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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検048

「ああっ、たんこぶだにぃ。本当は痛いんじゃないのかにぃ?」


 小尾蘆岐が、楓の小細工(たんこぶ)に突っ込んだ。


 ちっ。

 舌打ちしたタイミングが、楓と重なってしまう。

 ……でも、こんなシンクロはいらない。


 無視して無かったことにするつもりだった俺と、構って貰うため小細工をする楓に、第三者からの無粋な突っ込み。

 落胆した楓の表情は、かつて見たことがないほど無表情だった。


興醒きょうざめ、です……」


 そんな一言を呟く。


「なんだにぃ? 怪我なら治してあげようかにぃ」


「要らんの、です。お前はご主人と楓の駆け引きがわかってないの、です」


 ……そんな関わりは望んでません。


 そういいながら楓は完全に背を向ける。

 頭部のたんこぶは跡形もなく消失して、いつも通りまん丸の後頭部に戻っていた。


 恐ろしい機能が魔家電に搭載されていると、改めて感じる。

 ……絶対に役立つと思えないけど。



 さて、いい加減この部屋を確認せねば。

 どうでもいいことに時間を費やしてしまった。

 室内に目を向ける。


「ここに力が集中しているみたいだ。そんなに広いわけじゃないけど……それにしても殺風景だな?」


 中央に黒い石が一つあるだけのだだっ広い部屋。

 調度品の類は何ひとつなく、地下空間に来た時に見た城の部屋とは大きく違った。

 ここに生活感は全くない。


 ……そう、たとえるなら何もない倉庫。ただその中で、忘れられたように残る物が一つ。

 中央に鎮座する黒く磨かれた石。

 その大きさは冷蔵庫ほど。

 それが部屋中央で、異様な存在感を放っている。


 そして、床の下に目を向けると、力が渦巻いているのがわかった。

 どうやら力の終着点がここで、部屋の床下数メートルほどで渦巻いている。


「ぐるぐるだにぃ……ん。繋がっている?」


 頭上の小尾蘆岐が何か呟く。

 そして両手で頭を掴みながら身を乗り出す。

 なにかに気がついたのかな?


 俺達を連れてきた、こいつにも一応確認しようと考えて、声をかける。


「その石がなんだかわかるか?」


「さっぱり、ですよぉ。解析不能、でぇす!」


 腰に手を添えて、さも自信ありげに知らないと答えた。

 ……うん、だろうな。わかっていた返答だ。


 その時、あり得ない奇跡が起こる。


 俺から自発的に小尾蘆岐が降りて、黒い石に向かって歩き始めた。

 なんてことだ……

 あれだけ離れることを嫌がっていた、この生命体が自発的にだなんて……いったい誰が想像ができるだろうか。……なんてね。


 数歩分離れると、振り返って声をかけてくる。


「ちょっと気になったにぃ……すぐに戻るから、寂しがらないでいいだにぃよ」


 そんなつもりで見つめていたわけじゃない。

 小尾蘆岐の後に続いて歩く。


「別に寂しくは全然ないけどな。……あっ」


 そこで、黒い石に目を向けると、俺はあることに気がつく。


「千丈も気が付いたみたいだにぃね。遠目ではよくわからなかったけど、この石にも光の線が詰まっているにぃ」


 近くに寄ると、内部構造がうっすらと透けて見える。

 それは、この部屋にある石にも、防衛装置とよく似た光る細い線が詰まり、そこから集まった線の束が下の大きな力に繋がっていた。


「ふむぅ、だにぃ。これもいっぱい切れてるだにぃ……どうするだにぃ?」


 小尾蘆岐は石に手の平をあてがい、内部を覗き込み聞いてくる。


「……どうするって?」


「繋げるのは簡単だにぃ。ただ、さっきのような事があるにぃ……正直、何が起きるかなんてわかんないにぃ。……実はちょっと怖いだにぃ……」


 さっきのこと?

 ああ、白い化け物か……ここであれが現れたら詰んじゃうね。

 ただ、せっかくここまで来たのに、何もしないで立ち去るのは勿体ない気がする。


「ん……そうだな。……まあ、一番やりやすそうな線で試してみたらどうだ? それで反応を見てみようぜ」


 意味があるかわからないけど、とりあえずやってみよう。

 どうせ考えてもわからないし、起きてから考えるしかない。


「わかったにぃ。実はこの部屋に断線している線がひとつ伸びているだにぃ。それを繋げばすぐに結果がわかるにぃ」


「……えっと、この部屋に?」


 ……ちょっと待て、こんな近くで影響を起こせば、直接被害を受けるのではないだろうか?


 止めようとしたが、時すでに遅く、小尾蘆岐は額を石に付けて能力を使い始めた。


「……なっ」


 そして、室内に大きな変化が起こった。

 ここだけではない、開けっ放しと言うか、楓が破壊したままの扉の先。

 通ってきた回廊の先にも影響が起きていた。


 なるほど、こいつはそういった装置だったのか……


 これは、地下空間の住居で人が暮らす上で絶対に必要な物だろう。

 原理や、原則は全くわからないけど、これで動きやすくなった。

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