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豊かな国でも水不足は起こる。

作者:黒井 陽斗
皆さんは水不足と聞くとアフリカや中東、一部の乾燥したアジアの貧しい国にしか起こらない現象だと思っては居ないでしょうか?

確かに日本からでは分かりにくいですが、世界的に先進国なら水は手に入るという幻想は崩壊し始めています。

かの文豪マーク・トウェインは『ウイスキーは飲み物であり、水は戦うものだ』という言葉を残していましたが、現代の水は原油を始めとする資源や仮想通貨のように投機の対象になり始めています。

干ばつ地帯について、サイエンスに丁度良さげなデータがありましたので御覧ください。
http://advances.sciencemag.org/content/2/2/e1500323.full

こうして見るように元々乾燥した地域だけではなく、水道設備の充実した先進国でも大規模な灌漑農業や工業化、さらには水利権の民営化によって、まさに人災といえる水不足が世界各地で引き起こされているのです。

例えばアメリカのカリフォルニア州では、水利権を支配した民間企業による深刻な水不足が起こっており、ごく一部の富裕層がより大きな利益を得る一方で、多くの人が手や顔を洗うのすら困難な生活を余儀なくされています。

このような悲劇が起こった原因は水道やそれに付随する利権の民有化であり、日本でも同じような悲劇が起ころうとしているといえるかもしれません。

この民間の企業が水利権を扱う恐ろしさについて語るに辺り、ある意味非常になろう的でチートが好きな方に受けそうなアメリカのカリフォルニアで起こった水不足をまず語ってみたいと思います。

この話は、たった一人の不正(チート)プレイヤーが偶然と悪魔的な考えで詐欺的な手腕を振るって水利権を支配し、大規模農園を作って農業チートを行い、移民を奴隷扱いして自分の意のままにできる企業城下町を作り、アメリカ市場で俺TUEEEをして多くの州民の生活を犠牲にして大きな利益を生み出し、不正者(チート)は楽しく豊かで幸せな生活をするお話。

こうして文字にして書きだすと、非常になろう味のあると感じませんか?

舞台はカリフォルニアの田舎ですし、農業チートスローライフ系や内政系が好きな方にはとても楽しいお話になるのではないでしょうか。

カリフォルニアという場所は南北に長くて雪解け水の豊かな北部、その恩恵を受ける中部、乾燥が激しい南部という地形で人口の八割は南部に集中しています。

そして広大な盆地は大半は農業に適さない場所であるにもかかわらず、ステイトウォータプロジェクトなどでの灌漑工事や地下水の汲み上げによって、世界的に見ても非常に大きな農業地帯となっています。

この地域で作付されているものはオレンジやアーモンド、お酒を飲む方ならワイン(いろいろな意味で有名なチート企業ミ○プルーンもここですね)などが様々な形で日本にも輸入されており、普段からそのままや加工された食品で口にする機会が多くあるという、案外私達にも身近な州の一つと言えます。

アメリカの歴史に明るい方であればカリフォルニアという地域を聞いた時、恐らくは19世紀のゴールドラッシュを思い浮かべる方が多いのでしょうか?

現代のカリフォルニアは、そのゴールドラッシュのようなアメリカンドリーム、まさにウォーターラッシュともいうべき水資源で荒稼ぎをしようとする資本家達のマネーゲームの舞台であり、投資家達の熱い視線が注がれている地域でも有ります。

もともと開拓地であったカリフォルニアは18世紀後半から大きな水路がいくつも作られ、乾燥地帯である他の地域に北部の豊かな雪解け水を送り込む事で、乾燥地帯に大規模な農園が幾つも作られ、20世紀の中頃には世界的な農業地帯へと変化してきました。

ですが北部以外は乾燥した地帯であり、それだけでは大量の水を使用する果物の栽培には全く水が足らず、地下の帯水層と呼ばれる場所から井戸によって大量の水を汲み上げて農業や生活用水に充てて人々は生活をしていました。

アメリカは資本主義の本場ですからより豊かになりたいと考えた農業主は収穫を求め、より大きな農業へと舵を切っていきカリフォルニアはさらに広大な農園が増え、そうした水資源的に身の丈に合っていない大規模農業によって、80年台に南部の地下水、帯水層とよばれる部分にあった水が無くなってしまいます。

州政府はこの大きな問題を解決するため、水銀行という考えを生み出し計画を実行していきます。

水銀行というのを簡単に説明すると、帯水層に出来た空洞を利用した大規模な溜池であり、計画で予定地とされた当時のカーン郡は、それまでに地下水を大量に汲み上げた事で帯水層に多くの空洞が存在していました。

