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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検023

ご主人の魅力はすごいの、です。

あんな不細工なやつらにも大人気なの、です。

自慢のご主人で嬉しい、ですぅ。

「どうだ楓、お前に結界は見えないのか?」


「ご主人だめです、楓には見えない、です。でも、あの黒いのが攻撃すると、少しづつ外に向けて移動しているの、です」


 やはりそうか、結界の強度がどれ程なのか、俺は判断ができない。

 だが、黒騎士が行う攻撃で外に動くのなら、いずれ破られるだろう。


「まずいな、このままじゃ……」


 外部にあいつらが溢れてしまう。


 あらためて黒騎士が現れたことについて考える……

 なぜ急にこんな事態になったのだろうか? 何かきっかけがあったはずだ。


 旅館に着いた時点では、ここは静寂そのものだった。黒騎士どころか小動物の気配ひとつとしてなかった。

 楓も宴会場に着くまで、気がついた素振りもしなかった。


「楓? こいつらの目的をどう考える?」


「わかんない、です」


 これは俺の質問の仕方がわるかったな。言い換えるか。


「お前は黒騎士と対話を試みただろ? それは、なぜだ?」


「……なんとなく、ですけどぉ。同じような魔波動をあいつから感じたので出来るかな、と考えたの、です」


「魔波動を感じた……だと?」


 たしかに、そうだな。俺に光の線が見えるということは、なんらかの力が働いている。

 そういった存在は大きな力に惹かれ……て寄ってくる!?


 はっ!!?


「どうしただにぃ千丈!? なんだか凄い汗だにぃ!!」


「あ……ああ、平気だよ。なにいってるんだ、汗なんて……」


「ふきふきっす、ですよぉ」


 楓がハンカチで顔から流れた汗を拭いてくれて、初めて汗をかいていることに気がついた。

 だが、それどころじゃない!!??


 バカは俺だぁ!!?

 何てこった、改めて考えれば、こいつら全部を俺が呼び寄せたみたいなもんじゃないかぁ!?


 どうりで黒騎士が俺を見ているわけだ。

 そりゃそうだ、力に惹かれて出てきたのなら納得だ。


 俺に近いやつは力に反応して向かってくる。距離が離れているモノは気配だけで、さ迷う結果となった。 

 そして、結界にぶつかった奴は攻撃を行うと……なるほど。


 この騒ぎの原因が……俺だったとすれば、すべてにおいて説明できる。出来てしまう。

 それが十年越しで、今日起きた理由わけを……


「なあ楓、一つ聞きたい。俺の力が引き寄せるというのは黒騎士に適応すると思うか?」


「ああっ、です。そういえば、楓は話そうとしても、あいつの意識は違う方に向いていたの、です。さすがはご主人、です。あんなのまで虜にするとは感服、ですよぉ」


 あんなのを虜にしたつもりは毛頭ない。

 ストーカーの方が幾分かましだ。もし、そうなら裁判所の命令でメートル単位の制限をかけられる。

 だけど、あいつらには制限などかけられないし、効くはずがない。

 続々と現れる異形ストーカーの存在など、ごめんこうむりたい。


「千丈、どういう事なんだにぃ? 僕にもわかるように説明して欲しいいだにぃ」


「……ああ、もしかしたらだよ。仮定の話として聞いて欲しいなぁ。たとえば、あいつらが出てきたのは俺の力に引かれてかもしれないなぁ、なんてね、そんなわけないよな。バカなこと考えたよ! 笑ってくれよ……あははぁぁ…」


「ご主人の魅力は威力抜群、ですぅ。あいつらみんないちころ、です」


 楓、余計な事は言わないで欲しい。

 そう言われると、元凶は全部俺だと責められるじゃないか。

 ……実は楓に嫌われているのだろうか?


 だって仕方がないだろう。そもそも、ここに望んで来たわけじゃない、けど……あぁぁ!!


「じゃあだにぃ。あいつら全部が千丈に……」


 はい、たぶんそうです。

 ……さあ、俺を責め立てろ! 覚悟はできたぞ。



「すまなかっただにぃ。僕が全部悪いだにぃ……」


「はあっ!? なに、言ってるんだお前?」


「僕が無理やり千丈を巻き込んだんだにぃ! 途中で何度も引き返すように警告してくれた。でも、聞かなかっただにぃ。おばあちゃんの誓約も、かよりの制止もすべて、きっと、これを予想していたのだにぃ……悪いのは……」


