プロローグ
プロローグ
《ピンポーン》
《ガチャガチャ》
《ピンポーン》
《ピンポーン》
家の窓から光が漏れてる。
お母さんは家にいるはず。
《ガチャガチャ》
鍵を開けてくれない。
「もー。」
背負っていたランドセルから玄関ドアのカードキーを取り出し、
凹みにスライドする。
かちゃっと軽い音がして鍵が開いた。
《ガチャ》
玄関のドアを開けて、家の中へ入るとやっぱり部屋の電気がついている。
お母さんは出掛ける時には絶対に部屋の電気を消し、戸締りを入念チェックするぐらい几帳面だから、電気が点いている=お母さんは家にいるってことだ。
何回、電気点けっぱなしで怒られたことか。これでお母さんが出かけてたら、ぜったいに許さないぞ!
「お母さーん!いるんだったら開けてくれよー。」
・・・
返事はない。
「なんだよ。いねーのかよ。帰ってきたらいーっぱい文句言ってやる!」
ぶつぶつ言いながら靴を脱ぎ、リビングに向かう。
「まったく、腹減ったのにどこいったんだよ。」
静まりかえった廊下を、ため息をつきながらすたすた歩く。
そしてリビングのドアに手を掛ける。
リビングのドアは、木製だが真ん中がすりガラスになっており部屋の中がモザイクで見えるようになっている。
人のシルエットが見えた。
「何だやっぱりお母さんいるんじゃん」
文句言ってやろうと勢いよくドアを開ける
《ガチャ》
母さんは地べたに座っていた。
「っつ…」
声を掛けようとしたが、異変に気づき息をのむ。
大きな血だまり、血の通わない足、垂れた腕、顔を覆いかぶした長い髪。
横に何かいる。
黒い。暗い。黒い。
「—・・・―・・・」
こちらを向きながら何か言っているが聞き取れない。
…誰?…
パニックで目の前が真っ暗になる。
見えない。聞こえない。
呼吸が乱れ、意識が遠のく・・・
「かあ・・さん・・・」
最後にはっきり声が聞こえた。
「お・か・え・り」