23話仕業
男が睨み付ける中で、サラは未来のカードを捲り始める・・・1枚目に殺意のカード・・・サラに緊張が走った・・・2枚目を捲ると無一文の男・・3枚目が機会を待つだった・・・不安を感じて男を見るサラ・・・
「俺の未来はどうだ!」
恐る恐る話し出す・・・
「・・あなたは、お金がないのにお酒を飲んでますね・・・そして、誰かを殺す機会を伺ってるんじゃないですか?」
「はぁ!?何言ってんだ!そんなわけねぇだろ!」
声を荒げたかと思ったら
「その占いはダメだな!全然当たらねぇし、つまんねぇ!ったく・・・もう出てけ!失せな!」
店主もサラに行くように目配せし、サラは頭を下げ店を出た・・・
店主が言ってた橋を渡り、牧場を目指し走り出すと後ろから『ガシャーン!』硝子の割れる音が響き、立ち止まって振り返ったが
『私が戻ってもしょうがない!今は急いで、やるべき事がある!』
と再び走り出す・・・
牧場に来たサラは、明かりの付いている小屋の戸をノックした・・・中年のオバサンが顔を出し・・
「何だい!こんな夜更けに・・」
「すみません。馬を売って戴けると聞いて来ました・・・」
「馬が欲しいって・・あんた!金持ってんのかい!子供に払える金額じゃないよ!」
不機嫌な顔のオバサンにサラは、おばばから貰った袋を取り出し、金貨を掴んで見せた。
「金貨かい!」
オバサンは目を輝かせ、慌てて旦那を呼びに行くと馬小屋へと案内する・・・
小屋の中には、6頭の馬が左右に分けられていて、オバサンは笑顔で
「この馬はもう歳だから金貨1枚だね・・この馬は若いが足が遅くてねぇ・・だから、これも1枚だ」
説明する中、サラの目を引く馬が・・・
「それはここで一番いい馬だよ!扱い易くスタミナもあってよく走るから金貨10枚だね!」
・・・金貨10枚・・先の事を考えると思い切れないサラ・・・その隣の馬に目を向ける・・・見た目はそっくり・・
「この馬はいくらですか?」
「その馬は金貨3枚だね!スタミナもあって速いけど、気性が荒くてね。振り落とそうとしたり、逃げ出したりするから、お薦めは出来ないよ・・」
「この馬にします!」
サラは馬の扱いには自信があり、少々気性が荒くても乗りこなせると思った。
「・・そうかい・・まぁ・あんたが気に入ったって言うのならいいけどさぁ・・」
オバサンは、旦那に鞍を着けるように言うと
「準備が出来るまで、家でお茶でも飲んで行きな!アップルパイもあるよ!」
サラは、お茶とパイを頂く事にした・・・
テーブルの上に金貨を3枚置いて、お茶を口にするサラ・・オバサンはその様子をじっと見つめ
「・・馬に乗って何処まで行くんだい?」
「ドランゴン王国です」
「へぇ~!そんなに遠くまで。1人でかい?」
サラが頷くとオバサンは
「近頃は物騒だからね・・・気を付けないと・・・どの道を通って行くんだい?」
「橋を渡って西に行くつもりですけど・・・」
サラには、西にドランゴン王国があるとしか考えが無かった・・・
「ドランゴン王国なら、ここから北に向かって港から船に乗り、サルタン共和国から陸路で西に向かった方が早く行けるよ!」
「そうなんですか!でも、橋を渡った所にある酒場に、ちょっと用がありまして・・・」
「へぇーそうかい!まぁ、ゆっくり食べてくんな!私は馬の様子を見てくるから」
オバサンは、そう言うと馬小屋に行き、サラがパイを食べ終わる頃に馬を引いて戻って来た・・・
サラはオバサンにお礼を言うと、馬に股がる。
「気を付けて行くんだよ!」
オバサンの言葉に軽く会釈すると、勢いよく馬を走らせた!
サラが走ると、オバサンはあたふた焦り出す!橋の方へ行くと思っていたのに北に向かったからだ。
「しまった!」
慌てて橋に向かって走り出すオバサン・・・
・・息を切らせて橋にたどり着くと
「あんた!しくじったよ!あの小娘!北に向かって行っちまった・・・」
木影から、覆面を被った旦那がナイフを手に姿を現す。
「本当かよ!ちっきしょお・・・」
この夫婦は、サラの金を奪うつもりでいた。小娘から金を奪うのなんて簡単な話。行く道を聞き出し、旦那がその先で待ち構えていたが、北に向かい当てが外れてしまったのだ・・・
「どうするよ・・・」
旦那が、ガッカリするとオバサンは
「どうするもこうするもないよ!あんたが追い掛けて金を奪うんだよ!」
「しかし・・あの馬には追い付けねぇぞ・・・」
「大丈夫さっ!行き先は分かってんだ!慌てる事はないよ・・それより、あの小娘・・・何故、酒場に用があるなんて嘘を付いたんだろう・・・」
そう言うとオバサンは、酒場に向かって歩き出す。酒場のドアを開けると客が1人倒れていた!
「ん?何・・・」
と奥に目をやると、店主も倒れて死んでいる!
「あんた!大変だよ!あんた!」
オバサンの大声に中に入って来た旦那は
「どうなってんだ!2人とも刺されて死んでんじゃねぇか!」
「あの小娘が殺ったんだよ!2人を殺して金を奪ったに違いない!飛んでもない小娘だよ!」
オバサンが、サラの仕業だと決め付けて憲兵に報告すると、サラは、お尋ね者になってしまった・・・




