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最強魔導師は異世界で冒険者になります。  作者: 狂った機械仕掛け
3/7

第2話  龍王アヴァロンとアルネイド王国

完全に行き当たりばったりのノリで書いてます。

おかしな点があるかもしれませんが、ゆっくり読んでいってね。

 右を見ても左を見ても何も無し、下を見れば地面や雲、そして足元には真っ赤な鱗。

 現在俺と出雲は上空5000mの空の旅を楽しんでおります。

 今の状況を説明するには約1時間前に遡る。


「久しいな、シエルよ」


 赤い魔方陣から出てきたのは真っ赤な短髪で狩衣を着た20代の青年だった。しかもイケメン。


「えっと、誰?」

「我だ」

「・・・ごめん、わかんない」

「まあ、この姿だとわからないのも仕方あるまい。では改めて・・・『我が名はアヴァロン。赤き厄災と呼ばれし古龍である』」


 青年の体が光ったと思ったら、真っ赤な巨竜が現れて名乗りを上げた。

 ああ、よくある人化みたいなものだったのか。なんてマニア受けしそうなキャラなんだ、個人的には結構好きな方だわ。執事服とか、軍服とかコスプレ好きだし。


「あ、ああ」

「あ、忘れてた」

「し、シエルさんこれは・・・」

『ん?シエルよ、なんだその人間は?』

「えっと、とりあえず。出雲は落ち着こうか、あとそろそろ放して」


 さっき抱きつかれてからどんどんHPが減ってる気がするから。


「いやいや、シエルさんこそなんでそんなに落ち着いてるんだですか!?」

「いや、だってねえ、俺が召喚したんだし」

『出雲とやらの反応が普通だぞ。まあシエルとは長い付き合いだからな』

「そ、そうですよね。シエルさんがおかしいだけですよね」

「あれ?もうおかしい人扱い?」

『ところでシエルよ、今日は何ようだ」


 そうそう、やっと本題に入れる。


「えっとね、この近くにあるアルネイド王国まで乗せてって欲しいんだけど」

「ちょっとシエルさん、乗るんですか!?」

「え?ダメなの?」

『我は構わんぞ、むしろ里の奴らに自慢できるからぜひとも乗せたいのだが』

「んじゃ、お願いします」

「・・・ああ、ここでは私がおかしいんですね」


 そして、今に至る。ちなみに出雲は乗るときからずっと無言で、俺に抱きしめられたままだったりする。

と言うのも、「せめて乗っている間は抱きしめててください」とか言われちゃったらね。まあ頼まれなくても空飛んだ瞬間から涙目なの見たら抱きしめたくなっただろうけど。


『シエルよ、そろそろアルネイド王国に着くのだが、一つ問題がある』

「ん?何?」

『我が人の国の近くに腰を下ろすだけで軍が出てくるのだ。だからだな』

「あ~、じゃあ対索敵ようの魔法でも使って安全に行きますか」

『了解した』


 さてと、とりあえずアルネイド王国の索敵能力がどの程度かわからないから、姿、音、魔力の三つは隠すか。


「<忍術:隠密の掟><結界術:遮音の壁><奇術:魔力変調>よし、それじゃあ王国についたら門の入口近くに降りて」

『では近くの平原に下りるとしよう』

「おけ」


 そして俺たちはアルネイド王国の入口周辺の平原に下り、魔法を解除したあと入国する商人や冒険者の列の後ろに並んだ。もちろんアヴァロンは人化して俺の護衛についてもらっている。

