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召喚者の病弱日誌ー永住を決意したのは良いんですがー  作者: 中谷 獏天
第1章 厄災の後処理や、今後について。
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4月14日 鷹狩りには肩が重要らしい。

 ゲームをする為にロキの浮島へ行く事に。


 泉から泉へ、完全に整えられた浮島。

 白い石造りの宮殿に庭、川、滝。


 本人の様々な評判からは程遠い美しさ。


『どう?』

「ハイセンス」


『良かった、中もどうぞ』


 中は2色に分かれ、ニュクスさんちに似た黒曜石の様な素材で出来たリビングと、白い色のリビングが背中合わせに作られている。

 角には合計4つの寝室、プライバシーは完璧。


「別居大前提って感じやね」

『サクラちゃん自分の時間が必要そうだし』


「よく見抜いてらっしゃる」

『夜にしてみるね』


 一瞬、手で目の前を覆われたかと思うと、真っ暗に。

 外にはホタルの様な光が。


「虫?」

『魔道具、光るだけの。ほら』


「ちっさ、点滅は蝶々の羽ばたきなのね」

『うん、サクラちゃんにって貰った』


「対価は」

『もし召し上げられたら、惚気話。召し上げが無かったら対価は無し』


「そんな価値が」

『有る有る、攻略難しい分だけ価値が有る』


「普通に感動してるし、意外とチョロいと思うが」

『帰る為とは言え、何処に行ってもしなかったじゃない』


「じゃあヤってたら無かったのか」

『それはそれで、よく帰る選択をしたなって評価になると思う』


「どっちにしたってか」

『成果が有るからね、種の運び手は加護を受けられるから』


「前例達はどうなった」

『飽きるまで神々や精霊の側に居て、成仏した感じ』


「召し上げは天国行きか」

『あ、サクラちゃんは別ね、ヘルとヨモっちゃんが一緒に地獄巡りするって言ってたし』


「痛みは伴うんだろうか」

『味わおうと思えば、見学コースから簡単に外れられるけど。ヘル達が許さないと思うよ』


「見殺しにして、半分も救えなかったのに甘過ぎる」

『それは召喚者全員の責任、主におタケだけど。でもそれも結果論なんだよね、ココの神々でも推測は無理だったから』


「バラしちゃうんか」

『推測だけどね、正解はエルヒムだけが知ってるんだし』


「仲間入りさせられんか、それで暴走は防げんか」

『余裕余裕、ココの理の方が強いから。けど、人間が良いんでしょ?彼』


「まぁ、人間の方が制御効くだろうし」

『今日は話じゃなくてゲームでしょ、狼になってあげる』


 アレク狼に似た真っ黒な毛艶、それよりも柔らかい触り心地。

 ふぁふぁ。


「ありがとう」




 桜木さんは寝起きに今日の予定を聞くなり、そのまま浮島へ行ってしまった。

 クエビコ様からの報告では、ロキ神が狼となり子守をしているそう。


『大丈夫そうだな』

《くぅ〜我も行きたかったんじゃぁああ》

「アナタはダメです、桜木様の影響すら受けたんですから。私は寝ます」

「はい、お疲れ様でしたミーシャさん」

「静かな気がする」


「そうですね、エナさんも居ませんし」


 吸血鬼対神々の話し合いに、人間の立場で行っているらしい。

 他も全て独身の男性や男神、万が一が有っても良い様にと。


「本当にゲームやってんのかなぁ」

『あぁ、不幸設定を外し異世界の学園を始めたぞ。リズがココの画面に映すと言っているが』


「してして」


 桜木さんのリアルタイム画面らしき映像、名前は朔晦(たちごり)花子、アダ名はゴリ子。

 新しい設定なのか外見の数値が弄れる様になったらしく、普通の下限値7に設定し、ゲームを始めた。




『率直に言って、ハナを味見したいんだろう』

《はい、率直に申しまして味見がしたいです》


『食料に困っているのか?』

《いいえ》


『純粋に味への探求心のみか?』

《はい》


 人の器を得て楽しかった事の1つ、味を感じる事。

 味覚は嗅覚に繋がる、嗅覚が有ってこそ味を味と感じる。


 だからこそ分る、世界で1番美味しいと思うモノは千差万別人其々。


『何人に味見させる気だ』

《平等を謳っておりますので、全員です》


『何年かけて、最短は』

《幾らでも。最短を望まれた場合ですと、1週間フル稼働で有れば問題無いかと》


『もっと欲しいとなればどうする』


《再度交渉させて頂きたく》

『誰に』


《召喚者様とココの場に居られる方に》

『そうか、保留で』


《もし》

『腹を割って話してくれて無いんだ、本人に会わせる事すら無理。力を取られたく無いからでは無い、それが分からないなら話す意味も無い。帰ってくれないか』


《皆様の好物は其々有ると存じます、甘味や酒等の嗜好品、香水に珍味。それらの要素を全て兼ね備えた飲食物が有ったなら、召し上がりたいとは思いませんか》


『有れば。だけど無い』


《ソーマ、ネクタール、甘露。そういったモノが飲めるとなれば》

『そんな効果が有る前提か。なんだ、可哀想に、分かった。話を通してやる』


《ありがとうございます》


 こんな事の為に、ハナが可哀想だ。




 ゲームは不幸パックをオフにしたお陰か、学園長が亡くなった娘とそっくりだと言って保護してくれた。

 転移の加護で年齢が変わるので、小・中・高のどのルートからでも進められる。


 身分証の概念が希薄な時代、奥様も協力してくれて学園長の親戚の子として学園に入学する事に。


 もう、ヤバそうな匂いがプンプンするが、ルート分岐なので仕方無い。

 他の選択肢が令嬢の付き人、王妃ルートか冒険者等のルート分岐しか無かったので、学園に行くにはコレしか無かった。


 第1以上にオーラ至上主義、外見は全く似ていないのだが、オーラが似ているからオッケーらしい。

 もう少しその娘さんの話が聞きたかったのだが、転移したのが早朝、予備の制服や最低限の荷物をお借りし、入学式へ。

 亜人にエルフと様々な人種が居た。


 早速、イベント。

 急場なので席が分からず、入学式の会場で誰かと接触しないといけない。


 名前も位も分からない、誰がモブでヒロインで、悪役令嬢なのかも。

 かと言って先生らしいのは居ないし、男に行けば悪役令嬢に目を付けられるだろうし。


 《ヒントを使いますか?》


 妖精のチュートリアラーのお陰で、虐められるヒロインかモブか、そして悪役令嬢になるかがココで決まるのだと教えられた。


 そう言うヒントかい。


 しかも制限時間付き。

 心を決め、腕章を付けたキツめの綺麗なご令嬢に話し掛けると、話は伺っていると言われスムーズに案内された。


 そして入学式は無事に終わり、学園内を集団で周り教科書を貰い、無事に寮へと戻って来れた。


 急場凌ぎなので最小の1部屋、学園の使用人用だそうだが。

 清潔だし2段ベッドの下は机と椅子、衣装箪笥に窓も有る。


 最高では。


 念の為にベッドや梯子を点検していると、ベッドが凄い軋む。


 整備点検室へ向かうと、同年代と思しき男性が椅子を修理している。

 自室のベッドの軋みが気になるので、道具を貸して貰えないかと訪ねると、先ずは何処の部屋なのかを聞かれた。

 素直に直ぐそこの使用人個室だと伝えると、使用人でも女性の部屋には入れないので、女性の整備点検者を向かわせると。


 散策の序でに自分が迎えに行くと伝えると、女子寮の共用トイレの整備に行ったそう、ただ早く仕事が終わっていれば庭の噴水の整備かも知れないとも。


 蹄鉄型に湾曲した寮の左側、最奥の女子寮へ行くには廊下を使うか庭を突っ切るか。

 庭だろ。


 庭を早足で散策しつつ女子寮へ、トイレから女子達の声。

 やった事無いけどテンプレートは知っている、悪役令嬢がヒロインを虐める展開か。


 様子を伺うと、整備点検の制服を着た少女が令嬢達に叱咤していた。

 紙の使い過ぎで詰まった便器から水が溢れた、それを知っていたのに報告しなかった人間を集め、説教しながら掃除をさせていた。


 散々言われたせいなのか、口応えせず黙々と女生徒達が掃除している。


 自分も手伝うので、自室のベッドの修理道具を貸してくれないかと伝えると、二つ返事で承諾して貰えた。

 そこで適切な道具を選択し、掃除ボタンをスワイプし作業は終了。


 やっとこさ自分の部屋かと思えば、噴水の整備も手伝えと。

 まぁ初日なので断らず、画面上で配線や整備を手伝い、何とか自室へ。


 何故、整備点検が今日なのか。


 その疑問を自由記入欄に入れると、直ぐに納得のいく回答を得られた。

 整備点検者も今日から配属なのだそうで、休み期間中に雇われていた整備点検者が具合を悪くし、点検整備が行われなかったので、この状態なんだとか。

 食中毒だったらしい、納得。


 労いつつ、自室のベッドは最後で良いと伝え手伝う事に。

 なら整備点検用の服を着ないか誘われたので、折角だしと着替えて作業する事に。


 やっとお腹が空いたので、フライドポテトとサンドイッチをつまむ。




 ハナ、上手くやってくれてる。

 最初に誰に話し掛けるかで大きく変わるのよね、イケメンなら虐められるヒロインか王妃ルート、モブならモブルート、風紀委員の下っ端なら悪役令嬢か分岐を先延ばしにするルート。

