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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検028

しくじった、です。

天井がこんなに脆いとは思わなかった、です。


でも、これで深部まで一気に行けそう、ですねぇ。ご主人の願いを、指示を叶えるの、です。


そのために邪魔なこいつらを粉砕して行くの、です。

まず魔波動の補給、ですよぉ。うふふぅ……

殺る、です。

 明るい室内から暗い穴に落ちてゆく。

 小尾蘆岐が持つ懐中電灯は消え、底の見通しが効かなく恐怖心が沸き上がる。

 やがて暗闇に包まれ、小尾蘆岐の叫び声が響く。


「おっ落ちるだにぃぃ!?」


「うっさい、です。だまれちび、です」


 楓は俺たちを抱えたままで着地。

 そのまま周囲に向けて蹴りを放った。周りからは重量物が倒れる音が響いてくる。

 それでも、漆黒の中から突き刺さる複数の視線、威圧感を感じ続けている。


「……ご主人無事、ですかぁ?」


「ああ、俺は平気だ、ここって黒騎士が大量にいた底の部分だよな」


「はい、ですよぉ。来るなら恋、です。乙女の一撃は重いの、です」


 本当に重そうだ。それに乙女だったのか?


「かかって来るだにぃ。楓ちゃんの一撃が炸裂するにぃぃ!!」


 小尾蘆岐は叫びながら懐中電灯を灯し、前方を照らすと俺の頭にしがみついて震えだした。


「うぅ……おもいっきり目の前にいるだにぃ」


「さっきの威勢はどこにいった? それに前だけじゃないぞ、完全に囲まれてるよ。……しかも奥の穴から続々と黒騎士が出てきているぞ」


「よく冷静に見てられるだにぃ……」


 今さらじたばたしても仕方がない。

 ただ、全方位を囲んでいる黒騎士が襲いかかって来ないのは不思議だ。

 ただ無言で(たたず)んでいるだけで、それがかえって薄気味悪い。


「一番最初に死ぬのはどいつ、ですかぁ? 一歩でも近づいた奴から殺る、です。うがぁ!」


 楓は挑発を継続している。

 それは止めて欲しいと願うも無駄だろう。実に楽しそうだ。

 ひょっとして、これに怯えて動かないのか? そんなわけないと思うけど?


「ご主人もっとお力もらう、ですよぉ」


「ああ、もう任せる……」


 この状態では光り輝く弱点もくそも無い。

 数騎ならなんとかなるが、完全に囲まれている状況で魔波動の節約など言ってられない。

 こうなったら楓にぶちかましてもらって、その隙に発生源の穴に飛び込んで活路を見いだそう。


 壁まで黒騎士が取り付いていて真っ黒だ……上がるのは無理だ。

 絶対にあいつらの手が届く範囲に近づきたくない。


「では、失礼する、です。くぅぅたまらん、ですぅ」


「いいなぁだにぃ。ねえ千丈、僕も後でもらうだにぃ。ずっと頑張っただにぃ」


 ……幼稚園の先生をしている気分だ。

 エイト先生の気持ちをここで味わうとは思わなかった。

 だけど、こんな園児はいないだろう……


 無邪気な大きい子供は正直かわいいと思えない。ちっちゃいけど態度はでかく、図々しい。


「ふうぅ、堪能しました、です。それじゃあ遠慮なく行きましょう、です。……でも、なんでこいつら動かないん、でしょうかぁ?」


「……さあな? でも壁のやつとか、穴から出てくる奴は動いてるぜ」


「まあ、どうでもいい、です」


「どうでもいいんだ。じゃあなぜ聞いた!?」


「聞いてみただけ、ですよぉ。さて、殺る、です」


 本当にどうでもよかったようだ。

 楓は拳を握り締めて、力を込めると魔波動が集中し始める。


 だが俺には一つ気になることがあった。

 それは、その手に天井から外れた照明装置を握っていることだ……

 いつまで持ってるんだ?


 俺の疑問を他所(よそ)に拳からは力が、魔波動が溢れ出した。


「ずっとぉ我慢してきたの、です。死にさらせぇ、ですぅ」


 楓は正面に向かって()を振り抜く。


 えっと……足かよ!?


 確かに両手は俺を抱えて、千切れた照明装置を持つことで塞がっているけど……

 こいつは余計な前フリが多い。演出だろうか?


