表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1】ドラゴンナイト『暗雲』  作者: 生丸八光
14/33

13話連撃!

オルファは苛立(いらだ)っていた。


日々、剣術の稽古を積み重ね、剣の腕にはかなりの自信がある。なのに、防戦一方で攻撃の手が出せない・・・


「ちっきしょおーっ!近付けねぇ・・」


侍女は、落ちたぬいぐるみの方を見て、座り込み、涙目で

「くまちゃん・・」


姫は侍女の隣に寄り添い、(なぐさ)める様に抱き寄せた。


レオンは、オルファと侍女を心配してキョロキョロし、ザンキは魔剣の男をじっと見つめる・・


魔剣の男は、自分の持つ剣の力を改めて実感して、魔剣を見つめると、その視線の先に居るオルファに視線を移した。


オルファが片膝を付き、睨み付けている!


男はオルファを仕留めようと、何度も魔剣を振り下ろす!

オルファは素早く左右に動き()わす!

地べたを()いずり回転し、砂や小石を巻き上げ()わし続け、少しずつだが間合いを詰めて行った!


オルファには、剣が届く距離にさえ近付ければ、()けない自信があったし、そこに勝機があると信じて間合いを詰める!


魔剣の男はオルファが近付くに連れ、より激しさを増し剣を振り回す!

幾重もの風の刃が、オルファ目掛け襲い掛かった!


風の刃をギリギリでかわす目の前に、風の刃が迫って来る!

『かわしきれない・・・』


ここで受け止めれば、また押し戻される!そう感じたオルファは、襲って来た風の刃に向かって切り掛かった!


「ガァシャーーン!」


オルファの踏み込みの効いた一撃が、風の刃とぶつかって打ち消す!


魔剣の男は、風の刃が打ち消され一瞬動揺した!


その(すき)をオルファは見逃さない!

一気に間合いを詰め、男に迫り、自分の剣を魔剣に当てる!


「カツン!」

刃と刃が交わった・・・


それは力強くぶつかった訳でなく、軽く触れる程度であったが、オルファはニヤリと笑い

「とらえたぜ!」


ザンキはそれを見て、思わず「ほぉーっ」と(うな)った。


魔剣の男は剣を動かし、オルファの剣を振り払おうとするがピッタリくっ付いて離れない!


オルファは、男の動きに合わせて魔剣を自由に振れない様に封じ込めていた。


オルファは得意気に微笑み

「今度は、こっちの番だ!覚悟しな!」


魔剣の男に攻撃の隙を与えぬ様、連撃攻撃を繰り出す!


3連撃からの5連撃!


「ガシャ!シャ!シャ!シャッ!ガァシャーン!」


魔剣の男は、オルファの速くて重い攻撃を受け止めた!

「へっ! やるじゃねぇか!」

オルファは男の剣さばきを認めたが

「だが、これからが本番だぜ!」

と言って、再び連撃攻撃を繰り出す!


今までのうっぷんを晴らす()()様に、男の周りを()早く動き、切りつける!


そのスピードは、どんどん速くなり、力も強くなる!


剣と剣が激しくぶつかる音が鳴り響き、70連撃を超えた頃。男の動きが鈍くなってきた・・


「どうしたぁ!手が痺れたかぁ!」

オルファは攻撃の手を緩めず、更に攻め続ける!


男は必死で(こら)えるが耐え切れず。遂に、魔剣は(はじ)き飛ばされてしまった!


魔剣が空高く飛び上がり、地面に突き刺さると男は負けを認めたのか、崩れる様に膝を付いた・・・



ザンキが刺さった魔剣を抜き、男に近付いて行く。


「こんな物!何処から引っ張り出して来た。魔剣を真に使いこなすには魔物にならなければ無理じゃ!このまま使い続ければ、魔物に取り込まれるだけじゃぞ!こいつは、ワシが処分しておく!」


と言って(さや)を取り上げ、魔剣を(おさ)めて持って行き、オルファは男を縛り上げ、意気揚々とみんなの元へと戻って行く・・・


当然、オルファは自分の勝利を喜んでもらえると(おも)っていたが、暗く悲しんでいる雰囲気を感じ取り。

「何だ?まさか、オレに負けて欲しかったのか!」


すると姫が悲しみの中・・・


「違うんです・・・メアリーのくまちゃんが・・」


「くまちゃん?」

オルファはレオンの顔を見た。


「メアリーの大切にしていた熊のぬいぐるみらしいです・・・崖の下に落ちてしまったらしく、悲しんでいるんです」


「はぁ?ぬいぐるみなんか、どうでもいいだろ!」

とオルファが言うと、侍女の目から涙があふれ出た。


姫は侍女を易しく抱き寄せ

「メアリーにとっては、掛け換えのないぬいぐるみなんです・・・」

と言うと、更に話を続ける。

「メアリーは、まだ5歳の時に両親を亡くし城に(はたら)きに入ったんです。その時、唯一持って来たのが熊のぬいぐるみでした。幼い子供が何も分からず不安の中で頑張って来れたのは、くまちゃんが居てくれたからなんです。メアリーにとっては母の形見でもあり、家族も同然なんです・・・」


姫の話にオルファは

「ぬいぐるみが家族って言われてもなぁ・・・」


頭を()きながら崖の方に歩いて行き、下を除き込む・・・



「・・・ちよっと待ってな!」


そう言うと、オルファは崖を飛び降りた!


高さ300mほどある崖を足場を見つけながらポンポン降りて行く・・・


崖の下には、つぶれた鍋やバラバラに砕けた野菜、荷物の残骸が散らばっていて、木の根元に熊のぬいぐるみが、座る様に寄り掛かっていた。


「お前が、くまちゃんだな!」


ぬいぐるみを拾い上げ腰に引っ掛けると、勢い良く崖をよじ登って行き、上まで登ると飛び上がって地面に降り立った!


侍女の目の前にぬいぐるみを出し、腹話術を真似て


「メアリー!僕、オルファに助けてもらったよっ!オルファは凄いよ!強いしカッコよくて天才だ!」

と話し掛け、侍女の手に渡した。


侍女は、涙目のまま笑顔を見せ

「くまちゃん・・無事だったのねっ・・」


くまちゃんを抱きしめると、オルファに向かって

「あなたは命の恩人です!オルファ様・・本当に!ありがとうございました!」

何度も頭を下げた・・・


オルファは少し照れくさそうにしていたが、侍女が元気になって良かったと言い、姫もレオンも喜んでいた・・・


侍女はこの時から、オルファに"(さま)"を付けて()(よう)になり

「あのーっ!オルファ様!」


侍女がオルファに声を掛けた!


「くまちゃん(なん)ですが・・・くまちゃんは、女の子なんですよ!」



「あっそ。」













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