 そしてハナが選んだ風紀委員長なら、特別なイベントが発生し易くなる主人公ルート。


 次も狙い通り、と言うかリズちゃんや神様達に相談したお陰なんだけど、室内を点検すると点検整備イベントが発生して、正解の行動を取れば全体の好感度がアップする。

 勿論、仲裁の形にならなければ女生徒達からの好感度は下がるし、手伝わなければ整備点検者は勿論、学園長や教師達の好感度が下がる、善人大前提の鬼畜イベント。


 学園内を探索しながら整備点検、地理や現状を把握しながら人間関係や学園のルールを学べるイベントでもある。


 他のルートでも発生するけれど、部屋を良く見回すか点検しないと発生しない、ある意味では心配性なハナの為だけれど、従者も当たり前にする行動。


 裏の目的は従者にも楽しんで貰う事、そして従者の素養を民間人にも備えて貰う事。

 そしてハナが攻略対象だとバレても、弁解する為の仕様でもある。


 だって、ある意味で従者ゲーって言ったら納得しそうだって事に、納得しちゃったから。




 整備点検に付き合った後、昼食へ。

 使用人や教師用の食堂と生徒達の食堂は分かれていて、今日は特別に従業員用の食堂へ。


 先程の男性整備点検者や、回復したばかりの点検者達と食事をしていると、容姿の良い若い男性教師が話し掛けて来た。


 そこで分かったのは整備点検者達も生徒の一部で有る事、特待生で入るには学科の得手不得手の差異が激しく、身分が低いしお金も無い。

 職人気質の学生、順調に行けば専科の有る学園に進めるんだそう。


 素晴らしいやん、学園長。


 そのまま話は創設理由へ、最初は地方へ派遣する教師を増やす為にと学園を始めたのだが、その政策が王族の目に留まり、あっと言う間に規模が大きくなってしまったらしい。

 辺境のしがない領主に一気に金と権力が集中し、暫くは学園が荒れてしまった時代も有るんだそう。


 それを救ったのが娘さん。

 身分を隠し学園の風紀委員長に迄に上り詰め、学園を収めた。

 それもまた王族に目を付けられ、娶られた。


 その先が気になるのだが、昼食の時間が終わってしまった。


 そして整備点検を再開し、幾つかミニゲームをこなしているとオヤツの時間に。

 学生の仕事はココまで、使用人用のシャワー室を使わせて貰い制服へ。

 中庭でオヤツを食べた後、そのまま基礎勉強会へ。

 ココはボタン1つ押すだけで終わり、夕飯へ。


 制服の時は生徒用の食堂へ。


 適当に列へと並ぶと、目の前には今朝お世話になった風紀委員長、今朝のお礼を言うと同席しないかと持ち掛けられた。

 一緒に同行していた整備点検者でもある、ケリーやトムに尋ねると快く応じてくれた。


 風紀委員達と整備点検者。

 そもそもココは密接に繋がっているそうで、お互いの立場を認識しているのも双方と大人達だけ。

 ただ何も箝口令を敷いているのでは無く、無闇に言い触らさないと言う、曖昧で抽象的な言葉を厳密に守っているだけらしい。


 そうよな、イジメに発展し兼ねないわけだし。

 規模が大きいから出来る事、マジで教室の数が桁違い。


 そろそろトイレに行きたいな。


「ロキさんや、おトイレありますか」


 ロキ狼がスッと立ち上がり、何処かへ向かう様子なので付いて行く事に。


 寝室の横の小部屋の中に、噴水なのかシャワーなのか壁から水が流れ、その先に流れっぱなしの水洗トイレがあった、合理的。


 ご丁寧に畳まれたトイレペーパーとタオルまで有った、ロキか。


『どうだった』

「喋れるのね。合理的で素晴らしいかと思います」


 尻尾を振っているので良く撫でてから再び広間へ、ゲームを続行。




 順調に進んでいた筈なのだが、ポーズ画面のままで止まってしまったので、楽しんで貰えているか、意見は無いかと画面にシステム表示させる。


『大丈夫だ、休憩に厠に行っただけだ』

「良かったぁ。あ、楽しいって、ふふ」

「良かったっすねぇ、かなり作り込んでますもんね」


「うん、でもまだ序盤なのよねぇ」


 今の所は意見も特に無し、問題無さそう。


 そのままゲーム続行へ。


 やっと自由時間、図書室へ向かい学園の歴史チェック。


 学園長の娘さんは王族入りしたものの、当時権力争いをしていた貴族派閥によって、毒殺された。

 産後の乳の出が悪い事に便乗し、出が良くなる薬だと偽り服毒させられた。


 残されたのが学園の攻略キャラである王族の子、他にも王族が居るし。

 粛清された派閥の子孫は普通に生きてるので、ライバルとして作ったけれど。


 私ならキュンキュンなんだけれど、ハナはどうかなぁ。




 図書室の歴史を見るにココは中立地帯、王族も派閥争いに負けた子孫も通える学園。


 色々と大変だろうなと学園長を労いに向かうと、やっと娘さんの話を聞く事が出来た。


【本来は完全な中立地帯を目指していた、平民も王族も貴族も通える学園を、今も目指していると】


 ココからフルボイスかよ、低音ボイスのイケボ。


 ただ本来は娘が居てこその学園だった、それを途中で王族に中断させられた。

 そして娘は毒殺され帰らぬ人に、それでも諦めずに学園を平定する為にと代役を選んでみたが、貴族や王族の大小様々な争いに巻き込まれ、平民枠を擁立するまで手が回らなかったそう。


 そうしてやっと最近になり政治も安定したので、ここ数年は平民枠を拡大出来る準備が出来た。

 そして来年からの平民枠の正式な認可が降りた所で、ワシが来たと。

 本来は国へと引き渡すべきなのだが、目の前には娘そっくりなオーラを纏ったワシが現れたので、天の采配だと思い秘匿したんだと謝られた。


 いや、全然良いし。


 もし国がピンチになれば国へ出向すると申し出て、改めて学園ルート継続へ。

 帰る気があれば、ココで国の中心部へと繋がるルートなんだろうか。


 そして奥様の話へ。

 なんとエルフの血筋なんだそう、しかもあと3年持つかどうかの寿命の御老体らしい、見た目じゃ分からんのは史実なんだろうか。


 そして娘さんの写った写真が入ったロケットペンダントを頂いた、娘さん可愛い、そして奥様は変わらずで学園長イケメン。


 そして学園長が所用で呼ばれ席を立つと、奥様から耳打ちが。


【どうか夫を宜しく】


 そう言ってメモと着替えや寝間着を渡され、戻って来た学園長にも挨拶し、部屋を後にした。


 メモには英数字と図書室の管理人の名前。


 再び図書室へ向かいイケメン管理人にメモを渡す、そして出て来たのは絵本。


 黄金の林檎と妖精。

 呪われ老いた妖精が召喚者を助け、召喚者は妖精の為に一緒に林檎を探しに向う。


 そして何年も掛かったので、林檎を半分こにし仲良くまた旅に出るお話。

 良いじゃんコレ欲しいわ。


 つか、こうなると学園長も攻略キャラか。

 攻略してみたくもなる絶妙なライン、このルートは後々にとっとこう。


 まだ自由時間が有るので管理人にお礼を言い、そのまま絵本コーナーへ向かうと、可愛い女生徒が。

 話しかけると顔を真っ赤にし本を置いて逃げられてしまった、追い掛けずその子が読んでいた本を読む。


 呪われた王子様とカエルの女の子。


 女の子にされて国を追われた王子様と、カエルにされたお姫様の話。


 王子様は権力と容姿を使い、悪い事をしていた女貴族達を弄んで貴族掃除をしていたのだが、逆恨み半分で呪いを受けてしまった。

 女の子は最初からカエル、カエルの国のカエル。


 そしてどのカエルの女の子でも良いからキスをしないと、王子様の呪いは解けない。


 同性愛の垣根は低いがカエルともなると王子様は悩んだ、カエルは苦手だし、元に戻っても好かれては困る、なんせ継承第1位の王子様なので、妾や愛人にカエルが居ては正室さえ作るのも難しいのではと考えた。


