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第二の人生、気の向くままに  作者: けるびん
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第36話 いつから「もう増えない」と錯覚していた?

 謁見も終わり、退場していくところで兵士に呼び止められて、シュトレオンは再び応接室に通された。すると、先に姿を見せたのはバルトフェルド、ジークフリード、そしてヴェイグの三人。そして国王とハリエット宰相、さらにグラハム辺境伯、アリーシャとメルセリカもであった。


「この場は謁見ではないゆえ、気楽にな。まぁ、座るとよい」


 その言葉で全員がソファーに座る。俺の向かいには国王が座る形だ。そして先陣を切るように頭を下げた。


「陛下、先程は身勝手なお願いを聞いていただき、ありがとうございます」


「なに、お主は陞爵だけで済まないほどの実績を上げておる。それに、あやつの驚いた顔を見せてくれたお蔭でわしは満足しておるよ。にしても、これもお主の入れ知恵か? グラハム辺境伯」


「私は大したことなどしておりません。陛下、アリーシャ殿下とメルセリカ嬢までこの場にいらっしゃる理由を彼らにお聞かせしたほうがよろしいかと」


「うむ、そうであったな」


 国王はバルトフェルドらにシュトレオンが二人を救助し、功績からその二人を婚約者として認めるというものであった。これには驚きを隠せずにいた。

 これで俺の婚約者は現状4人いることとなり、序列に関しては第1位にアリーシャ王女(エリクスティア王族)、第2位にリシアンサス皇女(王族の分家、ガストニア皇族)、第3位にメルセリカ(王族の分家、公爵家令嬢)、第4位がフィーナ(辺境伯の孫娘)ということとなる。リシアンサス皇女が第2位なのは、他国ながらもエリクスティア王族の分家であり、現在のガストニア皇族という点からだ。


「なるほど。まぁ、うちのフィーナはその点を承知ですので、私から言うことはありません。無論、向こうもお認めになるでしょう」


「さすがに驚きました。婚約者の件もですが、シュトレオンがあのようなことを言い出すとは……」


「後者の件は例がない訳でもないからのう。王族直系の兄弟が公爵家になる際、験の担ぎとして過去に活躍した家を復活させるのはさして珍しくもないことじゃ」


 過去の戦争などで活躍したり国内で多大な功績を挙げたものの、跡取りが居らずに断絶した貴族の家は結構多い。なので、王に選ばれなかった兄弟が彼らの活躍をゲン担ぎとして家を復活させるという手法は昔から割とよくあることらしい。

 この世界でもそういったジンクスを重んじるという部分があったことに少し驚きを隠せないが、多分初代国王の影響だろう。


「このままいけば、アルジェント家だけでもかなりの勢力になってしまう。故にシュトレオンの言っておったことも間違いではないじゃろうな」


「ええ。既に継承が決まっている長男ジークフリードは第三位辺境侯、次男ヴェイグは伯爵、三男ライディースはセルディオス辺境伯家に婿入り、そしてシュトレオンは最低でも伯爵以上ですから。そう言われてしまうと、何者かが子どもらを誑かす可能性は高いでしょう」


「こちらとしては、面倒事を持ち込んでほしくないと願うばかりですが。だからこそ、シュトレオンは別の家を復活させる手段に出たわけですか。それも、ガストニア皇家の祖であるリクセンベール公爵家の襲名を」


「彼の婚約者の一人はその皇族の直系ですから、言うなれば嫁入りで先祖以来叶わなかった祖国への里帰りになるでしょう。尤も、先日の王都訪問で叶えたようなものですが」


 事実、皇女の婚約関連で俺のことはガストニアで先んじて伝えられていた。かの英雄レオンハルトの曾孫にして、先日の魔神を討伐した英雄という形で。何せ、昨年の神礼祭の出席から逃れるためにガストニアに足を運んだところ、盛大な歓待を受ける羽目になった。


『カイトさん、ナンデスカコレ?』


『ははは、かなり盛大に歓迎されているみたいだね』


『いやいやいやいや、いいんですか!?』


 何せ、完全に国内事情が回復していない中での歓待だっただけに『無茶しないでください』と言いたくなったが、これでガストニアに明るいニュースを届けられているのならそれも已む無し、と諦めた。折角用意されたものを無碍にするのは勿体無いからね。仕方ない。 


「先程謁見でも述べたが、王都の屋敷の準備はもう少し待ってくれ。何かと煩い奴が出しゃばって難航しておるからの。少なくとも、年内には引き渡せる予定じゃ」


「……もしかしなくても、あの場で抗議の声を上げたお方でしょうか? カイエル家の裁定の後でお会いしたせいか、武門の一派というより成金の一派という風にしか受け取れませんでしたが」


