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第一話 ホラー展開とツンデレは案外マッチする?


 

 急ではあるが、俺はツンデレが好きだ。ギャルゲーで真っ先に攻略するのはツンデレキャラだし、今まで見てきた大抵のアニメもツンデレ推しだ。


 さて、ここで本題だ。俺は現実のツンデレというものを認めていない。そもそも現実でツンデレなんてものを見たためしがなかった。だから認めない。求めない。


 なのに……なのに……!!!


 〇


(さかき)。もう授業、というか学校終わっちゃてるんだけど」


「あ、ごめん」


 放課後の薄暗い教室に、二人の人影があった。机に突っ伏して寝ていたのは榊雄一。私立千嶋高校の1年5組で、身長体重共に平均。どこにでもいそうな男子高校生である。


「まったく、学校を何だと思ってる訳?起こしに来てあげた私の身にもなって欲しいわ」


 そしてこの女子生徒は同じクラスで風紀委員の鈴鹿アヤカ。体型はいい意味でスタイリッシュな感じだ。スカートの下にスパッツを履くというなんとも癖に刺さりそうな格好をしている。ちなみに眼鏡をかけている。この学校のマニアックな連中の風紀を乱している張本人だ。


「榊、今変な事考えてたでしょ」


「いいや、なんにも。っていうか、別にわざわざ俺を起こしに来なくてもよかったのに。門閉まってても飛び越えるし」


 中学の頃から何回か閉校時間まで寝てたことがあるが、いずれも問題なく学校からは脱出できている。そのノウハウを活用すれば高校からも脱出はできるだろう。もちろん完全下校時間までに帰るに越したことはないが。


「私が気遣って起こしてやったんでしょ。少しくらいは感謝しなさいよ」


「あーはいはい。ありがと」


 適当にあしらうと、ますます顔が怒りの表情に変わっていく。


「あんたねぇ!私が心配してあげたのに!この教室、出るって噂だったから!」


「なんだ、心配してくれてたのか」


 ん?ちょっと待てよ。出る?出るって、何が?まさか幽霊とか言わないよな。


「べ、別に心配って、そういう意味じゃないんだから!」


「そんな事より、出るって、何が出るんだよ」


「わからないけど、下校時間を過ぎると教室に閉じ込められるって噂があるの。幽霊の仕業とか警備の人が中に人がいるのを認識できずにカギを閉めたとか、いろんな噂があるの」


 警備の人がカギを閉めたとしても、中から声をかければ気づいてくれるだろうから、警備員の線は無しだと思う。だがもう一つの選択肢は考えたくない。


「鈴鹿。今何時だ」


「ん?今?」


 この教室の時計は壊れていて針が動いていないので、腕時計を付けている鈴鹿に時間を確認させる。


 俺に時間を尋ねられた鈴鹿は腕に付けている腕時計をじっと見て……顔がだんだんと青くなっていった。


「やばい。今5時59分」


 5時59分?!急いで出ないと間に合わない!俺の席は一番窓側の席だ。教室の扉までダッシュすればもちろん10秒もかからないだろう。今は何かを考えている暇はない。急いでここを出よう。


「鈴鹿!急いで教室から出―――」


 キーーン コーーン カーーン コーーン


 鈴鹿の手を引いて教室から出ようとしたその瞬間。完全下校のチャイムが学校に鳴り響いた。窓の外には部活終わりの生徒がちらほらと見え、部活の喧騒とは違う、気の抜けた笑い声などが響いてくる。


 しかし、校舎の中は不気味なほど静かだった。生徒はおろか、教師もいないように思えるくらいに。


「榊。どうしよう」


 鈴鹿はショックで力が抜けているようだった。この状況に鈴鹿を巻き込んでしまったのはどう考えても俺の責任だよな。俺がここで寝ていなければこんなことは起きなかったはずだし。


「鈴鹿、ごめん」


「なんで榊が謝るのよ。別にあんたのせいじゃないわ。私も榊を起こすか10分くらい迷ってたからそのせいでもあるし」


「これからどうする?明日まで待つ?」


 教室に閉じ込められてしまった以上、晩御飯を食べたり風呂に入れないのは仕方がないよな。でももう6月中旬で、ジメジメとした締め切られた空間の中にいて、風呂に入れないのはキツイか。


