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貴方が面白かったから  作者: ささめ
4/4

泣きそうです

また間が空いてしまいました・・・。次回はフロウ目線に戻ります。



先輩はすごい。欲目なしですごい。


あっ、紹介を忘れてました。自分はシュース。年はハウンド先輩の二つ下。とある国の騎士団の一つ、黒狼隊の隊員をしています。


先輩は入隊たったの三日で全隊員を制圧したという逸話持ちなんですよ。隊長までボコったくせに一番上は面倒だからと言ってしれっと副隊長の座におさまったお方なのです。素晴らしい。


黒狼隊の隊員たちは全員実力主義者で脳みそ筋肉なので、さしたるトラブルもなく先輩は副団長をしていました。自分が転移魔法で飛ばしてしまうまでは。


弁明させていただきますとね、自分も成功するなんて思ってもいなかったんですよ。

あれの発動確率は低すぎて、小数点の下にいくつゼロを重ねても足りないくらいなんですから。


そもそも述式発動する前にすでにメンタルフルボッコですよ?あれを一生に何度唱えることができるでしょう。

自然と述の要とも呼ばれる詠唱を唱える声が死にます。

あれに感情を込めた瞬間、14歳病罹患者扱いされるのは目に見えています。羞恥で人は死ねるのだと悟りました。


という訳で、発動できるなんて考えるほうがおバカです。

ハウンド先輩に術を向けたのは、万が一、億が一にも自分に転移魔法を使ってそれがうまく機能してしまったら、帰ってこられないからです。

自分はあんまり物覚えが良くないので地名が事細かに書き込まれた地図を丸暗記だなんていうハウンド先輩のようなこと、できっこないのですよ。

その点で言えば、息をするように転移できて、各地の言語ぺらぺらで、脅威の記憶能力を持ち、ちょっとやそっとの不測の事態にも危うげなく対応できるハウンド先輩が最適な実験相手でした。


自分、不測の事態は本当にダメなのです。なんだかわくわくしてしまって、色々なことに支障が出てしまうんですよね。

獣人のさがというか、うまく理性がブレーキをかけてくれないのです。


いや、自分の言い訳はもういいんです。とにかく、自分は筋肉がつまっている脳ミソをフルに活用して、十億分の一の確率(転移魔法)で一番被害がでなさそうな方法を選んだのですよ。その結果が、コレです。


「フロウ、今日の夕飯なに?」


国から遠く離れた街の小さな家の台所で、ハウンド先輩は今、寸胴鍋を混ぜつつ何故か、とある女性と揃いのエプロンをつけています。

時間からして、混ぜている鍋の中身は夕食でしょう。スパイスのいい匂いが辺りに漂っています。


それは問題ではないのです(いや、この時点で結構問題なんですが)。ハウンド先輩が笑っているんです、普通に。


「氷の魔術騎士」とまで呼ばれたハウンド先輩の笑顔は、その場にブリザードを吹き荒らさせるのですよ。

正直言って、脅迫のときにしか見たことがないです。なかったんです。


なのに、何ですか、その、今にもお花が咲き乱れそうな笑みは。そこだけ春ですか?淡いピンクのふわふわフェクトまで見えますよ。


「鍋かき混ぜてる時点でわかってるでしょう。カレーよ、カレー。ハウンドが食べたがったからわざわざ香辛料集めたの。労ってちょうだい。値切り大変だったんだから。」


豊満な胸を持つ(何故か視線をそこに向けたら寒気がしたんですけど)金色の目をした女性は、おもむろにハウンド先輩の腕に抱きついた。

喉からひっと小さく悲鳴が漏れました。

この後待ち構えているであろう惨状を思い、咄嗟に目を瞑ります。


終わった!!彼女の人生終わった!!何がヤバイって、ハウンド先輩は極度の人間嫌いで、中でも特別女性が嫌いなんですよ!!


触られるのとか、ダブー中のダブー。

自分は烈火のごとく怒りつつ、背後に猛吹雪を控えている鬼に変化する幻覚を見ました。

いや、鬼は比喩にしろ、背中に背負った猛吹雪(ブリザード)は紛れもなく本物でしょう。

ハウンド先輩怒るとマグマ吹き出す灼熱の地すら極寒へと変えるので。何て言うか、泣きそうです。


何で自分は対して悪いことしてなさそうなお嬢さんが無惨に殺されるシーンに立ち会わねばならないのでしょう。


え?

助ければいいって?

無理です。自分に死ねと言っているのですか?


それにしても、何て運の悪い人なんでしょう。自分がハウンド先輩を飛ばしてしまったばっかりに・・・・・。しばらくの後目を開いて、すでに息絶えているはずの女性を見ました。


・・・・・・お?どうしてハウンド先輩は彼女に抱きつかれて、よりご機嫌になっているのでしょう。

床に血だまりはありません。

女性のほうは、それが当然だと言わんばかりににこにこしています。勿論ご存命です。

何が起きているんでしょうね?自分は今後天変地異が起こるんじゃないかとドキドキしています。

でも、とりあえず女性がお亡くなりにならずにすんでよかったです。


あの、巨乳(ロマン)が失われてしまうのは惜しい、って、ハウンド先輩?!がっつりこっち見ていらっしゃいますね?!お気付きだったんですか?!というか、視線が絶対零度ですよ?!口パクでなんか言ってますね、えっと、なになに?『表出ろ』?()です。自分に死ねと言っているんですか?!絶対諸々ぶっぱなすおつもりですよね!?


どうしてこうなってしまったのでしょう・・・。自分、親不孝なことも、お天道様の下を歩けないようなことも、した覚えがありません。自分は、目下の和やかな夕飯風景に、このすぐ後に待っているであろうお話し合い(尋問)を重ねて意識を飛ばしてました。よく飛びましたよ。大気圏を突っ切って、遥か彼方まで、ね。




ちなみに、先輩はお昼に約束したアイスを前に、ご満悦のようでした。

時系列は、一話→二話→四話→三話です。ぐちゃぐちゃですみません。

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