17話再会
晴れ渡る空の下、オルファは姫を背中に喜びを感じていた・・・
きれいな景色や変わった生き物に、姫が喜んだり驚いたりするのが楽しく、姫の笑顔がオルファを心地よくさせていた。
侍女も、姫が喜びそうな事がないか探し歩く・・・
「あっ!姫様、あの花はナルディアではないですか?」
侍女が遠くに見える青い花を指差した。
「本当!ナルディアだわ!」
姫が嬉しそうに応える。
「よぉーーし!オレが取って来てやる!」
オルファが走り出そうとすると、姫が
「あっオルファ様!いいんです」
姫はオルファを止め
「あの花は、ナルルで多く見られる花なんです・・遠く離れたこの地でも、同じ様に咲いているんですね・・・」
姫は、ナルディアの花から故郷に思いをはせると
「オルファ様の故郷はどちらです?」
「ん?故郷?別にそんなもんねぇけど・・」
オルファが答えると、侍女が
「ご自分の生まれた国です。知らないんですか?」
「知らねぇよ!オレは、生まれて直ぐに捨てられちまったらしく、死にそうになってたのをじじいが拾って育てたんだ!」
「そ・そうなんですか・・・」
侍女は驚き、悲しそうに応え、姫もオルファの境遇に同情する。さっきまで、楽しく歩いていた雰囲気が沈んで静かになるとオルファは
「でもなっ!それは、じじいが勝手に言っている事で、オレは信じてねぇんだ!」
「どう言う事です?」
侍女が尋ねると、オルファは声をひそめて・・・
『オレは・・じじいに誘拐されたと思ってんだ!』
「ゆっ誘拐!」
姫は、思いがけない言葉に思わず口に出し、侍女は
「なぜ、ザンキ様がオルファ様を誘拐するんですか?」
「ん?それはだな・・・あれだな・・オレに老後の面倒を見させるためだな!」
「老後・・・」
姫は、また意表を付く言葉に口に出る。侍女は
「・・で、オルファ様はザンキ様の老後のお世話をなさるんですか?」
と尋ねた。
「まっ!しゃあねぇだろうなっ!オレが面倒見ねぇと・・・」
そう応えると、姫は
「オルファ様は優しいんですね!ご自分を誘拐した人の老後のお世話をなさるなんて」
と言うと、オルファは褒められた気になり
「へへへーーーっ!」
と喜んでいた・・・
昼になるとザンキが川で魚を捕り、それを焼いて食べ、お茶を飲みながらレオンは
「あと、どのくらい掛かります?」
ザンキに尋ねると
「あと少しじゃな!日暮れ前には着くじゃろう」
レオンは、あと一踏ん張りだと気合を入れる。
姫は、足の痛みも無くなり、もう自分で歩けると言ったが、侍女は、無理せずオルファ様におぶってもらいましょうと言い、オルファにお願いする。
「へへーーっ!オレの仕事は、姫を無事送り届ける事だからよぉ!まかせときな!」
姫はオルファにおぶさり、一行は再び歩き始める。
しばらく歩くと、オルファが山の中にいる小鹿を見つけた!姫に知らせようとすると、侍女が人差し指を口にあて
「しーっ・・・」
小声で話す。
「姫様が眠っておいでです・・・どうか起こさないで下さい・・・」
オルファと侍女は、姫の眠りを妨げない様、静かに山を下りて行く・・・
日暮れが近付きレオンの足取りが軽くなる。山の中を歩いていた時は口数も少なく、ただ黙々と歩いていたが、麓が近付くに連れ、気持ちも軽くなって来た!
「ここを下りれば、もうドランゴンの領地ですね」
「そうじゃ!」
ザンキが答えるとレオンは顔を上げ、初めて景色を見渡す・・・
「ふぅーーっ・・やっと、着きますか・・・あっ!あれは、メルボさんの乗っている馬車では?」
丁度、メルボさんも合流地点に向かっているのが見えた。
「ん!何だ?メルボさんの前と後ろにいるの人達は?」
レオンが尋ねると、ザンキは
「あれはドランゴンの騎兵隊じゃな!恐らく、領地に入る所で待っていて、合流したんじゃろう」
レオンはヘトヘトに疲れていたが、みんなが無事に着いた嬉しさと喜びで、力を振り絞り、山を駆け下りて行く。
侍女もメルボさんが無事に着いた事を知って、姫を起こす。
「姫様!起きて下さい・・」
侍女の声に、姫は・・・
「はっ!すみませんオルファ様・・・眠ってしまいました・・・」
「なぁーに、気にすんなって!」
とオルファが応えると侍女は
「姫様、もうじき着きますよ!メルボさんが来ているのが見えますか?」
姫の虚ろな目がメルボさんを見てパチッと開いた!
「見えます!じぃも無事なのね、よかったぁ!」
レオンが大息を付き、ヘトヘトになりながら笑顔でメルボさんの元へ駆け寄り
「はぁ!はぁ!メルボさん!無事でよかったです」
「おぉ!レオン!無事じゃったか!」
再会を喜ぶと、姫の無事を自分の目で確かめ様と姫の姿を探す・・オルファの背中に乗り、山から下りてくるのを見て!
「どうしたぁ!」
と大声を上げ
「姫に何かあったのか!なぜ、あの者の背に乗っておるのだ!」
メルボさんが驚き慌て出すと、レオンが
「姫は大丈夫ですよ!つまずいて、少し足を捻っただけです」
と言ったが、メルボさんは
「レオン!ワシが言ったであろう!あの若者を姫に近付けてはならんと!」
怒り始めるメルボさんを、レオンは真っ直ぐ見つめ
「オルファさんは優しい人ですよ!」
と言い
「言葉使いが乱暴なので自分勝手に見えますが、人が嫌がる事をする人じゃないです」
そう言って、姫を背負うオルファに目をやり
「僕はオルファさんを信じてます。オルファさんは信用できる人です!」
と言った。
レオンの言葉に、メルボさんは気持ちを落ち着かせたが、心の奥では納得していない様子だった・・・
オルファが平地に足を付けると侍女が
「オルファ様!ありがとうございました。もう姫様を降ろして下さって結構です」
姫はオルファに礼を述べると、自分の足で歩き出す。
一行は再び合流し、姫とメルボさんは再会を喜び、侍女もホッとしていた。
ザンキも皆が無事に着いた事を喜ぶと
「では、ワシらはここまでじゃな!」
「えっ?」
ザンキの一言に、みんなが一斉に驚いた・・・