 小尾蘆岐が、そんな風に考えるとは思わなかった。

 てっきり、俺のせいでこうなったと責められると思い込んでいた。だけど、こいつはそんな奴じゃなかった。


 もし俺が逆の立場なら責め立てただろう。

 そして、ロープで縛って、置き去りにして、黒騎士が群がっている隙に脱出する手段を選びかねない……

 そんな自分の小ささが、ちょっと嫌になる。


「いや、自分の事もわからない俺が軽率だっただけだ。そうとなれば、どうするかを考え直す必要がある。前向きな対処方法について考えよう」


「千丈……ごめんにぃ」


「もうやめよう。謝って、謝られては無意味だろう。どうするか知恵を出し合おう。まず、全体的に振り返って考えないとな」


 とりあえず小尾蘆岐の父親が残した手帳だ。


「楓、手帳にある黒騎士の情報はどうなっていた?」


「はい、です。防衛装置と書かれていた物がそうだと予想する、です。それは、壊れていて制御できなくなっていると書かれていたの、です」


「俺達が止められる可能性があると思うか?」


「おそらく難しい、です。そもそも、どんなのだかわかんない、ですよぉ」


 まあそうだろうな……


「じゃあ、破壊はどうだろうか? 小尾蘆岐の父親はかなりの術者だったみたいだけど、たしか出来なかったと書かれていたよな?」


「ああ、そうだにぃ。おとうさんは防衛装置までたどり着いただにぃ。そして、破壊も、停止もできなかったと書かれていただにぃ。それで、最後に制御装置に向かって帰って来なかっただにぃ……」


 ……そうだったな、さて、根本的な問題だが、なんで制御装置と、防衛装置があるのだろう?


 制御装置とはいったい何を制御するための物なのだろうか?

 そして、防衛装置は何を守るの為にあるのだろう……


 最後に、ここの温泉はなぜ魔力を含んでいる?

 ただ、温泉は地下から湧くものだ。

 ここはやはり、地下に行かなければ、わからない事だらけだな。



「小尾蘆岐、宴会場の下に入り口があると書かれていたよな?」


「まさか、地下に行くつもりなのかにぃ。それは、無茶だにぃ。おとうさんも、どうしようもなかったと、書いていただにぃ」


「だが、現状を考えて対岸に戻る手段はないだろう。それに携帯も圏外で、助けを呼ぼうにも手段がない」


 そもそも電話を掛ける相手がいないけど……

 例えば、妹に助けを求めて掛ければ、死ね! と言われて通話が断ち切られるだろう。

 考えるだけでぞくぞくしてしまう未来が見える……

 ああ、悩ましい問題だ。


「そうだにぃ……だけど……やっぱり危なすぎるだにぃ」


「じゃあ、このままこの旅館で逃げ回っているか? 黒騎士や変なモノが増え続けている現状を打開する方法は?」


「無いだにぃ……確かに残された手段は……」


 論理的な結論で、この隔離された旅館からの脱出方法はもうない。

 状況は刻一刻と悪化の一途をたどる。

 どうなるかわからないけど、あがくしかない。見て考えるしかない。生き残るために。


「楓、コンディションはどうだ?」


「ばっちり、ですよぉ。今回はストックしてある魔波動の無駄遣いをしてない、です。前のようなヘマはもうしないの、です」


 そうだな、前回は魔波動をほとんど使い果たして、めちゃくちゃ苦戦したからな。

 さっきのように最小限で黒騎士を倒せば、ガス欠みたいな状況を先延ばしできるだろう。

 そうと決まればさっさと行動に移そう。


「さて、結論が出たな。もう手段は中心に向かうしかない。何があるかわからないが、きっと何とかなるだろう。出来なければ、まあ、あの世で親子の対面を果たすしかない。だが、それは避けたい。もっと、ずっと先の未来に取っておこう」


「そうだにぃ!! 今からおとうさんに会いに行ったら怒られそうだにぃ」


「だな! じゃあ、片道切符かもしれないけど行くか、逝きたくないからな」


「ご主人、行きたいの、ですか? 行きたくないの、ですかぁ? どっち、です」


「まあ、いいじゃないか。準備はいいな楓、頼りにしてるぜ」


「……はっ、はい、ですよぉ……」


「僕も頼って欲しいだにぃ……頑張るよ」


「お前は自分で歩こうな?」


「断る!! きっと千丈は僕に感謝をするだにぃ」


 感謝するわけないだろう。アホが。

 まあいいか、時間もないし行くとしよう。

 何が待つかわからない、湖城旅館の深部に向かって俺は第一歩を踏み出した……一台の家電と、背にはちっこい魔女を背負って。

視点変換ーー小尾蘆岐11ーー

ーー楓湖城の探検20回想ーー


あれれぇだにぃ?

たしか、前回は小尾蘆岐09だったはずだにぃ?

1つ飛んでるにぃ。小尾蘆岐10はいったいどこにぃ……


まあ、いつか見つかるかも知れないにぃ。


それより、千丈は歓迎の使者なんてバカにしているだにぃ。

怖がりにもほどがあるだにぃ。

ここは僕が颯爽と、その不安材料を払拭してあげようだにぃ。


「あれぇだにぃ? なんだか黒い壁が前にあるにぃ!?」


なんだにぃ? なんだか動いている気が……うげぇ!!??

人の背中を急に引っぱらないでほしいだにぃ、千丈はほんとうに強引……うぎゃあだぁにぃ!!? かっ壁がぶっ壊れただにぃぃ!!???

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