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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第弐章 予備備品室の幽霊譚
18/115

諦めの悪い魔女

 あの男は、楓の有効性に気がついているよう、ですぅ。


 楓は体育館でバスケットに興奮して、溜めていた魔波動を無駄遣いしてしまった、です。

 今、ご主人にくっつきながら気づかれないように集める、ですよぉ。ハムハム、ですぅ。

 五条先輩から、内に秘められた力についての話を受けた。新たな超能力への目覚めを想像して浮かれる俺に、現実が突きつけられる。


 それは、五条先輩から説明された、そうなる可能性は低いと言う事実だった。


 ただ、秘められた力の使い方については、楓という存在を提示された。


 混乱した俺の取る手段は…


 **

 018

 諦めの悪い魔女


「俺が力を使わずに、楓を使う?」


「ああ、人ではない、幽霊でもない、それが何かと聞かれると俺にもわからんのではっきりと答えることは出来ない。それでも聞くか?」



 答えは、未来から来た、人形魔家電アンドロイドと言っちゃうかなぁ。でも、五条先輩は本質を見抜いていそうだ。


 なんて、考えていたら霧先先輩とばっちり目が合う。


「いったい、何を千丈くんは考えているの?」


 先輩は心を見通す魔女だ……

 隠し事が出来ないということは、黙っていても、無駄と言うことですね。


「霧先先輩、それについては後程ご説明させていただきます」


「それならいいわ、 絶対よ」


 霧先先輩、念押しをしますね大丈夫ですよ、逃げません。

 逃げ仰せる自信は微塵もありませんから。


「どうするんだ? 千丈、聞くのか、聞かないのか? 用がないなら俺は消えるぞ」


 消えるって……文字通りドロンっすか?


 それは困るぞ。



「いえ、是非ともお聞かせください」


「ああ、楓は人ではない、もちろん魔女とも違うな、どちらかと言えば、精密な機械を見ているようだ」


 さすが、五条先輩だ、ほぼ本質をついている。

 俺は曖昧な相づちを打った。


「俺も、生前(・・)は、これほどの流れを見る事は出来なかった。身体が無いとこうも変わるものか…」


「それって、どういう感覚なんですか?」


「うむ、今は大気中を霧のように、力が漂っているのが見えるんだ、昔は感覚だけで強弱を判別していた。ちなみにお前は加湿器みたいだ」


 シュワシュワ、もわもわしてるんですね。


「それに、楓からは一切力が漏れていない。内部には電気回路のように走り回っていて、中心に何か『高速で動く塊』が見える」


「塊? ですか…」


乙女(・・)の大事な所は、覗かないで欲しいっす、です」


 楓は両腕で、自身の身体(ボディー)を抱き締めたつもりだろうが。

 まだ背中に張り付いたままでいるので、俺に抱きついただけだ。


 ちなみに、その乙女の回路は壊れている。

 修理は有償なのかな? たしか保証期限は切れてるんだよなぁ。


「まあ、そういうことだ。その回路を通して、腕でもどこでも力を集中できるようだな」


「はあ、そうなんですか……それで五条先輩、俺が楓を使うとは、どういうことですか?」


「楓を見ていてわかったが、自身で力を産み出すわけではないようだ、外部からの補給をしている、先程の俺が作った式神と闘う際は大幅に力を減らしながらも、千丈お前から吸い上げていた、そして今もな」


 俺は、補助タンクか何かか?

 今なお、俺から吸い上げてるんだ...


「お前の持つ力は恐ろしい程だ、今まで感じてきた物とは桁が違う。それは人を、魔を狂わせる。1度に取り込む量が多い場合には確実に精神異常をきたすだろう」


 なるほど! それで霧先先輩は、おかしくなったのか……


『きゃはぁ!』とか、『ひゃっはぁあぁ!!』等とは、絶対に言わなさそうだったのに、五条先輩を顕現させるとき、あんなに『はっちゃけた』のは、そういうことだったのか。


「なるほどって……いい加減にしろ、楓ぇぇ! 離れろよぉ」


「取れないっす、ですよぅ」


 嘘をつけぃ! 腕の締め付けが強くなったぞぉ!?


「まあ、もうしばらくはそうしてやれよ、お前を守るのにだいぶ力を使っていたようだしな」


 守る? …だと!?


 おもいっきり俺を、前面に押し出したじゃないかぁ。背後からぶん殴り続けるのが守ると言うのか……


 認めんぞぉ!?



