッサリいくか」
「お前なぁ、そうワルぶってどうする」
「少数だから救われないはダメだろう。うん、宜しく」
そう気持ちを切り替えるのだけは早いんんだよなぁ。
リズさんから、当事者を抜いた状態で、桜木さんの鬼の様な計画を聞かされた。
「そんな計画を」
「何だよあの瞬発力は」
「それで救われちゃってるからなぁ」
「しかも、観たく無ければ観ない。知りたく無ければ知らないを守ってますし」
「ただなぁ、俺らの感覚ではな、もうイジメだ」
「そうなのよね、前の世界の感覚でもそうだし」
「でも、エナさん、それを観たがり知りたがる人って?」
『居る』
《残念じゃがな、ショナ坊、溜飲を下げたいと思う者は、居るんじゃよなぁ》
家族がバラバラになり、財まで無くした者の子孫。
真偽は不明だが、被害者の子孫だと声を上げる者は未だに大勢居る。
それはどの大罪にも、全ての大罪へ負の感情が向き続けている。
「だからって桜木さんが」
『ハナしか出来無いから、ハナは悩んでる』
「だな、俺らが何をしたってダメージにはなんないだろうよ」
「そこよねぇ、本当に困る」
「その、誰かが変身したりとかはではダメなんでしょうか?」
《訓練もしてしまったんじゃし。長文は無理じゃろう、アレのアドリブこそ、ダメージになるんじゃろうし》
「詰んでません?」
「あぁ、少数派は賛成するだろうな」
「嫌だなぁ、ハナが傷付くのに」
「きっと、それにも文句を言うんでしょうね」
当たり前に正義が行われるのなら、傷付くな。
一昔前の戦争の話でも無いのに。
「あのー、お花見の雰囲気じゃ無くね?」
「お前のせいでな」
「ごめんよう、だって良い案だと思ったんだもの」
「紫苑、この肝焼きヤバいわよ」
「お酒、美味しく頂いてます」
「やっぱり日本酒よねぇ」
こう飄々としている時は、もう完全にやる気で、もう覚悟していそうな時。
後はもう僕らが呑み込むのを待っているだけ、ただ待つだけ、それは桜木さんのストレスになる事。
桜木の案は、残念ながらアッサリと承認が取れた。
決行は今晩。
「で、良いか」
「おう。もうソワソワしちゃう」
そして残酷にも、ここから桜木は優しくなった。
優しくなったと言うか、普通に接する様になった。
カエルがカエルとして認められた時だけ、不安やストレスから開放されるのかも知れない。
お花見も無事に解散し、先ずは先生にご相談。
自分の批判を見せて貰う為の直談判。
《幸せを感じると死ぬんですかね?》
「そうみたい、困っちゃう」
《自傷行為では?》
「酷い事を言う材料が無いと、贖罪させられぬ」
《それがどうして、ご自分への批判の内容を知る事なんでしょうか》
「当事者居ないし、八つ当たりだろうし、ワシも八つ当たりするから。理不尽に責める為の材料と、興味本位」
《最後が凄いダメですね》
「先っちょだけ」
《ショック受けますよ》
「でしょうね。でも事実は消えないんだし、確認はしたい。どれだけクソか、見定めさせないなら、召し上げと変わらないのでは?」
《ロキの血、輸血療法しました?》
「実は元からこうなのよぉ」
《ですよね。少しだけですよ》
「おう」
怒りに転化してくれる望みは見事に叶わず、ただただ反省や内省をするばかり。
過呼吸の病歴も有るのでヒヤヒヤしながら見ていたものの、そのまま一服しに庭へ。
何かしらも、ぶつけて頂けないんでしょうかね。
《宜しいでしょうか》
「おう」
《引き籠もりたい》
「おう」
《ですよね。どうでしたか、久しぶりの悪意は》
「強くなれないモノですね」
《決め付けない限り、無理かと》
「具体的には」
《どうしても気持ちや真意を汲めない者、防衛本能から曲解する者、どんな事でも絶対に曲解しない頭の良い人間だと自負する者。そう言った方々は、強いと錯覚していて、実は凄く弱かったりもするんですよ》
「一寸の暴言にも」
《サイコパスやソシオパスを知ってる割に、希望的観測をなさいますよね。それは、優しいって事になるかと》
「気が弱いので」
《本当に気が弱いと、もう少し激しい拒絶反応が出るかと》
「少しは図太くなったのかも」
《そうですね。嫌になったら召し上げでも構いませんけど、良い面も同じ位に見てからにして下さい》
「どう言った割合で?」
《1文字につき、1,000人の感謝の言葉を、フルで》
「対面?」
《文字です、どうぞ》
コチラの方が弱かったらしく、1行も読み終わる前に泣き出してしまった。
そして精霊が読み上げ続けるものだから、子供の様にしゃくり上げている。
