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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第三章 楓湖城の探険
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楓湖城の探検001

 楓の新たな冒険がはじまるっす、ですよぉ


 しかし、あのチビすけはなんだかいけすかない、ですよぉ。楓の女の勘がざわざわと蠢く、です。


 隙を見ては寄ってくる害虫を駆除してやりたい、ですぅ。

 小尾盧岐(こおろぎ)(りん)

 この人物と知り合ったのは体育館での出来事が切っ掛けだった。霧先かより先輩の後輩で俺と同学年の生徒だ。

 そして、魔法を使える一族で俺も傷を(いや)してもらった事がある。どうやら回復の魔女らしい……


 この学校にはいったいどれだけの魔物がいるのだろうか?

 考えたくないので触れずに済むならそうしたい。自分から探すような真似は絶対にしないだろう。だが、願い虚しくも向こうからやって来る。小尾蘆岐はその一人だ。


「やあ、今日もお会いできてうれしいだにぃ」


「ああ、おはよう小尾蘆岐」


「なんだか元気がないだにぃ。僕は心配しているんだよ」


 なんでこいつは俺に話しかけてくるのだろう? 

 そもそも、ちょっと前に話しただけなのに、なぜ親しげに出来るのだろうか? 俺にはとても真似が出来ない。


「なんだにぃ。そんなに見つめて、僕の顔になにか付いているかにぃ」


「いや、なんでもない。それより後ろに友人達を待たせているぞ」


「ああ、そうだったにぃ。じゃあまただにぃ」


 そう言って小尾蘆岐は歩いていった。

 ちっ。あいつは常に数人のグループで歩いているのだ。別に羨ましい訳でない、断じてない。


 俺だって友人ぐらい……


「ご主人、何をぼけっとしているの、ですかぁ? なにか気になる事があるなら楓にも教えて、ですぅ」


 いつのまにか、うしろに立つ()があった。


「ちょっと考え事をしていただけだ。別に大したことじゃない、気にするな」


「はにゃあ、です?」


 これが白物しろもの魔家電まかでんかえでだ。

 未来の自分自身が送ってきたアンドロイドで人間じゃない。そして、友人では断じてない。


 勘違いしないでほしい。これは家電だ。未来の一般家庭に普及している電化製品である。


 ちなみに俺は千丈(せんじょう)(いん)と言う高校2年生だ。

 そして、魔波動と言われるよくわからないものが人より少し多く出ているらしい。


 魔波動については、まだ発見されてない未知の力だ。

 いや、発見されてないは違うな。


 異能力と呼ばれる超能力、法力、魔術などはこれを使う事で奇跡のような出来事が起こせるそうだ。

 それは、五条ごじょう二弦にげん先輩の受け売りだ。

 未だ誰にも観測されていない未知のエネルギー。それが魔波動だ。


 俺はある出来事をきっかけに少し見えるようになった。そこら中に漂い、周りの人や果ては石ころからもそれを感じる。

 この魔波動が引き起こす出来事に巻き込まれて、日常はどんどん非日常に変化して行く。

 壁を隔てた場所で起きているのに、気が付かない事があるだろう。それに近い事だった。


 俺はずっと見ていなかった。学校に魔女がいる事も理解の及ばない力が満ち溢れた世界も、それは自分の身に降りかかるまで気が付かない。


 気づける筈がない。


 そして、気がついてしまえばいや応なしに巻き込まれるだろう。心してほしい、いつでも誰の身にでも起きえる出来事なんだと……


 今回は小尾蘆岐に(まつ)わる出来事だ。

 あいつの趣味に巻き込まれた事に始まり、この地になぜ魔女がいるのかが少しわかるだろう。


 そんな悲惨な1日の出来事だ。



 第三章

 かえで湖城こじょうの探検



 最後の授業が終わり、帰り支度をしている俺の横に楓が来た。


「ご主人、今日もお疲れ様、ですよぉ。この後、ですがぁ。楓と駅前のファミレスにでも……」


「却下だ! 俺は帰るぞ」


「何で、ですかぁ!? 放課後の楽しみじゃない、ですかぁ?」


 なぜ、こいつとファミレスに行かねばならんのだ?

