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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検003

 うぅ、良い香り、ですよぉ。

 あまいあまいがすぐ目の前に、ですぅ。


 早く出来ないかなぁ、です。お持ち帰りしてご主人を探さないと、ですよぉ。あのちびすけの気配がびんびんとするの、ですぅ

「なあ、小尾蘆岐さんよ、ひとつ聞いていいかな?」


「何だにぃ、千丈?」


「いつまで手を繋いだままなんだ? 今更逃げようとは思わないんだが」


 小尾蘆岐は俺の声を聞き慌てて手を放し距離を取った。なんだ無意識だったのか?

 なんで赤くなってるんだ? こいつは…本当に本物……いや、考えるのは止めよう。お互いに不幸になってしまう。


「千丈が逃げないようにしてたんだにぃ!?」


「わかってるよ、お前に誤解を解いてもらわないと困るからな。ここで距離を開ければ痴話喧嘩とか言われかねない」


「わっ解っているならいいだにぃ…うぅ千丈と痴話喧嘩とか…そんな…」


 なんなんだよ、こいつは本当に訳がわからん。


「それより、何処(どこ)に行くんだよ。俺の家は反対方向なのだが」


「ああ、すぐそこだにぃ」


 小尾蘆岐が指差す方向にはハンバーガーショップがあった。


「さっさと入ろうだにぃ」


「ああ、別にいいけど……」


 店内に入ると多少のお客がいたが別に混んでいるほどではなかった。レジに並んでお互いに注文をする。

 俺は特におなかが空いてなかったのでコーヒーだけを注文した。小尾蘆岐はシェイクを選んだ。

 その味はチョコ味だった。こいつも甘党か……


「じゃあ奥の席に行こうだにぃ。そこで話そうか」


 注文した商品を受け取って、奥のボックス席に入る。

 この席は道路から見えない死角となっているので、いきなり外から学校の生徒に覗かれる心配がない。ベストチョイスだ!

 この状況だけなら何ら隠す必要もないが、先ほどの階段踊り場での出来事を多数に目撃されている状況が俺の心を蝕んでいるようだ。


「とりあえずカンバイだにぃ」


「コーヒーとシェイクだけどな」


「未成年にお酒はだめだにぃ。これは僕の原動力だにぃ」


 そう言って、チョコシェイクを全力で吸い始めた。まだ凍っているので中身がストローを上がってこない。顔が真っ赤になっている。可愛らしいな、まるで親戚の子供を連れてきているようだ。


「ふう、それじゃあ話そうかにぃ……まず、僕の願いだにぃ。実はある場所に行くのに協力をしてもらいたいんだにぃ」


「ひとついいかな小尾蘆岐、そもそもなんで俺なんだ? お前は友達がたくさん居るだろう。頼みなら聞いてくれる人間は多いと思うのだが?」


「確かに! 僕に友達は多いよ」


 ちっ、やはりこいつは敵だな。


「千丈!? なんで僕をそんな親のかたきのようににらんでいるんだにぃ?」


「で、そのお友達の多い小尾蘆岐さんは、俺なんかにかまうんだと聞いたんだ?」


「う、うん。ちょっと危ない場所だから普通の人にはとても頼めないんだにぃ。千丈なら経験豊富で機転が利くのは先日ちゃんと見ていたからパートナーとして申し分ないのだにぃ」


「経験豊富は違うと言わせてもらおう。褒められるのは悪い気がしないが……で、その危ない場所とは?」


「その前にこれを見てほしいのだにぃ」


 そう言って小尾蘆岐はポケットから、あるものを取り出した。


「なんだそれは?」


 小尾蘆岐の取り出したもの、それは一台のスマートフォンだった。

 どう見ても普通のスマホだ。色がピンクなのはちょっと違和感があるが、それ以外におかしなところはない。

 何かの魔道具なのか?


「いや、別に特別な機械じゃないと思うけどにぃ? なんでそんなにこれを見つめてるのかにぃ」


「破壊光線を出すとか、呪いの人形が飛び出したりしてこないだろよな?」


「あほだにぃ。マンガじゃあるまいし、そんなわけないだにぃ。いったい千丈は今までどんな体験をしてきたんだにぃ?」


「出ないならいいや。で、それがなんだ? 機械にはそんなに詳しくないけど。俺には普通のスマホに見えるのだが」


「普通のスマホだにぃ。これを見せたかったんだにぃ」


 小尾蘆岐はそう言って、画面をタッチして動画を起動した。

 それは世界的に有名な動画投稿サイトだ。そう、キーチューブ動画だった。


「…? で、これがなんなんだ」


「この動画をよく見るだにぃ」


 動画? 画面には山間部の道を移動する映像が流れだした。そしてカメラを片手に軽快にしゃべる人物がいる。

 あれ? この声はどこかで聞いた事がある気がするぞ?


「動画の撮影者は僕だにぃ。これは僕の動画チャンネルだにぃ」


 なにぃ!? 確かに声に聞き覚えがあるとは思ったが、目の前の人物だったとは。

 動画の下には視聴回数が表示されている、えっと数字が多いな15万回!?

 うーん、実は凄いのかどうなのかよくわからないけど?

 鼻息荒く、顔を赤くして興奮している小尾蘆岐を見ると、正直引く……

 いいのだろうか? こんな奴に係わっていると、ろくな目に合わない気がするぞ。異常者はあの一台で充分足りている。


「なんで千丈は黙っているのかにぃ? ほらぁ、ここで大きな鳥が飛び出してきて僕が転ぶんだにぃ。ここでみんな大爆笑してコメント欄が爆発したんだにぃ!」


「そうか、よかったな」


「ほらここだにぃ、あははぁ。凄いでしょう!」


「本当だ。鳥さんだな」


 どうでもいい。

 無駄な時間を過ごしたもう帰りたい。


「で、なんなんだ? この動画がどうしたっていうんだよ。散策と面白い出来事だという事は分かったよ。今度家でも見てやるからもういいだろう」


「ああ、千丈、違うだにぃ。これはまだ始まりでこれからが本番だにぃ。ちょっと待つだにぃ」


 小尾蘆岐は動画の進行バーを右にスライドして動画を進めた。

 そこに映っていたのは、ある建物の内部を小尾蘆岐が探索する姿だった。その内部の状況が凄まじかった。


「おいおい? なんだこれは……この動画はいったい!?」

引き続き白物魔家電楓『楓湖城の探検』をお読みくださり感謝致します。


 昨晩投稿した小尾蘆岐との会話が続きます。楓の登場は今しばらくお待ちください。きっとバケツパフェの列に並んでいるところでしょう。

 さて、小尾蘆岐はキーチューバだったという設定です。何の動画なのかは次回作で判明致します。

 キリの良い所までサクサクと投稿をしたいと思います。

 これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


菅康

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