 ちなみに出雲は地面があることに感激してた。


「さてと、これからアルネイド王国に入るわけだけど、入国金とかいるのかな」

「どうだろうか、我は入ったことがないからわからん」

「えっと、冒険者の時は冒険者の証を見せれば通れたので詳しくは知らないんですけど、大体は銭貨か銅貨一枚だったり、大きい国だったら銀貨一枚だったはずです」

「ふむ、なら我は一旦帰った方がよさそうだ」

「銀貨三枚ぐらいなら余裕だから居ていい、逆にMPがもったいない」


 銀貨三枚とアヴァロン召喚時にかかるMPだったらMP節約したい、何かあった時ように。Lv1だから慎重にそして大胆に行かなければ。


「銀貨三枚ぐらいって、シエルさん何者なんですか?」

「ん?ついさっき言ったじゃん、最強の魔導師だって」

「そうですけど、そうじゃなくて」

「まあ、詳しくは宿でゆっくりと話すから」

「・・・わかりました」

「ところで、こっちの貨幣価値ってむこうの世界と比べるとどんな感じ?」

「えっと、まずこっちのお金は上から白金貨、金貨、銀貨、大銅貨、銅貨、銭貨の六種類で、元の世界に当てはめると大体、1億、10万、1万、5000、1000、100の順ですね」

「つまり俺の所持金は50億62万5千か」

「え?」

「う~ん、ゲーム時代に国に預けたお金はどうなったのかな。引き出せるならいいけど」

「えっと、普通白金貨1枚で十分暮らせる金額なんですけど。あと絶対出さないでください」

「ん、おけ」


 そうなるとストレージの金貨とか両替しないといけないけど、てか取り出せるのか?

とりあえずストレージ開いてっと。


=====================================

検索:「    」


アイテム

【消費アイテム】【素材アイテム】【課金アイテム】【イベントアイテム】

装備

【武器・盾】【防具】【アクセアセサリー】【アバター】

所持金

「白金貨」×50「金貨」×6「銀貨」×2「大銅貨」×1

=====================================


 で、とりあえず金貨を取り出してみるか・・・よし、普通にタッチしたらATMみたいに取り出せた。


「シエルさん、今金貨がいきなり出てきた気がしたんですけど」

「ん、ああ、さっき言ったストレージから取り出した」

「そ、そうなんですか。ところでそのストレージなんですけど」

「これについては宿で話すときに一緒に説明した方がいいからあとで」

「・・・わかりました」


 何か不服な顔だけど、まいっか。とりあえずストレージ内の金貨を銀貨に両替できるかどうかの確認をしてしまおう。・・・そういえばさっき金貨取り出すときに1から6以外の数字も打てそうだったから銀貨の方でやれば。とりあえず銀貨10枚取り出すかな。