「うーん……脱出する方法とかないのかな?例えば……窓とか」


 窓……か。でもこの教室は4階にある。飛び降りるのは無理だろう。


 窓際に行き、窓のカギを開けて下を覗く。


「窓からの脱出は無理そうじゃないか?排水管もないし、飛び移れるような木もない」


 窓の外の状況を鈴鹿に知らせると、呆れた表情を見せた。


「じゃあ本当に明日までここで過ごさなきゃダメなの?!信じらんない……」


「そういえば……」


 晩御飯やお風呂を我慢することはできる。一日くらい我慢しても死ぬことはないからな。でもトイレはどうするんだ?教室の中でするわけにもいかないだろうし。


 でも、これ以上懸念を増やして鈴鹿を心配させても意味はないだろう。本人がそのことに気づくまで触れないでおこう。


「そういえば……何?」


「いいやなんでもない。気にしないでくれ。それより―――」


 ジメジメしてるし飲み物でも飲むか、と言おうとした瞬間。教室の雰囲気が一気に重くなった。ジメジメとしていた空気がさらに生暖かくよどんでいて、呼吸をするのも辛くなった。


「何?!急に嫌な予感が」


「まさか、幽霊が出てくるって噂は本当だった……!」


 鈴鹿の身体が少し震えている。こんなあからさまに空気が悪くなったんだ。おびえるのもわかる。


『お前たち……この教室で何をしている』


「ん?今なんかしゃべったか?」


「え?榊君じゃないの?」


「「え?」」


 え?


「おい!鈴鹿!お経を唱えるんだ!」


「は?!お経なんて知らないわよ!榊!塩とか持ってないの?!」


「持ってる訳ねぇだろ!クソ!こういう時どうすればいいんだ」


 こんなことになるんだったら塩もお経も準備するべきだった!というか教室で寝なければよかったんだ!


『お困りのようだねぇ。お二人さん』


 謎の声、声色的に同世代か。しかし少しかすれ声で、この世のものではない。


「早くここから出しなさいよ!こんな事して何が楽しいワケ?!」


『彼女がこんなピーキーで、彼氏君も大変だろうね』


 へっへっへっ、と不気味な笑い声が聞こえてくる。


 しかし、このノリ……なにか覚えがあるような……。幽霊の割にジョークも言えるって、なんか変だよな。


『まぁまぁ。慌てなくてもこの教室からは出してやるよ』


「じゃあ早く出しなさいよ!」


『いいだろう。ただし条件がある』


「条件?」


 なんだろう。私を成仏させろ、とかそんな類の事かな?それとも何かやり残したことをやって欲しいとか?


『手をつなぎながらキスをしろ』


 …………


「「……」」


「「はぁ?!」」


「な、な、なんで榊なんかとキスしなきゃならないのよ!」


「まったくだ!なんでこんな堅物とキスしないといけないんだ!」


 俺が謎の声にそう言った瞬間、重い衝撃が腹部を襲う。鈴鹿に腹パンされた。


「誰が堅物ですって?!」


「ごめんなさい……」


 しかし、この状況をどう打破するか考えなくては。これはいわゆる『S〇Xしないと出られない部屋』と同じだ。


「もういいわ榊。早くキ、キ、キス……して、早くここから出ましょ」


「でも、鈴鹿……お前好きな人がいるって前に言ってたじゃないか。まだ諦めちゃだめだ」


 ちょうど数日前、今日みたいに放課後に教室で二人きりになったことがあった。その時、鈴鹿は同じクラスに好きな人がいることを教えてくれた。そんな話を聞いたうえで好きな相手でもない俺がキスをするなんてできない。


「いいから、気にしないで」


「ダメだ。他の方法を考えよう。必ず抜け穴はあるはず―――」



 「私が好きなの、榊君だから!!!」



「だから、キスしていいって言ってんの……!」


榊雄一……主人公。普通の高校生。ツンデレが大好き。

鈴鹿アヤカ……ヒロイン。ツンデレ、ショート、スパッツ、貧乳、眼鏡。ありとあらゆる性癖が詰め込まれている風紀を乱す風紀委員。

田辺美琴……先輩。風紀委員会会長で変人。

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