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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検011

おやつはまだ、ですかねぇ

全然楽しくない、ですぅ。


蜘蛛の巣がうざったい、ですよぉ。

 ダムの上を話しながらのんびりと渡る。

 小尾(こ お)蘆岐(ろ ぎ)の祖母も魔女らしい……


「それで、どんなおばあちゃんだったんだ?」


「普通だにぃ。魔女の能力はおばあちゃん譲りなんだにぃ」


「どうも普通のお年寄りの基準について、少し話し合う必要があるようだな」


「僕にとっては、ただの祖母だけどね。躾が厳しい……訳じゃなかったにぃ。本当に優しいおばあちゃんで回復ならなんでも出来るだにぃ」


「普通のお年寄りは魔法なんか使わねーよ!? でも、それだけ回復できるなら、なんで亡くなるんだ? どんな病気でも治せるんだろう」


「病気ならね。それならきっとおばあちゃんに不可能は無いと思うよ。でもね、人には寿命というのがあるだにぃ。魔女でもどうしようもないにぃ。それに130歳まで生きれば充分だって言ってただにぃ」


「130歳だって!? お前の祖母だよな?」


「正確にはひいばあちゃんだよ。おばあちゃんはずっと昔に死んじゃったみたいだにぃ」


 寿命以外で亡くなったのか。色々あったんだろう、さすがにそこまでは聞けないな。


「……そうだったのか。しかし魔女だろ。もしかして若返りとかも出来るのか?」


「出来るだにぃ。僕のおかあさんは、見た目なら20歳に見えるだにぃ。実際は50歳を越えてるだにぃ」


 小尾蘆岐はスマートフォンの画像を立ち上げ、こちらに見せてきた。


「お姉さんが二人いるのか?」


「違うだにぃ。僕の右がおかあさん、左がひいばあちゃんだにぃ」


 えっ? 両方20代前半にしか見えない。

 ひいばあちゃんと孫が姉妹としか思えない。おかしいだろ? 真ん中に写る小尾蘆岐は、年の離れた弟みたいだな。


 魔女ってなんなんだ? なんでもありかよ……まあいいか、今更突っ込んでもしかたがない。


「素敵な家族写真だな」


「ありがとうだにぃ。いつまでも若々しくいられるだにぃ」


 いつまでもか……

 リアルな叶○妹だな、作り物より天然物が幾分(いくぶん)ましな気がしてくる。作り物か、楓はずっとこのままなんだろうな。


「……はにゃ?」


「そういえば、お前も食べて成長するとかいってたけど、この先どうなるんだ?」


 楓に気になったことを聞いてみた。


「ご主人、それって楓が大人になるかということ、ですかぁ? 答えは……このまんま、ですよぉ。おっぱいを大きくして、固定することを研究中、ですぅ。今しばらくお待ちください、ですよぉ」


「そうか……気にするな」


 今のまんまか、そりゃそうだろうな。

 しかし、こいつはなんで俺がおっぱいを望んでいると思ったのだろうか? どうでもいいのに。

 アートブックの女性は巨乳ばかりだから、それで勘違いしたのかな?

 

  それより、ここが道なのかどうか少し怪しく感じる。

 なんせ、木々が生い茂る斜面の獣道だ。遥か下に水面が見えて、転んだらそのまま滑ってダイブするのは間違いない。


「なあ小尾蘆岐? 本当にこの道でいいのか?」


「合ってるだにぃ。あそこの車道を通ると、倍以上の時間がかかるだにぃ」


 そう言って、小尾蘆岐は上を指差した。

 俺はその方向に視線を向けると確かに道路らしきものが……


 見えるわけなかった。山の斜面は緑一色だぞ。


「わかんねーよ!?」


「そうだにぃ。ちょっと見えにくいけど、あそこら辺に道路があるはずだにぃ。使われなくなってだいぶ経つからどうなっているかわからないけど、ずっと山に沿ってあるはずにぃ。かなり大回りだから歩けば着くのが昼過ぎになっちゃうだにぃ」


「そうか、ここは下が怖いぞ……ん!?」


 下の湖面に人影があるのに気づく。と、いうか水面に誰かが立っていた。


「どうかしたのかにぃ?」


「なあ、小尾蘆岐、あそこに誰か立ってないか?」


「んん……あぁ、あれは、たぶん自殺者じゃないかにぃ。下にきっと沈んでるんだにぃ」


「ええっ!? おい、平気なのかよ?」


「なんでそんなに驚いているのかにぃ? あんなのそこら中にいるだにぃよ。気にしてもしょうがないにぃ。そのうち消えちゃうだにぃ」


「そうなのか? 日中に幽霊を見るとは思わなかった」


 じっと見つめると幽霊もこちらに気がついたようだ。刺すような視線を感じる。


「生きている人よりも死者の方が多いんだから当たり前だにぃ。それに、廃墟に入れば大抵はいるだにぃ」


「……なあ、帰っていいかな? 楓、確か見たい映画があったよな。よし連れて行ってやるぞ」


「うほほぉ、です。帰る、ですよぉ」


「待つだにぃ。あんなのちょっと見ただけで帰るとか、あり得ないだにぃ」


 ふざけんな、あんなの見て進めるか。ボケが!?