「キツい」
《でしょう、少し呼吸を整えて下さい》
「1文字、10人にして」
《1人でも良いですよ》
顔も名前もハッキリとした、メッセージ動画。
最初の数秒で止めて、呼吸まで止まりそうになって。
「すまん」
《そうですね、自罰が過ぎる人は嫌いですよ》
「程々って、どの位ですか」
《生きるか死ぬか悩まないのが大前提です。少し、残った不安が有るのでは》
「掻き回すだけで、宜しく無いのかもなとは思ってます」
《求められて無いなら、それは私がハッキリ伝えます。苦言は、ちゃんと言いますよ》
「じゃあ、何かお願いします」
《モテ過ぎかと》
「クソ、笑っちゃった」
先生に励まして貰い。
白雨、アレクとの対話の準備が始まった。
先ずは紫苑に、そして天使さんにも協力して貰い、アレクと白雨は前の姿に。
嘘をつけば指が千切れる様にした。
勿論、そのテストも放送に乗せる。
最初は、求められたら応えていただけ。
揉め事が多くなったから、次は独身だと言う人間だけを相手にしてた。
応えていた理由は、一時でも受け入れて貰えたと錯覚出来たから、満たされたり幸福感が有ったから。
でも結局はそれも虚しくなって、回数は減っていった。
鵜呑みにした事は、悪かったと思う、ただ自分からはもう一切、声も掛けなくなった。
ただ、そうして今度は断る様になると、逆上され、刺されたり殴られたり。
時には強引な状態にもなった。
滞在期間に関係無く影響が広まったり、酷くなって、時には監禁されたりもした。
だから、独りになった。
望もうと望まなくとも、そうなってしまうのが嫌だった。
身なりを汚くしても、どうしたってダメだった。
「俺も、多分そうだった」
汚いと罵りながらとか、誰かを穢す為にさせられたりとか、切り落としたり、再生させられたり。
それを見せびらかしたり、勿論見せ付けられたりも。
逃してくれたのも居た、けどそれを殺したから殺したり、それの関係者が殺しに来たり、またそれも殺したり。
殺せって言われて殺したのも有るけど、それで恨まれて殺しに来たから殺したり。
ずっと、そんな感じだった、だから誰々を殺しただろうとか言われても、良く分からなかった。
助けられたりとかも有ったけど、顔は良く覚えてなくて、殺すべきって思ったのは良く覚えてた。
勿論、打算で助けたり、打算で助けられたりとか有ったんだろうけど、興味が無かった、だって直ぐに全部人間が殺したから、だからそれも殺したけど。
無関係なのも当然巻き込まれてるから、それは悪かったと思う。
けど、放っといてくれたら良かった、俺から行ったのなんて、迎撃とか人質の為とかだけ、数える程度だから良く覚えてる。
でも、それを知ってて、前の召喚者も嫌がらないで居てくれてた。
今も。
「それが甘かった様なので、離れて貰います。コチラの情報も最低限、最も心苦しく思うであろうタイミングで接触し、最も苦痛を感じる状態になって貰います」
「ごめん、もう表に出さないから」
「それでも変更はしません。どうか最大限苦しんで下さい、さようなら。以降は移民の方々に死力を尽くして頂きますので、皆さんはコレで手打ちとして下さい。人道的にはコレが限界です、ではさようなら。議論をどうぞ」
桜木さんは言い終えるなり、席を立った。
そして振り向く事も無く、空間を開き浮島へ。
そして僕から少し離れて一服。
「お疲れ様でした」
「エゴですよな、ワシのエゴなんですよ。考えたり、罪悪感からの逃走で、最善とは思えない」
「でも、撤回はしないんですよね」
「少数派の民意次第。甘いと言われても、コレ以上は非人道的になるんだし。継続は力なりですよ、思いが嘘なら向こうの勝ちだ」
「なら、白雨さん達の負けですね」
「だと良いんですけどね」
「様子を見てきますよ」
「いや、天使さんに」
「どうだったか、内容を言うかどうか僕に任せて貰えませんか」
「分かった」
空間を開いた先は、先程と同じ空間とは思えなかった。
ただただ涙を流して、とても受け入れられない様子。
その映像にコメントが流れる。
内容は様々、賛否両論。
そして正式な辞令が天使により下された。
浮島での監督者になる事。
民意が覆らない限り、もう、自分から会いに行けない。
「嫌いだ、もう2度と会いたく無い、話したくも無い」
桜木が去り、天使の辞令の直後、アレクが自傷行為に走った。
それを見て、白雨が必死に止血して。
地獄絵図だ、コレはココの人間の公開処刑。
生まれ変わっても許さない。