 ・・・よし、取り出せたけど。


「これ袋に入って出てこないんだな」

「あの、シエルさん。あまり人前でそういうことしないでください。目立ってます」

「ん?わかった」


 じゃあ、ストレージに戻してみる。すると。


=====================================

検索:「    」


アイテム

【消費アイテム】【素材アイテム】【課金アイテム】【イベントアイテム】

装備

【武器・盾】【防具】【アクセアセサリー】【アバター】

所持金

「白金貨」×50「金貨」×5「銀貨」×12「大銅貨」×1

=====================================


 どうやら自動両替はないみたいだ、じゃあ金貨6枚って打てば銀貨が2枚に戻るのだろうか。

とりあえず実証するまえに適当な袋を出してっと。


=====================================

検索:「    」


アイテム

【消費アイテム】【素材アイテム】【課金アイテム】【イベントアイテム】

装備

【武器・盾】【防具】【アクセアセサリー】【アバター】

所持金

「白金貨」×49「金貨」×999「銀貨」×12「大銅貨」×1

=====================================


 なるほど、価値の大きい方からってことか。とりあえず気になることは終わったし金貨戻して銀貨取り出しておくかな。あと出雲がうるさいし。


=====================================

検索:「    」


アイテム

【消費アイテム】【素材アイテム】【課金アイテム】【イベントアイテム】

装備

【武器・盾】【防具】【アクセアセサリー】【アバター】

所持金

「白金貨」×50「金貨」×5「銀貨」×9「大銅貨」×1

=====================================


 ん?999が最大なのか。白金貨に戻ったみたいだし。てかこの金貨とかってどこ発行なんだろう・・・まあ気にしたら負けだよね。


「シエルさん、次ですよ」

「ん、わかった」


 俺たちの番になり、衛兵の前に行く。相手は目の前に帯剣しているのが二人、少し奥に槍持ちが二人の計四人か。ってなんでそんなこと確認してるんだろう。

 そんなことを思っていると衛兵が話しかけているのに気が付いた。


「あの、どうかしましたか」

「あ、すみません、考え事してました」

「ああ、そうでしたか。えっと冒険者ではないですね。では三人なので銅貨3枚支払っていただいた後に、あちらで身分確認させていただきます」

「わかりました。じゃあこれでお願いします」

「えっと、銅貨七枚のお返しです。あとはあちらにいる同僚が対応しますので」

「ありがとうございます」


 そして俺たちは奥にいた槍衛兵Aに近くのテントの中に案内された。テント内には杖を腰にさしている衛兵と近くに占い師とかが使うような水晶玉があった。


「えっと、一人ずつこちらの水晶に手をかざしてください。そしたらステータスが表示されるので」

「じゃあ、出雲からで」

「え!普通シエルさんからじゃ」

「いいから、いいから」


 てか安全枠からじゃないと俺とアヴァロンはどうなるかわからないし。場合によっては対処しないといけないし。

 そして出雲が水晶に手をかざすとプロジェクターみたいな感じで壁に出雲のステータスが表示される。


=====================================

名前:東雲 出雲  職業:勇者  性別:女  年齢:17才  種族:異世界人


Lv:36  HP:540/540  MP620/620


称号:『勇者』『異世界人』

=====================================


 ん?もしかして俺のステータスの劣化版みたいなのかな?


「はい、いいですよ。えっと、東雲 出雲さんですね。確かイリアル王国に召喚された勇者でしたね」

「はい」

「では次の方」


 次に俺が手をかざすと。


=====================================

名前:シエル  職業:魔導師  性別:女  年齢:18才  種族:吸血姫

Lv:1  HP120/120  MP#%*pkj/&dp#$

称号:

