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白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第弐章 予備備品室の幽霊譚
16/115

新たなる旅立ち(その壱)

楓はご主人と遂に1つに...です。

もう離れませぬぅ、ですよぉ。


疾風怒濤の大活躍を暫しお待ち下さいませぇ~、です。

今回も2回に及ぶお話しその壱

"新たなる旅立ち(その壱)"が始まりますぅ、でーす。

 予備備品室で出会った男子生徒の名前は、五条二弦(ごじょうにげん)ということが解った。


 そして、霧先かより先輩の兄らしい。


 霧先先輩が顕現させて、既に死亡していることを伝えるはずだった。だが既に自分自身で死んでいることを理解しているらしい。


 俺達のとるべき行動は……


 **

 新たなる旅立ち

 016


「あんな事って、にいさんは、もう死んでいることを知っているの?」


「そりゃそうだろ、ああ、幽霊って言っても足はあるんだな。俺は五条家の跡取りだぞ…いや、もう違うか。跡取りではないな」


「それは、そうだけど……でも、にいさんはずっとここにいたじゃない。なんで、私に今まで何も言ってくれかったの?」


「そうだ、ここにずっと俺は………悪いがその辺の記憶は曖昧だ。正直に言うと、覚えていない。そもそも、なぜ、ここで死んだはずの俺が時間経過を経て、立っているのかが解らない」



 顕現をした時、する前の記憶はないらしい。

 霧先先輩と五条先輩は兄妹(けいまい)で名字が違うことも、きっと複雑な事情があるのだろう。



「にいさんは、ずっとあの自転車の横に居たのよ」


「そうか、こいつとの付き合いも長いしな」



 そう言って五条先輩は、傍らにある自転車のハンドルを撫でた。

 思いのある()宿(やど)る、形を保つ為の依り代。

 そいうった()が、五条先輩にとって、自転車だった。



「そうよ、きっと家から持って行った()だから。今は五条家の当主は、一弦にいさんが養子として入ったのよ」


「そうか、なら安心だ。俺が死んでどのくらい経った」


「1年が経ったよ、去年の今頃……だったわ」


 霧先先輩の目尻には涙が溜まっている、ずっと話せなかった事が、今は出来ている。対話することのできなかった兄の影と向き合い、たった独りで語りかけ続けた1年は、それは辛い日々だったろう。


 話を聞いていると、仲の良い兄妹関係が見える。

 良かったです、霧先先輩。


「1年か……よく消えなかったものだ、それも、お前のお陰か?」


「この教室に結界を張って、外部の干渉をできるだけ抑えてきたけど、にいさんは、もう消える寸前だったのよ。それを千丈くんに助けてもらったの」


「そうか、すまなかったな。妹の我が儘に付き合わせてしまった、そして助かった」


「いえ、いいんです」


「千丈くんの持つ力は凄いのよ。気分が高揚する感じかしら、気持ちがね…凄く良かったの」


 人をカンフル剤とか、禁止ドラッグみたいに言わないで欲しいです。

 連続服用はご遠慮願いたい。俺の力は用法、用量を正しく守って、使って欲しい。


 霧先先輩に吸われた2回目は、挙動がおかしくならなかったので、あれが霧先先輩にとっても適量ということだろうか?


「そうか、俺もここに来る前、校舎内で気がついた時に体内を巡る力が凄かった、それも千丈の力なら納得だ。式神もかなり作れたぞ」



 あぁ気が遠くなるぐらい、この兄妹には吸われたな。

 気になった言葉が出たので確認をする。


「式神ですか?」


「ああ、これだ…」



 五条先輩は掌をひろげる。


 すると(もや)のようなものが表れ、徐々に四角くなる。そして長方形となってゆき手の大きさを肥えるぐらいで。五条先輩は前に手を傾ける、すると滑るように離れて床に落ちた。


 そして、文字が浮かび上がって膨らんで、人を形作(かたちづく)った。


 自分の顔は……直接肉眼で見ることは出来ない。


 人体の構造上、鏡を通しての反射など間接的な手段を取らないと、己の顔や表情は見れない。だが、目の前にいる五条先輩から作られた存在は明らかに、毎朝鏡でみた、どこから見ても俺だった。


