表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女の娘ユーニス  作者: 二月映磨
5/6

第2章〈都〉2




「ねぇ、ここはどういうことなの? 」

 と、ユーニスは、何度目かになる質問を、隣に座るフアナシィーに訪ねた。

 すると、フアナシィーは、優雅な手付きで、すらすらと帳面に意味を書いてくれる。

「なるほど……、ありがとう」

 ユーニスが感心してお礼を言うと、フアナシィーは、軽く会釈をして、崩れた横髪を耳にかけた。その仕草は優雅で、ユーニスはますます、フアナシィーに傾倒していく気持ちを感じた。

 ユミトと遊び回って、勉強など全くしなかったユーニスとは違い、フアナシィーは、教官のどんな質問にもすらすら答えた。さらには、ユーニスの疑問に答えるときも、嫌がる素振りなく丁寧だった。完璧な王太子妃候補、いや、明日にも王太子妃に選ばれてもおかしくない。

「フアナが一番よ」

 ユーニスは、しっかりフアナシィーの信奉者になっていた。

「そんなことないわ」

 休憩の時間、フアナシィーとお茶を飲みながら、話せる仲にまでなったのは、ユーニスの押しの強さからである。

「これから苦手なダンスの時間だもの」

「わたしだって、苦手よ」

 ユーニスが胸を張って言う。ちなみに、ダンスどころか、その他諸々もからきしである。

「あーあ、フアナにあえたのはよかったけど、わたしには向いてないわ、王太子妃なんて」

 ユーニスが、ため息混じりに言うと、ふふふ、とフアナシィーは笑みをもらした。

「フアナはどうなの? 王太子妃になりたいの? ううん、フアナこそ王太子妃になれるわよね」

「……そんなこと、わからないわ。あくまでも、選ばれるのは王太子殿下。勿論、選ばれることを願ってはいるけれど」

 フアナシィーは、そこで言葉を区切って、表情を引き締めた。

「見初めるのは、王太子殿下。いくら、勉学に励んだとしても、女性として魅力がないと……」

「どういうこと? 」

 ユーニスは、話の意図が分からず首を傾げたが、フアナシィーは、ますます硬い顔つきになった。

「わたくしは、まだ十四になったばかり。他の候補者の方より、どうしても幼いわ。殿下に、この身体つきで相手にしてもらえると思う? 」

「えっ? 身体つき? 」

 ユーニスは、パチパチと目を瞬かせた。そんなユーニスを、フアナシィーは眉根を寄せ、呆れた顔で見つめた。

「あなた、婚礼の意味はわかって? 初夜に何するか知っているの? 房中術の心得は? 」

「ショヤ? ボウチュウジュツ? 」

 ユーニスは、難しいことを言われた、と、目を白黒させる。

「……あなた、何をしにここへ来たの? 」

 ますます表情を硬くするフアナシィーに、ユーニスは、場違いな笑顔を向けた。

「友達を作りに、よ。フアナがそうなって欲しいの」

 ユーニスは、そう言って、フアナシィーの両手をいきなり握った。

「わたし、ユミトに、もう会いに来るなって言われたの。ひどいのよ。だから、ユミトを見返してやりたくて」

 フアナシィーは、握られた手をやんわりとほどき、にっこりと笑ってみせた。

「ユミトって、どなた? 男の方? 」

「ユミトは、男の子よ。わたしよりひとつ上。森に、オトマルと一緒に住んでいるの。わたしたち、よく一緒に遊んだのよ。それなのに、オトマルが、わたしたちはもう大きくなったから、一緒に遊んではいけないと言うの。最初は、ユミトも、そんなの聞かなかったのに、もうわたしに会いに来るなって……」

 話しているうちに、ユーニスは涙ぐんでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