=====================================


 MPが文字化けしてました、称号の欄に至っては表示されないとか。


「あ~やっぱりレプリカだからな、まあいいか」

「え、いいの?」

「はい、では次の方」


 そして最後にアヴァロンが手をかざすと。


=====================================

名前:龍王アヴァロン  職業:龍王  性別:男  年齢:645  種族:古龍

Lv:426  HP:pogp#sd/afqdboa   MP:rwqw&%m/fkzfur

称号:『龍王』

=====================================


 文字化けはもちろん、龍王で埋め尽くされてました


「えっと・・・この水晶ダメですね。ああアヴァロンさんも問題ないですよ」

「うむ」

「ではアルネイド王国をお楽しみください」

「はい、失礼します」


 問題なく入国できたのはいいのだけど、杖衛兵の心労がやばそうだな。あとセキュリティも。


「さて、無事に入国できたので、まずは宿を探します」

「無事に?が付きそうなんですが」

「で、出雲のおすすめはどこかある?」

「スルーなんですね、別にいいですよ。えっと前泊まってたとこでよければ」

「じゃあ、そこで」

「わかりました、じゃあ案内しますね」


 本日俺たちが泊まるのはファンタジーによくある二階建ての宿屋だ。出雲曰くただ素泊まりするだけの宿らしく近くにある酒場兼食堂があるらしい。


「えっと、ここなんだけど」

「うん、いいんじゃない?じゃあ入ろうか」


 俺が宿屋の戸をあけて入ると、ふくよか女性が受付に立っていた。


「いらっしゃい」

「三人部屋ってある?」

「ああ、あるよ。一泊大銅貨一枚だ。ちなみに二人部屋は一泊銅貨三枚、一人部屋なら一枚だよ」

「じゃあ三人部屋一泊で」

「あいよ、じゃあこれに名前を書いておくれ。ああ代筆は必要かい?」

「いや、大丈夫」


 俺は大銅貨をカウンターに置き、宿泊者名簿に名前を記入する。普通に日本語だったから書くのには問題ないな。


「えっと、シエルさん御一行だね。部屋は一番奥の10番の部屋だよ。それとトイレは階段を上がってすぐにあるよ。あと夜はちゃんと鍵を閉めるようにね」

「わかった。それじゃあ行こうか」

「シエルさん、手慣れてましたね」

「ノリと流れでね」


 俺たちは10番の部屋に入る。部屋はベッドが三つ横並びになっているだけの部屋のようだ。なんか修学旅行を思い出すな。


「こういう部屋って修学旅行みたいな感じですよね」

「あ、やっぱり思うよね」

「修学旅行とやらは知らんがシエルが言うのならそうなのだろう」

「シエルさんへの信頼が厚すぎますね」

「いいじゃん、信頼し合える仲ってことだよ」

「そうですね」

「もちろん出雲も信頼してるからね」

「っ!・・・ありがとうございます///」


 照れてる出雲もかわいい。つい撫でてしまうぐらい。


「それじゃあ、夜ご飯の前に少し俺の話をしようか」

「はい」

「うむ」

「では簡単に・・・・・」


 俺は出雲とついでにアヴァロンに俺がセカンドライフと言うゲームで遊んでいたこと。

そこで自分のキャラであるシエル(男)を魔法職最強まで育て上げたこと。

昨日の夜にシエル(男)を自爆させちゃったこと。

気が付いたら、シエル(女)としてこの世界に来ていたことを簡単に説明した。


「えっと、シエルさんも私と同じような感じだったんですね」

「まあ、そんなかんじ。だからアヴァロン呼べたり、ストレージ使えたり」

「なるほど、ゲーム要素が残ってるんですね」

「そゆこと、ところで出雲は自分のステータスって見れる?」

「見れますよ、ステータスオープン」


 出雲がステータスを開くと出雲の目の前にホログラムが映し出された。てか対面してるから鏡文字になってるけど俺も見れるのか。


「えっと、自分のステータスは基本自分しか見れないんですけど、本人が許可したら見れるんですよ」

「なるほど」


 つまり俺のステータスも見せたくなったら見せれるということか。


「あの、シエルさん」

「ん?」

「シエルさんってゲームキャラの名前なんですよね。本名はなんていうんですか?」


 あーどうしよう、ゲームは本名聞くのはマナー違反みたいな感じだけど、今は現実で~まいっか。


「本名は小鳥遊 空月。だけどこの世界ではシエルだから、シエルって呼んでくれた方がいいかな」

「小鳥遊 空月さん・・・はい、覚えました」

「ところでシエルよ、質問なのだがゲームとやらの時は我らの言葉は聞こえていたのか?」

「いや、聞こえてない。それ以前にただのゲームだと思ってたから登場キャラに意志があるとか思ってなかった」

「そうか、少し残念だがまあいい。今はこうして話せるのだからな」

「そうだね」


 そんなほんわかしているとき、小さくグ~とお腹の音が聞こえると、出雲が恥ずかしそうにうつむいていた。


「ふふっ、それじゃあごはん食べに行こうか」

「・・・はい///」

「我は肉がいいぞ」


 宿から5分ほどあるいたところにある酒場兼食堂に入ると、中は冒険者たちでにぎわっていた。男だけで騒いでいたり、男女二人ずつで今日の冒険を振り返っていたり、周りの人に絡んで自慢話をする大男がいたり、ウェイトレスは忙しそうに料理やお酒を運んでいたりと、騒がしいという言葉がこの状況にはぴったりだろう。そんな中一人のウェイトレスが俺たちを見つけ、こちらに向かって来る。


「いらっしゃいませ、三名様ですね。奥の空いているテーブルへどうぞ。ご注文が決まりましたらお呼びください」


 とだけ言って、また仕事に戻っていった。


「とりあえず、席に行こうか」

「はい」

「うむ」


 俺たちは空いているテーブルにつき、注文をし、料理を食べた。異世界だから何かあるかなって思ったけど料理名とか使われてる材料の名前がファンタジーぽいぐらいで普通においしかった。

