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婚約破棄系2

計画通りの婚約破棄

作者: ひつじかい

「メリリア・オークルディア!」


 とある夜会の場で、第二王子ルクリカが、突然一人の令嬢の名を怒鳴り上げた。

 驚いたメリリアが言葉を発するより先に、ルクリカが用件を口にする。


「ルイティアーヌ・フェンツへ数々の嫌がらせを行ったその性根、到底我慢出来ぬ。よって、お前との婚約を破棄する!」


 会場は静まり返り、メリリアとルクリカ、そして、彼の背後に幽鬼の様に立つルイティアーヌに視線が集まった。

 そのルイティアーヌは男爵令嬢だが、とても有名だった。悪い意味で。

 令嬢に相応しい礼儀作法も教養も身に着けておらず、社交も下手で息をするように暴言を吐く。

 それで無事でいられたのは、彼女の母方の祖父が重鎮だったからと、余りにも礼儀作法や教養が身に付いていないが為に、知能に問題があると思われていたからだ。

 そんな彼女が最近第二王子に付き纏っている事は、多くの貴族の耳に入っていた。

 当初は相手にしていない様子のルクリカだったが、こういう女が好みなのか、何時しか恋仲に進展したようだった。

 それでも、メリリアとの婚約を破棄したがるだなんて、両親ですら思っていなかった。


「私は、その女を苛めてなどおりませんわ!」


 メリリアは、冤罪をかけられて憤慨した。

 オークルディア公爵も、険しい顔でルクリアとルイティアーヌを睨んでいる。


「黙れ! ルイティアーヌが、そう言ったのだ!」

「私より、その女の言う事を信じるのですか!?」

「当然だろう? 大体、お前がルイティアーヌを『頭が悪い』と言ったのは、私の目の前だったではないか!」

「その女の頭が悪いのは、事実ではありませんか!」

「好い加減にせぬか!」


 醜い言い争いを続けようとする二人を制したのは、ルクリカの父である国王だった。


「ルクリカ! 場を弁えよ!」

「しかし、父上!」


 ルクリカは、愚かにも食い下がろうとする。


「この女は、次期国王たる私の未来の妻に危害を加えたのですよ!」

「恋に溺れた痴れ者が! 誰が其方を次期国王と認めたか!」

「ルイティアーヌが、兄上より私の方が相応しいと言ってくれたのです!」

「やだっ! もう~!」


 ルイティアーヌが、何故か照れたようにルクリカを叩いた。

 己の恋人に王太子の決定権が有るかのような発言に、国王は益々怒りと失望を深くした。


「この様な騒ぎを起こした其方の方が相応しいとは、到底思えぬ。其方の王位継承権は剥奪する! 己の愚かさを理解するまで、自室で謹慎せよ!」

「そ……そんな! 父上!」


 ルクリカは、ガクリと膝を着いた。


「そして、ルイティアーヌ・フェンツ!」

「な、何ですか?」


 ルイティアーヌは、旗色が悪くなった事に青褪めていた。


「ルクリカを堕落させた魔女め! 王都を追放する! 二度と足を踏み入れる事許さん!」

「わ、私は悪くありません! 放して! ……ルクリカ! 何をしているの! 助けなさい!」


 連行されて行くルイティアーヌは、ルクリカに助けを求めた。


「ルイ~!」


 座り込んでいるルクリカは、手を伸ばして叫ぶしか出来なかった。




 こうして、愛し合う恋人達は、権力によって引き裂かれた。






「上手く行った……」


 自室に戻されたルクリカは、安堵の息を吐いた。

 先程の騒動は、オークルディア公爵へのほんの些細な嫌がらせであった。

 メリリアの父親は、ルクリカを玉座に着ける為に、兄である第一王子の暗殺を企んでいたのである。

 上手く行くかは賭けだったが、ルクリカは、望み通りに王位継承権を剥奪される事になった。


 もしかしたら、今後、オークルディア公爵が父と兄を害し、自ら玉座に座ろうとするかもしれないが、これ以上の策は、ルクリカには思い付かなかった。


「やっと終わった~!」


 恋人役に選んだルイティアーヌは、何も知らない。

 恋人面で付き纏って来た彼女は、会話の九割が誰かの悪口(ルクリカとその家族に対するものもあった)だった。

 おまけに、何故か叩いて来る。

 そんな彼女を利用する事に、躊躇いは無かった。


「ふ~!」


 ルクリカは、ベッドに転がって伸びをした。


「久し振りに、ぐっすり眠れそうだ……」


 そうして、直ぐに眠りに落ちた。




 三年後。

 オークルディア公爵は、謀反に失敗して捕えられ、処刑された。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新しい(?)! [気になる点] 国王に進言すれば済む話じゃね? メリリア嬢は父親のとばっちりで一族郎党処刑、 もしくは没落だなぁ。 ルイティアーヌはほっといてもフツーに不敬罪だねぇ。
[良い点]  新着でタイトルが気になってクリックしてみました。目を引くタイトルになっていると思います。 [気になる点]  誰がどの立場なのかがわかりにくいです。  例えば、「ルクリカ」を「第二王子ル…
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