 そしてカエル達にお願いをした、自分を好きにならずにキスだけしてくれるカエルの女の子を探して欲しいと。


 カエル達は大笑い、好きでも無いのにキスするカエルは居ないだろうと。

 そしてカエルだからと言って見くびるな、そんな事は絶対に流布してやらんと。

 カエル達はゲコゲコと鳴きながら、散り散りに森の中へ消えてしまった。


 コレで上巻、中巻や下巻が見当たらない。


 管理人に伝えると、筆談で【無い】と書いた。

 元から無いのか、ココに無いだけかを聞くと【元から無い、寄贈品で詳細不明】だと。


 すっごい気になるやんけ、つかあの女生徒も攻略キャラかも知れんのか。


 続いて先程の女生徒の特徴を伝えると、貸出が無いので分からないと。

 ですよね。


 時間ギリギリ、お礼を言って本をしまい図書室を出ると、そのまま寮の就寝時間へ。


 夜ふかしも出来るそうだが、美容等のステータスが下がるのでそのまま就寝する事に。


 うん、ボリュームあんなぁ。




 ハナが1日目を終えた、うん、完璧。


 図書室で追い掛けると何の絵本を読んでいたのか分からなくなるし、絵本を借りると女生徒の好感度が下がるイベントが起きる。


 図書室の管理人との初対面時に何故喋らないのかを聞いても好感度が下がるし、同じくあの絵本を借りても好感度が下がる。


 そして就寝時間も、ココで夜ふかししないと毎朝少し早く起きれるご褒美が付く。

 夜ふかししてステータスを上げるより他の下がり幅が低い、しかも早朝イベントのに遭遇し易くなる。


 逆に夜ふかしイベントが発生し難いけど、2周目をやる前提の仕様だから、2周目からの夜ふかしでは逆の事が起こる。


 うん、攻略本が分厚くなるわね。




 ラッキーイベントなのか、少し早く起きる事が出来た。

 空いてるシャワー室でしっかり綺麗にし更衣室へ向かうと、図書室に居た例の女子。


 危ないな、全裸じゃ無くて良かった。


 人見知りなのか王子様なのか、顔を真っ赤にしている。


【おはようございます…】


 ボイス付き。

 少なくとも攻略キャラっぽいが、ブラフかも知れんしな。


 取り敢えず挨拶し自己紹介、そこでやっとクラスと名前をゲット。

 人見知りだといけないので、今日はコレだけで済まし自室へ。


 そして自習、しかも庭か自室か選べる。

 日光は大事なので庭で自習を行っていると、整備班のケリーちゃんがやって来た。


 効率は下がるが一緒に自習、まぁ最初だし問題無いべ。


 そして朝食に1番乗りし、次は授業へ。


 コレはボタン、1人で昼食へ、誰に話し掛けるでも無く1番乗り。


 そしてまた授業。


 15時にはティータイム、晴れた春の日は毎回庭でオヤツだそうでココでも1番乗り。


 そしてまた授業。


 夕飯も1番乗りしてしまうと、食いしん坊の称号が付与されてしまった。


 ボッチの癖が、弊害が有るかステータスを見るが詳細は無し。


 明日からは最後にしてみよう。




「ぷふっ、ハナ」

「早々に称号ゲットっすか、ウケる、言いてぇなぁ」


「まだまだ、最低でも誰かを攻略してくれないとね」


 ハナが得た食いしん坊の称号は、1日のウチの食事全てで最初に辿り着くと与えられる称号。

 攻略キャラのうち半分のキャラの認知度と親近感がアップするだけ。


 そして今度はいつでも良いので全て最後に到着すると、貪食の称号にクラスチェンジする仕組み。

 以降は最後に行く度に好物を多めに貰えて、ステータスの上がり幅が増える。


 そして特定の日にイベントが発生するんだけど、どうなるかなぁ。




 3日目にして貪食の称号までゲットしてしまった。


 そして初めて学校の無い日、4月4日土曜日。


 図書室に行くか誰かを尋ねるか、自習するか自分磨きか。

 想像出来無い自分磨きなるモノを選択、単身か誰かと行うかが選択肢に出た。


 奥様、ケリーちゃん、王子様らしき人物アンナちゃん、そして風紀委員長。


 悩むぅ。


 時間制限付きなので、取り敢えず連日イベントの起きたアンナちゃんへ。


 断られた。

 じゃあ委員長にと行くが、断られ。

 ケリーちゃんへ行くが明日ならと断られ、奥様へ。


 受けて貰えた。

 ケリーちゃんはともかく、最初は全部断られる仕様なのか?


 そしてヘアサロンへ連れて行かれ、そのまま私服を購入して貰った。

 あぁ、コレの為か。


 そしてカフェでの休憩中にイベントが、奥様に似たイケメンさんが登場し、空気がビリビリ、例の王族の子らしい。

 お忍びで侍従と一緒だが、どっちが悪いかまだ分からんし奥様に店を出ようと提案し、そのままお墓参りへ行く事に。


 お墓の前には学園長、今日が命日とは。


 そして王族イケメン、お前も来るんかい。


 奥様はピリピリ、学園長は困惑、王族イケメンは立ち尽くしている。

 侍従を見るとめちゃコッチ見てるし、意を決し侍従へお話を伺う事に。


 話し掛け様とすると、少し離れた場所へ手招きされた。


 そしてコヤツもボイス付き。


 侍従ことジョージ君が言うには、どうやら王族イケメンことカイ君は仲直りと言うか、謝罪をしたいらしい。

 何をどう謝るのか、生まれて来てごめんなさいなのか。


 先ずは奥様優先、日を改めて仲立ちをするから時間をくれと伝え、一旦去って頂いた。


 そして奥様の元へ。


 憎んでいるワケでは無いのだが、顔を見ると許せない気持ちが大きくなってしまうらしい。


 憎むべきは貴族でしょう。

 その派閥の貴族を憎みましょう、もっと言うなら実行犯。


 実行犯はどうしたのか聞くと、流石にそれは既に処刑され。

 なんならその実行犯の子供が通っているらしい。


 1番は暗殺を許した王族の人間、2番は実行犯、3番目は国や情勢そのものを憎むべきだと記入した。


 キーワードが正解だったのか、奥様がちょっと驚いてから頷き、涙をポロポロと流し始めた。


 追撃。


 来年になっても納得がいかないなら、カイ君でも実行犯の子供でも虐めるから、先程の順番通りに憎んでみてくれないかと記入すると、学園長は私は聞かなかった事にするから、奥様の好きにしたら良いと言ってくれた。


 奥様は分かったわ、と涙を拭いてお墓参りを終えた。

 自分はまだ用事が有るからと残り、カイ君の元へ。


 無言で居ると侍従が話し掛けて来たが、無視。


 お前が喋れっちゅうの。


 侍従を暫く無視していると、やっと口を開いた。


【お祖母様は怒ってらっしゃったでしょうか】


 誰にだと思いますか、と記入すると、自分を憎んでいるのでは無いかと。


 いやぁ、寧ろ父親じゃねぇのかなぁ。

 でもなぁ、この王族の事はまだ良く知らないし、明言は避けよう。


 同じ目に遭ったつもりで良く考えてから、またコチラに話し掛けて来て下さいと伝え、お墓を去る事に。


 そして辻馬車に乗ろうとすると別のイベント発生、学園長の娘さんである【マリア】とイケボに呼び止められた。


 見た目は平凡な感じの男子、学園の制服でらっしゃるが。


 カイ君も侍従も私服、ケリーちゃんや委員長も私服だったし。


 つか、誰?