 ちなみに俺が頼んだのはグレートレッドボアのしょうが焼き定食だ。


「うん、おいしかった。ファンタジー感少なかったけど」

「一応それっぽいの出すこともあるけど、基本はむこうと変わらないんですよね」

「そうなのか、ところでファンタジー感があるのはどういったものなのだ?」

「う~ん、たとえばこう肉の山みたいなのとか、材料が特有のものだったり。あ、そう考えると今食べたのもファンタジー感あるものになるのかな」

「私はまんがに出てくるあの骨つき肉とかですね」

「ふむ、我にとっては普通のものなのだがな」


 そんなファンタジー飯の話で盛り上がっているとき、扉が勢いよく開き、女性5人を連れた男が変に甘ったるいにおいをまき散らしながら入って来た。もちろんウェイトレスさんがすぐに対応していたがどうやら満席だったらしい。


「ねぇ~光輝~私、もうお腹ペコペコだから早く食べたいんですけど~」

「私も~」

「わかったよ。おい、そこの冒険者」

「あん?なんだ兄ちゃん、なんかようか?」

「俺は勇者だ。だから早くよけろ」

「はぁ?何言ってんだ?」


 うわ~まさかの展開。なんとなく絡みそうなのはわかってたけどさ。ん?てか勇者?


「ねえ、出雲。あれってイリアル王国に呼ばれた勇者の一人だったりしない?」

「ふぇっ?ああ、すみません少しボーっとしてました」

「大丈夫?」

「は、はい。シエルさんは大丈夫なんですか?」

「何ともないけど、強いて言えば少し暑いくらいかな」

「そうですか・・・」

「とりあえず、宿戻ろうか。調子悪くなったら困るし」

「はい・・・」

「アヴァロン、これで会計してきてくれる」

「了解した」


 俺は料理の代金をアヴァロンに渡し、出雲を支えながら席を立つ。すると案の定、勇者の取り巻きの女の一人がこっちに来てしまった。こっち来る前に勇者が男たちに絡むの止めろよ。


「光輝~こっち空いたみたい」

「ああ、わかった。よかったな命拾いして」

「ああん?てめえこそ何言ってんだ?」

「光輝~そんな奴らほっといて早くご飯食べようよ~」

「ああ、そうだね。じゃあな馬鹿ども」

「こんの、クソガキが・・・」


 うわぁ、ヘイト集めすぎだろ。あとこっち来ないでほしい、通り道だから仕方ないけど、においが無理。生理的に無理。こういう時はさっさと退散するのに限る。どっかの軍師とかも逃げるが勝ちとか言ってた気がするし。


「ほら、行くよ出雲」

「んぅ、はい・・・」


 出雲を支えながら出口に向かうが、まあ勇者もこっち来ているわけだからすれ違うだろうな。さらに甘いにおいが強くなってきてるんだけど。その所為か出雲の息遣いが荒くなってきてるし、なんか体がさっきより暑くなっている気がする。

 そして勇者とすれ違う瞬間、勇者が足を止めて話しかけてきた。


「やあ、そこのかわいらしいお二人さん。このあと俺と食事でもどうかな?もちろんその後も」


 無視無視、てか俺たちはすでに食事が終わったの知ったうえで言ってるのかな?それなら普通にバカなんだけど。あともっといいナンパのセリフ考えろよ。あと出雲から「かっこいい・・・」とか聞こえた気がしたけど空耳だろう、きっとそうだ。そうでないならきっと夢かなにかだろう。


