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【1】ドラゴンナイト『暗雲』  作者: 生丸八光


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18話黄昏

再会を喜んでいた所に、ザンキが護衛はここまでだと言い、皆が戸惑っているとオルファは

「まだ!城に着いてねぇじゃねぇか!」

と言ったが、ザンキは

「ワシらの仕事は、ドランゴンまで送る事じゃ!ここはもうドランゴンの領地で騎兵隊も護衛に付いておる。ここまでじゃ!」

と言った・・・


「お2人のおかげで無事に来れたんですから、一緒に城まで参りましょう!」

姫がそう言いオルファも

「そうだぜ!王子の顔も見てぇしなっ!」


姫の結婚相手を見たがるオルファにザンキは

「お前が城まで一緒に行きたいなら、ワシは止めんが自分の事をよく見てみるんじゃ。オルファ!」


オルファは自分をよーく見たが、ザンキの言っている意味が分からなかった・・・


「何?どう言う事?」


「お前の様な薄汚い男がノコノコと(しろ)まで付いて行ったら、どうなると思う!」

ザンキは、オルファを睨み付け

「ナルルの姫が汚い男を連れて来たぞ!ナルルの姫と一緒にいる薄汚い男は何者だ!あの汚い男が王子に会いたいとは、どういう事だ!あの汚い無礼者はいったい「あーっ!分かった!分かった!」」


オルファは話を止めると、ザンキを睨み返して

「てめぇの方が汚ねぇのに!よく人の事が言えるよなぁーっ!」


と言って、大きく鼻から息を吐くと

「ここで、さよならだ!」

と言った・・・


姫は「気にせず一緒に参りましょう」と誘ったが、オルファは「いかねぇ!」と断る。


メルボさんは、ザンキとオルファに礼を述べると姫をさっさと馬車へと連れて行き、侍女とレオンも礼を()べ馬車に乗り込む。


夕陽で赤く染まる中を馬車が出発し、オルファは、遠ざかって行く馬車を寂しそうに眺めていた・・・


馬車が見えなくなっても遠くを見送っているオルファに、ザンキもかつて同じ思いをした事を思い出していた・・・




黄昏の中、2人ポツンと佇んでいたが、やがてオルファは鼻から一息吐きザンキを見た・・・


ザンキの姿を眺めてから自分の姿を見て、もう一度溜め息を付く・・それを見ていたザンキ


「なんじゃい!今の溜め息は?」


「何でもねぇよっ!」



辺りが暗くなり始めると、ザンキが

「そろそろ、ワシらも行くとするかのぅ・・・」

と言って歩き出す・・・


「何処へ行く気だよ!」

オルファが後に続くとザンキは

「ドランゴンの城じゃよ!」

と言った・・・


「はぁ?何しに行く気だぁ!」

オルファは足を止める!

「仕事の報酬を貰うために決まっとるじゃろ!」


「あっそうだ!忘れてた!じゃあ一緒に行けばよかったんじゃねぇの?姫と顔を合わせたらどうすんだよ!気まずいだろ!」


「なら、お前は来なくてもいいぞ!金貨は、ワシがまるごと戴くからのぉ!」

先へ足を進めるザンキ・・・


「はぁ?何言ってんだ!じじぃ!金貨は全部オレの(もん)だろっ!オレ1人で姫を守ったんだぞ!てめぇは何もしてねぇ!」


怒りながら追い掛けると、ザンキは

「そんな事はない!ワシだってちゃんと仕事しとるぞ!フンガリ族のドロックの首をはねたのは、このワシじゃ!」


「はぁ?てめぇ・・何考えてんだぁ!てめぇには絶対に取り(ぶん)をやらねぇ!」


2人は(たが)いにけなし合い、取り分で揉めながら城へと向かって行った・・・




辺りはすっかり暗くなり、城の影が大きくそびえ()つのが町の何処からでも目にすることができる。


高い城壁が城を囲み、正面に大きな門があり、小さな門が各所に設けられていて、その1つにザンキとオルファが近付いて行く・・


門には、2人の門番が槍を手に立っていて、1人は35歳ガッチリした体で、門番一筋15年のベテラン。もう1人は、まだ若く新米の門番であった。


ザンキがベテランの門番に近付いて行くと・・


『変なじじぃが近付いて来るぞ!』

と槍を突き立て身構えた・・・


「ワシじゃ!門を開けてくれ!」

ザンキは、門番に言ったが

「汚ねぇじじぃめ!あっち行けっ!」

槍を突き出し、追い払おうとする。


「ワシじゃ!ザンキじゃ。ここの元将軍じゃぞ!」


「はぁ?元将軍だとぉ・・・てめぇみたいなチビでハゲた汚ねぇじじぃが、寝ぼけた事言ってんじゃねぇ!」


門番の言葉に、ザンキの後ろにいたオルファが

「ククククッ・・チビでハゲた汚ねぇじじぃだってさっ!」

大喜びしていた・・・


ザンキは腕を組みながら顔をしかめて

「お前じゃ話にならんのぉ!」

と言い、もう1人の門番に

「おい!もっと、上の者を連れて来てくれんか!」

と言ったが、ベテランの門番は

「そんな必要ないぞ!オレ達門番は、人を通さないのが仕事だ!許可証のない者は追い払う!覚えとけ!」

と言った。するとザンキが


「許可証ならあるぞい!」


と言って、パンツの中に手を突っ込み、股間をモゾモゾしてメダルを取り出す!


「ほれ、見てみろ!ロメロ金章じゃ!金じゃぞ、()って見ぃ!」


門番に差し出す!


「じっじじぃ~てめぇ!股間から出した(もの)を人に渡すんじゃねぇ!」

と言い、ロメロ金章をチラッと見た。


「・・タメだな!これじゃ(はい)れねぇ・・・オレは、ここで15年門番をやってんだ!こんな物は見た事もねぇし通す訳にはいかねぇ!さっさと帰りな!」


すると、ザンキの目付きが『カッ』と一気に厳しくなり!

「これは、ロメロ金章じゃぞ!」

大声で怒鳴り、金章を門番の目の前に突き付けた!


「これを持つ者は、いつでも自由に城に出入りし王に会う事が出来ると国王が直々に認め(さず)けた物だ!それを認めぬとは、先人の功績にドロを塗り、王に(そむ)くつもりかぁ!」


ザンキの勢いに門番がひるむ・・・


「オ・・オレには分からねぇし、判断出来ねぇ・・」

と言い、新米の門番に門番長を呼びに行かせた・・



呼ばれた門番長が、冷や汗をかき飛び込んで来た!ザンキに平謝りで頭を下げるのを見て、ベテランの門番が固まる・・・



「門番の教育がなっとらんのぉ!」


ザンキが固まっている門番の前を睨み付けて通りると、渾身の力を込めて直立の姿勢をとる!続いて、オルファが目の前に来て立ち止まった。

「おい!お前」

と声を掛けると真っ直ぐ前を見たまま直立し

「何でありますか!」

大声で(こた)える!オルファは顔を近付け


「お前、王子を見た事あるか!」


門番は大声で「はい!ございます」と応えた。


「どんな奴だ!」

「王子様は、優しくて礼儀正しいお方であります」


オルファは門番を睨み付け「チッ」と舌打ちすると

「門番の教育がなっとらんのぉ!」

と言って、中に入って行った・・・


「すぐ王様の元へ参りますか?」


門番長がザンキに尋ねると

「いや、まずフロじゃな!それと新しい服を2着じゃ!」


ザンキとオルファは風呂場へと向かって行った・・・
















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