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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検039

くっそぉ、です。

こいつは絶対に守るの、ですぅ。

背中に蹴りを入れるなぁ、でずぅ~

 さて、時間との勝負だ。

 小尾蘆岐が防衛装置を修復する間に、俺と楓で足止めできるか?

 ……ちょいと分が悪いな。


「いい加減にぃどけぇ、ですよぉぉ……」


 楓はのしかかる黒騎士を跳ね飛ばす。

 黒い集団に覆われ、薄暗くなった空間に明るさが戻る。


「小尾蘆岐、頑張ってもらうぞ。周りを気にしないで全力を尽くしてくれ。いいな?」


「ああ、まかせるだにぃ」


 上部からは頼もしい返事が聞こえる。

 しかし、黒い石に両手、両足を伸ばしてしがみついている姿はなんだか虫のようだな。

 ……本人は真面目そうにしているから言わないけど……


 楓は黒騎士を押し退けながら、俺に向かっている。


 両手で掴んだ鎌に意識を集中させる。

 別にそれで光輝くわけでも、変形する事もない。だが、なんとなく意志が通じた気がした。……頼むぜ。


「ご主人お待たせした、ですよぉ」


「よし、リュックを石の横に……もう置いたのか?」


 対応が早い。

 さすがにあれを抱えての戦闘は難しいようだな。両手が塞がるし。

 それにちゃんとリュックを守ったようで、裂けたり、潰れている様子はなかった。


「はい、ですよぉ。それと、ちびすけ。死ぬ気できばるがいいの、です。ご主人が守ってくれるのを感謝してキリキリ働け、です」


「よし、楓。さっさと蹴散らしてこい」


「もう、ですかぁ? 共に戦いましょう、ですよぉ」


 冗談が好きなロボだ。

 笑えるな。


「なあ、鎌が背中に突き刺さるか試していいか?」


「覚悟せいや、です。特攻はお任せ、ですぅ」


 いいロボだ。頼りにしてるぜ。

 おっと、ドヤ顔は止めるように。先に壊したくなる。


「それより……いいな」


「本当にそれで……いえ、もちろんご主人のお考えに、楓は従うのみなの、です」


 楓は小さく頷いてから黒騎士に体を向けた。

 拳を握り締め、魔波動を集約し始める。俺は横に少し動いて、鎌を斜めに構えた。


「頼んだぞ。あと、くれぐれも無茶をするなよ」


「はい、です……」


 楓は黒い群れに向かって駆け出した。

 接触する寸前で止まり、先頭の存在に正拳を打ち込んだ。

 触れた黒騎士の上半身は消し飛ぶ。

 俺から見てこいつは腰の下に弱点がある。これでは消滅に繋がらない。だが、楓は気にすることなく下半身に蹴りを入れて背後に吹き飛ばした。


 勢いよく回転しながら突き進む下半身の巻き添えになって、黒騎士の数騎が転倒した。

 俺は楓に続いて駆け寄り、転がった奴等に向けて鎌を突き刺して回る。

 ……狙うは塊からの光る線だ。


 湾曲した刃は、通り抜けながら引き裂くのに適していた。


 塊は心臓のような感覚を俺に与える。

 太い光の線がそこから全身に伸びて、それの何処かを断ち切れば、動きを阻害できると予想した。


 完全な破壊ではなく、足止めするのが目的。

 動きは鈍く、倒れてしまえば標的の位置も低いので、行動不能に陥らせるのは容易(たやす)い。

 光を断ち切った黒騎士は、その場で痙攣して震えていた。


「おりゃぁぁぁ、です」


 楓は横たわる黒騎士に蹴りを放って後方に飛ばす。

 そして、ふたたび俺の前方に、次の目標を倒していった。


「そのまま、左側だ」


 再び楓に追い付いて、鎌を打ち込みながら叫ぶ。


「はい、ですよぉ。いくらでもかかってくるがいいの、です」


「あのなあ、俺はそんなに長時間動けないからな……」


 化け物同士ならいざ知らず。俺は普通の高校男子だ。

 数キロとはいえ、重たい金属製の鎌を振い続けられるはずがない。

 だが、肩で息をしながらも、今は動き続けるしかなかった……辛いな。


 そのまま円を描くようにして、黒い石まで戻る。


「楓ぇ、近づけるな」


「了解、です」


 少し離れている間で、黒い石には数騎が取りついて登ろうとしていた。

 背後から光る塊を直接狙い突き刺して回った。

 体重をかけて引き裂くと、鎌の刃が通り抜けて弾ける。


 塊を失った黒騎士は、一瞬で黒い霧と砂塵と化す。

 そして、軽く痺れる感覚が残る。素手よりは断然ましだが、あまり衝撃が続くと握力に影響がありそうだ。

 消滅させるのは、最低限に留めておきたい。

 残るモノにも同様の処理を行った。


「次だ、このまま逆にいくぞ」


 楓に向けて声を掛ける。

 追いかけてくる存在を攻撃し、牽制しながら戻ってきた。

 石の上部を見ると、小尾蘆岐が必死に力を尽くしているのが見える。


「どうだ小尾蘆岐。いけそうか?」


「……頑張っているだにぃ。ううぅ……やっかいだにぃ!」


「おう頑張れよ」


 愚痴を言う余裕をがあるなら大丈夫だと確信し、反対の方向から向かってくる黒騎士を見つめる。

 近づく存在からは、感情が全く感じられない。

 黒獣からは、敵意のようなものがあった気がする。だが、これが後々大きく役立つはずだ。


 そんな事を考えながらも、楓と共に行動不能を増やす。


「あははぁ、です。上に比べてこいつらは弱っちい、ですよぉ」


「俺にはその違いとやらがわからん」


「こいつら硬さが全然ない、ですよぉ」


 そう考えると、まだここに集まる存在は完成度が低いのか……

 時間経過で強度が増して最終的にどうなるのだろう。

 旅館で対峙したのが最終形態なのだろうか? わからないけど、それなら……

 

「じゃあ、お前独りで殲滅できないか?」


「……オコトバヲニンシキデキナイノ、デス」 


 独りは本当に嫌なようだった。

 まあ、いいけど。


 楓が派手に破壊するが一番楽だ。

 だが尽きることなく現れてくる黒騎士を全て倒しきれないだろう。……たとえ弱いとしても。

 かなり制限させながら戦っているので、これなら力を使い果たす心配はなさそうだ。

 しかし、いつまでこんな戦いが続くのだろうか?

 ……正直考えたくない。


 こうして、時間稼ぎの戦いは続いた。


**


「だいたいこんな感じ、ですかぁ」


「あと少しだな、だいぶ積みあがった……」


 もうすでに、数十騎以上を行動不能にしてきた。

 俺の計画に従う楓が、考え通りに動いてくれたおかげで、あと少しで出来上がりそうだった。

 よし、これでなんとかなりそうだ。

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