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7月9日 正義とは。

 ミーシャと浮島に居た時、再び問題発生の知らせ。


 地域の民生委員から紫苑へお呼び出し。

 昨日の抱ける発言を誰かに聞かれたらしく、問題が有ると怒られてる最中です。




 クエビコ様から当時の状況を聞かせて頂いたが、紫苑さんの周りの人間以外が聞けば、誤解を生む内容なのは確か。

 先ずは、発言を認めるかどうかで。


「蜜仍君には好きと言う方が不誠実な間柄、っつうか、切り取られたらどんな発言も誤解を生むし、寧ろ、外には聞こえない位置で、アレ?不法侵入じゃねぇの?」


『この前来た、あの娘だ』

《どうやら嫉妬心じゃのぅ、くふふ》


 全く笑い事では無いのに。


「ですね、すり替える気は無いんですが。不法侵入の件は調査して頂いてるんでしょうか」


 偶々通り掛かった未成年者が聞いたので、問題は無いと。

 嘘は無いが、なら女生徒が嘘を言った事になる。


「流石に、ちゃんと確認して貰おうか」

「はい」




 前にもウチの中庭に来た例の女生徒、不法侵入してた。

 蜜仍君を心配して様子見に来たら、好きな人が居ると言ってたのとは別の人間と抱き合っていたから、気になって立ち聞きして、危ないと思っての善意の通報らしい。


「僕、誰を好きかは伝えて無い筈なんですけど?」


 尊敬する年上なら自分かもと、髪の長い女性が言ってたと。

 女生徒がそう言って、男親が初めて早合点に気付いた。

 誰も、誰とは明確には言って無い、蜜仍君もそう。


「ちょっと、困るな。2回目だし」

「ですね、凄く困ります」


 でも、抱けるって事に引っ掛かってんのね、民生委員さんも女生徒も、女親も。


「娘さんが、お父さんのお嫁さんになるって言ってたってのも、ココだと罰せられるの?」

「紫苑さん、それだと遠過ぎてピンと来ないかも知れません」

「そもそも、僕の精神年齢ご存知ですか?」


 既に基準はクリアしていて、もう16才を待つだけらしい。

 そしてワシに他に好きな人が居るからこそ、好きとは絶対に言って貰えないからこそ、別の言葉で回答してくれて充分に満足していて、他にも大人が居るので身の危険も無い。


 なのに、良くも邪魔をしてくれたと、自分達の人生の邪魔をしないで欲しいと蜜仍君がキレ始めた。


「蜜仍君、今回は善意の通報なんだし」

「16才になっても、知らなかったって免罪符を使われて、不法侵入され続けて注意され続ければ良いんですか?ならこんな土地は嫌です、転校します」


「そう、なら引き上げだな」




 女生徒が好きになったのは、桜木さんだった、だからこそ様子見に行ったと。

 でも優秀な蜜仍君には同性の自分は勝てない、諦め様と思っていたと。


 なのに、様子見に行ったら蜜仍君が違う人間と親しげにしていた。

 許せなかったし、危ない発言をする危ない人間だから、通報しないとと思ったと。


 女生徒の男親は謝罪へ回ったが、民生委員と女生徒と女親は納得がいかないらしい。


 正直、納得して貰うためとは言え、内情を詳しく教えたく無いのだが。


「じゃあ、好きって言葉だったら良いんですか?未成年にですよ?」


 他の言い回しをしろ、と。

 流石に無茶苦茶だ。


「月が綺麗ですねって?」

「それが通じない場合はどうするんですか?」


 そうして結局、通じる言い回しもダメだと。


「え、面倒、裁判しよう」

「ごめんなさい、ご迷惑おかけします」




 裁判の話になると、ショナが滾々と裁判になった場合の事を話してくれた。


 先ずは女生徒には不法侵入罪、従者の社宅なので国家機密保護法違反の罪にも問われる事になる。

 まして内容が問題無いとなれば、ただの出歯亀、逆に批判に晒されるかも知れないとも。


 女親に心当たりが有ったのか、引き下がった。

 残るは民生委員。


『珍しい偏見持ちらしい、エナが書き込みを見つけたそうだ』

《嫉妬と嫌悪と憎悪じゃな》


「あぁ、まさか偏見の有る人だとは」

「そうみたいですね、残念だな」


 顔を真っ赤にして反論してるけど、嘘の音色が止まらない。

 子供相手なのが問題で、果ては全員で蜜仍君を食いものにしてるのではと。