 17年間生きてきて、初めて自分を肉眼で客観的に見る事が出来た。こうして俺は、たぶん自分自身に初めて対面をした。


「……なんですかこれは?」


「これが、式神だ初めて見るのか?」


「そりゃそうですよ、凄く良くできてるんです……かねぇ? 自分ではよく解りませんが」


「ご主人が二人ぃぃ!? ですぅー」



 どうやらそっくりなようだ、俺の後ろでバイブレーションのように楓が震えている。"ぶーっ"てなってるぞ……


 と言うかくっついてたんだ! 存在を忘れていた。


「とりあえず、五条先輩よく解りましたので、もういいですよ」


「それがな……消えんのだ? 」


 なにっ!? 先輩の表情は真面目そのものだ、本当の事を言っているのは明らかだ、からかっている様子は見受けられない。



「うがあぁぁあぁぁぁっ」


 またこのパターンかよぉ!?

 俺が自分の目の前で唸り出すという光景は……正直複雑だった。


 やっぱりこれは俺じゃない、こんなにみっともなく騒いだりしないでほしい。

 俺は、自分にって言うのが紛らわしい。便宜上"千丈Bくん"と、呼ぶ事にした。


「いぃっ!?」


 千丈Bくんは、俺に飛びかかろうとしたところで、急に空中で急停止し、床に叩きつけられた。どうやら、五条先輩が見えない糸のような物で縛り付けたようだ、綱引きのように引っ張ってる。



「おらぁぁ! おとなしくぅぅ調伏されんかぁぁ!!」


 五条先輩がめちゃくちゃ怖いっす!? 目の前からは、ぎちぎちした音が聞こえて来ますよぉ。


 千丈Bくんは、白目をむき出しにして、手足を無茶苦茶に動かしている。教室の床に脚がめり込み、両腕で引きちぎろうと暴れていて、凄い力がかかっているのが解る。


 そうして、ついに見えない糸が引きちぎられた!

 その瞬間、千丈Bくんはこちらに向かい飛びかかって来た。



「おおっとぉ、あぶなっ!?」


「おおぉぉぉおおおぉ!!」


 間一髪で避ける事に成功した。次は、絶対に無理っす。

 いつも冷静な俺も、こうなると大慌てだ。


 千丈Bくんは勢い余って壁に突入して、そのまま突き破った。廊下で倒れているのが見える、今がチャンスだ!!


 俺は急いで、振り返る。

 霧先先輩は、こちらを見ながら、口に両手を当てて驚いている。



 目が合うと……首を左右に振っている。


 心が読めなくても、これは俺にも解ったぞ。

『無理よ! 対処なんて出来るわけないじゃない』だ。


 ちっきしょー! わかってたけど。



 五条先輩は、片膝をついて下を向いている。

 肩で息をしている。激しく上下動をしていて辛そうだ。



 だが……なんで幽霊が呼吸してんだよっぉぉ‼




「おおぉぉうぉぉぃぃ痛ってえぞ‼」


 はぁ? 喋ったぞ、千丈Bくん!?


 こうして五条先輩の造り出した、式神"千丈Bくん"に有効な対処法を見つけ出せないまま、俺たちは半壊を通り越して、廃墟化しつつある予備備品室に立ち尽くす。背中にくっついたままの楓は、バイブレーター並みの振動を繰り返し続けている。

**謝辞ぃ、です**

感想欄にコメントを頂けた"Lang_E"さまぁ~楓はでっこぼこですぅ。主に胸部と臀部パーツがですよぅ。ご主人は楓にメロメロなのでご心配なくですよぉ。


本日もお越しくださった皆々様には感謝、感激の大豊作、ですぅ


**

なお、最新投稿はTwitterで投稿時期をお知らせいたします、です。http://twitter.com/yasusuga9

ご意見、ご感想は"楓"が責任を持ってご主人に良いことだけお伝えするっす、ですよぅ。

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