 どうするか悩んでいると、人違いを謝罪し勝手に自己紹介を始めてくれた。


 ユーリ君。

 良く見ると花は道端の花を積んだ感じ、そして少し疲れた様子、手もカイ君よりボロボロ、そこらの貴族にしては変。


 同じ学園の者だと選択し、マリアとはどの様な関係なのか追撃記入で伺うと、当然濁された。


 実行犯の息子くせぇが、詐欺師かも知れんしな。


 墓の場所は分るか聞くと、嬉しそうに分ると答えた。


 ん?どう言う事だろうか。


 先客が居るかも知れないからと付いて行く事にすると、案の定カイ君達がまだ居た。


 流石にカイ君達を知っているのか、彼らが去ってからお墓参りをするから、もう帰っても大丈夫だと言われた。


 いや、揉め事が有ったら困るし。


 どう言って留まるか悩み、そのまま無言で留まる事にした。


 そうして暫く黙っていると、何かするか疑っているのか、と泣きそうな顔で言われてしまった。


 前に似た状況で揉め事があったので心配しているだけ、先客が帰れば帰る。と記入すると、今度は木陰のベンチに腰掛けてくれた。


 そのままカイ君達の様子を伺っていると、侍従のジョージ君がコチラに気付いてくれた。

 そしてカイ君を促し、馬車が止まっているらしい方向へ歩いて行ってくれた。


 ジョージ君には後でお礼を言おう。


 そうして向こうからも見えないか確認してから、ユーリ君をお墓に向かわせ、辻馬車の停留所へと向かった。




「凄い立ち回りさせるんすねぇ」

「従者ならコレ位はスムーズにしてくれないとね、元はハーレムとか大奥の管理もやらされてたんでしょう?」


「クッソ大昔っすよ?確かにマニュアルは15年おきに現代化されてますけど、それだって最近改定するかどうかで、俺なんか読んで無いっすもん」

「って事は、ショナ君は確実に読んでるわよねぇ」


「どんな顔して読んだんすかねぇ」


 リズちゃんのお陰で、リアルハーレムにはマジで立ち回りが上手く無いとダメだって分かったから、このイベントを従者用にもと組み込んだのだけれど。

 ハナ、こなしちゃったわ。




 辻馬車に無事に乗り、学園へ戻るか街でもう少し遊ぶかの選択肢が出た。


 謎の人物ユーリ君が気になるので、学園に戻り学園長から話を聞く事に。


 どうやら実行犯の息子らしいが、狂った母親の影響でマリアを本当の母親と思い込んで居るらしい。

 そしてその母親こそが実行犯なのだが、妊娠中で父親が代わりに処刑されたんだそう。


 ややこしい。


 だが、マリアと似たオーラまで判断が付くだろうか。


 ソコを質問すると、転生者も居るには居るが、同じ世界で転生した者は居ないらしい、と。

 公式にだけでは、と答えると、詳しく知る為にと教会を紹介してくれた。


 明日の朝、学園長と2人きりで教会へ行く強制イベント発生。


 怒涛過ぎ無いかコレ。




 そしてハナは学園長夫婦と夕食を一緒に過ごし、2人の好感度と親密度を上げ、図書室へ。


 先ずは持ち出し禁止本から教会の事を調べ、次にジョージ君を訪ねた。

 男子寮の入口で待っていると、ジョージ君とユーリ君の事について話し合い。


 カイ君はドン引きして近付かないし、ユーリ君はカイ君どころか他者に全く興味が無いらしいと聞かされている。

 なので、ハナと一緒に居るのを見た時はビックリしたと。


 ハナの解答。

 何をどう勘違いしたのか、自分をマリアと呼び掛けたので、自分には近付かない様にとの選択肢を選び、お別れ。


 ストレス値を下げる為に、庭で休憩を選択。


 そこで妖精ちゃんのヘルプシステムが利用された【嘘を見破る何か無いか】と。

 勿論、用意してるけどまだ先なのよね。


 妖精ちゃんに有るには有るとだけ表示させると、ポーズ画面に。


「リアル一服っすかね」

『あぁ、そうだな』

「あー、ちょっと詰め込み感有るからなぁ」


「でも3年っすからね、コレ位詰めないとイベント溢れちゃいますし」

「そうなのよねぇ、耐えてハナ」


 舞踏会に武闘会、学園祭にミスコンにバレンタインと盛り沢山な3年なのよ、頑張って。




 広間で一服しても良いとは言われたのだが、匂いが嫌いなので庭で一服。

 魔素入りだからか、蝶々が吐き出された煙を浴び様ようと集まり舞っている。


 贅沢。


 休憩も程々にゲームを再開。


 5日目。

 朝食を学園長の家で頂き、そのまま教会へ。


 ココで早くも召喚者だとバラしちゃうのだが、教会もまた中立の立場なんだそうで、国にはまだ言わないとの事。


 そして問題のユーリ君の話へ、そこで学園長が実行犯の夫の話を始めた。


 同じく学園出身者のイーサン、マリアとイーサンは古くから婚約関係にあったのだが、王族の人間がマリアに国と自分を支えて欲しいと迫った。


 貴族が増長し、国の行く先が怪しくなっていたのは学園長も教会の人間もマリアも、そしてイーサンも知っていた。

 そして皆がマリアが有能なのを知っていた、お互いに国の為にと身を引き、マリアはそのまま王族の人間と結婚。


 イーサンも別の人間と結婚し、マリアが死んだ事の罰にと死んだ。


 もし、ユーリ君がイーサンの生まれ変わりなら、マリアと間違えてもおかしくは無いのかも知れないが。


 違和感。


 四十九日を過ぎてから生まれ変わるのではと、記入すると、教会の人間に遺影の間と呼ばれる場所へ案内された。


 モノクロの小さな写真には、ユーリ君とは似ていない優しそうな男性。


 ユーリ君は寧ろ、学園長と奥様にそっくりな気もするが。


 教会の人を見ると、ユーリ君はこの事を知っているらしい。

 しかも早い時期から、なので教会の孤児院で暮らしているとも。


 ポーズ画面からヘルプシステムを起動させ、一言。


【エグぃょぅ、スーちゃん】




 ハナからヘルプシステムを使って伝言が来た。


「そうっすよねぇ、めっちゃ重いんすもん」

「コレ位可哀想じゃないと、ハナ関わらないかなって」


「まぁ、そうでしょうけども、逆にこの子を救うのに全力になっちゃいません?」

「早期解決したら良いのよ」


「あぁ、昼飯どうします?」

「あ、もうそんな時間なのね。会議は?」

『話しておくとだけ伝え、帰国を促したんだがな。帰る気配が無いな』


「あー、いつ伝えるか言わなかったのは、流石に気付いてるのね」

『まぁ、コレも想定の範囲内だ』

「でも長期戦はマズイんじゃ無いっすか?」


『ヘルとヨモツの縁が有るんだ、そこは信用しているが』

「違くて、桜木様の方っすよ。案外チョロいって自分で言っちゃてるんですし、ゲームの影響で、こう、フラっと」

「どの世界でも耐えた子なのよ?」


「それは帰還の役目が有ったからで、けど今はもう自由なんすよ?」

「まぁ、そうだけども」


「逆に、もう良いんじゃ無いかなって思うんすよね、我慢しなくても」

「我慢って、男じゃ無いんだし」


「けどもう、全ての機能が正常なんすよ?」




 気を取り直し、ゲーム再開。


 ユーリ君の最初の異変に気付いたのは、目の前に居る教会の人間、タクトさん。

 ユーリ君が行方不明になったと知らせが入り、八方手を尽くし探し周ったのだが、暗くなっても見付からず。

 交代の為に教会へ戻ると、遺影の間にユーリ君が居た。


 そして一言、良かった、と。


 遺影の間は罪人の遺影が置かれる場所、本来は身内が持ち込むのだが、彼の遺影は使用人が持ち込んだそう。

 ユーリ君のお母さんのエリンは、イーサンの写真を家に飾るでもないのに、遺影は一切手放さなかったので、使用人が持っていた写真なのだそう。


 そして教会の人間がユーリ君と一緒に家に向かうと、信心深かったエリンは泣きながら懺悔を始めたんだとか。


 本当は、マリアが母親なのだと。

 そして直後に使用人は自殺し、エリンも育児不能となり、以降ユーリ君は教会で引き取られる事になったと。


 そして、成長するにつれエリンの面影は消え、学園長や奥様に似つつあった。


 そしてタクトが学園長に接触し、どう見てもマリアの子供の頃にそっくりだと学園長も認め、密かに面倒を見ていたと。


 だとしてもだ、説明が付かない事が多過ぎる。


 使用人が入れ替えた?

