魅惑の甘い果実 想いが通じ会う二人
……部屋の扉がパタンと閉まる。
窓がなく壁に覆われた密室に入ると、二人は部屋の奥に置かれたソファーに腰を掛けた。固い革で出来たしっかりとしたソファーだが、座ってみると空に浮かぶ雲にでも座っているかのようにふかふかでとても座り心地が良い。
壁に備え付けられているアンティークランプのわずかな灯りが二人の表情を照らし出すーー……。
「アイリス様……私のこと怒ってはないのですか?」
「どうして怒るの?」
「それは……
それは私が、アイリス様にいただいた花を売ってお金に変えていたからです……」
アイリスは罰が悪そうに顔を歪ませるカンナを見てくすっと笑った。
「……カンナにあげたものは、君がどうしょうが私は構わない」
「……けど、私は……アイリス様をずっと騙していました。アイリス様の優しさに漬け込んで、花を貰うためだけに、この城にやって来ていたのですから……」
「……そうだね……」
「いくら……家族のためとはいえ……アイリス様を騙していたことには変わりはありません……」
「……うん……」
「私は……」
「……カンナにはお仕置きが必要みたいだね……」
アイリスはカンナを柔らかなソファーに押し倒す。
指と指を絡めるように手をぎゅっと握る。
「カンナはこれから私が、どんなに悪いことをしても嫌いにならない?」
「嫌いになんか……なるはずがありません……
私は……はじめてアイリス様にお逢いした時から
アイリス様のことが……ずっと……」
「ずっと……?」
「あ、憧れていました……
ずっとこの役目が私だけのものなら
いいのにって……」
お部屋には二人っきり。
お互い瞳を見つめあい、静かに呼吸を整える。
初めて自分の気持ちを伝える二人。
お互いの様子を伺いながらじっくりと責める。
「カンナ……私もだよ……
私もカンナがお菓子を持ってくるのを
君を待っていた……
だから……
もう……我慢しなくてもいいかな……?」
アイリスの言葉に胸の奥がきゅんと苦しくなる。
カンナは幾度となくアイリスの名前を呼び
それに答えるようにアイリスは
カンナに「kiss」をしたー……。
アイリス様……好きでいてもいいですか……?
「カンナ……花なんかいくらでも好きなだけ欲しいときにあげるから、気にしないでいつでもおいで。
……というか……来てくれないと、私が困るんだ……
好きだよ。 カンナ……。」
「わ、私もです……
アイリス さ……」
名前を呼ぶよりも早く、愛しい人の唇は
カンナの唇を塞いだーー……。