「五条先輩!? 楓を甘やかしては行けません、こらぁ!? 顔を擦り付けるなぁ」


「楽しそうだな、実にいいコンビだ」


 冗談じゃないぞ!? なぜに、こんな状態をあの二人(一人は幽霊だが)は、こちらを微笑ましく見ているんだ。


「ま、それはそうと、かより迷惑をかけたな」


「ええ、兄さんは本当に……」


「すまない。こんな姿になったせいで、ずっと心配をかけたな」


「ううん、こうして逢えたのだからいいの、これからゆっくり話して、そして今までみたいに…」



 やっと、霧先先輩の望みが叶うんだな、本当に良かった。



「それについてなのだが、そうも言ってられないんだ」


「えっ! どういう…事なの?」


「お前や、千丈に貰った力で、今はこうして話せるように自我が回復したが、やはり肉体がないと形を保てないんだ」


「じゃあ、もう一度私が…」


「残念だが、周りの力を寄せ集めても、減る方が早いし、千丈の力は強すぎて、この肉体のない身体にはこれ以上耐えられないだろう、意識を保つことも出来なくなる」


「替わりの肉体を探せば………くっ!?」



 霧先先輩は手を握りしめて、五条先輩を見つめる。

 眼には大粒の涙が溢れて、端から零れ出す。


「そんなものは、無いだろう。たとえ抜け殻のようなものがあったとしても入り込むなど無理だ」


「どうすれば……」


 二人は、俯いて言葉に詰まっている。


 仲の良かった二人が、これからゆっくり語り合える筈だったのに、その時間は少ないという事実が五条先輩から伝わる。霧先先輩は何のために、ここまで頑張ったのか。


「じゃあ、俺はそろそろ消えるぞ、精神の固定もそろそろ限界だ…」


 消えるぞって、そんな、まだ霧先先輩とも、さほど語り合っていない。むしろ、その貴重な時間を俺のアドバイスなどに費やしてしまった。


「五条先輩、なんとか、せめて今日1日ぐらいは、なんとかならないんですか?」


「とてもじゃないが、それほど長い時間は……無理だな」


「待って兄さん! やっと逢えたのに、なんでそんなこと言うのよ」


「世には(ことわり)というものがあるんだな。この姿になり、初めてわかった、肉体と言う(かせ)は、存在を固定する為の役割があり、それは縛りと言うだけでなく存在を守ると言うことだ、身体を大事にするのだぞ、本当にかけがえのないものだからな」


 そう言って五条先輩は、手の平をこちらに向けた。

 その指先は透けている。


「えっ、兄さん、なんで手が…透けてるの…? やっと、長い間我慢してきたのに、頑張ったんだよ、かよりは………」


「仕方がないのだ、お前が、千丈が与えてくれたこの力で、こうやって話すことが出来た。それは貴重な時間で、俺にとって最後の時間だ、もう充分に満足をした」


「ダメよぉ!? まだ全然話してないもの、家族で離ればなれになっても、兄さんはずっと側にいてくれたじゃない、死んじゃってからも」


「ああ、そうだな。離れても俺達は家族だった。まさか、この学校にお前が入るとは思わなかったけどな、家の関係で大っぴらに話せないことは仕方がなかったが、ここでは良く話しをしたな」



 予備備品室に"いたカップル"と言う話は、こういう事だったのか。

 霧先先輩、五条先輩の家関係は俺には解らないが、霧先先輩が―――魔女の願った顕現は実現した。だが、その時間はあまりに短い。



「うん、良く話しをしたね……兄さんと一緒に登下校してみたかったけど、出来ないから。ここで話すのが私の一番だったの」


「そう言って貰えて良かった。これからも元気で良い跡取りを作り、霧先家をしっかりと支えて欲しい。俺は家を離れたが気持ちはずっとあの家にある」


「うん、家の事は心配しないで、しっかりやるから。魔女家系の長としての責務はわかっていいるわよ…」


「そうか、兄貴の五条家についても安泰だろう。これでもう、心残りはない、せめてお前の伴侶を見たかったが、あの世でその報告を待つとしよう」


「……ううん、私ね、兄さん、魔女になったんだよ」


「ああ、そのようだな。しっかりと引き継ぎの儀式を終わらせたようだな。そのピアスで解った」


 髪で隠れている耳には、一粒の金色に輝くピアスがついている。校則でアクセサリーは禁止されているのでずっと着けているわけではないのだろうが、俺は初めに会ったときに、その存在(・・)に気がついていた。


 そのピアスから発せられる何かに、目が引き寄せられたからだ。




「魔女は傲慢で、我が儘なんだよ、だからね……」


 霧先先輩は、下を向いて黙ってしまった。五条先輩も訝しげに見ているだけで、なにもしようとしない。


 どうしたんだ、そう考えて霧先先輩に半歩近づいた。



「諦めないよ、せっかく出逢えて、少し声を聞けただけでなんて、そんなの……絶対に認めない!!」


 霧先先輩は急に、俺に向けて飛びかかってきた。

 すぐ目の前に居たので、どうにも対処が出来なかった。


 霧先先輩は、俺に抱きついてきた。


 とっさに楓の左手が握り拳を作る。俺は慌てて左手で抑え込んだ。

 楓が生身の先輩を殴ればどうなるか、そんなことは充分に先程までの流れで把握している。


 楓は俺の手を吹き飛ばすことなく抑えてくれた。

 だが、そのせいで対処が遅れた……



 魔女である霧先先輩は、俺から力を吸い上げることが出来る。手の平だけの接触と違い、身体全体での接触は想像以上だった。


 楓が舌打ちをしたのを聞きながら、俺は意識を失いかける……そして、遠くに重く響くような音を聞いた……


 それは、俺が床に倒れた音だった。

 こうして、完全に暗闇の世界に沈んで行った。

**謝辞ぃ、です**

初レビューを頂けましたぁ~、ですぅ。


"菱川あいず"さまぁ~楓は大感動、ですぅ。

楓の本当の心を、解ってくれるのはあなた様ぁ、です。喜びで、胸部パーツが膨らむぐらい嬉しい、ですよぅ。


ありがとうございます、ですよぉ。


本日も、お越しくださった皆々様には感謝、感激の大豊作、ですぅ


**

なお、最新投稿はTwitterで投稿時期をお知らせいたします、です。http://twitter.com/yasusuga9

ご意見、ご感想は"楓"が責任を持ってご主人に良いことだけお伝えするっす、ですよぅ。

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