 だとしたら父親は?

 ユーリ君はカイ君には似て無い、そう考えると侍従のジョージ君に似ているが。


 するとココで選択肢が。

 しかも単語選択式。


 ジョージ君とユーリ君は血が繋がっている。


 正解。


 そして、ジョージ君は王族の人間。


 正解。


 ややこしい。

 ユーリ君とジョージ君が兄弟、いや、二卵性の双子か。


 いやいやいや、ならマリアが双子を産んだとしても、じゃあカイ君は誰だと言う事に。


 まさか。


 マリアが毒を使われたのは、1回だけかを聞くと。

 答えはイイエ。


 性転換の魔法や何かがあるのか、それにはハイとの答えが返って来た。


 マリアが性転換させられて、毒を盛られた?


 少し違うと教会の人間から訂正が入り、真相が明かされた。


 王族の人間がマリアを信じきれず、自白剤を使用。

 愛している人間が居るか聞かれ、何とエリンの名前を言った。


 マリアが他校の学園祭で一目惚れし、愛人として密かに付き合う約束をし、文通や密会で愛を深めていた。

 だが王族からの許可は出ず、約束は守られないままに離れ離れに。


 そしてお互いに何も知らないまま、イーサンとエリンが結婚、その後暫くして王族がマリアへ自白剤を使用した。

 その償いなのか何なのか、王族の人間はエリンへ男性化したマリアを差し向けた。


 エリンは男性をマリアだと直ぐに理解し、子供が出来た。


 そして出て来たのがカイ君、イーサンは理解した上で死んだ。


 3人はほぼ同時に生まれたが、貴族の陰謀で子供はすり替えられ、マリアは毒殺された。


 整理するに、こうか。


 王族の人間 ー  マリア  ー エリン

       ↓       ↓

    ユーリ&ジョージ   カイ


 本来は、コレが正解。


「ミステリー読んだ気分だわ」




『休憩に行ったぞ、推理小説を読んだ気分だと言ってな』

「一気に暴露して良いんすか?」

「だってハナだし、警戒心の高い心配性だから身分をハッキリさせないと食い付かないかなって」


「他の人でもこうなんすかね?」

「それは大丈夫、コレはハナだけの特別仕様だから」


 完全にハナの行動を真似しない限り、このルートには行けない。

 四十九日や、生まれ変わりの概念に疑問を投げ掛け、マリアが毒を使われたのは1回だけか、性転換の魔法や道具は有るか。


 それが記入されない限り、後半の部分は最後の方で明かされる。




 一服を終えゲーム再開。


 では、何故カイ君とユーリ君をすり替えたのか、使用人は何故に自殺したのか。


 学園長の予測では。

 カイ君やイーサン、エリンや家族を利用する為に貴族が使用人を唆した、エリンの為にもマリアの為にもなると。

 だが使用人はマリアやイーサンが死んだ後悔と、エリンの泣き崩れる姿に罪悪感が増幅され、教会にバレた事も有り、自殺したんだろうと。


 まだ更に深い闇がありそうだが、ヒントも何も無いのでココまで。


 兎に角、ユーリ君はオーラを見る事が出来、マリアのオーラの色や何かを知る事が出来る唯一の存在なので、転生者では無いだろうと言う事は分かったが。


 ジョージ君とカイ君は、知ってて役割を担って居るんだろうか。

 コレは本人達に聞くべきだろう。


 王族の人間は処罰されたのか?