どうしたって悪は悪だ。
その結果が、眼前に突き付けられている。
桜木は、呼んでも来ないんだろうか。
「桜木」
【へい】
「緊急事態だ」
【ほう】
「アレクが、嘘を」
直ぐに画面に桜木が出て来た。
それなのにアレクはまた嘘を言う。
流れるコメントには、過剰演出だ、ココまで台本、コレも幻影?どうせ嘘だろう。
どう見たって、恋い焦がれての暴挙なのに。
見たく無いから見ない、見えないから認めない。
こんな暴言すら未然に防げない、不完全な世界。
全然、良い世界じゃ無い。
【コレ1回、カメラ】
「いや、続けて欲しい。クソをクソと自覚させないと」
【おう】
どう受け取ったのか。
アレクを諭し、宥め、いつも通りの桜木の態度が画面に映る。
穢らわしい、同情票がそんなに欲しいかよ、もうヤッてんのか、非処女乙。
良く知ってる、前なら俺も眺めて笑ってたもの。
でもな、名誉毀損以外にも侮辱罪、そして不敬罪も入っちゃうんだよココは。
「コレで、こうだぞ?良い加減、即座に顔と名前出しても良いだろ。なんせ不敬罪なんだから」
俺が思うに、リズさんも結構怒らせたら不味い部類なんすよね。
桜木様の計画にタダ乗りして、ネットの免許制と改革案通しちゃって。
あーぁ、最初の警告で書き込み止めれば良かったのに、全世界発信で顔と名前出されちゃって。
《突入部隊、配置完了との事です》
「わー、マジっすか?」
「おう、ヤレ」
何処かで、元魔王の事もアレクの事も、白雨の事も知って欲しかった部分も有った。
でも、許して欲しいとも、許すべきじゃ無いとも思ってた。
だけどもだ。
「逮捕って」
「名誉毀損と不敬罪ですから」
久しぶりに見れたニュースは、自分へ何か言った人達の逮捕の現場。
しかも世界各国で。
「こんだけ嫌われてたって事よね」
「意外と違うみたいですよ」
注目を浴びたかった。
反応して貰いたかった。
反応が楽しかった。
「はぁ、どこまでも道具か」
「そう受け取っちゃいますよね」
『もう、切りましょう』
「ありがとう天使さん、知ってたの?」
『その話は今度で、では』
「逃げられた」
「サクラ、見境無しに誰かとしないで」
「どうしてそうなる」
「近くに居ないと、止められないから、だから」
「いや、見張り居るでしょココに」
「見張りって」
「でもだって」
「盟約解除」
《了解》
「やめて」
「お前が悪い、血塗れぞ」
《【盟約解除】》
「もー、何で皆泣くの。と言うか、どう言う事よ」
アレクや白雨さんを連れて、浮島で血を洗い流してから説明させて頂いた。
桜木さんがリズさんに相談した直後、リズさんがネットの法案を上げた事。
通す為に利用した事を。
「すみませんでした、膿出しに使われるのを容認しました」
「ほう、で、辞令は」
「はい、そのままです」
「むり」
「もー、直ぐ泣く」
その気持ちが良く分かってしまうので、何も言えない。
まして僕も、民意に賭けた側。
「会いに来て欲しい」
「仕事としてのみ行く」
「馬鹿真面目」
「せやで、皆をワシだと思って宜しく」
『分かった』
「白雨は偉いねぇ、アレクは馬鹿だねぇ」
『民意が傾くまでだから』
「そうくるか」
「わかった」
「はいよ、自分で行けるでしょ」
「うん、また」
「さようなら」
「もー」
「はいはい、ばいばい」
『うん、また』
アレクは白雨さんに背中を押され、何とか移動してくれた。
そしてバスローブのまま、コートを羽織り一服へ。
「ショナ君」
「はい」
「何で呼ばれたと思う」
「法案の事かと」
「そうよ、ちゃんと悪口書ける場所は有るの?捌け口、軽口が何も書けないのはアカンでしょうよ」
「それは大丈夫です、今回は全世界発信と累積も有るので。軽口や便所の落書き程度ならと、コレがそうです」
「ほう、ワシもショナ君の事を書くか」
「え」
「それと蜜仍君、コレ知ってるのかね」
「あ」
「ケンカ反対」
「はい」
「ワシから言うで、帰るべ」
「すみません、ありがとうございます」
そうして何とか蜜仍君に説明して貰い、事無きを得たのだが、桜木さんが熱を出してしまった。
「桜木様、知恵熱出しちゃいましたね」
「感情の振れ幅も有りましたし、身体症状の代わりだそうです」
「治っちゃうんですもんね、何処かで出ないと、壊れちゃいますもんね」
「はい。あの、もふもふの提供をお願いします、僕じゃダメみたいなので」
「やった、じゃあ後はお任せしますね」
蜜仍君が狼になり布団に潜り込むと、寝ている筈なのに何度も撫でて、顔を埋めた。