水銀行の考え方は、北部の降雨量の多い時期にステイトウォータプロジェクトで作ったカリフォルニアダクトと呼ばれる水路を利用して南部に水を送り込み、空になってしまった帯水層に水を貯めて干ばつや水不足を解消する計画であり、州政府は水銀行で南部の多くの人の水不足が解決できると考え、多額の税金を使いインフラを作成しました。

ですがこの水銀行には大きな問題に直面します、それは土地の所有者との衝突です。

カリフォルニア州のルールでは地下も土地の所有者に権利があり、水銀行に貯められた帯水層の水の所有権が土地の所有者に帰属するという考えでした。

ここからなろう的なサムシングが火を吹きます、荒れ地としか言えない水銀行の予定地は美術品や人形などを売っている会社を経営していたスチュアート=レズニック氏という一人の男よって大量に買い占められていたのです。

何故か計画を知っていて、その土地を手に入れることで利権を手に入れる事が出来ると知っていたかのように……。

こうして水銀行の予定地を買い占めた彼は、類まれなる交渉能力で議会を上手く騙し、一見すると公平なようで自身に非常に有利な議決書を作成して、州政府や水道局など利害関係者全員にサインさせてしまうのです。

私はカーン水銀行が置かれている事実を調べた時に偶然レズニック氏の存在を知り、その破天荒な行動や異常なまでの彼に有利な議定書の内容を知った時、まるでリアルに生まれたチート主人公のようだなと感じました。

彼の活躍の詳細に興味がある方は、モントレー協定やカーン水銀行など周辺ワードを調べてみると色々な情報が出てくると思いますので、一度調べてみると楽しいかもしれませんね。
私の記憶が確かならナショナルジオグラフィックでも、カーン水銀行を取り扱ったドキュメンタリーがあったと記憶しています。

ですが内容は彼の中心の話ではなく、パラマウントファーミングが行った水利権の独占で苦しむ被害者に味方する視線で取材された作品であり、内容的にはなろう味のない非常に真面目なドキュメンタリーですのでチート好きな方にはあまり面白くないかもしれません。

こうして彼はチートと言えるような様々な仕込みと悪魔的な行動によって、結果としてカーン水銀行の過半数を手に入れ、水銀行の運営はレズニック氏が新たに作った会社であるパラマウントファーミングで行われることとなります。

これは州の財産である水銀行というインフラが個人によって私有化された瞬間であり、水という共有資源が個人によって支配された悪夢の始まりでした。

南部で干ばつで苦しむ人々を救うために州が巨額の資金を投じて作った水銀行は、たった一人が作った企業によって私有化され、パラマウントファーミングは豊かな水資源を背景に農場を拡大させていきます。

彼の思惑は概ね大成功を収めて会社はどんどん大きくなり、パラマウントファーミングはザクロ・アーモンド・ピスタチオ生産量でアメリカ一位の収穫を得ていきます、そしてマーケティングでも素晴らしいセンスを持って居たらしく、食品企業としてのシェアも大きくなっていきます。

怪しい人形取引から始まって水銀行の私物化に農場の拡大から市場の掌握に至るまで、彼がやる事なす事成功するんですよ?実際に調べたら分かりますが、この失敗しない成功ぶりはまさになろう味溢れる主人公と評するにふさわしいチートっぷりと思います。

ですが、こうした彼の成功の陰には沢山の人達の苦悩が有りました。

パラマウントファーミングの華々しい業績の影で、カーン郡の一般家庭は干ばつにより非常に厳しい水道の使用制限を課せられ、沢山の人々は絶望的な水不足でまともな飲水すら手に入れるのが困難な状況に陥っていきます。

この厳しい状況は彼の企業城下町で働く移民たちも含まれていて、皆遠くから水を買ったりして何とか生活をしていたようです。

人々が文化的な生活が出来なくなる程に苦しんでいるにもかかわらず、州の税金によって作られた水銀行を支配したパラマウントファーミングは、大規模農園に水を注ぎ込み人々の苦しみを農作物に変えて大きな利益を生み出して、呆れるほどの巨大な富を得ていきます。

水銀行というチートで自社の農地をどんどん拡大し、収益率の高い作物を植えて僅か20年足らずでアメリカの経済誌フォーブスで資産総額129位に選ばれるほどの資産を生み出しました。

まさにアメリカンドリームといえる成功、これって凄いなろう味溢れる展開ですよね?毎年のようにどんどん成長して行って、市場は敵無しの俺TUEE状態、企業の成長率を見てるとまさに農業チート、現実の乾燥地帯での農業としてはぶっ壊れな成長です。

