7月8日 事実は小説よりも。
そもそもアレクがどうしたいのか、そして国として、先生としてはどうなのか。
アレクと先生とショナとで4者面談。
「俺は別にもう、どうでも良い」
「主体性が無いのか何なのか」
「毎日ドロドロにしたいけど無理なんでしょ。それに出来る事も限られてるんだし、じゃあもう何でも良い」
「先生ー、良く無いと思いまーす」
《考え方次第ですよ、欲が無いのは安心材料にもなりますから》
「そもそも俺が出来る事なんてそんなに無いし、一般的な知識はショナに追い付くのは無理だし。人間に出来るだけ安全だって思って貰って、偶に一緒に居られたら良いだけだし」
「高望み出来無いから?」
「そんなに欲しいモノが無い、興味が無い」
「ワシの興味があるモノにもか」
「それは気になるけど、どうせなら囲って欲しい。関わりは最低限なら誰も心配しないで良くなるじゃん、そうやってシオンだけの存在が良い」
「偏愛。反発心から拒絶したいが、国はどうなの」
「誰かに害を成す知識を取り入れる事以外、特には。人間同様に自由に、と」
「ワシより自由?」
「正直、はい」
「じゃあ市井の良い情報を知って、濾過して濃縮してから、ワシにヤンワリと伝える係。外界との接触は、先生はどう思う」
《全く無いのは避けたいですね》
「じゃあ、今まで通りか。つまらん」
「本当に見せ付ける気だったんですね」
「え、ショナとしてるのは見たく無いんだけど」
「跡を見せ付けてモヤモヤして貰おうかと思っただけ」
「僕のを、です」
「あぁ、絶妙にモヤモヤする」
《なら、少し今後について考えましょうか》
ミーシャは日本時間で過ごし、このまま沖縄に永住予定。
白雨はエナさんと旅行。
遠野には蜜仍君が居るので、マティアスとコンちゃんが滞在。
そして北海道にはアレクとショナ、そう案が出たものの。
「ユラ君は?」
《イスタンブールで浮島を行き来するそうで、そろそろお会いになりますか?》
「紫苑で?」
《常識は学ばれましたし、見極める頃合いかと》
『すまんが、揉め事だ』
《蜜仍坊がハメられおったんじゃが》
本当に、御伽話みたいな事が有るんだなと思った。
抱き付かれて、教師が来て咎められたら、僕に迫られたって言い出されるなんて。
凄い、創作物みたい。
そして当然大事になって、ちゃんとした格好の紫苑様が来て、静かに上級生の女の子にキレてくれた。
召喚者様や転生者様が実際に居る世界で、関係者かも知れない人間を巻き込んで、この世界を貶める事をするなんて何を考えてるのかって。
軽い冗談だったとか、そんなつもりは、とか、大袈裟だとかって。
ご両親はマトモな方で秒速で土下座して、こうなった原因究明を迅速に行うって言ってくれた。
僕は全然平気なんだけど、紫苑様、嫌な事を思い出して無いかな。
今日は早く帰る事になったんだけど、家まではずっと無言だった。
「君にはどう、言葉を掛けるのが適切?」
「僕は全然平気なんですけど、紫苑様は大丈夫ですか?」
「思い出したから八つ当たりした」
「紫苑さん、アレは正当な怒りの表明なので問題無いかと」
《ある意味で経験者、被害者だものね。ごめんね、本当》
「マティアス、今なら、どうしてたら良かったと思う?」
《本当なら周りが言う様に、早く釘を刺すべきだったんだけど、あの時は執着への理解が薄くて。結局は、同じ結末だったと思う》
「あぁ、執着を発生させたのよなワシが」
《悪い様に言わないで、私から自然発生した気持ちなんだから》
「僕、問題になっても、怪我をさせても避けるべきだったんでしょうか」
「怪我させないのを念頭に置いてたのは偉いと思うんだが」
「はい」
《うん、良く我慢したね》
なのに、穢れたみたい、汚されたみたいで自分が嫌だ。
万が一にも誤解されなかっただろうか、汚いと思われないだろうか。
折角、桜木様だけの、紫苑様だけの綺麗な身体で。
「蜜仍君、中庭に行こう」
まさか蜜仍君が過呼吸の一歩手前になるとは。
思春期特有の潔癖なのか、ハーレムが身近に有る弊害か。
「ごめんなさい、紫苑様に、綺麗な身体で」
「汚れてません」
「でも、だって、どう、境を」
「汚れて無い、それでも嫌なら浄化してしんぜよう」
「だって、僕は、まだ」
「ココでは同性同士のハグは許されてるし、性的な事は含んでません」
「紫苑様が、汚れちゃうかも」
「君は汚れてません、それにワシは凄い撥水効果されてるから大丈夫」