 冗談じゃない。たいてい居るだと? 俺は心霊体験をしたい訳じゃない。


「無理だっ!? だって怖いもん。あいつも手招きしてるし、ほら笑ってるぞ!?」


「だから、なんにもできないだにぃ。あそこからも動けないだにぃよ。それに千丈が近づいただけで消し飛んじゃう存在だにぃ」


「そうなのか? なあ、楓もそう思うのか?」


「はい、ですぅ。あんな、薄っすいのご主人が近づけば消えちゃう、ですよぉ。なんなら楓がぶちのめしてきましょうか、です?」


 こいつも、平気なんだな。

 なんだか騒ぐ俺が一番チキン野郎という気がしてきた。負けたくねーな。別に勝負をしている訳じゃないけど。


「わかったよ、先に進もうぜ。本当にあいつは動けないんだな?」


「動けないはずだにぃ。今まで見た霊体で、動き回るのはもっと影の薄い(もや)みたいなのだにぃ。あれだけ形を保っているのは、なんらかの縛りつける物があるだにぃ。それからはたいして離れられないだにぃ」


 ここまで、念入りに説明されれば、もうなにも言い返せない。

 が……なんとなくだが、少しづつ岸に近づいて来ている気がする。気のせいかな?


「ご主人、映画はどうなるの、でしょうかぁ?」


「ああ、また今度だな」


「うぅぅ、ですぅぅぅ」


 あまりの残念具合にちょっと心が痛んだ。

 それほど楽しみにさせてしまったのか。しょうがない、近いうちに連れていくか。


「じゃあ、先に進もうだにぃ」


 小尾蘆岐は手を上げながら先に進む。バスガイドさんが先導するようだな。


 そして、何度か危険な崖を通り抜けて、少し広い湾のような所に到着した。


 その真ん中には小島が1つあった。上部に古い旅館が建っている。


「これなのか? ……その旅館は? ……なあ、小尾蘆岐?」


「そうだにぃ。これが晩田(ばんでこ)湖、唯一の宿泊施設だった、小尾(こ お)蘆岐(ろ ぎ)旅館(りょかん)だにぃ」


 安直な名前だな!? 小尾蘆岐家の旅館だから、そんな名前なのか!?


「ぼろっちい、ですねぇ」


 まあ、そりゃそうだろう。ざっと十数年が経過してるだろうし。


 その旅館だった建物は外装が剥がれ落ち、白いモルタルが剥き出しになっていて城の漆喰壁に見える。瓦屋根は原型を留めているが、所々に草が生えていて、まさに陸の孤島に建つ廃城の様相をしていた。


 確かに年数が経過し荒れ果てているのだが、建物自体が纏う何かに俺は気がついた。


 なぜだかわからないが、近寄りがたい冷たい風が建造物の廻りに渦を巻くように吹き荒れているように感じる。

 湖面はさざ波1つなく、鏡面のように建物を写し出している。


 いつからか、(せみ)時雨(しぐれ)もピタリと止んでいた。

『楓湖城の探検』をお読みくださり感謝いたします。


今回はちょっと本文の追加解説を致します。


本文抜粋


「普通のお年寄りは魔法なんか使わねーよ!? でも、それだけ回復できるならなんで亡くなるんだ? どんな病気でも治せるんだろう」


「病気ならね。それならきっとおばあちゃんに不可能は無いと思うよ。でもね、人には寿命というのがあるだにぃ。魔女でもどうしようもないにぃ。それに130歳まで生きれば充分だって言ってただにぃ」


**


人の寿命はどのくらいが限界でしょうか?

これは、細胞の寿命に関係があるとされています。


体にある細胞は分裂できる回数に通常限界があります。つまり寿命があります。


これには、染色体(遺伝情報)に『テロメア』と呼ばれる配列があり、分裂する毎に減っていきます。

これが尽きたとき、細胞は分裂が出来なくなります。(正確には半分ぐらいで分裂が止まります)


その限界を寿命とすれば、120歳から130歳と言われています。


じゃあ、そのテロメアを伸ばせばいいじゃん!!解決


と、思いますけど。


実は、その永遠に分裂限界を越えた細胞が"ガン細胞"なのです。

制御のされたガン細胞なら超長生きできるでしょう。


ただそれにも問題があり、細胞の死は非常に重要です。


人は胎児の時、始めはドラ○もんのような真ん丸い手をしています。やがて、指間の細胞が自ら死んで手の形状となります。これをアポトーシス(細胞の自然死)と言います。


細胞を全て寿命を伸ばすのは、この複雑なメカニズムを狂わせます。


人の細胞は自分で死ぬことで、人の形状を保ちます。これが起きなければ人の形にならないのです。


病気なら治せるけど、そうでないものは弄れない。

それが、私の考える回復の魔法です。空想ですけどね。


いつか、かならず寿命を伸ばす薬が開発されます。

果たして、その寿命延長の選択を選ぶでしょうか?

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