根源までの道のり(その弐)
ついに楓が"搭乗"致しまするぅ、ですぅ。
その壱、その弐と2回に渡る"根源までの道のり"が遂に終わり、新たなステージへと進むぅ、ですよぉ。
楓の大活躍を刮目して見やがれぇ~、ですぅ。
俺と先輩が後ろを振り返って気が付いたのは柱の影からこちらを伺う人影だった。どうやらこいつが消火器を倒した犯人のようだ。
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根源までの道のり(その弐)
015
廊下の柱はここから見るとかなり薄暗い。目を凝らして見たが人物の特定は出来なかった。だが、髪の長いシルエットから見て小柄な女性のようだった。
もしくは、低身長でロン毛の男だ。
危機を察知した俺はとっさに先輩を背に庇った。そして影の人物の前に立ち塞がる。すると、霧先先輩が背後から声をかけてくる。
「大丈夫よ、ありがとう守ってくれて」
「これは男性として当然の行為です。このまま先輩は隣の教室に逃げ込んでください」
女性を守る、ナイトの気分を満喫した。
「本当に危ない時は、そうするわね。でも、あれは本当に平気よ」
「どういう事ですか?」
「よく見えないでしょうけど、あれは…」
「イチャ×2しやがって、ですぅ」
霧先先輩と会話をしている途中に影の人物が呟いた一言が耳に届く。その声に聞き覚えがありすぎる。
ですぅって、なんだ楓か………それに、なんだ『×2』って?
「おい、こっちへ来いよ」
「………」
なんだ? その場から動こうとしないな。
「なにやってんだよ」
俺は柱の影に向かった。あと半歩で姿が見えそうな位置まで進むと目前で先程まであった影が唐突に消失する。
まさに瞬きひとつの瞬間だった…
「ですぅ……」
俺の位置から少し離れた柱の影に、また人影が現れる。ちっ面倒だな、俺は楓に背を向けて先ほどの位置に戻ろうとした。
「さあ、先輩行きましょうか」
「いいの? 彼女は拗ねてるんじゃないの」
「何がですか? ここには先輩と俺の二人しか居ないじゃないですか?」
「待つぅ、ですよぉ。楓を無かった物にせんで下さい、ですぅぅぅ」
ちっ、来やがった。そう思った瞬間だった。
俺の背中に強烈な衝撃をうけた!? あまりの力で廊下から両足が浮き上がって踏ん張る事などとてもできない。そうして宙に浮いた状態で前方に向け高速で視界が動いてゆく。
「うげっぇぇ!?」
「千丈くぅぅぅーーーぅーーーぅん」
先輩の声が近くなり、そして遠く背後に響いていった………
俺の身体は地球の重力により着地したが、慣性の法則に乗っ取り前方への移動を続ける。
冷たかったはずのリノリウムの床は腹這いで滑って行く事で摩擦が発生、燃えるような灼熱感が接触している面を多い尽くした。
もちろんその間も背中には重量を感じ続けている。
その状態のまま床を滑って行った。進む廊下の先には壁がある。凄い勢いで俺の視界を多い尽くす。
「アブなぁーい、でーす!」
背後にいる楓が、両手を前に出した。
楓の身長は俺よりかなり低い。腕の長さについてももちろん短い。だがこの瞬間は楓の上腕が俺の腕の長さを遥かに凌駕した。
俺のこめかみを掠めて楓の両腕が真っ直ぐに延びていく。そして、正面の壁を木っ端微塵に破壊した。
「うわぁぁ!?」
「いっけーぇぇ、でぃすぅ」
壁が吹き飛び大穴が開いた。散乱するベニヤの残骸、ひん曲がったスチールパイプその真っ只中に向けての腹這い突入。
『お母様、蔭は精一杯、短い生涯を生きた筈です。悔いだらけではありますが、先立つ不幸をお許しください』
心の中で遺言を呟く、この52文字ぐらいの文章量ならTwitterに1回で収まりそうだな。などと考えながら、背中に重量物を積んだまま、俺は滑り続けて室内に突入して行きました。
そうして、室内の真ん中付近で止まる。
「熱っ、あっちいぃぃ!?」
摩擦で腹が、脚が熱い! うわぁ二の腕が真っ赤じゃん!?
「ご主人さまぁ、ですぅ」
えーい、しがみつくなよぉ!? うっとおしいぞ。急いで立ち上がった。だが、なぜか背中に楓がくっついていて離れない!?
楓の両腕、両脚は下がっている。俺と接しているのは背中僧房筋付近と楓の胸部のみだ? ブラブラとしているのが本当に恐ろしい……
こいつは小判鮫か?! 恐るべし、未来魔家電。
「千丈くんっ!?………あぁ大丈夫そうね」
破壊された壁の外側に霧先先輩が立っている。心配そうにしていたのはほんの一瞬で、今は目付きが凄く冷たい。不可抗力です俺は悪くない。
「ご主人ぃぃうぅぅ、ですぃうぅぅ!」
「泣くなぁ!? 泣きたいのは俺だ!!」
ちくしょう! どうやったら取れるんだこれは、手をかけようとするが背後にくっついた楓にはどうしても手が届かない。
その場で、くるくる廻り続ける俺は、自分の尻尾を追いかける犬のようだったと、後日先輩に言われて傷ついた……それはまた別の話だ。
アンドロイドの内部構造は解らないが、涙と鼻水を垂れ流す楓のおかげで俺の背中はびしょびしょだ。半袖シャツが張り付いて冷っこい。
「うるさいな……」
それは男の声だった。
窓際から聞こえてきた。振り返る俺が見たのは、一人の男子生徒が椅子に座っている姿だ。
それは、何時間振りの再会だった。
自身の膝に肘をついてこちらを伺う。その目には知的な光が満ち溢れていた。先程廊下でさ迷っていた存在とも、朝の暴走状態とも全く違う者がそこにはいる。
「なんなんだぁ、いきなり壁をぶっ壊して入ってきやがって。それに”かより”が、なんでここにいるんだ?」
「……にいさん」
「学校でそう呼ぶなと、いつも言ってるだろう」
にいさん? 霧先先輩のお兄さん?