 学園長の答えは不明、だから奥様は王族自体を憎んでいると、ココまでの事を知っているからこそ、憎んでいると。


 ただ、カイ君やユーリ君の事は実は受け入れてはいるんだそうで、向こうが知っているか分からないからこそ、あの態度でもあったのだと。

 それに、マリアとエリンが秘密をキチンと守ったからこそ、大きくなるまで誰も分からなかったのだからと、エリンも許しているんだそう。


 そして、教会の人間が何故ココまで知っているのか。

 教会の人間であるタクトこそが密会の協力者だったから、ほぼ全てを知る事が出来た、と。

 だからこそ、子供を見せに来なくても心配しなかった、あの子があんな風になるまで放置してしまった、子供を家に送る時に、他の者に付き添わせるべきだったと。

 かなり後悔している様子。


 うん、王族なら止められるべき立場だったのに、実質見殺しに。


 そうか、だからエリンに会いに行かせたのか。


 怖い、王族怖い。




 ハナは悩んだ末にゲーム画面をアチコチ触ると、システム項目のサブクエ【王族の内情を知る】を発見し、目標に設定。


 ハナ、正規ルートを完璧に進んでくれてるけれど、逆に怖いわ。


「桜木様なら選ぶルートだって、桜木様は自覚してるんすかね?」

『どうだろうな、機微に関してワシは疎いんでな』

「全部、掌の上って怖くないのかしら」


「把握、掌握されてるんすよねぇ」

『全てでは無いがな』

「それでコレって、やっぱり怖いわ」


 サブクエを設定した事で、教会のタクトから魔道具を受け取り、学園長とは分かれ街を散策に。


 カフェを巡り聞き耳を立て王族の情報収集、門限が夕方なので寮に帰り。

 ストレス値を下げる為に庭に向かい、整備点検者の少年と遭遇。

 手伝いを申し出て、そのまま使用人用の食堂で夕飯。


 そうなのよね、今は出来る事が無いのよね。




 カフェや食堂の情報を統合するに、ユーリ君とジョージ君の父親は次男なのに継承第2位、そして3位がカイ君。

 長男は病で一線を退いているらしく、その子供も除外されているらしい。


 長男が主犯ぽいが、まだ情報足りないな。

 かと言って図書室にそんな知識は無いだろうし、でも他の王族の子と接触しているのを見られてジョージ君やカイ君に警戒されても困るし、学年上だから接触方法に困るし。


 うん、寝よう。


 ゲーム内では自習してから、現実ではセーブしてから広間の絨毯で横になり、お昼寝。




 桜木さんのゲーム画面が真っ黒に。


『昼寝だ、心配するな』

「あぁ、そうなんですね」


 確かにいつものお昼寝の時間、本当にリアルタイム画面だったらしい。


 気を取り直し料理を再開、煮っころがし用に里芋の皮剥き。




 起床。


 多分、オヤツの時間。

 エミールから貰った時計を確認すると、日本のオヤツの時間。


 朝食や昼食を適当に食べたので、牛丼をガッツリ食べてゲームを再開。


 6日目の月曜日。


 もう朝は庭で自習が習慣化しているのだが、そこへ風紀委員長が登場。

 都合良く王族の話はしてくれ無いもので、誘いを断わった事を謝りに来てくれただけだった。


 そして授業、昼食、授業、オヤツの時間はレクリエーション時間へとなった。

 部活動の勧誘時間なのだが、向こうからは来ないので自分達で向うシステム、コレにも時間制限が有る。

 リアルめ。


 王族に関連しそうな部活のイメージとしては、フェンシングやアーチェリー、鷹狩りにチェス、社交ダンスにお茶会部。

 他の部活動は園芸、写真と新聞部は合同、文芸部等々。


 オススメなのは鷹狩りらしく、素直に鷹狩り部へ話を聞きに行く。


 何と卵を温め孵化させ、その後でお世話係に預けると、ガチ刷り込みを行うらしい。

 そして卒業して尚、6年間面倒を見る。

 お金も手間も掛かるが、もふもふだし、風紀委員長居るし。


 つか委員して部活動って忙しそうだが、委員決めがこの後に有るのよなぁ、考慮してくれんのかなぁ。


 してくれるらしい、うん、入部します。


 そして委員は立候補制、部活動と相性が悪いモノと良いモノを妖精がヒント表示でサポートしてくれた。

 整備点検者は部活動も委員も除外されるのだが、生徒全員が何かしらに所属する事になる。


 委員も部活も基本的には理由を言えば辞められるシステムだが、次に他の委員に加われるのは1ヶ月後。

 部活はいつでも加入出来るシステムだが、鷹狩りの場合は辞められないし掛け持ちになる。


 しかも風紀委員と生徒会が総務や庶務を担うので、王族関係者はパワーバランスを保つ為に風紀や生徒会の委員にはなれない。


 他の委員には図書、保健、体育祭に文化祭委員。

 そしてボランティア委員、ボランティアには所属していない生徒全員が強制参加だが、3年生の活動は自主性に任され、引き継ぎや支援が主になる。

 その3年生を除いた半分の学生が、午前と午後、前期、後期に分かれてボランティアを行う。

 委員長や委員がそれを取り仕切るので、中々に大変そう。


 正直やりたく無いが、生徒全員と関われるのがボランティア委員なので、人間関係の地の利を得るにはやるしか無い。


「はぁ、初回は面倒よな」




 ハナがボランティア委員に、人間関係把握には大事な選択。

 人数は多いのにモブも主役級もゴチャ混ぜだし、現実と同じく説明書もチュートリアルも何も無し、全容を把握したかったらこうするしか無いのよね。


