黄昏2
「俺が、手塚治虫なら、晩年、家族とのコミュニケーションを優先する」
僕は、兄の、こういう言いぐさが前から気に入らなかった。だから、はっきり言ってやった。
「兄さん、それは漫画の神様である、手塚治虫先生の自由で手塚治虫は、最後まで漫画を描きたかったんだよ」
兄は、大分、酔いが回ったかんじで顔をしかめて、こう返してきた。
「フェルメールも手塚治虫も生前、偉大な功績を納めてきた。彼らは最後の最後まで己が己の信じる道を頑張ることによって死後、それはそれは素晴らしい天国に行けると、頑張っていたのではないか…?と俺は感じるんだよ」
「…だとしてもいいじゃないか!!それの何が悪いの?兄さん!」
「病気や、身体に出る症状は何かのサインでは、ないか…と俺は、ふと思うことがある。
フェルメールは、絵の神様と仰ぐ人もいて、手塚治虫は漫画の神様、
でも本当の神様は、二人に、晩年、
『もう描くのを止めなさい』とメッセージを送っていたのではないか?…ってな。」
僕は、ちょうど、その時、晩御飯を食べ終えて、それらをかたづけながら兄をろくに見ずに言った。
「兄さん、フェルメールの番組でナレーションをちゃんと聞いたよね?フェルメールは描きたかったから晩年も描いていた。手塚治虫先生も然りだよ」
何も言い返されなくて、僕は兄を見ると、兄は、僕をただ見ていて、そして、ニヤッと笑うと、
「お前なら、きっと、そう言ってくれると思ってたよ♪
いや~、でもさ、俺も今頃、誰かステキなヒトと結ばれていて家庭でも持っていたら今、ここにいないし、お前に今夜、こんな話もしなかったと思うんだよ♪メンゴ、メンゴ!!」と、そそくさと自分の部屋に駆けて行ってしまった。