表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白物魔家電 楓(しろものまかでん かえで)  作者: 菅康
第弐章 予備備品室の幽霊譚
10/115

魔家電の実力(その壱)

 ついに楓の実力が発揮されますよぉ、です。ご主人をお守りして戦う、です。

**

 遂に最強最悪? 霊体との決着が着く...かも?

 過激で、過去最高の戦闘シーンの綴られたお話しが今、始まる。

**

 読破するのは貴方様、ですぅぅ!!

 予備備品室には一人の魔女が居る。その彼女の願いを聞き入れて俺は協力することにした。


 こうして亡くなった彼、男子生徒は顕現をした。だが男子生徒は彼女を振りほどいて、俺に襲いかかり更なる力を奪う。

 意識を失いかけたその時、救世主ブルマー姿の楓が乱入し凄まじい回転蹴りによって危機を回避した。

 ように思えたが…


 **

 魔家電の実力

 010


「おい楓! さっきのあれ平気なのか?」


「さあ、わかんない、ですぅ?」


 まあ、楓にはわかんねえだろうな。


 俺が襲われている=敵かなぁ? そう判断をしただけで、相手に対して全力の蹴りをぶちかましたのだ。これほど恐ろしい事はないだろう。


 相手はすでに亡くなっている存在だ、なので怪我をする事はないだろう。損害賠償等の問題は起きない。

 だが普通の人間に対して、楓がああいった暴力行為を働いた時の責任は当然ながら持ち主に振りかかってくるだろう。所有者と考えれば、嫌だが、きっと俺になるだろう。賠償責任は免れない。


「随分とやんちゃしたのね」


 背後より聞こえてきた声に振り返る。そこには霧先先輩が立っていた。先輩の目線は粉々になった机、椅子の山に向いていた。


「気がついたんですね、良かった。怪我はありませんか?」


「おかげさまでね、ちょうどよいクッションがあったから」


 思いっきり吹っ飛んできたけど霧先先輩に怪我がなくて良かった。花咲は白目を剥いてひっくり返ったままだ。最少の犠牲で済んだようだ。


「心配したんですよ、花咲の上で動かなかったですし、その後は確認できなかったので」


「私もあれほど()に抜き取られるとは思わなかったの。ところでお隣の彼女を紹介してくださるかしら?」


 霧先先輩のハイテンションモードは消え失せ通常に戻ったようだ。これは本当に良かった。

 先ほどまでの奇声を発するような、霧先先輩は正直俺はもう見たくなかった。

 先輩の言う隣の彼女とは楓のことだろうか?


 他に対象はいない……嫌だなぁ。

 横を見るとファイティングポーズで挑発を続けている体操着、赤いブルマーの楓がいる。


 だから嫌なんだよ。

 そもそも戦闘系のキャラだっけ? お笑いボケ担当だと思ったのに。


 仕方がないので、先輩に紹介することにした。


「これが、今日転校してきたクラスメイトの(かえで)です。こちら歴史部 部長の霧先かより先輩だ、その変な構えを解いて挨拶をしろよ」


「はっ、です。千丈蔭様専属防衛隊長の楓、ですぅ」


「あー、嘘っぱちで余計な肩書(せってい)きは禁止だ、次やったら返品だぞ」


「大丈夫、ですぅ! 購入から1年の製品保証と返品期限は最早過ぎているの、です。すでに不可能だとお伝えします、ですよぉ」


 何ぃ!? 1年が経過だと? そんな馬鹿な!!


「お前っ! こっちに来てまだ数日しかたっていないだろう?」


「いいえ、ですぅ! もうすでに1年前からいる、ですよぉ。家造りで消化したの、ですよぉ」


 1年前からだと?………あっ!!

 あれは確か、初めて俺の部屋に来たとき、スイスに家を作るのに1年かかったと言ってた気がする。

 このやろう、返品期間を消費する為にわざとやりやがったな。まるで、クーリングオフの脱法商法だ、ひどすぎる。


「もう、いいいかしら? お二人の会話で色々わからないけど。何となくなら、分かったから」


「絶対、勘違いされてますよねぇ!」


 あの会話でわかられてたまるか!?


「もう満腹よ! 二人は恋仲なのよね」


「ほらぁ、違いますよ!! 」


 でも、どう説明したものか悩む。

 実は未来の俺から、白物魔家電のアンドロイドが送られてきました。

 なんて言えない。絶対に頭がおかしいと思われてしまう。


「それより、彼が動き出したようね」


 霧先先輩は半分崩壊した机の山を見ている。 確かに、残骸の山が揺れ始めた。


 実にナイスタイミングだ! このまま、楓の件はうやむやに……

 などと考えていると、山頂部分から音を立てて崩れ始めた。室内に埃が舞い上がる。


 その時だった!? 埃の中より何かが飛び出してきた!!