「ゲームなんだからほっときゃ良いのになぁ」

「お人好しを自覚して欲しいわよねぇ」


 第3世界でも吸血鬼にホイホイ血をあげちゃうんだもの、ココの吸血鬼にだって振る舞い血をしちゃうに決まってる。




 どの委員長も2年生、3年生が副委員長。

 1年の場合は委員長補佐、複数人立候補していたが、どんな委員でも委員長になろうだなんて偉いなぁ。


 最初の仕事は連絡係、生徒会委員の指示に従い1年生の教室を5つ回る。

 今回は前・後期のどちらが良いかのアンケートを取り、掲示するだけのお仕事。

 部活動と委員の内容で午前と午後に振り分けるのだが、人数が少ない時期こそ通信簿に高評価が付くので、結果的に常に均等になるシステムで楽。


 すんなり決まったので、生徒会とボランティア委員に名簿を提出し、今日の委員のお仕事ははおしまい。

 明日は身体検査なので、1年生の部活動は明日から。

 コレも人数が多いので午前の部と午後の部に分かれるのだが、部活と委員の関係で強制的に割り振りが決められる。


 今回は午前の部、身体検査後に卵を選んで孵化まで持ち歩くシステム。

 あっと言う間に夕飯、明日の身体検査用に1年生が最初に食堂に入れる。


 そして自由時間、鷹狩りとボランティア活動の下調べに図書室へ。


 ゲームの設定としては、鷹狩りにはイヌワシが用いられるそうで、体格と狩猟能力の高さからメスのみ、成熟する6年後まで人の側に居る事になる。

 実際には6月頃に巣からを捕まえ、数ヶ月経ってから訓練士が訓練を始め、5年後の成熟した段階で野に還すんだそう。

 ゲームが6年と言っている理由は、交配させるからだろうか。


 そしてボランティア活動について、地域のバザーや清掃の手伝い、避難訓練時には誘導員になる事も有るので、ガチで仕込まれるらしい。


 イベント多いなぁ。


 時間がまだ有るので、この国自体の事について調べる。


 ザッと言うと魔禍も魔物も妖精に精霊に神様も居る、王国は海に面し、隣国に囲まれた中立国。

 建国の歴史としては人間の村が寄り集まり、召喚者と転生者によって発展したらしい。

 四季の有る産業が満遍なく発展した国、クソは貴族と王族の一部か。


 調べ終えて時間切れ、寮に戻り自習をして就寝時間に。


「ロキさんや、つまらんくない?」

『ダイジョウブ』


 7日目。

 身体検査、朝食無しで先着順。

 1番乗りは性転換させられたと思しきルイちゃん、未だに人見知りなのか分からんが、検査が終わると食堂前で待ち伏せされていた。

 一緒に朝食をと言われ、部活や委員の話しをしていると、ケリーちゃんとトーマ君の整備点検組、ユーリ君と集まった。


 ココでやっとルイちゃんとユーリ君の詳しい話が聞けた、ルイちゃんの部活動は園芸、委員は無しなのでボランティア前期の午後。

 ユーリ君はチェス、委員無しなのでボランティアは前期、午前。


 予測するに他のキャラは後期なのか、でも意外と同じで被ってたりもしそうだし。

 キャラクター詳細欄が無いので、ゲーム機本体でスクショを撮ってメモ。


 そして部活動へ、ルイちゃんとユーリ君が自由時間なので付いて来る事に。

 卵を選び保温器へ、そのまま先輩達の鷹をモフモフし、掃除や餌やり、筋トレ方法を学んだ。


 ユーリ君もルイちゃんも何故か一緒にやってくれて、何か有れば保温器を預かってくれるとも。




 心理学に基づいて、顔を合わせる回数が多かったり、秘密を守ってくれる人には親密度が上がるシステム。

 好感度はその先、しかも必ず連動してるワケでも無いし、コチラから接触しなくても上がったりもする。

 ルイちゃんは秘密をバラさないかとハナをストーキングし、ユーリ君は純粋に興味を持ってストーキングしていたから、ハナの知らぬ間に親密度が上がっている。


 気付くかしら。




 そのまま2人と庭で自習し、昼食も一緒。

 何か、親密度や好感度が上がる事をしたっけか。


 まぁ良いか。


 再び庭で自習。

 オヤツ、自習、夕飯、そして自由時間、ユーリ君は自室に、ルイちゃんは図書室に行くらしいので、途中まで同行。


 そして黄金の林檎の絵本を借り、地図と照らし合わせていると、ルイちゃんが再びコチラへ。

 ルイちゃんも地図を借りたかったらしく、同じ地図をみながらアテは無いかと探してみるが。

 そんな簡単に見付からないよね。


 ただ、ルイちゃんに何か見付かったかを聞くと、タブレットから声が歪んで聞こえて来た。

 何かを見付けたらしいが、突っ込まずに解散、筋トレの後に就寝。


 8日目、9日と、一緒に居るキャラは違うものの代わり映えの無い日が続き。


 10日金曜日、園芸部とお茶会部の合同イベント、春のお茶会。

 朝食後にボランティア委員として、ユーリ君とお茶会のお手伝い。

 ルイちゃんは真面目に草木の手入れをし、自習時間に。


 そのまま庭で自習していると、双子の女子が話しかけて来た。

 ボイス付き。

 メイちゃんは園芸部、メグちゃんはお茶会部。


 ルイちゃんの事を気にかけての事らしい、優しい。

 そのまま自習を一緒にし、昼食も一緒に。


 コレ、スーちゃんの好みか。




 私のイチオシ、メイメグ姉妹とハナが交流し、11日土曜日になった。

 今日と明日はお花見イベント、学園内か外か、ハナが選んだのは学園内。