「成金……くくっ、言いえて妙じゃな。やはりお主はバルトフェルドの子じゃな」


 成金か武門(笑)という表現しかできないよ、あの貴族の人は。というか、あの人の息子の一人が俺やライディースと同い年なんだよね。正直関わりあいたくないな。でも、関わってくるんだろうね。優劣競いたいのなら、家柄なんて捨ててかかって来いって思うわ。そう考えるとライナーは稀少種だったと感じた。

 今の皮肉めいた言葉に何かしら通ずるものがあったのか、国王は笑みを零した。

 

 そして会見は終わったところで、アリーシャとメルセリカに話しかけられた。内容としては非公式に婚約者となったので、それにかかわる感じだ。


「私のことは殿下ではなく、リーシャとお呼びください。敬語は要りませんわ」


「私にも敬語は不要だし、セリカって呼んでね。この場合はシュトレオン男爵とお呼びしたほうがいいのかな?」


「……解った。僕のことも『レオン』で構わないし、爵位付きの呼び方は止めてほしいかな」


「はい、レオン様。よろしくお願いしますね」


「わかったよ、レオン君! あらためて、よろしくね」


 こんな感じで、畏まった喋り方はしないということで合意した。

 しかし、婚約者4人かぁ……前世は恋人の一人すらいなかったからなぁ。俺がいたクラスは超絶イケメンの奴がいつも女子に囲まれてたし、それに比べたらモテないでしょう……とか以前言ったことがある。その時隣にいた妹がジト目でこう言った。


『え? それギャグで言ってるの?』


 だって、下駄箱や机の中にラブレターなんて古風な体験したことないんだぜ? バレンタインだって妹と幼馴染だけだったし。あとは部活の女子ぐらいかな。全部義理だったと思う。それが転生したら婚約者4人で、うち一人は経験済という状況だ。何の経験かは察して下さい。

 あと、ライディースやメリルにあげた水晶玉の改良版を二人に手渡したら、すっごく喜んでくれた。製作者は適当に誤魔化しましたが。


 アルジェント家の馬車で王城を出て王都にあるアルジェント家の屋敷に向かう最中、シュトレオンはジークフリードから話しかけられた。


「にしても、レオンはホントに頭が回るよ。僕でもそこまで考えなかったもの」


「場合によっては俺もそうなる可能性があるだけに、レオンの決断の速さは見習うべきだろう」


「だな。屋敷に戻り次第、お前の件を言わなければなるまい。ただ、メリルがどんな反応を示すか…」


「ですよねぇ……」


 俺は話を聞いただけなのだが、先日ガストニア皇帝夫妻と皇女がアルジェント家の屋敷に訪れた際、メリルとリシアンサス皇女が火花を散らす場面があったそうだ。


『レオン兄様の隣は渡さない』


『私も、負けないからっ!』


 ……妹が無事嫁げていけるか、不安で仕方なくなってきている。まだ6歳だし早めに手を打ちたい……といきたいのだが、そこに待ったをかけるのは、父バルトフェルドである。


『あのかわいいメリルをどこぞの馬の骨に渡せるか!!』


『……行き遅れても、私の責任問題にしないでくださいね』


 なんにせよ、依存の度合いを少なくしていくつもりだ。一番いいのは、思春期に入って少しは距離を置こうと自発的に考える思考能力を自然と身に着けていくことだろう。


「そうしている原因の一端を父上が担っているのはお忘れなく」


「手厳しいな、レオンは。事実だからなまじ言い返せないが」


「そういえば、ヴェイグ兄様の側室の件はもう聞いています?」


「あの件か。こちらも完全に驚きだった。文献には殆ど残っていなかったからな」


 それはアルジェント男爵家のことである。神礼祭まで日にちはあるが、明日男爵家の屋敷に出向くことになっているそうだ。アルジェント本家からは当主のバルトフェルド、次期当主のジークフリード、当事者のヴェイグ、そしてシュトレオンも入っている。


「何故にです? それならライディース兄様でも連れていけばいいかと思うのですが」


「気持ちは解らなくもないが……現当主の3代前が魔神封印に参加していたそうだ。なので、その魔神について聞きたいらしい」


「成程」


 当事者に近い立場ならシュトレオンの一件を耳にして、実際本人に会ってみたいと考えるのは無理もない。よって、俺が断れる可能性は皆無となった。

 屋敷に到着したところで、そのまま居間に移動した。


 アルジェント本家当主、バルトフェルド・フォン・アルジェント・セラミーエ辺境侯。

 第一夫人のレナリアに、長男で次期当主のジークフリード子爵、次男のヴェイグ男爵。第二夫人のエリスに、三男ライディースと次女のメリル。第三夫人のミレーヌに、四男でリクセンベール家当主となるシュトレオン男爵。