「おいおい、無視なんてひどいじゃないか。とりあえず少し話だけでもさ」


 無視して通り過ぎようとしたら勇者が俺の肩をつかんできた。あと取り巻きの女から変な視線感じるしうるさいんだけど。


「なあ、いいだろ。少しぐらいさ」

「うるさいし、くさい。その甘ったるいにおい何とかできないの?てか触るな」

「なっ!」


 そう言って思いっきり手を振り払う。あっ、つい触られた不快感で本音が出てしまった。まあいいか。

そのまま俺は出雲を連れて出口まで行く。


「なっ!待て!俺は選ばれた勇者だぞ!おい!」


 はい、もちろん無視しますとも。そもそも勇者は出雲で十分ですし、あれが勇者だと出雲がかわいそうだわ。ああ、また勇者が近づいてきたよ。それと良いタイミングでアヴァロンも戻ってきた。


「シエルよ、何の騒ぎだ」

「ナイスタイミング!」

「何がだ?」

「おい、お前その娘たちとどういう関係だ?」


 やっぱり絡んでくるよね。もうこの時点でバカ確定だわ。せめて相手を見極めないと。


「ん?なんだおぬし?人に名を聞くときはまず自分から名乗らぬか」

「いいから答えろ!その娘たちとどういう関係なんだ!」

「おい、シエルよ。こやつどうやら言葉が通用せんようだ」

「なんだと!おいお前、表出ろ!選ばれし勇者である俺が直々に教育してやる!」

「いや、遠慮しておこう。おぬしでは戦いにすらならん」

「なっ、なんだと!」

「ふふっ」


 あ、やばっ、笑いが漏れてしまった。とにかくアヴァロンに気が向いているうちに出てしまおう。

出るときなんか勇者がアヴァロンにつかみかかってるのが見えたけど、まあ大丈夫だろう。勇者が。

 宿に戻り、出雲に状態異常回復やHP回復をかける。もちろん自分にも。


「あ、ありがとうございます」

「たぶんあの勇者の所為だろうね。そういえば勇者に話しかけられたときかっこいいとか聞こえた気がしたんだけど」

「えっ、あの、それは・・・なんか不思議とかっこいいと思ってしまって」

「ふ~ん、今は?」

「今になって思えばなんでそんな風に思ったんでしょうか」

「ん~魅了かな?回復かける前にステータス見とけばよかったな~」

「魅了ですか」

「うん、まあ今となったらどうでもいいんだけどね。次気を付ければいいし」

「はい・・・」

「とりあえず、着替えて寝ようか。その格好だと寝にくいだろうし、あとさっき汗かいただろうし」

「そ、そうですね」


 ストレージから出雲の着替えを取り出して渡す。俺は装備欄から着替えをする。それにしてもよくゲーム時代にいろんな服集めててよかったと思う。あのころはアイビーとかに無駄って言われても集めたかいがあった。今こうして出雲が着ているのを見ると無駄には思えないし。


「はぁ、やっぱりお風呂がないのが残念ですよね」

「えっ?ないの?」

「えっと、正確には貴族とかのお金持ちの人たちの娯楽なんですよ」

「あ~そういうのか」

「大衆浴場がある国もあるんですけどね。イリアル王国にはありましたし」

「そうなのか、じゃあイリアル王国に着いたらすぐにお風呂だね」

「はい!」

「とりあえず今日はもう寝ようか」

「はい、おやすみなさい」

「おやすみ~」


 俺は出雲がベッドに入ったのを見てから部屋の明かりを消し、自分の寝床に潜る。


「・・・あの、寝る前に一つ聞いていいですか?」

「ん?」

「なんでシエルさんは猫の着ぐるみパジャマなんですか?」

「かわいいから、もしかして出雲もこれがよかった?」

「あ、いえ。私は普通のパジャマがいいので」

「ん、そうか。かわいいのに」


 次は出雲にも着ぐるみパジャマを着せようと心に決め、俺は眠りにつくのであった。

おまけ:勇者光輝がアヴァロンに絡んだその後。

アヴァロンが手加減に手加減したげんこつで気を失い、取り巻きの女たちに回収されていきました。

もちろんその後、冒険者たちがアヴァロンにお酒をおごったのは言うまでもないだろう・・・


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