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【1】ドラゴンナイト『暗雲』  作者: 生丸八光
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4話トロルの海賊

ザンキとオルファが向かっているパサの町とは、(ふね)での交易の中継地として利用されている港町で、いろんな人が行き交い、(なか)には海賊までもが水や食料の補給に立ち寄っていた。


町には酒場や宿泊所が多く、船乗り達が入れ替わり立ち替わり、にぎわいを見せていてトロルの宿(やど)でも一階の酒場で昼夜を問わず大勢の人が酒を酌み()わしている。

酒場の壁に沿って階段と廊下があり、吹き抜けの2階に宿泊の部屋があった。


階段を上った廊下に、1人の青年が椅子に座り見張りをしている。この青年は、20歳でレオンと言い、ナルル王国のお供の1人であった。


2階の部屋は全てナルル王国が貸し切っていて、レオンは怪しい人を近付けない様に見張ってはいるが、(うで)っぷしには、まるで自信がなく誰も近付かない様に願っていた・・・


部屋のドアが開き、1人の老人が顔を出す!


執事のメルボさんだ。長年姫に仕えて来て、近頃は腰や膝が痛いと言うのが口癖で、今回、姫をドランゴンに送るのを最後に隠居を考えている。


メルボさんは、3日前に姫の命が狙われている知らせを聞いてからオロオロ落ち着きがなく、部屋を出ると

「レオン!変わった事はないな!」と言い『大丈夫』と頷くと「ドランゴンからの助っ人が来るまでは、お前だけが頼りじゃからな頼むぞ!レオン」

と言って、姫の部屋をノックする。


中にいる侍女が「姫様はご無事です」と答えると、自分の部屋に戻る。と言う一連の動作が2時間毎に行われていた・・


レオンは、この宿に来た頃は胃が痛い思いで酒場を見張っていたが、トラブルもなく3日が過ぎ、気が緩んだのか徹夜の疲れが出たのか、ついウトウトと(ねむ)ってしまった・・・




顔に冷たい物が当たった感触で、ハッと目を覚ます!


大柄の男が、レオンの頬にペタペタとナイフを当て


「おや!やっと、目を覚ましたか!見張りが居眠りするとは、いただけねぇ・・お仕置きしねぇとなっ!」

と言った・・・


レオンは、どんな状況なのか辺りを見渡すと2階に()たはずなのに、1階の酒場の真ん中で椅子に縛られている。


酒場にあった椅子やテーブルは何処かにやられ、(さけ)を飲んでいた連中に取り囲まれていた!


「ここに居る連中は、みんな海賊よぉ!お前が2.3日前から、なぜ上で見張りをしているのか調べたら、お姫さんが泊まってるって分かってな!スキを狙ってた訳よぉ!」


とナイフを目の前に突き付けた!


「お頭!この部屋ですぜっ!女の声がしやす!」


海賊の仲間が2階から叫んだ!


「よぉーーし!ここに連れて来い!」


姫と侍女、別の部屋に居たメルボさんも、レオンの横に並んで縛られ、その周りで酒瓶を手にワイワイ海賊(ども)が盛り上がっている・・・


レオンは自分が寝てしまったせいで、とんでもない事になってしまった! 見張っていたつもりが見張られていたとは、今となってはどうしようもない・・唯一、(わず)かに希望があるとすれば、ドランゴンからの助っ人が来てくれる事だが・・・


この状況が好転するとは思えなかった。


海賊の(かしら)が姫に近付き

「なかなかの美人だ! こいつは高く売れるぞ!」

と上機嫌で呟き

「いや、まてよ!身代金をたんまり戴くか!それともオレのモノにしちまうか・・」

そう言いながら、姫の髪の毛をすくい上げた!


「姫に触れるでない!」


メルボさんが怒鳴った!

「金が欲しいなら、お前達が満足できる金額を用意するから、姫をぶじっ・・」


海賊の頭がメルボさんの話を(さえぎ)ったと言うより、メルボさんを殺してしまった。まだ、メルボさんが話をしている途中なのにナイフで首を切り落としてしまったのだ!


首が床に転がり、それを見た姫はショックで気を(うしな)い侍女は「ワァーーッ!」と泣き出す!


その様子に、周りに居る海賊は大喜び!床に落ちたメルボさんの首を蹴飛ばしたり、投げ付けたり、(ゆか)を血だらけにしてハシャイでいる。


レオンは、海賊とは何と野蛮で残忍な連中なんだ!こんな恐ろしい連中がいる中で自分が寝てしまった(こと)を悔やんだ。


メルボさんの次は、自分の首が切られるんだと震えて来る。


「お~い!サルツーをやろうぜ!」

海賊の1人が叫ぶ!

「お頭!首をもう1つたのんまーす!」


レオンは、サルツーとは何なのか、どんな事をするのか分からなかったが、お頭が目の前に来て髪の毛を鷲掴みにし、ナイフを首に突き付ける!


「お前も仲間に入れてやる! 一緒にサルツーをして楽しもうぜ!」


・・・どうやら、首から上だけが仲間に入れられるらしい・・・


レオンはギュっと目を閉じ、死ぬのを覚悟した・・・ナイフの先が首に当たった瞬間!レオンの体がビクッと痙攣し「ハッ」と目を開く・・・


目の前に、酒場で飲んでいる連中を見下ろしているのが見える・・・海賊の頭は消え、自分が2階の廊下の椅子に座って居る状況に気がつくと、ゆっくり(しん)呼吸をして


「夢だったのか・・・」

と胸を撫で下ろした・・・


部屋の戸が開き、メルボさんが出て来て一連の行動をとり部屋に戻って行くのを見て、レオンは心からホッとし


『もう!眠ったりするもんか!』


と、立って見張りをする事にした・・・








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