水銀行という公共福祉を私物化し、いくらでも水を使えるというチートで巨万の富を手したレズニック氏ですが、彼のチートは農業だけではありません、彼のチートは一つではなかったのです。

それは雪解け時期に州の税金やインフラを使って、北部から送られた水を水銀行へ貯めておき、南部が干ばつになる時期を狙って州政府に数倍の値段で売るという離れ業。

これが彼が覚醒した第二のチート、この我々の目には不健全でおかしな取引は議決書を作る際に組み込んだルールによって、まったく違法性がない健全で公平な取引として認められ、水を金に変える事が出来るまさに現代の錬金術となりました。

この錬金術によってパラマウントファーミングは更なる利益を手して更に企業は大きくなるんですよ、ここまで来ると本当にどこかのなろう主みたいだと思いませんか?

ちなみにこの錬金術は2017年の春先の大雨によって6年という長きに渡る干ばつの苦しみが収束を迎えるまで続きましたが錬金術自体は今も禁止されておらず、再びカルフォルニアで干ばつが発生すれば、パラマウントファーミングは水を売り大儲けを出来る事は変わっては居ません。

さらにこの長い水不足で多く発生した山火事の後遺症、樹木が焼けてしまい無くなってしまった地域では、多くの山が保水力を失ったことによって土砂崩れが頻発している状況となっており、カルフォルニアは今も新たな問題に直面しています。

こうした水を金に変える現代の錬金術はアメリカだけではなく、オーストラリアでも発生していますので、例として少し語ってみましょう。

オーストラリアでは80年台、水道局の効率化を狙った政府は水道局を民営化して、より安定した水の供給を考えていました。

ですが公営ではない民間企業ですから、国民の利益よりも企業の利益を優先するのは当然であり、より多くの料金を支払える人がより多くの水を欲しいだけ手に入れ、貧しい人は生きる事すら許されないほどに水道代を上げられて行くことになり、貧しい農家は問答無用に水を止められて多くの人が農地を手放しました。

他にもヨーロッパ各国も民営化を進めましたが、やはり民営化したことによる弊害が多く、フランスでは水道料金が二倍になり、結果として公営に戻す事にするそうです、これは利益優先の民間企業では広大な水道インフラを維持できないのが原因といえるでしょう。

こうした海外の事例は民営化や私物化による厳しい現実を書いた話ですが、このような恐ろしい事が日本でも起きようとしています。

世界中で水不足が予想されいる現代、豊かで質の良い水資源の有る日本が民営化した場合、日本の水資源は外資に食い物にされるでしょう。

企業は株主への配当や利益を第一にするでしょうから、我々は高い水道料金と劣化していくサービスに苦しむ未来が目に見えます。

多くの地域で配管の更新が滞ったり、地震や台風など自然災害で破壊された水道がいつまでも復旧しなかったり、古くなった浄水設備の更新が遅れたり、コストカットために採算が取れない田舎の水道供給が停止したり高額の負担になるなど、我々にとって多くの不利益が起こるでしょう。

海外の民営化の結果を見れば当然起こりうる未来だと私は考えています。

そして海外の投資家達が、日本の水源地の土地を買う行動を起こしているとよく耳にするようなったのではないでしょうか?
この話を聞いた一部の方は、水源利用や山林開発は法律的に難しい点を挙げて大げさだという方もいますが、こうしたルールにも実は抜け道はいくらかあるので、簡単に安心できる話ではないのです。

水というのは生きるために必要な物であり、世界中に民営化の失敗例があるというのに、どうして多くの人達が安心して安価な水が飲める日本で、ごく一部しか幸せしかならない民営化をする事が必要なのでしょうか?

現在の水はいくらでもあるという考えを正さねば、外資に水道のシステムを破壊され、豊かな水資源があるのに、多くの人が高額で劣悪な水道を強いられる未来が待っています。

水道をひねれば飲める水が出てきて沢山のお湯でお風呂を楽しめる、こんな当たり前が無くなる恐れがある水道民営化は不要であると私は考えています。

もし自分の住む地域で民営化するという話が出た場合、私は当然反対します。

これからの世の中というのはなんでも効率化すればいいというものではなく、この国に住む私達の最大幸福に必要なシステムは何かを考える時期に達していると思います。

我々日本国民が日本という国の幸せな未来を考え、己の利益だけを求め不正チートをするものを許さない考え方を身につけるべきだと私は思っています。

この話を読んで普段何気なく使っている水について、そして公共の福祉や日本という国の最大幸福について考えてくださる方が増えると私は嬉しく思います。

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