「あぁぁはははっははっぁぁ!!」


「……いぃ!?」


 巻き上がった埃をその身に纏い、飛び出してきたのは先程の男子生徒だ。笑いながら一直線に俺に向かって来る。


「おらっぁぁ、ですぅ!」


 楓が男子生徒に対して蹴りを繰り出した。相手は腕をクロスさせてその蹴りをガードする。

 俺と男子生徒の間に楓が立ち塞がった。


「邪魔ぁすんなよぉぉ! なんだよぉ? お前わぁぁぁっ!! 邪魔おぉぉぅするならぁぶっ殺すぞ、 あぁぁん!?」


 メチャクチャ恐いぞ、なんだこいつは!?


「お前こそ何者、ですぅ。ご主人に危害を与える事はこの楓が許しません、でぃぃすぅぅぅ!」


 おいおい、奇声で張り合うなよ……


「楓だぁ? 知らんぞぉ! もっと力をぉぉよこせぃぃ……ぃ」


「ご主人、必殺技(・・・)のご許可を、です。あんなの吹き飛ばしましょう、です」


 えっ必殺技だと、なんじゃそりゃ、聞いてないぞそんな設定?


「うおらぁぁ楓パァーーーンチぃぃ!!」


 ただ殴りかかっただけじゃん?!


「うがっぁぁ?!」


 あっれぇぇ? まともに喰らってるよ。


「うおらぁぁ! もう一丁喰らえ、ですぅぅ」


 楓は反対の拳で殴りかかった。だが相手は1発目で後退している。

 その距離は、楓の腕では届かない距離だ。だが俺の予想に反して、男子生徒の顔面に鈍い音を響かせて楓の拳が炸裂する。


 えっと……今!? 楓の腕が伸びました? どういう構造(ギミック)をしているのだろうか?


「うぐっあああっうぁぁ。なんなんだあぁ! おまえはあぁ!!」


「先程から名前はお伝えしている、ですぅ。どないしはりますかぇご主人さま、です。殺りますか、殺りましょう、あんにいさんをぶっ殺しはりましょ、ですぅぅ」


 なんで京都弁がここで混じるんだ、ちなみに俺は京都弁を知らないので合っているのかどうかの判断はできない。


「どないしはるって言われてもな」


 こんな事態の収拾方法など俺にわかる筈がないだろう。一応、形だけでも悩む振りをするが答えなんか出せるわけがない。


「大人しくなってぇ、ねえ! お願いだから!」


 霧先先輩が前に出る。そして、男子生徒に対して必死の懇願を始めた。


「ああぁん? なに言っていやがるぅぅ、お前は、おまえはぁぁなんなんだぁぁ!」


 必死に語りかける先輩の事が男子生徒には、わからないようだった。

 言動も怪しく会話ガ成り立たたない。


「お願いぃぃ話を聞いてよぉぉ」


 霧先先輩の必死な願いに、男子生徒は目を向けることなくその場でうめき続ける。


「どうしてわかってくれないの、ねえっ、聞いてよぉ!」


「……先輩」


 俺はそれ以上先輩に掛ける言葉が思い付かなかった。


「ご主人すみません、です。会話や交渉の余地はこれ以上は無いかと思います、ですぅ」


 楓を見ると、例の口元を歪めるニヤリとした表情を作った。その表情を見た俺はムカついた。


「そのようだな。霧先先輩どうしましょうか? 楓を囮にして逃げますか」


「楓は捨てゴマっすか、ですぅ!?」


 楓がすごく残念な表情をしながらこちらに縋り付いてきた。

 うっとおしいぞ! お前の活用方法はこうするのが最適だ。化け物同士で仲良くしてくれ。


「どうするって、そんなの分からないわ。でも、何とかしないと、逃げるなんて出来ない……」


「そうですね、逃げるわけにはいきませんよね。ちなみに楓は暴力、それで私は無力ですが」


 現状打開で他に対処方法は……


 そう言えば、先輩は魔女だった!! 魔法でパパっとかたずけて平和な授業に戻れないかな。


「霧先先輩!!」


 俺は期待を込めた視線を先輩に送った。


「結構あなたは、他力本願なのね。ちなみに私には無理よ。だって腕力無いもの」


「いや、先輩には魔法とかあるんじゃないですか?」


 霧先先輩に対して、あんな暴力は決して期待しておりません!