「【変身解除】」

「あ」


 女生徒は泣き出すし、両親は平謝り。

 そして民生委員も、ショナが妊娠の邪魔をしたとキレた事で冷静になり、謝罪へ。


「でもさぁ、女や子供が被害者になり易いのは分かるけど、この場合でもそうなの?男の子だって被害者になるんだから、ココで謝罪するのは違うんじゃ無い?」


『コレがそう見ているからだろう』

《鏡役も大変じゃのう》


「ですが」

「つうか、そもそも言った証拠は?」


 無いんかい。




 家では如何に距離を置き、如何に過ごしているかを蜜仍君が説明し、女生徒は桜木さんのお相手の妊娠を邪魔した事に深く反省していた。

 そしてご両親も、民生委員も。


「もう、ココで頑張るのは諦めます」

「でも昨日の子の件も有るじゃない」

「自業自得ですし、泣こうが喚こうが関係有りませんよ。何か有るとするなら、この方達が責任を負うだけですから」


 家族、その家族が所属していたグループ、そのグループが所属していた村、町、地区。

 ただ自己責任が有るだけでは無い、未成年者こそ連帯責任が強く発生する。

 親だけでは無い、大人の背中を見て育つからこそ、周りの大人も気を付ける。


 だからこそ、児童の性的被害から守る為に不法侵入し、証拠も無しに批判するのか、それを許すのか。

 善意、罪悪感、性善説ありきの問題はココだけに留まらず、実際に冤罪事件も起きて人生が破綻しかけた人も居る。


「もし抱けるの言葉に引っ掛かってるなら、性差を超えて平気で抱ける程に好きだが、好きだから2年は我慢出来る、の略。だけれど、個人的には好きと言う言葉はどんな仲でもお付き合いしてる人にしか言いたくないんだ、とか。そうは納得してくれないだろうか」

「僕は最初からそう受け取ってますよ」

「コレが仮に召喚者様や転生者様だったらと、コレからは良く考えて行動して下さい」


「そう威圧しないで、折角だし聞いてみようよ。もしワシがそうだったらを、聞きたがってらっしゃるんだし。召喚者様と転生者様にお聞かせ出来る立場なんだから、ねぇ」


 桜木さんが悪ノリし始めた。


 もし蜜仍君が召喚者様を脅して言わせていたなら。

 もし蜜仍君が神獣で、召喚者様の寵愛中だったなら。

 もし蜜仍君が転生者様なら。


 蜜仍君が脅して言わせていたとしても、通報すると。

 ではその果てはどうなるか。

 権威や信用の失墜、そうして蜜仍君だけの寵愛になり、国内のパワーバランスが崩れ、再び土蜘蛛族が里に閉じ込められる可能性が有るが、そう望んでいるのかと。

 望んでは居ないが、子供を守る為に通報する、と。


 では、不法侵入してまでも通報すると召喚者様に言えば良いのか、境界線は無いのか。

 もしするなら同等に、パソコンの中も脳の中の趣味嗜好も暴かせるが良いのかと。

 民生委員と男親が拒絶し、男親が性生活まで監視されたく無いとの言葉で、女親も納得した。

 

 そもそも不法に入手した断片的な証拠を裁判で提示すると、殆どが名誉毀損になると教えたら、民生委員には知らなかったと慌てられた。


 では神獣なら。

 神獣と分かれば、通報はしない。

 そもそも神獣だと言って貰える様な仲なら、誤解しないのではと問い詰めると。

 男親が激しく頷き、3人は気まずそうにするだけ。


 では転生者様なら、そう知っていたなら通報しなかった。

 では敷地外で、転生者様と知らなかったら。

 それは通報する、と。


 では、家の中で全裸だといけないのか。


 ココで、やっと境界線、不法侵入が問題なのだと分かってくれたらしい。


「優しいですね、もう去るのに」

「召喚者様なら、こうしたかもだし」

「ご本人様には是非にもこんな犯罪に巻き込まれたく無いんですね、なんせ不敬罪等も付くんですから」


 ココで全員が真っ青に。

 全世界に晒されましたからね、この前。


「だからそう脅すなって。実際に被害者だと思えば通報すべき案件なんだから」

「不法侵入しない場合、です」

「そうしたら会話も聞こえなかった筈で、こんなに時間を無駄に浪費せずに済んだのに」


「召喚者様が聞きたがる事だもの、仕方無い。あ、言いふらしても良いよ、果ては昨日の子が傷付く結果になるけど、それも全部召喚者様達へも報告が行くだろうし、ワシらは痛くも痒くも無い」