「僕、長の事を知ってたのに」
「君は悪く無いし汚れて無い、つかそこまで潔癖だと思っちゃってる?」
「違くて、僕が」
「よし、スーツで窒息の刑だな」
蜜仍君に、人並みの、人並みかどうかは別だが、罪悪感が有ったらしい。
それと、潔癖な面を見せ過ぎたんだろうか。
《ショタスーツモノやん、萌》
「キノコ神、アカンものに目覚めてるやん」
《エエやんけ、あのピュアな感じ、ワイ元から大好物やし。趣味友やんな》
「なら何とかしてくれ」
《もう大丈夫やろ、ちゃんと話したらエエんよ坊主》
「誤解されなかったか、急に、不安になって」
「誤解する余地すら皆無だったから大丈夫やで」
「でもぉ、もし、無関心になられたらってぇ」
「手を出さないで我慢してるワシを褒めて欲しいわな」
《よっ!流石や!エエ大人の見本や!アンタは偉い!》
「なので大丈夫」
「好きって、言って欲しいんでず」
《ワイらが居てもエエならエエよ》
「はい、言って欲しいでず」
「キノコ神、それ趣味?」
《趣味と実益を兼ねて何が悪いねんな》
「でも、紫苑様が嫌なら」
「抱ける、ってのはダメ?」
《まぁ、暫くはコレで我慢しとき、シオンの誠実さ故やし、な?》
「あい」
コレを誠実さと受け取ってくれるのは有り難いが、この言葉だけを切り取られたら死ねるな。
紫苑さんも驚いていたけど、僕も驚いた。
蜜仍君が、あんなにも精神的に追い詰められるなんて。
「ハーレムが真近に有る弊害でしょうか」
《んー、寧ろ、好きだからって感じっぽいけどなぁ》
「ショナさぁ、あの従者と同じ事が有ったらどうよ、付き合う前に」
「あぁ、はい」
「多分それでしょ、蜜仍のは」
『俺らも悩んだからな。汚れてるって思われて、果ては無関心になられるのが怖かった』
《私も、でも、どの状態でもハナを悩ませたと思う。他を知らないから自分で良いと思えてるんだと悩むか、比べられる不安か》
《でしょうね。工芸茶を持って行って差し上げたらどうでしょう、切り替えるのが思春期には難しい場合も有るので》
「はい」
紫苑様に抱っこされたまま、ショナさんから工芸茶を頂いた。
青くて白い花の浮かぶお茶、ほんのりマスカットの匂いがする。
「このタオルは蜜仍君が出したの?」
《私が出しました》
「ソラさん、有り難う御座います」
「お茶は、蜜仍君の口に合いますかね?」
「はい、僕はこの石鹸が欲しいです」
「ハーレムが真近に有る弊害かね」
「違うみたいですよ、好きだから、かと」
「はい」
「話変えるわ。それはエルダーフラワー入り、マスカットっぽいよね」
「シロップも有りますよ」
「かき氷に掛けて食べたらどうなんでしょう?」
「マスカットのかき氷とかもう夢よね」
「良いですね、そろそろかき氷機を買いましょうか」
「ふあふあもガリガリも選べない」
「両方出来るのを買いましょうか」
「人数が居るんですし、2種類買っちゃいましょうよ」
「だね、そうしよう」
早く大人になりたいけど、今でも僕をちゃんと好きみたいだから。
まだ、周りと同じ様に成長しようと思う。
一服出来無いのは、ストレス溜まるなコレ。
もう、食い気に走ろう。
久し振りに皆で回転寿司へ。
ただ今回は金沢で。
やっぱり大人数は難しいよな、お腹がいっぱいになった人は家に帰って貰い、2軒目は千葉へ。
ちょっと並んで入ったけれど、まぁカオス。
注文ラッシュが凄くて、隣の親子連れのお父さんが慌てて注文を噛むんだもの、吹きそうになったわ。
「紫苑さん大丈夫ですか?」
「うん、暫く幸せでいられるわ」
「妬ましいなぁー」
ネタも良いし無限に食えそうなので、3軒目は函館。
貝、美味いな。
そうして遠野の一軒家へ。
死屍累々、だよな、アレクは時差無視して呼び出したし。
エナさんは毎回お昼寝する子だし。
「蜜仍君、ポンポコリンだねぇ」
「紫苑様でもあんまり触らないで下さい、僕、思春期なんですから」
「あら失礼、頭なら良いか」
「ダメです」
何か寂しいなぁ。
「私もダメですよ、性別」
「ミーシャに断られた」
「僕も、ちょっと」
もう、諦めて寝る事にした。
紫苑さんがオヤツの時間には起きたので、マティアスと蜜仍君も連れ、かき氷機を一緒に買いに行く事に。
そうして帰りには喫茶店でパフェを食べ、家に帰ってからはパスタ作り。
お夕飯に様々なパスタを食べ比べ、そして紫苑さんのまま、ミーシャさんと浮島へ。