「魔法はそんなに便利ではないの。捕獲術式はもう間に合わないのよ」


 終わったー! 楓以外の対処方法はない。

 このまま楓に相手が消滅するまでぶん殴って貰うか。よし! そうと決まれば……


「楓、お前には期待しているぞ。ここに来てくれただけで俺は嬉しかった。本当に助かった。そしてお前が頼りだ」


「……ううっ……ぁぁああ!!」


 楓は普段色白な顔を目元まで真っ赤にして、両手で自身の身体を抱き締めて泣き出してしまった。

 少しだけ、ほんのちょっと大げさに感謝の気持ちを伝えたら、想像した以上の反応をしている。

 なんだか罪悪感が芽生えた。そのとき、俺は視線を感じて振りかえった。


 霧先先輩が冷めた目付きでこちらを見ている。

 何か言いたそうだなと思ったら、その可憐でサクランボのように艶やかで光沢のある唇が開いて、ひとつの単語が発せられた。


「鬼畜…」



 なんでぇ?!


 感謝の気持ちはちゃんと言葉で伝えるようにと……

 そう小学校から学んできたのに。


 何がいけなかったのだろうか、俺は一体どこで間違えてしまったのか。

 正面の荒ぶる男子生徒を通り抜けて壁に視線を送っていると、横手から素早く動く影があった。


「楓は度胸、です。さっさと消え去ればいいの、です」


 楓が繰り出す豪腕が唸り男子生徒に向けて突き進む。埃ごと切り裂く蹴りが炸裂する。

 おおっ本当に恐ろしいぞ。生身であれを喰らったら確実に赤い水溜まりに変化してしまう。

 ガードという防御など、絶対に無理だ。だって弾けるもん、”パチュン”ってなる自信があります。

 だが、さすがは実体化した幽霊だぶん殴られた部分は爆散し、蹴りによって引きちぎれた身体も直ぐに修復されてゆく。


「ちいっ、ですぅ。これならぁぁどうだぁー、です。」


 楓は腕を大きく後ろに振りかぶり、平手打ちを行う。

 相手に直撃する瞬間、手の平が”ばかでかく”なった。そのまま振りぬくと男子生徒の上半身を完全に吹き飛ばす。


 未来から来た魔家電(テクノロジー)、という割には、えらく原始的に殴る、蹴るに特化している。と言うか、それ以外の攻撃を俺は見たことがない……


 相手の男子生徒は腰から上が消滅した。今は下半身しか存在していない。さすがにこれだけ広範囲に爆散すると簡単には回復出来ないようだ。

 だが、倒れてそのまま崩壊すうるような気配はなかった。


「うおっしゃー勝ち、です。おらっぁぁぁ、ですぅ~」


 両手を上げて勝ち誇る楓、こちらを振り返りいつものあの口の両端を持ち上げるニヤリとした表情をしてくる。

 頑張ってもらって申し訳ないのだが、ドン引きだ……


 なんだな、やっぱりこいつは化け物だ…


「ああっなんてことに…」


 先輩は衝撃的な状況に膝をついている。

 そして、こちらをじっと見つめる。


 先輩こっちを見ないで下さい。どうしていいのかなんて、俺に解りません。


 霧先先輩、楓と二人して目の前の対象(かはんしん)から視線を外して俺に向けている。そのとき、俺だけが下半身だけ残った男子生徒を見ていた。

 その下半身が急に動き出す。


「楓、あぶなっ……」


「んにゃっ!!」


 油断した楓に、肉薄した下半身が蹴りを放ってきた。とっさに、臨戦態勢を取ろうとした楓だったが相手の放つ蹴りの方が圧倒的に速く攻撃を受けてしまった。


「ちっ、ですぅ」


 "です"は、ちゃんと言うんだな。


 残った男子生徒の下半身は蹴りで怯んだ楓の横を走り抜け、空いたままだった予備備品室の扉から廊下に飛び出そうとした。

 霧先先輩が止めようとして走り出したが、慌てていて倒れていた花咲につまづき、転んでしまった。


 下半身は、その横を走り抜けた。

 上半身という重量(かせ)がない動きは俊敏であっというまに予備備品室内を出ていってしまった。


「にいさん...」


「きゃあぁぁぁあぁぁぁっぁぁ」


 追いかけようとした俺を引き留めたのは、霧先先輩の呟きと同時に起こった楓の叫び声だった。

なお、最新投稿は、Twitterで投稿時期をお知らせして行きます、ですぅ。http://twitter.com/yasusuga9

ご意見、ご感想は"楓"が責任を持ってご主人に良いことだけお伝えするっす、ですよぅ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