「もう知ってらっしゃるかも知れませんね」

「ですね」


「でも、敷地外から察知出来るなら是非にも通報してね」

「次は直々に来て下さるかもですしね」

「そうですね、もう良いですか?」




 誤解が有ったので謝罪します、と。


 念の為にご両親と民生委員さんを呼んで、致してる最中の人間が居る寝室に聞き耳を立てて、死んじゃうとか聞いたら通報すべきか聞いた。

 本気で土下座された。


 大変だな旦那さん、機微が伝わり難い奥さんと子供で。


『民生委員の資格は剥奪だな、一方的過ぎた』

「そこは任せる」


 帰り道は3人で車、ついでにドライブするらしい。


「紫苑様には、もっと楽しい事だけをして貰いたいのに」

「楽しかったよ、後半」

「一応、今後は気を付けて下さいね」


「ごめんなさい」

「さーせん」


 通報は良いんだよ通報は。




 紫苑様とショナさんと道の駅でお買い物、僕はご年配の方々にご挨拶。

 昨日に引き続き今日も問題が起きてしまった、残念な誤解が起きたので僕はココを去る、と。


 凄く残念がってくれて嬉しかった、そして僕が好きな人と一緒に居るのを不法侵入で見られてしまい、誤解された事も伝えた。


 クエビコ様には少し怒られたけど、ドリアードさんがふんわりとお2人に伝えてくれて、紫苑様には少し怒られるだけで済んだ。


 そしてショナさんには、帰ってから凄く怒られた。


「そもそも従者の」

「僕は土蜘蛛族として通ってましたし、コレは土蜘蛛族の問題なので。桜木様にもご迷惑が掛から、それよりココに残るべきだと説得すべきでは?」


「ですけど、本当に気を付けて下さいね」

「はい」


 桜木様を守るには、コレ位はしないとね。




「紫苑さん、あの、ココには」

「君とアレクかね、丁度良いべ」

「残られるんですね、良かったぁ」


「君が言い触らしたからねぇ、狙ってたなら偉い」

「単なる私怨ですよ、ふふふ」

「どっちにしてもなんですが、残って頂けるのは助かります。本気で大事にも出来るので」


「クソは死ねば良いけど、アレはちょっとね」

「紫苑様は真逆ですから、心配なさらないで下さいね?」

「ですね、何か食べに行きましょうか」


「いや、家でゆっくりしたい」


 アレクが買って来てくれていた、ハンバーグと海老フライのセットを皆で食べる。




 紫苑さんは寝て起きてからひたすらゲーム、一服出来ないとかなりストレス値が上がる。

 でも、コレは何かを与えるとかでは無い気もするし。


「マティアスさん、紫苑さんのストレス値なんですが」

《高いねぇ、アレって切り替え装置だから、まだ切り替えきれて無いのかも》

「私、それは嫌なんですが。本当に精子にまで害が及ぶんですか?」


《因果関係はハッキリして無いけど、有るかもって感じ》

「そんな事で、言い出したら水にすら害が有るのでは」

「もう少し様子見しましょう」


 全ては紫苑さん次第。




 今日のお夕飯は皆でピザ、地元のお店。

 エナさんの根回しが1番怖いかも知れない、店主さんがお爺さんから聞いたけど大丈夫かと、あの中にココの大地主さんが居たらしい。


「エナさん」

『召喚者様なら、内々で済ませたかもだよねー』


 嘘の音色。

 大丈夫かしら、女の子のご家庭。


 そして食後のデザートを食べ、店を出ると昨日のご家族さんが。

 お年寄り方から改めて事の重大さを説明された、どうか出て行かないで欲しいと。


「自分達の為に?」


 違うとは言ったが、嘘の音色。

 まぁ、ですよね。


「じゃあ、自分達に一切利益は無いんですかね?」


 蜜仍君、店主さんが居るのを良い事に。

 ご家族達、しどろもどろじゃん。


「どう謝られても蜜仍君は出て行きますよ。それは土蜘蛛族にも従者の人間にも既に伝わっています、撤回は有り得ませ。見せしめと思われても構いません、何せ召喚者様の為のお試し居住でも有ったので」