 ようやくアルジェント本家全員が一堂に会する形となり、バルトフェルドが声を発する。


「先程謁見を賜ったのだが、先日のアリーシャ王女とメルセリカ嬢の救出の功績を称えて、シュトレオンが男爵に陞爵となった。そして現状非公式だが、その二人がシュトレオンの婚約者となった。さらにだが、シュトレオンがリクセンベール家を襲名する形となった」


「う、弟に先を越されちゃったわ……って、分家じゃなくて襲名?」


「既に分家はあるので、それならば家の復興を兼ねるほうがよいという陛下のご判断だ」


 分家はジェームズ子爵と遥か北方の男爵家がある以上、下手に増やしてお家騒動を複雑化させるよりもそのほうがよいという判断は間違っていないと思う。これには今しがた聞いた面々のほとんどが納得した。バルトフェルドは言葉をつづける。


「そして、ヴェイグは神礼祭の後に伯爵へ陞爵となる。さきの皇帝陛下護衛の大任を務めた功績が決定打となった。陛下も驚いていたぞ……お前の功績を全部洗いだしたら、本当にキリがないと」


「東方関連の遠征は全部オームフェルトの連中が誤魔化してましたからね。下手に反論して迷惑かけたくなかったのです」


「お前らしいな……ヴェイグは、コーレック領の北にあるアルジェント男爵家から側室を貰うことになっている。明日、実際にお会いに行くことになるので、レナリアにも同席してもらうことになる」


「それは構いませんが、向こうは?」


「現当主と妻、それと今年7歳の娘が二人と聞いている。息子は既にいるらしいが、領地の留守だそうだ」


 この世界では、国によっては双子以上の複数同時出産の場合、災いを齎す【忌み子】として扱ったりする国がある。その場合は片方を内密に魔物の領域へ置き去りにしたり、殺したりしてしまうこともあったりするらしい。エリクスティアを含むエントワープ大陸に関しては、その習慣は一切ない。将来の人手を減らすほうが遥かに国の損失へと直結するだろうと踏んでいるからだ。

 

 翌日、ヴェイグの側室の実家であるアルジェント男爵家に出向くこととなった。本来ならば嫁ぎ先の本家に分家の男爵家が出向く側なのだが、何せほぼ断絶状態だった分家の人間に会えるというだけでも本家の側としては嬉しい話だ。


「アルジェント本家現当主バルトフェルド・フォン・アルジェント・セラミーエ辺境侯といいます」


「アルジェント男爵家当主のヘルムート・フォン・アルジェント男爵と申します。本来ならば、分家である私共が出向かねばならない立場であるのにも関わらず、態々ご足労いただいたことを感謝いたします」


 現当主は思ったよりも若かった。聞くところによれば、当主のヘルムートは28歳。妻は20歳という若さだ。その横には大人しそうに座っている少女が二人で、髪の色は銀髪なのだが、片方は腰のあたりまで伸びていてもう片方は肩にかかりそうなぐらいの長さである。


「妻のイリア、娘のシャルロットとアリエッタです」


 髪の毛が長いほうの子はシャルロットらしく、もう片方がアリエッタでヴェイグの側室として彼女が婚約することになるそうだ。現に、アリエッタはヴェイグと実際に対面して、目をキラキラさせていた。あ、これそっちの可能性しかないわ。お見合いみたいなものなので、二人と離れて会話することになったのだが、俺の腕にシャルロットがしがみ付いていた。


「えと、何故に?」


「あらあら、シャルロットったら……この子、滅多に感情を表に出さないの。シュトレオン君に一目惚れしたのかもね」


「……落ち着く」


「まぁ、いいんですけれどね」


 それで、ヘルムートにレオンハルト絡みの件を尋ねたところ、その認識で間違いはないと述べた。元々男爵家は本家が潰えてしまった時のために、あまり表舞台へ立たないよう本家が厳命しており、さらに彼らは謁見の処罰対象から外れていることも明らかになった。


「アルジェント家が興った時、それを快く思わない貴族がいてね。オームフェルト公爵家はその一つだったかな。初代様よりそのリストは代々受け継がれているんだよ」


 レオンハルトの件からかと思いきや、アルジェント家が貴族として再出発する時点からの因縁だったことに、俺だけでなく話を聞いた本家の人間全員が溜息を吐いた。そんなに目の敵にするんなら、ダイエットがてら鍬でも手に持って開墾でもしろよ、と思わず言いたくなったのであった。


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