 拒否の言葉を聞いた楓はうるうると涙を溜め始めた……

 今は衆人(クラスメイト)の目がある、まずいぞ!?

 これじゃ俺が泣かせたみたいじゃないか。


 事実そうだけど…なんか納得できない。


「ちょっと待てよ、クラスメイトの誰かと行けばいいだろう?」


「クラスメイトぉ?」


 おい! なぜ首をかしげる?

 同級生の存在を無視するような発言は止めてほしい。なにか言い訳を考えないと……面倒だな。


「どうした、帰らないのか?」


 俺に話しかける人物その2が来た。このクラス内で関わる人物は少ない、と言うか花咲(はなさきと楓以外は居ない。


「今、帰ろうとしている最中だ」


「聞いてください、ですぅ。そこの人ぉ、です」


 そこの人はないだろう、クラスメイトなのに……

 楓は人の名前をほとんど覚えない。唯一霧先先輩だけは、かよりと呼ぶ。


「……どうしたんですか、楓さん?」


 ほら、花咲もかなりしょげてるよ。


「ご主人が楓に冷たいん、ですぅ。必死に午後のデートを申し込んだら却下されましたぁ、ですぅぅ」


「はあ……千丈お前、楓さんがせっかく誘ってくれたんだから行けばいいだろう。むしろ俺からすると羨ましい話だぞ」


「なら花咲、お前が一緒に行けよ?」


「俺がか?」


 自分を指差し、ほんのりにやける花咲がいた。


「嫌、ですぅ。ご主人がいいん、です」


 ちっ。でたよ、このわがまま。

 なんなんだこの家電は、自己主張と要求する内容が利己的すぎる。花咲はにやけたままで凍り付くという難しい表情をしている。


「そもそも、ファミレスになんで行くんだよ?」


「今、ですねぇ。イチゴさんの期間限定パフェさんがあるん、ですよぉ。もうたまらない、ですぅ」


 甘党のロボか、うざいな。


「そっ…それなら、駅ビルの上にあるお店で特盛イチゴどっさりパフェ生クリームバケツ盛りと言うのがあるよ」


 花咲も必死に会話に加わろうと爆弾発言をしてきやがった。

 なんだそりゃ? そんなの食えるわけねえだろうが、そもそも生クリームバケツ盛りって聞くだけで胸焼けがしてくる。


「なんなん、ですかぁ!? その魅力的な響きは、ですぅ」


 この甘党ロボが喰いついたよ。


「あぁ……小さい店で穴場なんだ。あまり知られていないけど」


「どこ、ですかぁ? 早く教えるの、です」


 この話が聞こえたのかクラスの女子数名が近づいて来た。

 楓と花咲を囲んで楽しそうにスイーツの話題で盛り上がりだした。

 俺はそこはかとない疎外感に包まれ、居場所のない現実を痛感した。


 分かっていたのさ、俺はここにいる資格がないと……黙ってそのまま教室の後部扉より廊下に出た。

 扉を閉める前にもう一度振り返ったが、誰も俺を見ていなかった。

 楓のお誘いを断るという目的は達成したのだが、何だろう? このむなしさは。誰か教ええてくれ。


 一人昇降口に向かい歩く。

 いいや、もう帰ろう。階段って急だな転ばないようにしないとな。


「千丈にぃ…」


 それは、階段踊り場に降り立った時だった。背後から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 白物魔家電楓の第三章『楓の湖城探険』を始めました。


 そして、新しいキャラの小尾蘆岐凛が登場します。

 このキャラは楓についで個性が強く謎が多い人物です。楓と共にこの作品に彩りを添えて行ければと思います。


 そして『楓太古とのふれあい』から気がつけば一月近く経過してしまいました。遅くなりましたことお詫び致します。


 そんな作品にも関わらず多くの方に見ていただき、気がつけばPVも20.000に達しようとしております。

 多くの方に励ましのお言葉を頂けて、それが心の支え、執筆のモチベーションになりました。深い感謝と御礼を申し上げます。ありがとうございます。


 それでは、舞台を変えても、主人公と楓の絡みはいつも通り、より過激に続きます。

 どうぞ最後までお付き合いお願い致します。


菅康

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