 店主さんは理解してくれてて、女生徒もご両親もまさかそんなって。

 そのまさかなのよな、少なくともココではもう子育てはし無い。


 そして店主さんから、向こうは離婚するらしいと。

 情操教育補助を受けて無かったらしい、まるで障害者みたいだからと。

 それにキレて旦那さんが下の子を引き取って、奥さんと女生徒とは別居すると、下の子もキレての離婚らしい。


 それを聞いて更にご両親は平謝りなのに、女生徒はまだ反省して無いっぽい。


 それを見て呆れる店主さん。

 下手をすれば神々からも見捨てられて、良く無い土地だとなれば過疎地になるが、お前は一生を掛けて責任が取れるのか。

 下手をすればお前の結婚相手が永遠に見付からないかも知れないが、それで良いのかと。


 それでも、自分はそんなつもりは無かったのにと、反省出来ない性質なのかも。


 店主やご両親は、申し訳無い、せめて召喚者様達に遊びに来て頂ける環境にはしますので、どうか許して欲しいと。


『ちゃんと反省出来れば良いんだけどね』

「そうなってからの、その時の状況次第かと」


 若いから。

 実感が無いから。

 想像力が無いから分からないのか。


 全部なのかな、若いって怖いな。


「もう帰ろ」


 どうしようも無い人を見ると、自分も同じ事をしてないかと怖くなる。

 怖くもなら無い人って、どんな精神構造なんだろう。




 鈴藤紫苑の状態ですら、あのストレス下では桜木花子と同じ反応を示した。

 人の振り見て我が振り直せ。


《生真面目さの弊害ですね》

「先生は心配にならんのは何故よ」


《一瞬です。あぁ、こうなるまいと、ただそう思って、一瞬振り返って終わりですね。何せ無神経だと言われた事が無いので、ただ君は的外れでも言われてしまってますからね》


「紫苑なのにな、しょんぼりだわ」

《ロキでもお呼びしましょうか》


「刺激が強過ぎるからダメ」


《では、コンスタンティンかユラ君でしょうかね》

「ユラ君問題が、でもなぁ」


《大丈夫ですよ、是非お会いになるべきです》




 久し振りのユラ君。

 何か、成長してない?


『姿形も大事だって、水の中の神様達が大きくしてくれた』

「精神年齢は?」


『16才で大丈夫だって』

「アレクもだけど、何でなの?」


『妊娠の事、魔道具が出たから評価基準が少し変わったみたい。質問内容が妊娠の事も増えたから』

「大変だぞ、月経も出産も」


『もう痛いのも体験した。ハ、シオンにさせるより良い、シオンには相手が沢山だし、凄く嬉しい』

「ワシより大人かも知れないな」


『シオンは大人だよ、大丈夫』

「純粋無垢に弱いのよね」


『シオンも純粋無垢だよ』

「待て待て、お祖母さんに挨拶に行くぞ」


『うん』




 お祖母ちゃんの店に行ってから、指輪を買いに行った。

 俺のお金じゃ無いから少し嫌だったけど、ちゃんと働ける様になったら買ってくれってシオンが言ってくれた。


 だから遠慮無しに青い大きな指輪を付けて貰う事にした、俺のは皆とお揃いの指輪。

 シオンは人間なのに大きな群れで、お祖母ちゃんと同じでシオンが上、俺は下の方。


 だからちゃんとシオンの言う事を聞いて、婚約者の証明書を発行してから、シオンの家へ。


 俺が人間になった場所、呪いが解けた場所。


「尻尾可愛いなぁ」

『ふふ、触って大丈夫だよ』


 もふもふが大好きで、女で男で大人の人。

 優しくて暖かくて、泣き虫で甘えん坊で、強くて弱い。

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