 どうやら新聞部か放送委員を探してる様子、やっと思い出してくれたのね。


 そしてセレーナと出会ってくれた。

 キラキラ好きのお節介な新聞部の放送委員、ゲームのヒントをランダムで教えてくれて、親しくなれば爆弾や好感度を教えてくれる子。


 今日のヒントは、平民の間で自己紹介カードが流行っている事と、カードは街にしか無いと教えていた。


「コレで一安心っすかね」

「ね、育成ゲームとしか思って無いのか心配してたけど。でもなぁ」


「次は誰に会えると良いんすか?」

「虚栄心をモデルにした、ジュリアね」


「あー、街じゃ無いと会えないんすもんね」

「そうなのよ、サポートメンバーは内外に配置してるけど」


 ハナが美容関連の能力を伸ばす可能性が薄いからこそ、学園以外にもキャラを作って2段構えに。

 今回はボランティア委員だから、資金集めに関わる事で出会えるんだけど、外見を伸ばす気になってくれるかなぁ。




 12日日曜日、ボランティア委員のサブクエも兼ねて、ユーリ君と制服で街を巡るとサブイベント発生。

 どう見ても虚栄心なジュリアと言う人間に出会った、ボランティアバザーがあるものな、どう協力して貰えるんだろうか。


 選択肢は4択。

 服を寄付して貰うか、デザイン案を貰うか、服飾のマネジメントを頼むか。

 いや、親密度も何も無いのに無理でしょう。


 残った1番無難そうな、バザーに出品するハンクラ用の端切れ集めを選択すると、先ずは商品を買ってくれたら考えると。


 ですよね。


 前金として所持金の9割を収め、舞踏会イベント用の服をオーダー。

 無知なので悪目立ちしないデザインでと頼むと、少しは自分で情報収集しろと。


 ですよね。


 ただ、他の服屋も紹介してくれるとの事なので、端切れを集めながらデザイン案の情報収集も出来る様に、端切れとお店の情報をくれた。


 本物同様に優しい。


 そして何軒もの店を回ったが、時間制限が有るので自己紹介カードの店に行かせて貰う機会までくくれた。


 ただ、リアル時間が吸われる内容だった。

 カスタム出来るんだもの。

 枠や背景の色は勿論、デザインが豊富過ぎてちょっと困るレベル。

 しかも時間制限無いし、リアルタイムなら半日は悩んで遊べるが。

 ユーリ君がリアルに居たら可哀想だし、10枚毎にオーダー出来るし、程々にしておこう。


『どうした、気に入るモノが無かったか』

「いや、リアルなら半日悩むから、ユーリ君が居ない時にしようかと」




『だそうだ』

「もぅ、そこリアル再現しちゃうのね。修正して貰わないと」

「そうっすよねぇ、ガチリアルなら好感度に影響するんでしょうけど」


「それ、逆に利用出来無いかしら。気遣いでも有るんだし」

「そうっすよねぇ、遠慮されてるって良い意味にも悪い意味にもなるっすもんね」


「ふふ、壁を感じて燃えるとか」

「ショック受けるとかっすかね」


『承ったそうだ』

「凄いなぁ」

「流石っす、謎の天才プログラマーさん」




 そうして自己紹介カードは直ぐに出来上がったので、先ずはユーリ君へ。

 寮に戻り、夕飯の際にケリーちゃん、トーマ君、ルイちゃんに自己紹介カードを渡し、書き込んで貰った。


 まだ開示されていない情報は沢山有るが、誕生日はゲットできた、けど。

 しまったな、お金ほぼ無いんだわ。


 学園長と奥様にも自己紹介カードを渡し、どうお金を稼ぐべきかを相談すると、普通にくれてしまった。

 ギルドで仕事を貰う事も可能だが、どうしても目立ってしまうし、学生の本分としては勉学に励んで欲しいと。

 そして舞踏会用のドレスに関して、元々は学園長夫婦が持つ予定だったらしく、あくまでもその補填だと。


 もうコレは、学園に尽くす以外に無いやん。

 王族関係者は学園長と奥様にはトラウマだし、ユーリ君は避け、トーマ君へ。

 利己的過ぎるよなぁ、でも良いのかなぁ。


 モヤモヤしながらも、トーマ君を気になる人に選択し、セーブ。




「コレ、良くない感じっすよね」

「良くないぃいいい、学園の利益になる人間選んで。恋愛シミュレーションゲームなのに、もぉー」


「まぁまぁ、立ち絵に頑張って貰うしか無いんじゃ無いっすかねぇ」

「諸刃の剣なのよ、自キャラ出ちゃうから」


 顔は手や影で隠れるけれど、自キャラと攻略対象キャラのキラキラした甘酸っぱいシーンで、入り込める人は入り込めるし、ダメな人は一気に冷めちゃう。

 今はもう慣れたけれど、私はずっと黒髪だったから茶髪の自キャラに違和感が出たのよね、例え顔が隠れてても自分じゃ無いと思った瞬間に、冷めたし。


 その懸念通りなのか、ゲームを淡々と進め。

 トーマ君と付き合う事に、そして学園を裏から支えるルートに入り、トーマ君と結婚、学園をもり立ててクリアとなってしまった。


「あの立ち絵の時、どうだったんすかね」

「ゴロゴロ、バタバタしてなかった?」

『特にどうも無いが』


「ぅう、もふもふロキ神のせいかしら」

「効率厨なとこも有るんで、初回は情報収集に徹したのかもっすよ」


「だけなら良いんだけれど」


 今日はコレで就寝時間に。

 クエビコ様も居るから心配無いけれど、ちょっと不安。


 ううん、結構不安かも。

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