オカシなお菓子祭。 ―魔法族による、歳末に皆で作るお菓子作り―
「なろうラジオ大賞3」の『お菓子』部門です。
それでは、どうぞ。
「よし、これで今年のお菓子は出来上がり。あとは、あれを……」
チーチャルはそう呟いた。
此処は、現世とは違う魔法族達が集う世界『ヴァーナル・シティ』。
チーチャルは、若い魔法族である。
毎年、年末になると『歳末お菓子祭』というお祭りがある。
1年お世話になった人と、『ヴァーナル・シティ』の創造者であるネシア・マジェンラー様に贈るのだ。
「チーチャルちゃん、お邪魔するわよぉ。」
この声は、隣に住むリチェさんだ。
「はい、これ。」
渡したのは、『マリエローデ』と言う甘味料。
最後の仕上げに使う物だ。
「リチェさん、毎年……すいません。」
マリエローデは、魔法で作るのだが……何度作っても失敗ばかり。
その為、リチェさんに頼んでいるのだ。
まぁ、いずれ私も作れないといけないけれど。
「いいのよ、いいのよぉ。お互い様でしょう。」
リチェさんは、私の憧れだ。
若い頃は、『勇敢な魔法族の一角』と呼ばれていた。
現在は、若い世代の育成に精を出している。
「……あら、今年はヤーチカなのね。それも、随分上出来じゃない!」
ヤーチカは、 (この世界では) 大きなケーキだ。
過程を間違えると崩れるという、なかなか厄介なケーキだ。
「それ作れるなら、マリエローデも作れると思うわよ。」
「あはは……」
普通に作ってたら、出来ると思うんだけどな。
それに、魔法の方はまだまだだし。
「……じゃあ、またあとでねぇ。」
リチェさんは、家を出た。
その日の夜。
街の中心部である、ヴァーナル時計台の公園には大勢の魔法族が集まっている。
ネシア・マジェンラー像に、お菓子をお供えする。
それから、皆にお菓子を配る。
「ヤーチカ、やっぱり美味しいわねぇ。」
リチェさんがそう言った。
「ありがとうございます。」
今年一年、ありがとうを込めるお菓子。
作るの、本当に楽しい。
来年は、今年以上に魔法の鍛練が出来ますように。
読んで頂き、ありがとうございました。