確かに、詳しい事情は知らないが、たしか花咲は、学生カップルがいた話しをしていた気がする。
ということは……
「禁断の恋愛劇ということか!」
「違うわよっ!?」
俺の推測は、霧先先輩にきっぱりと否定された。名探偵への道程は遠いな。
探偵という職業に就きたいとは思わない、肩書きは自由業だ。 でも、お向かいに住んでいるハムスターに良く似たお兄さんは、なんと弁護士だ。確か職業欄に記入するときは、自由業って書くと言っていた気がする。弁護士がふーてんの寅さんと同列の職業欄になるとは……自由業恐るべし、見直した。
「あんだぁ、こいつは彼氏でも出来たのか? それに背中に体操着の女性を付けるのが、お前の趣味なのか?」
「いえ、霧先先輩とお付き合いとか、そのようなご関係ではございません。それに、この状態は好きでしているわけじゃないです」
「楓とご主人は、文字通り一心同体で闘う、です」
「余計なこと言うな! さっさと離れろ!?」
「いぃぃやぁ、でーす、もう離れません、ですぅ!!」
ちくしょう! 離れやがれ!?
ブラブラしている楓と俺が残骸の真ん中で暴れていると男子生徒が強烈に顔をしかめた。
「うるっせえぇなあ、それより、かよりこいつは家の事情を知ってるのか?」
「家の事情まではちょっと、でも、能力は知ってるわ」
「そうか」
家の事情? 能力? 魔女のことかな?
「そういや、名前聞いてなかったな、背中のは楓だな。俺は五条二弦だ」
「五条先輩ですね、俺は千丈と言います」
「千丈だな、わかった。かよりが能力持ちの魔女ということは知っているんだな」
やはり、五条先輩も当然知ってるんだな。兄貴なら当然だろう、でも名字が違うな?
「はあ、霧先先輩から聞きましたので……」
「ならいい、俺達の家系は魔女を排出するんだ、男の俺には関係がないのだがな」
男なら魔女とは、普通呼ばないだろうしな。もし言うなら魔法使いかな? ゲームでは、女の魔法使いもいるからなんとも言えないけど。そもそも、魔女とはなんだろう?
ヤ○ー質問に投稿してみようかな?
「千丈くん、なんか変なこと考えてない?」
「霧先先輩お願いいたします。心を読まないで下さい!」
「なんだ、千丈お前エロいことでも考えたのか?」
「考えてませんよぉ!?」
「かよりは結構発育がいいぞ。家事とかも得意だし、編み物も得意だ、お前を婿候補にしてやろうか?」
「……はぁ?」
発育が良い……そんなことはもちろん知っている。下着もおしゃれな白でフリルのレース……
はっ! やばぁ!!
「やっぱり変なこと考えたでしょう?」
「白フリルっすか、ですぅ」
霧先先輩の目付きがやばい……その顔は耳まで真っ赤になっている。楓は背後にいて顔は見えないけど、視線が首筋に刺さっていて実際にチクチクとした痛みを感じる。
「あっははっぁぁぁ!? いいぞぉ千丈!! お前は見所があるぞ男子はこうでないとなぁ!!」
「冗談は止めてよ、それに私はこれからにいさんに伝えないといけないこ…」
霧先先輩の話を、五条先輩は掌を差し出して止めた。
伝えないといけない話は、おそらくは既に死んでいる、亡くなった存在だと伝えるつもりだと思った。
「いいんだ、わかっている」
「えっ!?」
どういう事なんだ?
会話が成り立ち朝とは違うと思っていたが普通に状況を理解しているのか?
「それって、にいさんは分かっているの?」
「あぁ、ドジったな。まさかあんなことになるとは……」
どうやら放課後ここ予備備品室内で出会った幽霊の男子生徒五条二弦先輩は過去の記憶を保持したまま、ここに存在しているようだった。
**謝辞ぃ、です**
活動報告にコメント入れて下さった、"ヨシ"さまぁ~楓は神ですか? 神がかっているでしょう、ですぅ。行きますよぉご自宅まで送料は着払いで、でぇ~す。
そして、感想欄に一言を下さった
"藍川 センリ"さま、用法、容量を守って大量に摂取してくださいませぇ、弱ったら楓がしっかりと介護に行きますよぉ。下の世話まで、全てお任せくださいぃ、です。
最後に、感想欄から活動報告に、コメントをいつもして頂ける"菱川あいず"さまぁ~楓はメロメロですぅ。脱ぎますよ、皮膚をぉぉぅぅ、ですぅ。
皆々様には感謝、感激の大豊作、ですぅ
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なお、最新投稿はTwitterで投稿時期をお知らせいたします、です。ご意見、ご感想は"楓"が責任を持ってご主人に良いことだけお伝えするっす、ですよぅ。