 だが、突き進む衝撃は爆発的な暴風だった。

 一瞬で正面に立つ黒騎士を粉砕。勢いは衰えることなく正面の穴に向かい渦を巻きながら進む。


 やがて、穴にぶつかると内部に破壊の力を集約させながら突入。

 大砲のような轟音を響かせて突き抜けた。


 後に残るは舞い散る黒い粉と、大量の埃。それが小尾蘆岐の照らす懐中電灯の明かりに煌めいて、輝いている。

 身体に悪そうだ、マスク持ってくれば良かった。


 この攻撃は明らかにオーバーキルだった。

 まだ多くの黒騎士は残っているけど、一角は完全に排除された。

 魔波動の無駄遣いをしているが、結果は良好だ。


「じゃあ、ご主人さくっと行きましょう、です」


「よし、じゃあ降ろしてくれ、もう走れるぞ」


「嫌ぁ、ですぅ。このままいく、ですよぉ」


「なんでだぁぁ……うげぇ!?」


 俺と小尾蘆岐を抱えたまま楓は穴に向けて走り始めた。

 全力の走りは一気に洞窟と呼ぶべき穴を突き抜けて、漆黒の内部空間入り口に到達。

 楓は1度身体を屈めて、暗闇に向かって跳躍した。


「ご主人結構広いですよぉ」


「真っ暗でわかんねぇぇぇ……」


 長い滞空時間を経過し、楓は危なげなく着地する。

 光源は小尾蘆岐の持つ懐中電灯だけ。サーチライトのように光の帯が遠くに延びている。

 そこは地下だと考えられないほどの広大な空間だった。


「よいしょっと、ですよぉ。下には黒いのがいっぱいいる、ですよぉ」


「下だと? ……ここはどうなってるんだ? それと小尾蘆岐は平気か?」


「平気だにぃ。なんだにぃ? ……これは建物かにぃ?」


 照明を正面に向けると、かなり大きな石が積みあがった石壁があった。

 塀かな? それにしてもずいぶん高さがある気がする……


「ふう、だいぶご主人のお力を堪能した、ですぅ。ちょっと危ないので降りてもらう、です。斜めなんでお気を付けて、ですよぉ」


「斜め? ……うわっ!?」


 かなりの傾斜した場所に降ろされた。

 足を降ろした瞬間、バランスを崩し落ちそうになったが、楓が片手で掴み転落を防いでくれた。焦ったぁ……


「気を付けて、です。ここは30メートル45センチの場所になる、ですよぉ」


「30メートル!? いったいどんな場所だよ?」


「さあ、です? なんだかお城みたいな建物の中間あたり、ですよぉ」


「はぁ!? お城って名古屋城みたいな建物の事か? そんなわけないだろ……おい小尾蘆岐、もうちょっと全体を照らしてくれ」


 光源が小さく全体像が見えないので、楓の言っている真偽が判断できない。


「この懐中電灯じゃ無理だにぃ!?」


「ご主人手を放す、ですよぉ。しゃがんだ方がいい、です。安定します、です」


 俺は斜面にしゃがんで、両手をつけてバランスを取った。

 確かにこの態勢になると安定する。


 足元からは風が吹き上げてきて、高所にいることが感覚でわかる。


「では、ですよぉ。ご主人注目ぅ、ですぅ」


 楓は片手に掴んでいた照明装置を頭上に掲げた。


「はいっ、です」


 そして掛け声と共に照明装置から、煌々(こうこう)とした人工的な光が(とも)される。

 それは、白熱電球の明かりで、周囲が明確になった。


「なんだ、その機能は……」


「ご主人、こっちがぁプラスの楓、ですよぉ」


「はぁっ?」


 楓は右半身をこちらに見せてくる。

 その顔はニヤケた表情をしていた……イラッ!


「それでぇ、です。こっちはマイナスの楓、ですよぉ」


 今度はくるりと向きを変えて、左半身を見せる。

 その眉は下がって、ちょっと悲しそうな表情だった……イラッ!!


 まあいい。えっと、プラスとマイナスって、電気でも発生できるのだろうか?

 事実、白熱電球は光っているし電気が起こせるようだな。

 どういった仕組みなのだろう?


「楓は発電機だったのか!?」


「ちがうぅぅ、ですぅ。魔導まどう細胞さいぼうの組成を少しいじったの、ですよぉ」


「ごめん、わけがわからない」


「これは一体……なんだにぃ!?」


「ううぅ……なんでわかんないの、ですかぁ」


 そんなの俺にわかるわけがないだろうが……


 黙っていると楓は説明を始めた。

 偉そうに話すその表情に、俺は(いら)つきを覚える。

 だが、説明を聞かないと解らないので素直に続きを聞いた。


 果たして理解でるだろうか?

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